賃貸物件の中には、敷金礼金が0円で借りられる「ゼロゼロ物件」と呼ばれる部屋があります。敷金礼金なしの物件では、初期費用を抑えられて安く部屋を借りられるため、引っ越し費用に余裕がない方からも人気が高い傾向にあります。
ただし敷金礼金なしの物件では、家賃が相場より割高になったり、退去費用が高額になったりするデメリットも考えられます。本記事では、敷金礼金なしの賃貸物件のデメリットについて解説し、向いている人・向いていない人の特徴や、引っ越し費用を抑えるためのポイントについてもご紹介します
そもそも敷金・礼金とは?
敷金・礼金はどちらも賃貸物件を借りる際の初期費用として支払うことは共通していますが、敷金は大家さんに預けるお金であり、礼金は家賃と同じように大家さんに支払うお金であるという違いがあります。敷金は家賃滞納や退去費用が発生した際に、不足した金額を敷金から差し引くという「保証金」の性質を持っています。一方で礼金は、新築物件などで大家さんへのお礼の意味合いで支払うものであり、返還されたり家賃の支払いに充てられたりすることはありません。そのため礼金なしの物件は入居者にとってメリットが大きいですが、敷金なしの物件は入居者にデメリットが発生することがあるので注意が必要です。
敷金礼金なし物件の5つのデメリット
敷金礼金なし物件を借りる際に注意したいデメリットには、以下の5つが挙げられます。
- 相場よりも家賃が高くなる傾向がある
- 退去費用が高額になる場合がある
- 人気物件の数が少ない
- 別の名目で敷金・礼金が引かれるケースもある
- 退去トラブルに発展する可能性がある
それぞれの注意点について詳しくご紹介しましょう。
相場よりも家賃が高めになる傾向
敷金礼金なし物件には、家賃が相場よりも高くなる傾向があるというデメリットがあります。敷金・礼金を設定しない代わりに家賃をやや高額とすることで、トータルで大家さんが受け取れる金額を調整しているというケースです。一見すると初期費用が抑えられてお得になるように見えますが、長期的に住み続けると、他の物件と比べて割高な家賃を支払い続けることになるため注意が必要です。部屋の条件や家賃の金額に納得できる場合は問題ないですが、気になる場合には、敷金礼金なしと設定している理由を不動産会社に尋ねてみると良いでしょう。
退去費用が高額になる場合がある
敷金礼金なしの物件は、初期費用を抑えられる反面、退去時に費用がかかることがあります。退去費用は、入居者が部屋を汚したり傷つけたりした場合の修繕費やクリーニング代です。普通の使用による劣化や、経年劣化と認められる場合は費用がかからないことが多いですが、契約書に「退去時にハウスクリーニング代を負担する」と記載がある場合は、汚れ具合に関わらず支払い義務があります。通常の物件ではこれらの費用は敷金から差し引かれますが、敷金礼金なし物件では退去時に別途請求されることに注意が必要です。
人気物件の数が少ない
敷金礼金なし物件は、大家さんや不動産会社が不人気物件の入居までのハードルを下げるために利用しているケースが多く、人気物件が少ないデメリットもあります。築年数が浅く、周辺環境や設備が充実している人気物件では、敷金・礼金を設定しても入居者が現れやすいため、大家さんや不動産会社にとって敷金礼金なしとするメリットが少なくなります。そのため敷金礼金なし物件に限定して部屋探しをしていると、理想の物件には出会いにくくなる点に注意しましょう。
別の名目で敷金・礼金が引かれるケースも
前述した修繕費用・ハウスクリーニング代などの名目で、敷金礼金なし物件は退去時に別の費用が発生するデメリットも挙げられます。入居時の初期費用でも、入居前のハウスクリーニング代や防虫消毒費などの名目で、敷金と同じような性質の費用が含まれることがあります。入居時・退去時には、請求される費用の内訳をしっかりと確認して、不明な支払いは不動産会社に確認しておくと良いでしょう。
退去トラブルに発展する可能性が高い
敷金礼金なし物件では、それ以外の物件と比較して、退去トラブルに発展する可能性が高い点もデメリットに挙げられます。例えば、契約書の特約事項として退去時のハウスクリーニング代の負担について小さく記載されていたり、部屋の原状回復費用を実費で請求されたりして、管理会社や大家さんとの間でトラブルになる可能性が考えられます。敷金が設定されている場合には、入居時に支払った敷金から差し引かれるためトラブルには発展しにくいですが、敷金なしの物件では退去費用について揉める可能性があるため、契約書の内容は充分にチェックしておくことが大切です。
敷金礼金なし物件のメリットは初期費用が抑えられること
ここまで敷金礼金なし物件のデメリットについてご紹介してきましたが、一方で敷金礼金なし物件のメリットを挙げるのであれば、初期費用が抑えられるという点があります。敷金・礼金はそれぞれ家賃の1ヵ月分が相場となっているため、どちらも発生する場合は家賃2ヵ月分の費用が初期費用として上乗せされます。家賃10万円であれば20万円の費用が発生する計算なので、初期費用が足りないと感じるケースも出てくるでしょう。敷金礼金なし物件であれば初期費用が抑えられるので、入居までのハードルが下がる点が大きなメリットといえるでしょう。
敷金礼金なし物件が賃貸に出されている理由
初期費用が抑えられるというメリットを除けば、入居者にとってデメリットの大きい敷金礼金なし物件ですが、なぜ不動産会社や大家さんは敷金・礼金を0円と設定するのでしょうか。ここでは敷金礼金なし物件が貸し出される背景についてご紹介します。
物件の条件が悪いから
敷金礼金なし物件として貸し出される理由として、物件の条件が悪く人気が低いことが挙げられます。築年数が古かったり、交通アクセスが悪く通勤・通学に不便な立地だったりすると、入居者が集まらずに空室の期間が発生してしまいます。大家さんにとって空室が長く続くのは避けたいという心理が働くため、入居のハードルを下げるためにも敷金礼金なし物件が生まれるという仕組みです。
空室期間が長いから
すでに長期間にわたり空室の状態が続いている物件でも、早期に入居者を決めるために敷金礼金なし、または数ヵ月分の家賃が無料になる「フリーレント」が設定されることがあります。大家さんにとっては、空室では家賃収入が0円ですが、敷金礼金なしであっても入居者が決まれば、その月から家賃収入を得ることができます。家賃の値下げは大家さんとしても避けたい最終手段のため、まずは敷金礼金なし、またはフリーレントを設定することで入居者を集めたいという気持ちが働いています。
引っ越しの閑散期だから
引っ越しのピークシーズンである2月〜4月頃を過ぎると、賃貸物件の契約も閑散期に入って入居者が決まりにくい期間が続くため、敷金礼金なし物件が増える傾向にあります。前述したように空室期間が続くことを大家さんは嫌うため、少しでも多くの入居者を呼び込むために敷金礼金なしに切り替わる物件が増加します。
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敷金礼金なし物件に向いている人・向いていない人の特徴
ここまでご紹介してきたデメリット・メリットを踏まえ、敷金礼金なし物件に向いている人・向いていない人の特徴をそれぞれご紹介していきます。
敷金礼金なし物件に向いている人の特徴
敷金礼金なし物件に向いているのは、次のような人です。
- とにかく初期費用を抑えたい
- 半年〜1年程度で引っ越す予定がある
- ペットや子ども、喫煙者がいない
- 汚れやキズが残らないよう部屋を丁寧に使う
- 賃貸契約書を隅々までチェックしてサインできる
初期費用を抑えて引っ越しを済ませたい方はもちろん、長期で住み続ける予定がない方、退去費用が高額にならないよう丁寧に部屋を使える方であれば、敷金礼金なし物件が適しています。
敷金礼金なし物件に向いていない人の特徴
敷金礼金なし物件に向いていないのは、次のような人です。
- 部屋探しにこだわりがある
- 長期的に住み続けたいと考えている
- 高額な退去費用を負担したくない
- ペットや子ども、喫煙者がいる
- 掃除や片付けが苦手
- 安い家賃の部屋に引っ越したい
敷金礼金なし物件は家賃が割高になりやすいので、長期的に住み続けると損をする可能性が高まります。また人気物件の数も少なくなるため、こだわりの部屋の条件がある方は敷金礼金なし物件に絞らない方が良いでしょう。
【敷金礼金なし物件以外】引っ越しの初期費用を抑える方法
最後に、敷金礼金なし物件以外の部屋に引っ越す場合にも、費用を安く抑えるポイントについてご紹介します。
礼金・家賃の値下げを交渉する
賃貸物件を探す際には、不動産会社を通じて礼金・家賃の値下げを交渉してみましょう。交渉に応じてもらえれば入居を即決することを伝えることで、礼金や家賃が安くなる可能性も高まります。ただし敷金については大家さんに預ける保証金なので、値引きには応じてもらいにくい点にご注意ください。
仲介手数料が半額・無料の不動産会社を選ぶ
引っ越しの初期費用を抑えるためには、不動産会社に支払う仲介手数料の節約も効果的です。賃貸の仲介手数料は家賃の1ヵ月分が相場ですが、不動産会社の中には仲介手数料が半月分になるところや、キャンペーンにより仲介手数料が無料となるところもあります。こうした不動産会社をうまく活用することで、敷金・礼金を支払っても初期費用を安く抑えられるでしょう。
引っ越し会社の相見積もりを取る
引っ越し会社に支払う引っ越し費用を見直すことにより、引っ越しにかかる総額を安く抑えることができます。引っ越し会社を依頼する際には、1社だけの見積もりを取るのではなく、複数の会社の見積もりを取り寄せながら比較・検討することが大切です。WEBから一括見積もりを取り寄せるサービスを使うと、各社の見積もりを確認することができるので、引っ越しが決まったらぜひ活用してみましょう。
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物件選びのチェックポイント
これまでご説明してきたように、敷金や礼金がゼロの物件には、それなりの理由があったり、将来的にかかる費用が増えるリスクがあるデメリットがあります。
そこで実際に部屋を探す際、敷金礼金以外でどんな点に気をつければいいのでしょうか?
ここからは、物件選びで特に大切なチェックポイントを掘り下げて見ていきましょう。
- 家賃相場を確認する
- 原状回復費用を確認する
- 物件の周辺環境を確認する
- 契約条件を確認する
- 物件の設備や管理状態を確認する
- セキュリティを確認する
家賃相場を確認する
物件を探す際には、住むエリアの家賃相場をチェックすることが非常に重要です。これにより、予算に合った物件を見つけやすくなります。
例えば、東京都豊島区池袋の間取り別平均家賃は以下の通りです。
間取り | 家賃相場 |
---|---|
ワンルーム | 7.4万円 |
1K | 8.26万円 |
1DK | 10.22万円 |
1LDK | 12.82万円 |
2K | 10.29万円 |
2DK | 13.51万円 |
2LDK | 17.07万円 |
3K | 14.85万円 |
3DK | 15.82万円 |
3LDK | 22.14万円 |
4K | 17.93万円 |
4DK | 22.33万円 |
4LDK以上 | 26.58万円 |
もちろん、東京都内でも地域や部屋の条件によって、賃料相場は大きく変わってきます。まずは希望のエリアを決め、そこでの標準的な家賃水準を事前に確認しておくことが大切です。立地条件、間取り、建物の築年数など、様々な要因で賃料が変動するからです。
原状回復費用を確認する
敷金礼金なし物件を契約する際には、原状回復費用の負担についてしっかり確認しておくことが大切です。これを怠ると、退去時に思わぬ出費が発生する可能性があります。
基本的に、自分の不注意で傷つけたり汚したりした場合には原状回復費が必要になります。契約書には原状回復費用の負担範囲が記載されているため、退去時のトラブルを避けるためにしっかり確認しておきましょう。ここをチェックすることで、退去時の不安を少しでも軽減できます。
物件の周辺環境を確認する
物件の周辺環境は、日常生活の快適さに大きく影響します。近くにスーパーやコンビニ、病院など生活に必要な施設が揃っているかを確認しましょう。また、交通の便も重要です。最寄り駅やバス停までの距離、通勤・通学時間なども考慮しましょう。
契約条件を確認する
契約書には、家賃や管理費のほか、契約期間や更新料、解約条件などが記載されています。これらの条件をしっかり確認し、不明な点は事前に確認しておきましょう。特に、敷金礼金なし物件の場合、他の費用が発生する可能性があるため、細かい条件まで確認することが重要です。
物件の設備や管理状態を確認する
物件の設備や管理状態も重要なポイントです。エアコンや給湯設備、キッチンやバスルームの状態など、実際に生活する上で必要な設備が整っているかを確認しましょう。また、共用部分の清掃状況や管理会社の対応などもチェックポイントです。
セキュリティを確認する
セキュリティ面も忘れずに確認しましょう。オートロックや防犯カメラの設置状況、近隣の治安など、安全に暮らせる環境が整っているかを確認することは非常に重要です。
物件探しは多くの時間と労力がかかりますが、これらのポイントを押さえて慎重に進めることで、安心して新しい生活を始められるでしょう。
敷金礼金なし物件トラブル時の対処法
賃貸住宅の契約でトラブルになった場合は、どうすれば良いのでしょうか?まずは冷静に対処することが大切です。消費者生活センターなどの第三者機関に相談すると、専門的なアドバイスが受けられます。
消費者生活センターは、国民の消費生活を保護するために設置された機関で、全国47都道府県に窓口があります。賃貸契約などの消費者トラブルについて、親身に相談に乗ってくれます。
また、契約に関するトラブルで解決が難しい場合は、弁護士に相談することもおすすめです。専門家の助けを借りることで、より良い解決策が見つかるかもしれません。
おわりに
敷金礼金なし物件には、以下の5つのデメリットが挙げられます。
- 相場よりも家賃が高めになる傾向
- 退去費用が高額になる場合がある
- 人気物件の数が少ない
- 別の名目で敷金・礼金が引かれるケースも
- 退去トラブルに発展する可能性が高い
こだわりの条件で部屋を探したい方や、長期的に住む予定がある方、ペット・子ども・喫煙者がいる方などは敷金礼金なし物件は向かないのでご注意ください。一方で敷金礼金なし物件には、初期費用を抑えられるというメリットもあるので、それぞれの長所・短所を踏まえながら理想の住まい探しを進めてみてください。
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