老後資金2,000万円問題の的外れ

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老後資金2,000万円問題の的外れ

                             

1.「高齢社会における資産形成・管理」報告書の本旨とは?

2019年に、金融審議会市場ワーキング・グループが作成した「高齢社会における資産形成・管理」という報告書が公表され、世間が騒然となった老後資金2,000万円問題。マスコミ報道はこの報告書の序章にある、公的年金の受給水準が今後長期的に調整されて行くくだりの記述の一部にあった1,300万円~2,000万円不足の一事例を切り取って、国民の年金制度に対する不安を煽りました。

そもそも公的年金のみで現役時代と同等の生活水準を政府がコミットしたことはないはずで、2004年の年金改革時のキャッチフレーズとなった「100年安心」という言葉が亡霊の如く蘇って政争の具になってしまったわけです。

 

当時の年金改革によって、マクロ経済スライド方式による年金支給水準の調整機能が採用されました。その目的は「100年安心」になぞらえるならば、100年後の世代にも公的年金制度が老後生活の一助として持続的であるために、そこに至る受給世代が所得代替率の低下を受け入れることだったと理解すべきで、騒動の観点は的外れといえますが、それ以前に当該報告書は年金制度を論ずるためのものではなく、そのメインテーマは高齢化が本格的に進展する今後の社会構造を踏まえて、いかに人生長寿化と共に資産寿命も長期化させていくかという課題提起だったのです。

2.報告書主旨は豊かな人生作り

「人生100年時代」の概念は広く定着しましたが、そのフレーズは決して情緒的なものではなく、国民全体の長寿化はこれまでの「人生80年時代」からの生き方、即ちライフプランの常識大転換を意味するものです。

この報告書が伝えたかったのは、国民年金や厚生年金といった社会保障による公助に加えて、自らお金を育てていく自助を付加することによって、長寿時代にも一人ひとりの生活者が納得できる豊かな人生作りへと行動することの必要性を提起したものです。

要するに豊かな人生を長寿と共にまっとうしたいと思うならば、長期資産形成を合理的に実践することで、それが実現可能であることを示唆した極めて前向きな提言書なのです。

とはいえ、その提唱が相場で勝負して勝手に頑張ってください、といった投機的行為を意図しているはずもなく、即ち報告書の中では、「長期・積立・分散」投資という投資行動3原則を実践することの勧奨に再三言及されています。適切な投資行動によって合理的にお金が育てられることが強調されているのです。

3.金融所得で豊かな社会に

豊かな生活

報告書では米英の生活者における長期資産形成の成功事例が示されています。自分が働いて得る所得と公的年金の受給だけでなく、お金も経済活動の中に働きに出して得られるリターンを加えることで、複数の収入源を重ねて米英の人たちは自ら豊かなライフスタイルが成就できていることを意味しています。

我が国の生活者には、戦後高度成長時代から連綿と積み上げられて来た預貯金がざっと1000兆円規模でありますが、ご存知のとおり、これらは過去20年超にわたって実質ゼロ金利で新たなお金を生み出すことができないまま滞留されています。

そこで私たち生活者が持つお金を、新たな富を生むお金に換えていこう、これが「貯蓄から資産形成へ」の真意であり、真っ当な長期投資マネーとして経済活動の糧とすることで、お金は相応に育って生活者に還ってきます。

つまり生活者主導で金融所得を合理的に増やすことは、私たちの意志と行動で実現出来るわけで、その具体的行動規範が「長期・積立・分散」投資の実践なのです。

4.「iDeCo」「つみたてNISA」は重要な国策

報告書ではその実践において「iDeCo」と「つみたてNISA」の有効活用を重ねて訴えています。これら非課税制度はまごうことなき「じぶん年金」であり、当該制度によって育ったお金からは税金が免除され、まるごと参加者に還元される、生活者一人ひとりに豊かな人生作りを実現してもらうための大変重要な国策だといえましょう。

 

私たちが拠って立つ日本経済は、今後も少子高齢人口減少社会の進展もあって、持続的な経済成長が難しいかもしれません。それでも自らのお金を世界経済の安定した長期成長軌道の中に働きに出せば、成長を養分にお金は育てられる。成熟社会に生き続ける私たちは、真っ当な長期投資の実践によって自ら豊かな人生作りが充分実現可能であり、そのためには行動を起こすことが不可欠でもあるのです。

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参照元:金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」01.pdf (fsa.go.jp)