長期投資家の真贋が問われる時

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長期投資家の真贋が問われる時

1.ウクライナ情勢の混沌

ロシアのウクライナ侵攻は、ウクライナの勇敢な抵抗で停戦の行方が見出せずカオス化しています。ロシアは2014年にクリミア半島を強引に併合し、世界もそれを容認したとの解釈のもとで、今回もウクライナ全域を容易に陥落させられると考えていたとすればプーチン大統領の大誤算で、むしろクリミアでの勝手を看過した反省も踏まえ、西側諸国は断固たる反対意志を示したわけです。

とりわけ初期対処でグローバル資金決済システム(SWIFT)からロシアを排除する英断が実行されて、ロシアは未知の強烈な経済制裁を強いられています。他方でNATOは第三次世界大戦に陥る危機管理にも冷静で、今のところ出口が見出せないウクライナの局地紛争のまま膠着しているといえましょうか。

2.国際社会の劇的転換

東西冷戦終結以降、旧ソ連から多くの独立国家が生まれましたが、それらが続々と西側自由主義陣営入りしていく中、ウクライナの西側シフトを阻止すべくロシアが強硬手段に出たわけですが、独立国家主権を軍事力で蹂躙する蛮行は決して許容できない、という国際協調の明示的行動が対露経済制裁です。ところがグローバリゼーション構造下の地球経済にとっては、ロシアからのエネルギー資源依存リスクが如実に認識される反作用に見舞われて、エネルギー価格が急騰する中で、コストプッシュ型インフレの進行と経済活動の制約が、世界的にスタグフレーション(不況下の物価上昇)へと陥る可能性まで懸念される状況です。

何より欧州、殊にドイツはロシアの天然ガス輸入にエネルギーを偏重依存していましたが、その慄然を抑えて新たなエネルギー政策への転換へと素早く動き出しています。ロシアと西側諸国との対峙は鮮明になり、それは米欧日先進国がリードする民主主義社会と中露に代表される専制主義社会との、新たなるイデオロギー対立という国際秩序の不確実性として、一層顕在化したといえましょう。

第2次大戦後70余年に亘る世界の平和前提社会はここに終焉し、これからは軍事的緊張が常態に在る中で、米中の覇権対立に欧州、ロシア、そして日本も絡みながら、グローバリゼーションの一体化とブロック化による分断が併存するといった複雑なバランス構造下で、世界経済は新たな活路を見出していくのでしょう。

3.長期投資家が見る変化

さてこうしたメディア的一般視点から離れて、資産運用側の視線から見える変化の予兆にも言及しましょう。まずは経済活動の糧たるエネルギー領域に見えるパラダイムシフトの急進展です。脱炭素化を是とするグローバルな価値観転換が、旧来の化石燃料価格の高騰を招くパラドックスに直面していた折に生じたロシア制裁発のエネルギー危機は、否応なく代替エネルギーの開発機運を盛り上げることになるでしょう。さらにはエネルギーのみならず、食料・農産物・水資源など経済安全保障の観点から国民生活に不可欠な産業分野の供給機能強化、グローバルに分散したサプライチェーンの再構築など、あらゆるイノベーションの提起がメガトレンドとなるはずです。

そしてESG概念も深化へと動きます。ロシアに関連した産業やビジネスへの投資を引き揚げる。これをインベストメントの反対語としてダイベストメントと呼びますが、こうした投資撤退への行動を導くのもESGの判断要素として一層重要視されるわけです。産業界の事業戦略にも、資産運用の投資判断にも、また新たな意識改革が迫られています。

4.人類の英知を信じる

ウクライナ紛争はロシアの許されざる暴挙であり、嘆かわしく憤るべき過ちを繰り返す人類の所業ではありますが、他方で人類には過ちを反省し改める能力があり、さらには逆境を乗り越えて、次なる成長機会に転換させる英知も併せ持っていることを忘れてはなりません。

人は往々にして、目の前の事象を前提に未来の姿を予測しがちですが、今ある状況はいつも変化に対処してきたのが人類の歴史であり、その繰り返しが持続的な社会の発展と経済成長の源にもなり得るということなのです。長期投資家は人類の英知を信じる楽観に立脚して、眼前の光景から未来を読み込み、将来の成長の糧となる産業資本を忍耐強く供給する存在です。世界的な構造転換期となっている今まさに、本物の長期投資家の先見性と胆力が真価を問われているのです。(セゾン投信 NEWSLETTERより)