ゴルフ場でプレーをする度に「ゴルフ場利用税」を支払っていることにお気付きでしょうか。または、「一体何の税金なんだろう」と疑問に思ったことはありませんか。
ゴルフ場利用税は、プレー代金に課される消費税とは別に課税されており、これが二重課税に当たるのではないかと長年にわたって問題視されてきました。それにより、ゴルフ場利用税については、撤廃運動が行われて議論されてきました。
このコラムでは、ゴルフ場利用税の撤廃運動について詳しく知らない方向けに、ゴルフ場の利用税はどのような税金なのか、なぜ廃止されていないのかについて解説します。
ゴルフ場の利用税撤廃運動について詳しく知ることで、ゴルフというスポーツが不都合に課税を強いられてきた背景を知ることができます。
1.そもそもゴルフ場利用税とは?
ゴルフ場利用税とは、ゴルフ場でプレーをする際に、1日当たりの定額でかかる税金のことです。コースでプレーする際に課税されるため、ゴルフ練習場の場合はかかりません。
この税金は、ゴルフ場に訪れる利用客に対して都道府県が課税している「地方税」から始まり、現在は都道府県税として、税収の3割が都道府県の収入、残り7割が市区町村(特別区を含む)に交付されています。また、税額は都道府県ごとに等級とは別に金額が決められています。
この章では、ゴルフ場利用税施はいつから始まったのか、税額はいくらなのかを詳しく解説していきます。
1-1.ゴルフ場利用税の実施はいつから?
ゴルフ場利用税の前身は1954年(昭和29年)に「娯楽施設利用税」として始まり、その後に「ゴルフ場利用税」として制定されました。この「娯楽施設利用税」は、その名のとおり、ゴルフ場の他にも「ボウリング場」「パチンコ」「マージャン」「ビリヤード」などの施設が課税の対象でした。
娯楽施設に課税するという位置づけで始まった利用税でしたが、1989年(昭和64年)消費税の導入をきっかけに撤廃が決まります。しかし、なぜか「ゴルフ場」だけ課税撤廃とならず、代わりに「ゴルフ場利用税」と形を変えて存続することになりました。
1-2.ゴルフ場利用税の税額はいくら?
ゴルフ場利用税の税率は総務省によって定められており、標準税額は1日当たり800円で、制限税額は1,200円です。
実際の税額は都道府県が等級と金額を独自に決めています。また、等級はゴルフ場の規模や整備状況などによって決められており、等級ごとに税額が決められています。
例えば、東京都の利用税は1級(1,200円)~8級(400円)、大阪府は1級(1,200円)~7級(350円)、千葉県は(1,200円)~12級(350円)、神奈川県は1級(1,200円)~4級(400円)など、都道府県によって等級と金額が異なります。
東京都の利用税は以下の表のように定められています。
等級 | 税率 |
1級 | 1,200円 |
2級 | 1,100円 |
3級 | 1,000円 |
4級 | 900円 |
5級 | 800円 |
6級 | 600円 |
7級 | 500円 |
8級 | 400円 |
参照元:東京都主税局」
他の都道府県の利用税など「ゴルフ場の利用税」についてさらに詳しく知りたい方は、こちらのコラムも参考にしてみてください。
2.ゴルフ場利用税撤廃運動とは?
娯楽施設利用税として始まったゴルフ場利用税ですが、「日本ゴルフサミット会議」という団体によって撤廃運動が長年にわたって行われてきました。 この章では、ゴルフ場利用税の課税理由や廃止に向けた、現在に至るまでの撤廃運動を詳しく解説していきます。
2-1.日本ゴルフサミット会議16団体が撤廃活動を行っている
「日本ゴルフサミット会議」は、プレー料金に対してかかる「消費税」とは別に、都道府県別の等級に応じて「ゴルフ場利用税」が課税(併課)されることは、二重課税に当たるのではないかと主張し、完全廃止に向けて活動を行ってきました。
「日本ゴルフサミット会議」とは、ゴルフ界の関連団体16社(現在:15社)で結成された団体のことです。文部科学省、経済産業省、総務省といった関係省庁の各方面にゴルフ場利用税の撤廃運動を行っていますが、いまだに完全撤廃には至っていません。完全撤廃に至らない理由は課税理由が大きく関係しています。
2-2.ゴルフ場利用税の課税理由とは?
ゴルフ場利用税は「応益税」「ぜいたく税」「地方財源の確保」という3つの観点から課税されているといわれています。
- 「応益税」とは、ゴルフ場の開発や整備などにかかる費用は行政サービスという側面があり、その負担を実際に使用するゴルフ場利用者に負担してもらうための税収。
- 「ぜいたく税」とは、ゴルフ場の利用料は他のスポーツと比べて高額であるため、利用者には十分な担税力があるという考えによる税収。
- 「地方財源の確保」とは、税収の3割が都道府県の収入、7割がゴルフ場が存在する市区町村に交付されているが、現在では貴重な財源となっているため、必要不可欠であるという考えによる税収。
このことから、「娯楽施設利用税」という地方税から「ゴルフ場利用税」という都道府県税に名前を変えて実質存続することになった理由には、地方自治体がゴルフというスポーツからの税収に依存しているということが分かります。
2-3.ゴルフ場利用税の撤廃に838万人が署名
ゴルフ場利用税撤廃運動にも全く動きがなかったわけではありません。1999年(平成11年)にゴルフが国体の正式種目になったのをきっかけに、撤廃運動に動きがありました。
1998年(平成10年)から始まった署名活動について、2002年(平成14年)には838万人以上の署名を集めることができました。日本ゴルフサミット会議を中心として、ゴルファー一人ひとりがゴルフ場利用税に反対する姿勢を示してきました。
3.ゴルフ場利用税は廃止される?
ゴルフ場利用税は廃止には至っていないものの、日本ゴルフサミット会議の撤廃運動と838万人の署名活動の結果、非課税枠の導入がされて、減税されることが決まりました。
現在も、課税廃止推進派の文部科学省と、反対する総務省の税制の見直しに向けた議論が行われています。この章では、非課税枠導入の詳細とゴルフ場利用の今後について詳しく解説します。
3-1.平成15年より非課税枠が導入
日本ゴルフサミット会議の撤廃活動や838万人の署名が功を奏して、2002年(平成14年)に税政調査会において一部の非課税処置が決まり、翌年2003年(平成15年)に導入されました。導入された非課税枠の対象者は以下です。
- 障害者
- 18歳未満
- 70歳以上
非課税者の割合は2003年(平成15年)は4.65%、2018年(平成30年)は21.23%でした。非課税枠の導入は日本ゴルフサミット会議をはじめとする、関係団体やゴルファーが勝ち取った、勝利といえるでしょう。
参照元:一般社団法人|日本ゴルフ場経営者協会利用税の課税状況からみたゴルフ場数、延利用者数、利用税額等の推移
3-2.ゴルフ場利用税の廃止は今後どうなる?
ゴルフ場利用税の廃止については文部科学省が2013年(平成25年)より8年連続で廃止を要望しました。廃止案に反対するのは総務省です。
また、総務省は前述したとおり「地方財源の確保」の点で廃止するのであれば、代替財源を用意すべきであるという方針です。そこで、2020年(令和2年)に文部科学省は非課税措置の拡充要望を提出しました。
具体的には以下の対象者が挙げられます。
- 年齢30 歳未満の者
- 年齢65 歳以上の者
- 公式練習時の国体参加選手(※競技参加時についてはすでに措置済み。)
- オリンピックを含む国際競技大会出場選手
- 中央競技団体が主催・主管する、全国的なアマチュア競技会
この要望で認められたのは「公式練習時の国体参加選手」と「オリンピックを含む国際競技大会出場選手」のみで、年齢における非課税枠の拡大は認められませんでした。
また、2021年(令和3年)に文部科学省は、「ゴルフ場利用税の在り方を見直すことが必要」という要望を提出しました。要望理由を「スポーツの中で唯一、ゴルフにのみ課税されている状態であり、他のスポーツと同様に課税対象とすることなく、公平に行える環境を整えること」を目的としました。
文部科学省の要望は本来の「廃止案」から、ゴルフ場利用税の「非課税対象の拡大」「在り方の見直し」に譲歩しました。また、総務省が「廃止」ではなく「見直し」としてどれだけ税制の改正に歩み寄れるか、地方財源の代替をどう用意していくのかが、今後注目するべき点です。
4.ゴルフは注目される生涯スポーツ!
ゴルフは現在、老若男女を問わず注目を集めているスポーツです。
2016年(平成28年)にはリオデジャネイロ五輪からオリンピック競技として復活しました。少子高齢化が進む日本では、ゴルフは高齢者でもできる生涯スポーツとして人気があります。
最近では、コロナ過でも「密」にならないスポーツとして話題となっており、若い世代のゴルフ人口が急増しているというニュースもあります。また、シニア夫婦も安心して楽しめることから、ゴルフを旅の目的として楽しむ方々も増えました。
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おわりに
このコラムでは、ゴルフ場利用税の過程や、現在における撤廃運動について説明してきました。ゴルフ場利用税が地方自治体の貴重な財源という理由で、ゴルフ界の普及・発展の妨げの一つになっていることが理解できたと思います。
ゴルフというスポーツが注目されてきた今だからこそ、決して安くはないゴルフ場利用税の非課税枠拡大、在り方の見直しが進み、完全撤廃に近付いています。