日本の暦には暮らしに根付いた習わしとして、縁起が良いとされる吉日や、逆に縁起が悪いといわれる凶日があります。ニュースやSNSでも「開運日」などとして、耳にする機会もあるのではないでしょうか。
気にする、気にしないは人それぞれですが、人生の節目の行事や新しいことを始める方などにとっては、縁起の良い日を選ぶと背中を後押ししてくれるでしょう。
このコラムでは、暦の上で縁起が良いとされる日に、やって良いこと、逆にやってはいけないとされることについて解説します。
1.吉日とはどんなもの?
暦の中でも吉日と呼ばれる日は、何を意味する日なのでしょうか?こちらでは、吉日について詳しくご説明します。
1-1.吉日の由来は六曜
吉日は、一般的に「きちじつ」と読みますが、本来は「きつじつ」や「きちにち」などが正しい読み方です。吉日とは暦の上で決められた文字通り「縁起の良い日」を指します。
日の吉凶を占う「六曜(ろくよう)」は中国で「陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)」をもとに発展し、日本には鎌倉時代に入ってきたとされています。その後、江戸時代には一旦下火になり、明治になって復活したようです。
現代の暦に記載されている「先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口」は、鎌倉時代には「大安・留連・速喜・赤口・小吉・空亡」となっていました。
このような六曜や陰陽五行説、暦を12個に分けた「十干十二支(じっかんじゅうにし)」、1年間を24に区切る「二十四節気(にじゅうしせっき)」などを掛け合わせて縁起の良い日とされているのが吉日です。
1-2.年間に縁起の良い日はどのくらいある?
縁起の良い日とはどのくらいあるのでしょうか?実は細かく見ていけば、年に1度のものから週に1度ほどのものまで、例えば2023年のカレンダーを見ても年間にして70日以上もあるのです。
最近では、いくつかの吉日が重なった日を最強の開運日として、ここぞというときのために調べる方が多くなっています。
1-3.吉日の反対である不成就日とは?
縁起の良い日の反対に縁起が悪い日が、凶日(きょうび)です。
凶日の中でも「不成就日(ふじょうじゅび)」は何事も成就しない日といわれます。特に、結婚や開業、開店、契約など重要な行動には不向き。
また、不成就日が他の吉日と重なっている日には、吉日の効果が薄くなるといわれるので注意が必要です。
〈2022年11~12月の不成就日〉
11月 | 5日(土)、13日(日)、21日(月)、28日(月) |
12月 | 6日(火)、14日(水)、22日(木)、28日(水) |
〈2023年1~3月の不成就日〉
1月 | 5日(木)、13日(金)、21日(土)、24日(火) |
2月 | 1日(水)、9日(木)、17日(金)、21日(火) |
3月 | 1日(水)、9日(木)、17日(金)、23日(木)、31日(金) |
次に六曜でなじみの深い「仏滅(ぶつめつ)」は「仏も滅するほどの大凶の日」という意味があります。仏滅にお祝い事は避けたほうが良いでしょう。
何事にも悪い日だと思われがちですが、お寺に参拝したり、離れたい人と別れたりするには適するといわれます。例えば悪縁を切り、改めて環境を一新したいときなどには良い日なのです。
〈2022年11~12月の仏滅〉
11月 | 6日(日)、12日(土)、18日(金)、29日(火) |
12月 | 5日(月)、11日(日)、17日(土)、27日(火) |
〈2023年1~3月の仏滅〉
1月 | 2日(月)、8日(日)、14日(土)、20日(金)、25日(水)、31日(火) |
2月 | 6日(月)、12日(日)、18日(土)、22日(水)、28日(火) |
3月 | 6日(月)、12日(日)、18日(土)、24日(金)、30日(木) |
建築業界ではよく知られている「三隣亡(さんりんぼう)」もご紹介しましょう。三隣亡には、この日に家を建てると、火事で近隣の三軒をも焼き滅ぼしてしまうという恐ろしい言い伝えがあります。
そこで建築業界では、上棟式や地鎮祭などを三隣亡に行うことを避ける慣習があるのです。
〈2022年11~12月の三隣亡〉
11月 | 1日(火)、18日(金)、30日(水) |
12月 | 15日(木)、27日(火) |
〈2023年1~3月の三隣亡〉
1月 | 12日(木)、24日(火) |
2月 | 10日(金)、22日(水) |
3月 | 9日(木)、21日(火) |
何か計画をしている日程のカレンダーに、ご紹介した凶日が書かれていると気になる方もいるでしょう。もちろん日程が選べるものに関しては凶日を避けた方が無難かもしれません。
しかし、すでに決まったことや終わったことを悔やむのは得策とはいえません。過ぎたことは気にしないで前向きに考えたほうが、物事はうまく進むでしょう。
2.大安とは?やって良いこと・やってはいけないこと
「大安(たいあん・だいあん)」は、吉日といわれる日の中で、もっともなじみ深いものではないでしょうか?ここでは、大安について詳しくご紹介します。
大安について『大安の意味は?由来や行うと良いとされることを分かりやすく解説』でも詳しく解説しています。参考ください。
2-1.大安の意味とは
六曜のひとつの吉日で、「大いに安し」という意味を持ちます。六曜では一日を時間で区切って吉凶を分け、一日の中で悪い時間もあれば良い時間もあるのが通常の日です。
しかし、大安の日は、一日を通して良い日とされ、朝から晩まで吉なので、一日がかりのことをするのに向いています。
〈2022年11~12月の大安〉
11月 | 1日(火)、7日(月)、【13日(日)※】、19日(土)、24日(木)、30日(水) |
12月 | 【6日(火)※】、12日(月)、18日(日)、【28日(水)※】 |
〈2023年1~3月の大安〉
1月 | 3日(火)、9日(月)、15日(日)、【21日(土)※】、26日(木) |
2月 | 【1日(水)※】、7日(火)、13日(月)、19日(日)、23日(木) |
3月 | 【1日(水)※】、7日(火)、13日(月)、19日(日)、25日(土)、【31日(金)※】 |
※不成就日にもあたり、大安のパワーが打ち消されるといわれる日のため注意。
2-2.大安にやって良いこと
大安の日は基本的に何をやっても縁起が良い日だといわれています。特におすすめなのは、結婚式や引っ越しといった丸一日かかるようなイベントです。
おおよそ6日に一度という高い頻度の周期で訪れるため、日取りを選びやすい日でもあります。婚姻届や開業届を出すといった、大切なことをスタートする日としてもぴったりでしょう。
2-3.大安にやってはいけないこと
大安は「何をやっても良い日」とされていますが、逆にいうと「やってはいけないことが何もない日」とも読み取れるため、やってはいけないことは特にありません。
また、この日は一般に大吉だととらえられがちですが、「大いに安し」という言葉を解すると「特に害がない日」と解釈でき、実は小吉のような無難な日という説もあるのです。
3.一粒万倍日とは?やって良いこと・やってはいけないこと
宝くじ売り場などで目にすることがある「一粒万倍日(いちりゅうまんばいび)」。どうやらお金に関係がありそうな吉日ですが、どのような日なのでしょうか。
一粒万倍日について『一粒万倍日とは?2023年カレンダーと開運日にやると良いこと・悪いこと』でも詳しく解説しています。参考ください。
〈2022年11~12月の一粒万倍日〉
11月 | 1日(火)、4日(金)、16日(水)、17日(木)、【28日(月)※】、29日(火) |
12月 | 12日(月)、13日(火)、24日(土)、25日(日) |
〈2023年1~3月の一粒万倍日〉
1月 | 【5日(木)※】、6日(金)、9日(月)、18日(水)、【21日(土)※】、30日(月) |
2月 | 2日(木)、5日(日)、12日(日)、【17日(金)※】、24日(金) |
3月 | 【1日(水)※】、【9日(木)※】、16日(木)、21日(火)、28日(火) |
※不成就日にもあたり、一粒万倍日のパワーが打ち消されるといわれる日のため注意。
3-1.一粒万倍日の意味とは
一粒万倍日は、二十四節気と十干十二支の掛け合わせで決まります。「一粒のもみが、万倍もの稲穂を実らせる」という意味から「ひとつの行動が万倍もの結果となって返って来る」といわれています。
小さな種が大きく育つというイメージが分かりやすいでしょう。一粒万倍日は、月に4〜6日ほどあるため、思い立ったときにすぐ取り入れられる吉日でもあります。
3-2.一粒万倍日にやって良いこと
一粒万倍日は結婚式や開業はもちろん、種まきや新しい財布を買うなど何かをスタートするのに良い日です。
また、この日に事業に出資すると、成功し将来大きな利益となって返ってくると考えられています。最近では宝くじの購入にも良い日として知られるようになりました。一粒万倍日は広い意味でお金に関連することに適している日と考えて良いでしょう。
3-3.一粒万倍日にやってはいけないこと
一粒万倍日に注意が必要なこととしては、小さな種が大きく膨らむのは悪い行動や願いでも同じ作用がある点です。借金や物を借りる、人に恨まれるような行動には不向き。
なぜなら、後に大きく膨らみ自分に返ってきて苦労するとされるからです。マイナスな行動は避けた方が良い日といえるでしょう。
4.天赦日とは?やって良いこと・やってはいけないこと
大安や一粒万倍日よりも縁起が良いとされる日に「天赦日(てんしゃび)」があります。
〈2022年11~12月の天赦日〉
11月 | 7日(月) |
12月 | なし |
〈2023年1~3月の天赦日〉
1月 | 6(金)一粒万倍日とも重なる日 |
2月 | なし |
3月 | 21日(火)一粒万倍日とも重なる日 |
4-1.天赦日の意味とは
天赦日は、陰陽五行説と十干十二支の2つの思想から生まれた吉日です。「すべての神様が人々の罪を赦してくれる日」という意味があり、年に5〜6回ほどしかない希少な吉日。天赦日は大安よりも縁起の良い日とされて、最上の吉日といわれます。
4-2.天赦日にやって良いこと
天赦日は出発を意味することにも吉なので、新しいことにチャレンジするのに最適な日。特に婚姻に大吉日であり、結婚式、開業や転職はもちろん、財布を買うなど何かを始めるのに最高です。
近ごろでは、天赦日と一粒万倍日が重なる日は、運気向上のパワーがさらに強い日になるともいわれているため、ぜひチェックしたい吉日でしょう。
4-3.天赦日にやってはいけないこと
天赦日は、起業や転職には良い日ですが、事業の廃止や退職には不向きです。心機一転のための「リスタート(再出発)」というとらえ方もありますが、どちらかといえば「エンド(終了)」という意味のほうが強いため、避けたほうが無難でしょう。
5.寅の日とは?やって良いこと・やってはいけないこと
寅の日は「とらのひ」と読みます。勇ましいイメージの虎(寅)ですが、暦ではどのような意味を持つ日なのでしょうか。
寅の日について『寅の日は金運招来日!金運アップのためにすると良いことは?』でも詳しく解説しています。参考ください。
〈2022年11~12月の寅の日〉
11月 | 9日(水)、【21日(月)※】 |
12月 | 3日(土)、15日(木)、27日(火) |
〈2023年1~3月の寅の日〉
1月 | 8日(日)、20日(金) |
2月 | 【1日(水)※】、13日(月)、25日(土) |
3月 | 【9日(木)※】、21日(火) |
※は不成就日にもあたり、寅の日のパワーが打ち消されるといわれる日のため注意。
5-1.寅の日の意味とは
寅の日は、十干十二支をもとに決められているため、12日のサイクルであらわれる吉日です。寅は毛並みが黄金色でお金をイメージすることから、金運を呼ぶといわれています。
さらに中国では、寅は「千里の道を行き、また戻ってくる動物」とされており、戻ってくることを望む出来事に良い日とされているのです。
5-2.寅の日にやって良いこと
「出ていったお金がすぐ戻る」ということから、住宅ローン契約の締結や車の購入といった大きな買い物をするのにも良いといわれています。加えて、寅の日に買った財布を使うと、出て行ったお金が戻ってくる効果もあるとか。また、「無事に戻る」という意味から、旅行にもぴったりです。
5-3.寅の日にやってはいけないこと
寅の日は基本的に縁起の良い日ですが、すぐに戻ってくると困るものに関しては避けるべきとの言い伝えがあります。例えば、結婚(出戻ることから離婚を連想する)や、お葬式(死者がさまよって戻ってきてしまう)など、寅の日を避けることもあるため地域の風習を確認しておくと安心です。
6.巳の日とは?やって良いこと・やってはいけないこと
どこか神秘的な雰囲気のあるへび(巳)をあらわす巳の日(みのひ)は、どのようないわれがある日なのでしょうか。
〈2022年11~12月の巳の日〉
11月 | 12日(土)、24日(木) |
12月 | 【6日(火)※】、18日(日)、30日(金) |
〈2023年1~3月の巳の日〉
1月 | 11日(水)、23日(月) |
2月 | 4日(土)、16日(木)、28日(火) |
3月 | 12日(日)、24日(金) |
※は不成就日にもあたり、巳の日のパワーが打ち消されるといわれる日のため注意。
6-1.巳の日の意味とは
巳の日は、十干十二支の巳(へび)に由来します。古来からへびは神様の使いとされ、なかでも白へびは七福神の女神、弁財天の使いとされてきました。七福神の中で唯一女性の神様である弁財天は芸術や幸福、財産の神様として信仰されています。そこから巳の日は芸能運や、金運が上がる日とされているのです。
6-2.巳の日にやって良いこと
巳の日には、銀行口座の開設や、財布の購入などがおすすめ。財布を購入するのも、買った財布を使い始めるのにも良い日です。臨時収入も期待できるので、宝くじを購入して運試しするのも良いでしょう。
また「銭洗い」といって、巳の日に「銭洗い神社」と呼ばれる神社で「銭を清める(お金を洗う)と福銭になって吉」との言い伝えがあります。銭洗い神社では、東京の「小綱神社」や鎌倉市の「銭洗弁財天宇賀福神社」などが有名です。
6-3.巳の日にやってはいけないこと
巳の日にやらない方が良いことはあまりありません。ただ、結婚式や入籍には弁財天が嫉妬してしまうという意味合いから、不向きとする説もあるようです。
7.己巳の日とは?やって良いこと・やってはいけないこと
「己巳の日(つちのとみのひ)」は、前述した巳の日をさらにパワーアップした吉日といわれています。
〈2022年11~12月の己巳の日〉
11月 | 12日(土) |
12月 | なし |
〈2023年1~3月の己巳の日〉
1月 | 11日(水) |
2月 | なし |
3月 | 12日(日) |
7-1.己巳の日の意味とは
「巳の日」の中から、十干十二支の「己(つちのと)」と重なる日を「己巳の日」といいます。己巳の日(つちのとみのひ)は1年に6回しかありません。
己巳の日は、巳の日の中でも特に金運や財運を上げるのに良い日。60日に一度だけ訪れる己巳の日は、巳の日よりも希少な日のため特別な開運日とされています。
7-2.己巳の日にやって良いこと
巳の日よりもさらに強力な金運アップを期待するときは、「己巳の日」がおすすめです。
己巳の日にやると良いことは、巳の日と同じで金運や財運、芸能に関係することです。
己巳の日には、弁財天を祀っている代表的な神社仏閣である日本三大弁天(江島神社、宝厳寺、大願寺/厳島神社)で縁日を行っています。弁財天を祀る神社やお寺はこの他にも各地にあるので、参拝してお願いごとをするのも良いでしょう。
7-3.己巳の日にやってはいけないこと
己巳の日にやってはいけないことは、巳の日と同様で結婚式や入籍には不向きといわれる他は特にありません。
8.鬼宿日とは?やって良いこと・やってはいけないこと
ここでは、少し怖いイメージがある鬼という字が入る「鬼宿日(きしゅくにち)」についてご紹介します。
〈2022年11~12月の鬼宿日〉
11月 | 11日(金) |
12月 | 9日(金) |
〈2023年1~3月の鬼宿日〉
1月 | 6日(金) |
2月 | 3日(金) |
3月 | 31日(金) |
8-1.鬼宿日の意味とは?
鬼宿日は「二十八宿(にじゅうはっしゅく)」といわれる天文学をもとにした暦の「鬼宿」にあたる日のことです。鬼宿日はお釈迦様が生まれた日としても知られています。鬼宿日は旧暦の15日と決まっており、月に1回のペースでやってきます。
鬼とついていることから悪い日なのかな?と思われがちな「鬼宿日」は、意外にも、婚姻以外であれば何を行っても良い吉日。
鬼宿日の「宿」とは家をあらわしており「鬼が家にいる日」を意味します。物事の邪魔をする鬼が外を出歩かないため、物事がスムーズに行える日とされるのです。
8-2.鬼宿日にやって良いこと
鬼宿日は婚姻以外であれば、宝くじの購入や財布の新調、引っ越しなどさまざまなことを行う日として好まれています。お釈迦様が生まれた日であることから、特に長寿を祝う日としても最適。
また、お釈迦様を祀るお寺を参拝するにも良い日です。この日をひとつのきっかけとして座禅や瞑想といった己と向き合う機会を持つのも良いかもしれません。
8-3.鬼宿日にやってはいけないこと
に吉とされる鬼宿日ですが、結婚式や入籍などの婚姻関係には向かないといわれます。この日は鬼が家にいるため、お嫁さんが新しい家に入ると鬼と鉢合わせして良くないとされるからです。
おわりに
吉日や凶日というものは、日常では気にしない方でも、いざ大事なことを行うとなるとやはり気になるものです。新しく物事を始めるときは将来への期待と同じように、緊張や不安も伴うからでしょう。
このコラムでご紹介した吉日を参考にして、少しでも前向きな気持ちにさせてくれるような日を選んでいただけたら幸いです。