住宅の外壁に使われてきたモルタル。壁をさまざまな風合いや色合いに仕上げられるのが特徴です。一方で劣化しやすい面もあり、放置するとトラブルになる可能性もあるでしょう。今回は、モルタル外壁の特徴やメンテナンス費用の目安などについて解説します。モルタル外壁の住宅にお住まいの方や、外壁の汚れや劣化が気になっている方は、ぜひ参考にしてみてください。
- 主に4種類の仕上げ工法で、さまざまな模様や風合いを表現できること
- 熱を含みにくいため、涼しい家づくりが期待でき、趣ある質感を楽しめること
- 一方でひび割れなどが起こりやすく、定期的なメンテナンスが必要となること
- 塗料によってメンテナンスにかかる費用や耐用年数が異なること


モルタルとは?特徴と普及した時期を解説

住宅の外壁に使われるモルタルは、どのような素材なのでしょうか。ここではモルタルの特徴と、普及した時期について解説します。
モルタルの特徴
モルタルとは、セメントと砂を1対3の割合で混ぜ、水を練り合わせて作る建築材料です。使用する砂は地域によって川砂や山砂などさまざまで、産地によって色や質も異なります。
モルタル外壁の施工では、まず透湿防水シートの上にラス下地板を張り、防水紙をかぶせます。次にラスと呼ばれる金属製の網を張り、その上からモルタルを塗り付けていく工程です。塗りの際にはコテと呼ばれる道具を使い、平たく仕上げたり模様を付けたりすることで、さまざまな外壁を表現できます。
モルタル以外の外壁材(サイディングボードやタイルなど)は、建物の骨組みにボードを貼り付け、隙間をシーリング材で埋める必要があります。一方でモルタルは、素材を貼り合わせる必要がなく、壁面全体を塗り固めるため、継ぎ目がなくすっきりとした印象に仕上がるのが特徴です。
モルタルが普及したのはいつ頃?
1923年に発生した関東大震災では、東京都心部で大規模な火災が起こり、当時主流であった白壁や漆喰の建物が多く焼失しました。その反省を踏まえ、不燃性のモルタルが注目され普及したと考えられています。この復興の際、東京都心部ではモルタル外壁を用いた建築が多く建てられました。全国的に普及したのは1950年頃といわれています。
モルタル外壁の4つの仕上げ方
モルタル外壁の仕上げ方は、大きく以下4種類に分けられます。
- リシン
- スタッコ
- 左官仕上げ
- 吹き付けタイル
それぞれの特徴を見ていきましょう。
リシン
リシンは1970~1980年代に、主にモルタル壁の仕上げ材として使われていた工法です。ザラザラとした細かな模様に仕上がるのが特徴で、アクリルや着色料、セメント、樹脂、骨材などを混ぜ合わせ、スプレーのように吹き付けて施工します。透湿性や通気性に優れていますが、スプレーによる薄塗膜のため耐久性・伸縮性が低く、ひび割れしやすい面もあります。
スタッコ
スタッコは、石灰やセメント、砂、水などを混ぜた塗料を吹き付けて仕上げる工法で、表面に凹凸ができる分、重厚感のある外壁に仕上がります。しかし凹凸部分が汚れやすく、手入れもしづらい点がデメリットです。塗り替えなどのメンテナンス時には、一度しっかりと洗浄・汚れ落としを行わないと新しい塗装が定着しにくいことに注意が必要です。
左官仕上げ
左官仕上げは、コテを使って表面を仕上げる伝統的な工法で、職人の繊細な技術によって趣のある外観を生み出せる点が特徴です。デザインのバリエーションも豊富で、アンティーク調やシック調など、さまざまな雰囲気を表現することが可能です。
また、独特の質感は和風建築との相性も良く、和室の内装として用いられることもあります。仕上がりの美しさは職人の技術に大きく左右されるため、熟練の技が求められる点も左官仕上げの魅力の一つです。
吹き付けタイル
吹き付けタイルは、モルタル外壁にタイル材を薄く吹き付けて仕上げる工法で、陶器のような上品な質感が得られるのが特徴です。スプレーの先端を調整することで、模様となる粒の大きさを変えることができ、仕上がりに多彩な表情を加えられます。
さらに、色合いやツヤ感の調整も可能なため、デザインのバリエーションが豊富で、住まいの外観に個性を持たせたい場合にも適しています。


モルタル外壁の5つのメリット
モルタル外壁には、以下のようなメリットがあります。
- 不燃性に優れていて安全である
- 質感が良い
- 好みの模様やパターンが選べる
- 壁表面が熱くなりにくい
- シーリング補強が必要ない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
不燃性に優れていて安全である

モルタルは不燃性に優れた外壁材として、国土交通省の不燃材料に定められています。住宅が密集する地域で万が一火災が発生した場合でも、延焼を食い止める効果が期待できます。
質感が良く、表情豊か
モルタルならではの風合いは、木材やサイディング材では表現しづらい独自の魅力があります。仕上げ方や色合いの選択によって、柔らかくナチュラルな印象からラグジュアリーな雰囲気まで、幅広い演出が可能です。
好みの模様やパターンが選べる
ざらつきや凹凸、コテむら、タイル調など、仕上げ方次第で多彩な表情を楽しめるのもモルタル外壁の特徴です。自由度が高く、建物の外観を自分好みにデザインできる点は大きな魅力といえるでしょう。
熱を伝えにくく快適
モルタルは熱を含みにくいため、夏場でも外壁が過剰に熱を持ちにくいという特性があります。断熱材と併用することで、室内の温度上昇を抑え、年間を通じて快適な住環境づくりに寄与します。
シーリング補強が不要でメンテナンス性が高い
モルタル外壁は継ぎ目のない一体施工が可能なため、ボードを貼り付けるサイディング外壁のような水の侵入を防ぐためのシーリング材が不要です。これにより、経年劣化による打ち替え工事の必要がなく、長期的なメンテナンスコストの軽減が期待できます。また、継ぎ目からの雨水侵入リスクを抑えられ、統一感のある美しい外観を保てるのもメリットです。
モルタル外壁の4つのデメリット
メリットが多いモルタル外壁ですが、一方で以下のようなデメリットもあります。
- 熟練した職人による作業が必要
- 汚れが目立つ
- ひび割れを起こしやすい
- 施工のコストが高い
それぞれ確認してみましょう。
熟練した職人による施工が必要
モルタル外壁は、材料の水分吸収性や気候の影響を受けやすく、仕上がりに差が出やすい素材です。そのため、技術と経験を持つ熟練した職人による作業が不可欠です。施工品質にバラつきが生じやすいため、信頼できる施工業者の選定が重要になります。
汚れが目立ちやすい
モルタル外壁は、表面を凹凸に仕上げが多いため、ホコリや汚れが溜まりやすい傾向があります。特に、明るい色や淡い色を使用している場合は、汚れが目立ちやすくなります。日常的な清掃やこまめなメンテナンスが求められます。
ひび割れ(クラック)が起こしやすい
乾燥収縮、地震・台風などの衝撃、気温差による膨張・収縮の影響を受けやすく、モルタル外壁は時間の経過とともにひび割れ(クラック)が発生しやすくなります。幅0.3mm以下の小さなひび割れ(ヘアークラック)であれば構造上すぐに問題となるケースは少ないものの、放置すると雨水が侵入し、内部の木材を腐食させる恐れがあります。また、一度ひびが入ると、継ぎ目のない構造上、壁面全体に広がる可能性があるため、早めの補修が大切です。
施工のコストが高くなりがち
モルタル外壁の工程は複雑で、施工にも時間がかかるため、初期の人件費や材料費が高くなる傾向があります。さらに、経年劣化に伴って塗り替えや補修が定期的に必要となるため、長期的にもコストがかかる点は注意が必要です。ただし、塗り替えのタイミングで外壁の色や質感を変えることができ、意匠性の高いリフォームも可能です。
モルタル外壁とサイディングの比較

住宅の外壁を選ぶ際は、デザイン性だけでなく、耐久性やメンテナンス性も重要です。以下の表を参考に、モルタル外壁とサイディングを比較してみましょう。
項目 | モルタル外壁 | サイディング |
---|---|---|
デザイン性 | ・継ぎ目がなくすっきりした印象 ・自由度が高く、好みの模様に仕上げることが可能 | ・工場生産された規格品を使用するため自由度は制限される ・デザインのバリエーションは豊富 ・継ぎ目がある |
耐久性 | ひび割れが発生しやすい | 品質が安定しており、耐久性が高い |
初期コスト | 職人の技術に依存するため高額になりやすい | 価格が安定しており、初期コストを抑えやすい |
メンテナンス頻度 | ・新築:5〜10年 ・再塗装:10〜15年 (塗料によって異なる) | 7〜20年 (種類によって異なる) ただし、目地のコーキングは5〜10年でのメンテナンスが必要 |
メンテナンスコスト | ・60万〜120万円ほど ・部分補修だけであれば数万円程度 (住宅の大きさや塗料の種類や補修内容によって異なる) | ・70万〜300万円ほど ・部分補修であれば20万円前後 (住宅の大きさやサイディングの種類、工事内容によって異なる) |
断熱性能 | 熱を含みにくく、断熱材と併用することで断熱性能を高められる | 断熱性能に優れているが、サイディングの種類によって差がある |
雨漏りリスク | ひび割れによる雨漏りのリスクがある | 継ぎ目のシーリング劣化による雨漏りリスクがある |
モルタル外壁の劣化により現れやすい現象
モルタル外壁が劣化すると、以下のような症状が現れやすくなります。素人目でも比較的わかりやすいので、定期的にチェックしてみましょう。
- ひび割れが起こる
- 壁に触ると粉が付着する(チョーキング)
- エフロレッセンス(白い汚れ)が発生する
- 雨だれなどで汚れる
- 塗膜が浮き上がったり剥がれたりする
- コケ・藻が発生する
ひび割れ(クラック)が発生しやすい

モルタルは、経年劣化や乾燥収縮、地震・台風などの揺れ、気温変化による膨張収縮の影響を受けやすく、ひび割れ(クラック)が発生しやすい素材です。クラックには大きく2種類があり、以下のように判別されます。
- ヘアークラック(幅0.3mm以下・深さ4mm以下):構造上の問題は少ないものの、放置すると雨水が侵入して内部の木材腐食につながる恐れがあります。
- 構造クラック(幅0.3mm以上):雨水の侵入リスクが高く、早急な補修が必要です。
簡易的なチェック方法としては、定規やカードを当ててひびの幅を測定したり、爪先で深さを確認することが推奨されます。
壁に触ると粉が付着する
紫外線によって塗料の樹脂が劣化すると、防水機能が失われ、壁に触れた際に白い粉が手につく「チョーキング現象」が発生します。これは塗膜の劣化を示すサインで、放置すると雨水が浸透し、腐食やカビの原因になる可能性があります。早期の塗り替えを検討し、専門業者による診断を受けるのが望ましいです。
エフロレッセンス(白い汚れ)が発生する
モルタル内のカルシウム成分が雨水に溶け出し、外壁表面に白い結晶状の汚れが浮き出る現象を「エフロレッセンス」と呼びます。見た目が悪いだけでなく、放置すると壁の劣化を早める可能性があります。軽度の場合はブラシで除去できますが、広範囲に及ぶ場合は専門業者への相談が必要です。
雨だれによる汚れが目立つ
外壁や屋根に付着したほこりや汚染物質が雨で流され、筋状の「雨だれ汚れ」となって残る場合があります。建物の耐久性には大きな影響はありませんが、美観を損ないます。再塗装時には、汚れが付着しにくい「低汚染塗料」の使用が推奨されます。
塗膜が浮きや剥がれが起こる
経年劣化により塗膜の付着力が低下すると、塗膜が素地から浮きあがってしまったり、剥がれてしまったりするケースがあります。剥がれた部分から雨水が浸水することで、内部構造の腐食リスクが高まります。それらの異常が見られたら、なるべく早く塗装メンテナンスを行いましょう。
コケ・藻が発生しやすい
防水機能が低下すると、壁面に水分が残りやすくなり、コケや藻が発生しやすくなります。不衛生に見えるだけでなく、素材自体の劣化やシロアリ被害の原因にもなりかねません。定期的な点検と適切なメンテナンスが必要です。
モルタル外壁は定期的なメンテナンスが重要
モルタル外壁の耐用年数は一般的に20〜40年といわれていますが、実際の寿命は使用環境や施工状態によって大きく左右されます。紫外線や雨風などの自然環境によって劣化が進行しやすいため、劣化症状が見られなくても定期的な点検とメンテナンスを行うことが大切です。
劣化を放置すると、ひび割れからの雨水侵入や塗膜の剥がれによる内部腐食など、建物全体に悪影響を及ぼすリスクがあります。
点検・メンテナンスの時期の目安

モルタル外壁は、3年に一度を目安に点検を行うのが理想です。とくに以下のような劣化症状が見られた場合は、早急な対応が求められます。
- ひび割れ(クラック)
- チョーキング(白い粉の付着)
- 塗膜の浮き・剥がれ
- コケや藻の発生
劣化が軽微なうちに対処することで、補修コストを抑えつつ外観と防水性を維持できます。
モルタル外壁のメンテナンス方法
モルタル外壁の主なメンテナンス方法には「塗り替え」と「張り替え」があります。ここでは、最も一般的な塗り替えについて紹介します。
モルタル外壁の塗り替え
塗り替えは、外壁の防水性や美観を回復するための基本的なリフォーム方法です。使用する塗料によって、費用や耐用年数が大きく異なります。
機能性のある塗料(防汚・遮熱・防カビなど)も登場しており、単なる見た目の修復だけでなく、住環境の快適性を高めることも可能です。
代表的な塗料と特徴(※120㎡あたりの費用相場)
塗料名 | 耐用年数 | 相場目安 | 特徴 |
---|---|---|---|
ウレタン | 約5~7年 | 60万~90万円 | 低価格だが耐用年数が短い |
シリコン | 約7~10年 | 70万~100万円 | 塗膜が硬く、汚れがつきにくい |
ラジカル | 約12~15年 | 80万~110万円 | シリコンより耐候性が高い |
フッ素 | 約15年~ | 80万~120万円 | 高価だが耐用年数が長い |
※選定にあたっては建物の立地条件や目的に応じて最適な塗料を選ぶことが大切です。
モルタル外壁の張り替え
外壁全体の劣化が激しい場合や、耐震性の向上を図りたい場合には、「張り替え工事」が選択肢になります。モルタルを撤去し、新たに下地を組み直したうえで外壁材を張り替える方法で、建物そのものの寿命を延ばす効果も期待できます。
ただし、張り替えには撤去費用や下地工事費用が発生し、費用は概ね200万〜300万円、場合によってはそれ以上かかるのが一般的です。
コストが高いため、ひび割れや塗膜の劣化といった軽度の劣化であれば塗り替えや部分補修で十分対応可能なケースもあります。
また、張り替えによって外観を一新できるため、外壁デザインを大幅に変更したい方にも向いています。
モルタルの日常的な清掃方法
定期的な清掃は、モルタル外壁の劣化を防ぎ、美観を維持するために効果的です。月に1回程度の頻度で、やさしく汚れを落とすのがおすすめです。
清掃のポイント
- 使用道具:柔らかいブラシやスポンジ(表面を傷つけないもの)
- 方法:水を含ませてやさしくこすれば、軽い汚れは十分に落とせます
- 専用洗剤:落ちにくい汚れには、ホームセンターなどで入手可能な洗剤を使用(※必ず目立たない箇所で試してから)
※高圧洗浄機を使用する際は注意が必要です。ひび割れや塗膜の劣化がある箇所に強い水圧を当てると、劣化を促進させてしまうことがあります。外壁の状態が気になる場合は、専門業者に相談するのが安心です。
DIYによるモルタル補修のメリット・デメリット
モルタル外壁の補修は、軽微な劣化であればDIYでも対応可能です。特に、幅0.3mm以下の「ヘアークラック」など、小さなひび割れであれば、補修キットを使ってコストを抑えることが可能です。
DIYのメリット
- 補修費用を抑えられる
- 軽度な劣化であれば自分でも対応できる
DIYのデメリット
- 技術不足により不十分な補修になると、雨水侵入や劣化の進行を招くリスクあり
- 幅0.3mm以上のクラックや広範囲の劣化は、専門業者への依頼が安心
自分の技術と劣化の程度を適切に判断し、無理にDIYで済ませようとせず、必要に応じてプロに依頼することが長持ちのコツです。
リフォームの支払いは「セゾンのリフォームローン」がおすすめ!

劣化に伴い、塗り替えや張り替えが必要なモルタル外壁のリフォームには、「セゾンのリフォームローン」をおすすめします。来店不要でWEBから手続きを進められるため、忙しい方や近くに店舗がない方でも申し込みが可能です。担保や保証人不要で利用できるのも魅力といえるでしょう。定期的なメンテナンスなどの出費にお困りの方は、ぜひ検討してみてください。


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おわりに
趣のある風合いや落ち着いた色合いが魅力のモルタル外壁は、昭和の時代から長く親しまれてきた外壁材のひとつです。現在でも左官仕上げをはじめとした表現力の高さから、高級感あふれる外観を演出できる建材として根強い人気があります。
一方で、モルタル外壁は経年とともにひび割れやチョーキングといった劣化が避けられないため、定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。美しい外観と快適な住環境を長く維持するためにも、早めの対応を心がけ、劣化を未然に防ぐことが大切です。
住まいを長持ちさせるための第一歩として、日々のケアと適切なメンテナンス計画を立ててみてはいかがでしょうか。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。