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出汁の専門家、茅乃舎が指南。出汁の種類を知って使い分けを楽しもう

出汁の専門家、茅乃舎が指南。出汁の種類を知って使い分けを楽しもう
岩根 和史

監修者

岩根 和史

日本料理ひと筋で料理人歴35年。料亭や割烹などで腕を磨き、会席料理店の料理長に就任。和食、そして会席料理の真髄を究める。その後、ホテルの日本料理店の料理長として従事。2024年より「茅乃舎だし」など和風調味料を販売する明治26年創業の久原本家グループの統括料理長として、東京ミッドタウンの『茅乃舎だしおでん』の立上げに携わるなど、多方面で活躍している。『茅乃舎』は、『久原本家』が手掛ける、素材の良さを引き出した調味料・食品ブランド。

料理には正解がないといわれますが、どういう出汁を使っていいかわからない、本当にこのつくり方であっているのかわからないなど、出汁に対して不安に思う方もいるのではないでしょうか。

そこで『茅乃舎』でおなじみ、久原本家グループの統括料理長の岩根和史さんに、出汁についての定義や使い分けなど、出汁にまつわるお話を伺いました。

出汁とは?

出汁とは?
画像提供:茅乃舎

例えば味噌汁をつくる際、大根と油揚げを入れて煮て味噌をとかせば、それなりに美味しい味に仕上がります。ただそれだけでは味が弱いので、出汁でうま味を付け足します。さまざまな出汁を使って相乗効果でうま味を上げていくのは、料理人の技術です。より美味しい、より価値のあるものを食べたい、というときに簡単にできるという点が家庭における出汁のあり方といえるでしょう。

出汁の種類は無限にある

かつお、昆布、にぼしといった代表的な出汁はある程度決まってはいますが、出汁は乾燥した食材からしか抽出できないものではありません。

例えば人参の皮を煮出せば人参出汁ができあがります。そう考えると出汁の種類は食材の数だけあり、ほぼ無限にあるといえそうです。基本的に生で食べて美味しいものは出汁に向いています。

出汁の健康効果にも注目を

料理の味を引き立てるだけでなく、今あらためて出汁に注目したい理由は他にもあります。かつお出汁はイノシン酸、昆布出汁はグルタミン酸といったうま味成分が含まれており、さまざまな健康効果も期待されているからです。

茅乃舎では大阪大学大学院医学系研究会などと共同で、ハーバード大学の研究チームが開発した「Teaching Kitchen Collaborative」という肥満・糖尿病治療プログラムの日本版「Teaching Kitchen プログラム」を構築しています。出汁を活用することで、食の満足度を維持しつつ塩分量を減らし、血圧や内臓脂肪の減少効果など、生活習慣病に役立つ効果が実証されています。

出汁の使い分けの考え方

出汁の使い分けの考え方
画像提供:茅乃舎

具材たっぷりの鍋のつゆは、それだけで色々な素材の出汁といえます。私たちは料理の中で自然に出汁を取っていて、いわば出汁は水のようなもの。あくまで料理の土台です。ですからこの料理にはこの出汁を使わないといけないというルールは一切ありません。出汁の使い方には正解がなく、間違いもないのです。

定番出汁の特性を知る

つくりたい料理に好きな出汁を使えばいいのですが、出汁の特性を知ることで、組み合わせはある程度決まってきます。ちなみに料理人は、食材を変色させたくない、食材の味を引き立てるためにどの出汁が邪魔しないかなどの理由で出汁を使い分けます。

定番の出汁の特性を覚えておきましょう。

  • かつお出汁…香りが強い。かつおの身だけを使用しているので雑味がなく、骨まで使うにぼし出汁のような力強さはないが、上品な味
  • 昆布出汁…香りがあるものの、主張しすぎない。コクや味に厚みが欲しいときに使う。また昆布と塩でつくる出汁は、野菜の色を変色させない
  • にぼし出汁…雑節の部類になり、主役になる味。うどんやそば、ラーメン、味噌汁など雑味が生きる料理との相性が良い

和食は引き算の料理

洋食や中華は“足し算の料理”、和食は“引き算の料理”とよくいわれます。

美味しいソースをかけるという料理文化の洋食や中華料理に対して、和食の場合は、かつおと昆布といりこの合わせ出汁が美味しいから使うというよりも、その素材を一番美味しく食べるために、かつお出汁はいらない、いりこ出汁はいらないというように引いていく考え方です。

地域別の出汁の違い

地域別の出汁の違い
画像提供:茅乃舎

出汁文化が全国津々浦々に根付いていますが、出汁の取り方や味に大きな違いはないようです。ただ地域によって使う醤油や味噌が違うので、そういう調味料と相性のいい出汁が使われています。特にお雑煮は、地域別の味の違いがわかりやすい料理のひとつです。

出汁を効かせた各地域のお雑煮

青森「椎茸・焼きあご」古代雑煮ともいわれる青森県の「けの汁」は、椎茸とあご出汁に、津軽の赤味噌で仕立てられています。
能登「焼きあご・昆布」東西の中間地にある石川県にはさまざまな出汁を使ったお雑煮があります。あご出汁と昆布出汁の合わせ出汁に醤油を加えた岩海苔のお雑煮は、能登半島で親しまれています。
関東「かつお・昆布・鶏」関東風雑煮とも呼ばれる江戸雑煮は、3種の出汁が使用された醤油味です。
関西「昆布」京都や奈良など関西では、昆布出汁に白味噌を合わせた京風雑煮が定番です。
博多「焼きあご」九州はあご出汁文化といわれます。博多雑煮はあご出汁に醤油を足し、具材はブリなどが添えられています。
出典:お雑煮という奇跡2025

ちなみに全国にある「茅乃舎」の店舗では、その地域でしか手に入らない特別な地域限定出汁が用意されています。

美味しい出汁づくりのポイント

美味しい出汁づくりのポイント

美味しい料理には美味しい出汁が使われています。出汁をとる際に特に意識したいのが、沸騰して取った方がいい出汁か、沸騰させないで取ったほうがいい出汁か。美味しい出汁を取るために把握しておきたい一番のポイントです。

かつお出汁は沸騰させない!

かつお出汁の場合は水を沸かして、温度を少し下げ、そこにかつお節を入れます。目安としてはかつお節が沈んだらこします。

薄いかつお節を長時間煮込み続けると、本来の美味しい要素がなくなります。おそばやうどんなどと相性が良い厚削りのかつお出汁は、沸かしながら取ったほうが、生臭さが消えて美味しく取れるといわれています。

昆布出汁は沸騰直前!

昆布の美味しさを引き出したい場合は一晩水に浸けておき、昆布水をつくります。火にかけて沸騰する直前に、昆布を引き抜きます。その後に沸騰させると昆布の雑味が消え、すっきりした昆布出汁が完成します。

また出汁を取ったあとの昆布は捨てません。佃煮や松前漬に使用しましょう。

保管方法

素の出汁は味が落ちるのが早いです。かつお出汁はその場で使い切るようにしましょう。余ってしまった出汁は醤油やみりんなど調味料を足します。味を入れると傷みにくくなり、冷蔵庫で2~3日保存できます。

茅乃舎の出汁パックと使い方

茅乃舎の出汁パックと使い方
画像提供:茅乃舎

自分で出汁をひく時間がないときなどに活用したいのが出汁パックです。茅乃舎の出汁パックは、国産の厳選素材を使用した、素材を際立たせるためのお出汁です。食事やライフスタイルに合わせて好みの出汁パックを使い分けしてみましょう。

茅乃舎でおすすめの出汁

茅乃舎だし 8g×30パック入 2,268円

茅乃舎でおすすめの出汁_茅乃舎だし

茅乃舎だし(だしパック30袋入)|茅乃舎(かやのや)|久原本家通販サイト(公式)

みそ汁から煮物まで、さまざまな和食に活躍する茅乃舎の大定番。焼きあご、かつお節、うるめいわし、真昆布などを粉末にした本格的和風だし。

簡単アレンジ…(ごはんを炊く前にひとパックを投入。風味豊かなご飯が炊きあがります。付け合わせの大根おろしなどに袋を破った出汁を加えて、だしおろしに。いつもの味にひと工夫を)

野菜だし 8g×24パック入 2,268円

茅乃舎でおすすめの出汁_野菜だし

野菜だし(8g×24袋入)|茅乃舎(かやのや)|久原本家通販サイト(公式)

玉ねぎ、にんにく、セロリ、人参、キャベツといった5種の国産野菜を使用。甘みのある玉ねぎと香りの良い玉ねぎを掛け合わせ、豊かな甘みとコク、香ばしい風味が特徴。洋食のアレンジの幅が広がる。

簡単アレンジ…(ペペロンチーノなどパスタアレンジに重宝。袋を破った野菜だしを加えて甘みとコクをプラス)

鶏だし 8g×18パック入 2,268円

茅乃舎でおすすめの出汁_鶏だし

鶏だし|茅乃舎(かやのや)|久原本家通販サイト(公式)

国産の燻した鶏削り節を使い、そのうま味にほんのり醤油を効かせた鶏だし。味や香りにクセがないので、和食はもちろん、中華料理にもなじむ。

簡単アレンジ…(香味野菜を使っていないので素材本来の美味しさを引き立てる。人気メニューは鶏のから揚げ。味をしみ込ませるように出汁をなじませて)

黄金比のだし 8g×20パック入 2,268円(通販限定)

茅乃舎でおすすめの出汁_黄金比のだし

【通販限定】黄金比のだし|茅乃舎(かやのや)|久原本家通販サイト(公式)

焼きあごとあご煮干し、さらにかつお節、真昆布、干し椎茸でうまみの黄金比を目指した出汁。下味を最小限に抑えており、好みの調味料で味付けができる。

簡単アレンジ…(濃縮したうま味を実感できるのが、シンプルなだし巻き卵。材料は煮出した黄金比のだし、卵、片栗粉だけ)

<出汁パック以外にも…アレンジ自在のスティックタイプの出汁スープ>

和風だしスープ 10袋 1,069円

<出汁パック以外にも…アレンジ自在のスティックタイプの出汁スープ>

和風だしスープ(10袋入)|茅乃舎(かやのや)|久原本家通販サイト(公式)

焼きあご、かつお節、煮干し、帆立、昆布を合わせた飲む和風出汁。スティックタイプで携帯にも便利。抹茶味の和風出汁スープも新登場。

簡単アレンジ…(汗をかきやすい夏場はミネラル不足になりがち。夏場は冷たい出汁スープで水分補給をすれば熱中症対策にも)

出汁パックの煮出し方

出汁パックは弱火で煮出すと上品な味わいになり、強火で煮出すと濃いめの味に仕上がります。

●基本出汁

<材料>出汁パック1袋、水400ml

<おすすめ料理>味噌汁、お吸物、茶碗蒸しなど、出汁の汁まで食べる料理に使用

●濃い出汁

<材料>出汁パック2袋、水500ml

<おすすめ料理>煮物、そうめんやそばのめんつゆなど、やや味の濃い料理に使用

出汁パックのアレンジ法

中身を調味料として使用…出汁パック1袋で、2~3人分が目安です。パックから中身を出して素材に混ぜたり、まぶしたり、料理に応じて味を調えてみましょう。

出汁パックの複数使い…異なる味の出汁パックを1パックずつ入れて出汁をとると、掛け合わせで味に奥行きが出ます。

まとめ:美味しいと思うものを次の世代に繋げよう

まとめ:美味しいと思うものを次の世代に繋げよう

家庭でつくる料理とプロがつくる料理は、美味しさの指標が違うところにあります。

家庭料理は自分が育った味、それが根強く残ります。家庭料理は代々継承していくものです。次の世代に美味しい出汁を使った、自分が美味しいというものを繋いでいきましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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