近年、侵入窃盗や強盗事件が増加する中、家の防犯対策はますます重要になっています。しかし、すべての防犯対策を導入するには多額の費用がかかるため、「どこまで対策すべきか」「何から始めるべきか」を見極めることが大切です。
本記事では、防犯の専門家・ALSOKのHOME ALSOK事業部企画課長の松田さんにお話をお伺いし、防犯費用の相場 と 優先度の高い防犯対策の選び方 について解説します。
防犯対策を怠るとどうなる?

「うちは大丈夫」と油断していませんか?
言うまでもなく防犯対策が不十分な家ほど、空き巣や侵入窃盗のターゲットになりやすいです。特に、玄関や窓が無施錠だったり、防犯カメラが設置されていない家は、犯罪者にとって「入りやすい家」と見なされます。被害は金品だけにとどまりません。最悪の場合、侵入者と鉢合わせしてしまい、暴行を受けて大きなケガを負うといった命に関わる危険も考えられます。
松田さんによると、最近では特殊犯罪グループによる組織的な犯行が目立ってきており、侵入窃盗や強盗事件の件数も増加傾向にあります。そのため、自宅(マンションや戸建て)を自分で守る意識が重要になってきているそうです。
大切な家族と財産を守るためには、最低限の防犯対策をしっかりと行うことが不可欠です。
日本国内の侵入窃盗・強盗事件の現状

ここ数年、日本では侵入窃盗や強盗事件の状況が少しずつ変化しています。平成15年以降、これらの事件は長期的に減少傾向にありましたが、令和5年には再び増加に転じました。具体的には、令和5年の侵入窃盗の検挙件数は2万3,182件で、前年と比べて4.7%増加。また、検挙された人数は5,381人で、前年より9.9%も増加しています。こうしたデータからもわかるように、「自分の家は大丈夫」と油断せず、改めて防犯意識を高めることが重要です。
ALSOKへの問い合わせ件数も、ここ数年で明らかに増加しており、多くの方が防犯への関心を高めていることがわかります。特に戸建て住宅の方からの問い合わせが多く、地域的には都内や都市部(東京・大阪・名古屋など)での需要が高い傾向にあります。住宅の数が多い都市部では特に、防犯への意識が高まっています。
防犯対策を怠った場合のリスク
「うちは大丈夫」「まさか自分の家が…」——そんな油断が、取り返しのつかない被害につながることがあります。
実際、侵入窃盗や強盗といった犯罪は、無施錠の窓や簡易な鍵など“スキ”のある家を狙って発生しています。防犯対策が不十分な住宅は、犯罪者にとって“入りやすく逃げやすい”格好のターゲットです。万が一侵入された場合、金品の被害だけでなく、心の傷や生活への不安が長く残ります。
留守中の被害だけでなく、家族が在宅中に鉢合わせしてしまう可能性もゼロではありません。
また、空き巣の一度の成功が「この家は狙いやすい」と思わせてしまい、再度被害に遭うケースもあります。つまり、防犯対策を怠ることは「犯罪のリスクを自ら引き寄せてしまう」ことにもなりかねないのです。
ターゲットになりやすい家の特徴

強盗や空き巣は、無作為に家を選んでいるわけではありません。犯人たちは事前に“入りやすく”、“見つかりにくく”、“逃げやすい”家を見極めたうえで行動します。以下のような特徴がある家は、特に注意が必要です。
鍵や窓の施錠が甘い
「ちょっとだから」と無施錠のまま外出したり、補助錠のない窓がある家は、犯人からすると“入り口が開いている”ようなもの。特に1階やベランダ側の窓は要警戒です。
周囲から死角が多い
高い塀や植栽で囲まれた家は、一見プライバシーが守られているように感じますが、外からの目が届きにくくなるため犯人にとっては絶好の隠れ場所となります。
防犯対策が見えない
センサーライトや防犯カメラ、警備会社のステッカーなどが見当たらない家は「対策が甘い」と判断されがちです。何もない=侵入しやすい、という印象を与えてしまいます。
留守が多いことが分かる
郵便物がたまっていたり、夜になっても明かりがつかない家は「不在が多い」と見なされ、狙われやすくなります。SNSでの「旅行中」などの投稿も要注意です。
実際に侵入されるケースで多いのが“無施錠”の状態です。玄関を壊されるよりも、鍵のかけ忘れや窓の無防備さの方がリスクになります。犯人は犯行前に必ず「下見」にやってきます。このような特徴に一つでも心当たりがある方は、すぐにでも防犯対策の見直しを検討しましょう。「狙われにくい家」に変えていくことが、被害を未然に防ぐ第一歩です。
家の防犯グッズの種類と費用相場

今、家の防犯対策の重要性がますます高まっています。しかし、「具体的に何から始めたらいいの?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。防犯対策にはさまざまな種類があり、費用や相場も気になるところです。
ここからは、防犯対策の種類と、導入費用の相場について、詳しく解説していきます。
補助鍵・窓の防犯フィルム
費用相場:5千〜3万円
補助鍵や窓に貼る防犯フィルムは、侵入に時間をかけさせることで空き巣の侵入を防ぎます。特に1階やベランダ側の窓におすすめです。
防犯カメラ
費用相場:3〜10万円/台(設置費込みで+数万円の場合も)
防犯カメラは、不審者の抑止効果だけでなく、万が一のトラブル時にも証拠として活用できる強力な防犯ツールです。最近は、スマートフォンと連携できるタイプや夜間でも鮮明に映る赤外線対応モデルが人気です。
センサーライト・アラーム
費用相場:5千〜2万円
人の動きを感知して自動で点灯・警告音を出すセンサーライトやアラームは、低コストで導入できる防犯対策のひとつ。不審者が驚いて立ち去るケースも多く、夜間の防犯に効果的です。
セキュリティシステム導入
費用相場:月額5千〜1万円(初期費用別)
専門業者によるセキュリティシステムの導入は、家庭でも選ばれるケースが増えています。24時間監視・警備会社との連携があり、外出時や就寝時にも安心感があります。
やはり効果が高いのは“防犯カメラ”や“センサーライト”です。カメラやライトは“ここは見られている”という心理的な抑止力になります。玄関はもちろん、一戸建ての場合は裏手の窓など、死角になる場所にも設置するとより安心です。さらに、ホームセキュリティシステムの導入も非常に効果的です。24時間監視体制や異常時の通報機能など、プロによる管理で安全性がさらに高まります。
戸建て住宅・マンションで必要な防犯設備の違い

「戸建てに住んでいるけど、うちも防犯対策ちゃんとしておいた方がいいかな?」
「マンションだからって安心してたけど、やっぱり何か備えたほうがいい?」
住まいの形が違えば、防犯のポイントも少しずつ変わってきます。ここでは、戸建てとマンション、それぞれの防犯対策の違いについて、わかりやすくご紹介します。
外からの侵入に備える!戸建て住宅に必要な防犯対策
戸建て住宅は、玄関や窓、勝手口、庭など、侵入できるポイントがたくさんあります。そのため、「外からの侵入をいかに防ぐか」が大きなカギになります。たとえば、外から家の様子を監視できる防犯カメラを玄関や駐車場、庭などに取り付けておくと、不審者へのけん制にもなります。
また、人が近づくとパッと明かりがつくセンサーライトは、夜間の侵入を防ぐ心強い味方。裏口や人目につきにくい場所に設置するのがおすすめです。窓には補助鍵や防犯フィルムを。特に1階や庭に面した掃き出し窓は、バールなどでこじ開けられるケースが多いため、しっかり対策しておきましょう。そのほかにも、防犯砂利を敷いたり、門扉をしっかり施錠したりと、「時間をかけさせる工夫」が防犯のポイントになります。
「安心」の落とし穴に注意!マンションに必要な防犯対策
一方、オートロックや防犯カメラなどの共用設備が整っているマンションでは、「うちは大丈夫」と油断しがち。でも実は、住戸内の対策こそ重要です。まずは玄関の補助鍵や、ドアスコープカバー。ドアスコープを通して室内をのぞく被害もあり、ちょっとした対策がプライバシーを守ってくれます。また、窓の防犯も油断できません。
特に1階や2階、角部屋は狙われやすく、窓用のセンサーアラームや防犯フィルムの設置が効果的です。来訪者がひと目で確認できるモニター付きインターホンや、録画機能のある機種もおすすめ。不在時の訪問者もあとからチェックできます。
さらに、宅配ボックスやオートロックの使い方にも工夫を。置き配によるトラブルを減らしたり、住人以外の侵入を防ぐためにしっかり使いこなしましょう。
費用対効果の高い防犯対策の優先順位
防犯対策は、闇雲にあれこれ導入するよりも、限られた予算の中で「効果が高く、費用が比較的抑えられる」施策から始めることが重要です。ここからは、優先順位の高い防犯対策を段階的にご紹介します。
防犯の基本:鍵の強化と窓の補助対策
防犯の第一歩は「侵入されにくい家」にすることです。最も費用対効果が高く、優先度が高いのが玄関や勝手口の鍵の強化です。ピッキングに強いディンプルキーや電子ロックへの変更は、比較的安価で導入でき、防犯性を大幅に高められます。
加えて、窓への補助鍵の取り付けも効果的。特に1階やベランダに面した窓は、泥棒の侵入経路として最も狙われやすいため、補助錠や防犯フィルムを活用しましょう。これらは自分でも取り付け可能なものも多く、コストを抑えつつ安心感を得られます。
見せる防犯で視覚的に犯罪を抑制
鍵や窓の対策をした上で、次のステップとしておすすめなのが防犯カメラやセンサーライトの設置です。これらは「見せる防犯」として犯罪の抑止効果が非常に高く、特に空き巣や不審者への威圧感を与えることができます。
最近ではWi-Fi対応でスマホと連動できるリーズナブルな防犯カメラも多く、外出先からリアルタイムで確認することも可能です。また、人感センサー付きのライトは設置も簡単で、夜間の不審者を追い払うのに効果的です。電池式やソーラー式の製品もあり、電気工事不要で手軽に始められます。
ライフスタイルに合わせた防犯対策を
防犯対策は、住む人のライフスタイルによって最適な方法が変わります。共働き世帯の場合、日中留守にする時間が長いため、外出中も監視できる防犯カメラや宅配ボックスの設置がおすすめです。また、スマートフォンと連動できるスマートロックや来客通知機能つきインターホンも安心につながります。
一方、高齢者家庭では、シンプルで操作がしやすい対策が重要です。たとえば、音で威嚇する防犯ブザーや、防犯ライトなど、機械操作が少なく効果が期待できるアイテムを選ぶとよいでしょう。また、地域の見守りサービスと連携するのも一つの手です。
防犯対策として、まず意識したいのが「アポイントのない訪問者には対応しない」ということです。インターホンで確認し、知らない人であれば玄関の鍵を開けて対面での対応をしないというのが基本的な考え方です。
こうした日常のちょっとした行動の見直しが、防犯対策につながります。物理的なセキュリティ機器を導入するだけでなく、「不用意にドアを開けない」「知らない人でアポイントのない訪問者には対応しない」という意識がとても大切です。防犯は設備だけでなく、日々の行動や意識の積み重ねでも大きく変わります。家族みんなで意識を高めていきましょう。
まとめ:家の防犯対策は優先順位を見極めて計画的に

防犯対策は、「あれもこれも」と手を出すより、限られた予算と時間の中で“本当に効果のあるもの”から着実に導入することが大切です。鍵や窓の強化といった基本から始め、必要に応じて防犯カメラやセンサーライトなどの機器を追加することで、少しずつでも着実に安心を積み重ねていけます。
また、家族構成やライフスタイルによって適した対策は異なります。共働き世帯、高齢者家庭など、それぞれの事情に合った防犯計画を立てることが、無理なく効果的な防犯につながります。「うちは大丈夫」と思っている今こそ、防犯対策を見直すチャンスです。安心して暮らせる毎日を守るために、できることから一歩ずつ始めてみましょう。
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