厳しい暑さもやわらぎ、空気が澄んでくる季節、「秋分の日」は、そんな季節の節目にあたる国民の祝日です。
日々の忙しさに追われていると、なかなか意識することのない祝日の意味や背景。しかし、秋分の日は日本古来の風習や自然観が色濃く残る日でもあります。本記事では、秋分の日の由来や過ごし方について、伝統的な行事から現代的なライフスタイルに合った提案まで、心と身体のリズムを整えるヒントとしてお届けします。
秋分の日とは?

秋分の日は、毎年9月22日頃。太陽が真東から昇り、真西に沈み、昼と夜の長さがほぼ等しくなる日です。この自然の節目は、「自然をたたえ、生きとし生けるものをいつくしむ日」として、国民の祝日に定められています。
また、秋分の日は仏教において「彼岸の中日(ひがんのちゅうにち)」にもあたり、自然の巡りとともに、ご先祖様を敬い、命のつながりに感謝を捧げる日でもあります。
昼と夜がちょうど同じ長さに
秋分の日は、太陽が真東から昇り真西に沈むことで、昼と夜の時間がほぼ等しくなる、天文学的に見ても特別な一日です。この自然のバランスは、古くから「陰陽の調和」や「心身の節目」としてとらえられ、内面を整える良いきっかけとされてきました。
季節の変わり目を意識しながら、生活や心のリズムを見直すタイミングとして活用されることも多いことでしょう。
先祖を敬い、自然に感謝する日
祝日法においては、秋分の日は「祖先を敬い、亡くなった人々を偲ぶ」日と定義されています。春分の日と対になる存在として、古くからお墓参りや仏壇へのお供えといった先祖供養の行事が行われてきました。
また、稲や果実など秋の実りに感謝し、自然の恵みをいただく「収穫の節目」としての意味もあり、家族そろって季節の味覚を囲む時間も、この日にふさわしい過ごし方のひとつです。
伝統行事にふれる秋分の日の過ごし方

先人たちは、季節の節目を大切にすることで、自然とのつながりや命の営みを実感してきました。
秋分の日は、そんな日本人の心に根づく“巡りの美学”を今に伝える日でもあります。
ここでは、古くから続く秋分の日ならではの過ごし方をご紹介します。
お墓参りで心を整える
秋分の日は、秋のお彼岸の中日。ご先祖様への感謝を込めてお墓や仏壇に手を合わせることで、心が静かに整い、自分自身を見つめ直すきっかけにもなります。
日々の忙しさに追われるなかで、立ち止まって祈るひとときは、想像以上に心を落ち着かせてくれるものです。
おはぎや秋の味覚で季節を味わう
秋分の日のお彼岸には、「おはぎ」を供える習わしがあります。もち米を甘いあんこで包んだ素朴な和菓子は、秋の訪れを感じさせる行事食として受け継がれてきました。
おはぎは、春のお彼岸には「ぼたもち」と呼ばれます。どちらも基本的な材料は同じですが、季節の花にちなんで名前が変わります。春は牡丹に由来して「ぼたもち」、秋は萩にちなみ「おはぎ」とされます。
また、使用するあんこにも違いがあります。秋は新豆を使った風味豊かな粒あん、春はなめらかなこしあんが選ばれる傾向があります。季節に合わせて食材や仕上げ方を変える、日本ならではの細やかな感性が表れています。
おはぎを囲む食卓には、栗やきのこ、さつまいもなど秋の味覚も並びます。自然の恵みに感謝を込めて、旬を楽しむひとときとなるでしょう。
現代の暮らしに合う、秋分の日の過ごし方

ライフスタイルが多様化した現代では、「自分らしい秋分の日の過ごし方」を選ぶ方も増えています。伝統的な過ごし方だけではなく、自然との調和や心と身体のバランスを見つめ直す一日として生活に取り入れるのもおすすめです。
自然の中で深呼吸する
秋分の日は、朝晩の空気が涼しく澄んでくる時季。近所の公園や庭先で草花に目を向けたり、ゆっくりと空を見上げたりするだけでも、季節の移ろいを感じ取ることができます。
静かな自然の中で深呼吸をすれば、身体の内側からリセットされるような心地よさを味わえるはずです。
秋の草花や行事を暮らしに取り入れる
萩や桔梗、ススキなど秋の七草を活けたり、自然素材を使ったリースや押し花づくりなどを楽しむのも秋分の日らしい過ごし方です。
花や草木の表情を感じながら、手を動かす時間は心を穏やかにしてくれるでしょう。
和の行事食や旬の素材レシピを楽しむ
秋分の日には、おはぎをはじめ、けんちん汁、かぼちゃの煮物、きのこごはんなど、旬の素材を使った“和の行事食”を味わうこともおすすめです。
しかし、伝統的な行事食にこだわることなく、かぼちゃのシフォンケーキやキノコをふんだんに使ったパスタなども良いのではないでしょうか。旬の素材を生かしたメニューであれば秋分の日の食事として十分です。「食」を通じて文化や自然にふれることで、忙しい毎日に小さな季節のリズムが生まれます。家族やパートナーと一緒に作ったり味わったりする時間が、心を整える時間となるでしょう。
秋分の日を自分らしく楽しむために

秋分の日は、単なる祝日ではなく、自然や季節の移ろい、人とのつながり、そして自分自身の心と身体を見つめ直すための大切な節目にもなる日です。
先人たちが大切にしてきた行事や食文化に触れながら、今の暮らしに合った方法で過ごしてみることで、日常の中に静かな豊かさが生まれるはず。
自然のリズムに寄り添い、自分なりの“秋分の過ごし方”を見つけて、心地よい秋の始まりを迎えてみてはいかがでしょうか。
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