地震・台風・豪雨といった自然災害は、突然私たちの生活を脅かします。そんなとき、身の安全を守るために欠かせないのが「防災グッズ」です。
しかし、いざ見直してみると「これって必要?」「子どもや高齢者がいる場合は?」など、悩むポイントも少なくありません。
本記事では、最低限そろえておきたい必需品リストに加えて、家庭構成別のチェックポイントや、選び方のコツもわかりやすく解説。
忙しい毎日でも、今日からすぐに始められる防災の第一歩を、一緒に確認していきましょう。
防災グッズの必要性を再確認しよう

地震・台風・豪雨といった自然災害は、日常のすぐ隣にあるリスクです。突然の停電や断水、避難生活が始まったとき、「備えておけばよかった」と後悔しないためにも、防災グッズの必要性を改めて考えることが大切です。
ここからは、災害時にどのような困りごとが起こりやすいか、なぜ備えが命を守るのかを解説しながら、家族や自分を守るための意識づくりの第一歩をお伝えします。
災害はいつ起こるかわからない
日本は、世界有数の自然災害大国です。
内閣府の「防災白書」や気象庁の資料によると、地震、台風、大雨などの災害が毎年のように全国各地で発生しており、「いつ・どこで・誰が」被災するか予測が難しいのが現実です。
例えば、2024年1月の「能登半島地震」のように、比較的地震が少ないとされていた地域で大規模な被害が起こった例もあり、「ここは大丈夫」と思い込んでいた地域でも例外ではありません。
また、気象庁は地球温暖化の影響により、豪雨災害や線状降水帯の発生頻度が今後さらに高まると警鐘を鳴らしています。
このように、災害はいつでも、誰にでも起こりうるもの。だからこそ、「起きてから」ではなく「起きる前に」備えることが、命と暮らしを守る第一歩になるのです。
避難生活で困らないための備えが大切
災害発生後、避難所や自宅での「避難生活」が始まると、多くの人が直面するのが物資不足や衛生環境の悪化、プライバシーの欠如によるストレスです。
内閣府の資料では、避難所では水や食料、毛布などの支援物資がすぐに届かない場合が多く、「発災直後の3日間を自力でしのげる備え」が推奨されています。
また、東京都が発行する「東京防災」では、避難生活中に特に困りやすいのがトイレの問題、女性特有の衛生用品、子どものお世話、高齢者や障がいのある方への対応など、家庭ごとに異なる課題であると指摘しています。
こうした現実に備えるためには、「自分や家族に必要な物を具体的にイメージして備える」ことが重要です。
避難所での生活を少しでも快適に、そして安全に過ごすために、日頃からの備えが命と心の余裕を守るカギになります。
※出典:内閣府「物資調達・輸送について」、東京都「東京防災」
家庭構成に応じた準備を
防災グッズの準備には「これさえあればOK」という正解はなく、家族の構成やライフスタイルに応じたカスタマイズが不可欠です。
たとえば、赤ちゃんがいる家庭では紙おむつやミルク、離乳食などが必需品となり、高齢者や要介護者がいる家庭では介護用品や常備薬、移動補助具が重要になります。
さらに、ペットを飼っている場合には、ペットフードやトイレ用品、キャリーケースなどの準備も必要です。
内閣府の広報ページでは、「年齢や健康状態、家庭の事情に応じて必要なものを個別に用意すること」が強調されています。
また、東京都の「東京備蓄ナビ」でも、質問に答えるだけで各家庭の構成に応じた“オーダーメイド型”の備蓄リストを作成できるようになっており、家族構成ごとの備えが当たり前になってきています。
つまり、家族の数だけ「防災のかたち」があるということ。普段の暮らしに合わせて、必要なものを見直しながら、“自分たちにとっての最適な備え”を整えることが、防災の基本となります。
※出典:東京都「東京備蓄ナビ」
防災グッズ必需品チェックリスト【基本編】

災害時にまず命を守り、混乱の中でも最低限の生活を維持するためには、必要な防災グッズを事前に備えておくことが不可欠です。とはいえ、「何を、どれくらい準備すればいいのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
ここからは、どんな家庭にも共通して必要とされる“基本の防災グッズ”を、目的別にわかりやすく紹介します。
すぐに持ち出せる一次持ち出し品(非常用バッグ)
災害発生時、すぐに避難できるように非常用バッグは1人につき1つ、玄関や寝室などすぐ手に取れる場所に置いておくのが理想です。命を守るために最低限必要なものを、軽量・コンパクトにまとめておくことがポイントです。
一次持ち出し品チェックリスト(基本セット)
- 飲料水(500ml〜1L×2本程度)
- 携帯食(栄養補助食品、缶詰、乾パンなど)
- 懐中電灯(LED推奨)+予備電池
- モバイルバッテリー(フル充電済)
- 携帯ラジオ(手回し式または電池式)
- 救急セット(絆創膏、常備薬、消毒液など)
- 簡易トイレ(2〜3回分)
- マスク・ウェットティッシュ・ハンドタオル
- 現金(小銭含む)、身分証のコピー
- 保温シート・レインコート・軍手
ポイント:季節や家庭の事情に合わせて、衣類・生理用品・乳児用品・防寒具などを加えて調整しましょう。
避難生活を支える二次持ち出し品(自宅備蓄用)
避難所生活が長引くケースや、在宅避難を余儀なくされる場面も想定しておくことが大切です。
水道・電気・ガスなどのインフラが止まっても数日間しのげるよう、自宅に生活必需品を備蓄しておくことが安心につながります。
二次持ち出し品・自宅備蓄チェックリスト
- 飲料水(1人1日3L×3日〜7日分)
- レトルト食品・缶詰・アルファ米・インスタント食品など
- カセットコンロ・ガスボンベ(1日1本×日数分)
- トイレットペーパー・ティッシュ・ビニール袋(簡易トイレ兼用)
- 生理用品・おむつ・介護用品など家庭に応じた衛生用品
- 毛布・寝袋・ポリ袋・紙皿・割り箸
- 常備薬・予備の眼鏡・マスク・体温計
- ラジオ・懐中電灯・電池・充電器(停電対策)
- 情報記録用のメモ帳や筆記具
ポイント:食料や日用品は普段使いのものを「少し多めに買って、使いながら補充するローリングストック方式」がおすすめです。
あると便利なプラスαアイテム
命を守るための最低限の備えに加え、避難生活を少しでも快適に、安心して過ごすための“プラスα”アイテムも準備しておくと安心です。
特に、避難所ではプライバシーや衛生面の不安、精神的なストレスが蓄積しやすいため、心身の負担をやわらげる工夫が役立ちます。
プラスαであると便利なアイテム例
- 耳栓・アイマスク(避難所での就寝時に)
- 折りたたみスリッパ・携帯クッション
- ウェットティッシュ・ドライシャンプー・歯磨きシート
- ビニール袋・ラップ(水洗い不要の食器カバーや衛生用)
- お菓子・甘い飲み物(気分転換や低血糖対策に)
- お気に入りのタオル・香り付きアイテム(安心感に)
- 筆記用具・メモ帳・簡易地図(情報整理や安否確認に)
- 子ども用おもちゃ・ぬいぐるみ・絵本(心のケア)
ポイント:こうしたアイテムは必須ではないものの、実際の避難生活では「あるとないとで大きく違う」と感じることが多く、心の余裕を保つためにも大きな効果を発揮します。
家庭構成・ライフスタイル別チェックポイント

防災グッズは、誰にとっても共通の“基本セット”だけでは十分とはいえません。
赤ちゃんがいる家庭、介護が必要な高齢者と暮らす家庭、ペットを飼っている世帯、そして一人暮らしや共働き世帯など、それぞれに必要な備えは異なります。
自分や家族の状況に合わせた準備をしておくことで、いざという時の不安や負担を大きく軽減できます。
乳幼児や子どもがいる家庭の場合
乳幼児は自分で身を守ることができないため、大人がしっかりと備えておく必要があります。普段使い慣れているものを中心に、「安心できる環境」を意識した準備が大切です。
また、妊産婦や乳幼児連れの家庭向けの防災資料では、母子手帳や健康保険証、さらに避難所で授乳や着替えがスムーズにできるよう配慮することが推奨されています。
乳幼児・子ども連れで備えるものチェックリスト
- 紙おむつ(1〜3日分)・防臭袋
- おしりふき・除菌シート
- 粉ミルクまたは液体ミルク(授乳不足時に備えて)
- 哺乳瓶・使い捨て哺乳瓶アタッチメント・湯冷まし用水(加熱剤)
- 着替え・ブランケット・帽子(赤ちゃんの体温調整に)
- おもちゃ・絵本・ぬいぐるみ(安心材料として)
- 抱っこひも・スリング(移動がしやすく、子どもの安心にも)
- 母子手帳・健康保険証のコピー・お薬手帳・連絡先カード(非常時の情報確認用)冷却シート・体温計・常備薬(体調変化に備える)
- 離乳食・子ども用のお菓子・飲料水(慣れた食品でストレス軽減)
高齢者・要介護者がいる家庭の場合
高齢者や要介護者は、移動や排泄、食事などに配慮が必要です。日頃使っている介護用品や薬などを優先的に用意し、避難先でのストレスや体調悪化を防ぎましょう。使い方のわかる家族が一緒に避難できるとより安心です。
高齢者・要介護者向け非常用バッグ・備蓄品チェックリスト
- 持病の薬(最低3日分以上)とお薬手帳、健康保険証や介護保険証のコピー
- 老眼鏡・補聴器(+予備電池)
- 成人用おむつ・吸水パッド、簡易トイレ用品(断水時対応)
- とろみ剤・介護食/軟らかい食品(お粥、軟飯、ゼリーなど)
- 衛生用品:歯ブラシ、口腔ケアシート、マスク
- 移動補助具:杖、折りたたみ歩行器など
- 履き慣れた靴・靴下など、足元の安全
- 懐中電灯・携帯ラジオ・電池・モバイルバッテリーなどの情報機器
- 緊急連絡先一覧・安否確認メモ(紙媒体)
- 冬は保温シート・毛布、防寒具、夏は日よけ・帽子など季節対応グッズ
ペットを飼っている場合
避難所ではペットの受け入れが制限される場合もあり、事前に自治体の方針を確認しておくことが大切です。
万が一に備え、ペット用の防災グッズも準備しておきましょう。避難先でも、少しでも普段の環境に近づける工夫が必要です。
ペット連れの家庭で備えるものチェックリスト
命に関わるもの
- ペット用フード・おやつ・飲料水(5〜7日分)
- 常備薬・療法食、健康情報メモ(ワクチン履歴・持病など)
安全・移動のためのグッズ
- キャリーバッグ・ケージ・洗濯ネット(猫用)
- 首輪・ハーネス・リード(破損時の予備含む)迷子札・写真・飼い主情報を書いた紙(エマージェンシーカード)
衛生・快適アイテム
- ペットシーツ・猫砂・防臭袋・消臭スプレー/ウェットティッシュ等
- タオル・ブラシ・お気に入りのおもちゃ(ストレス緩和)
ひとり暮らしの場合
ひとり暮らしの防災対策では、すべてを自分で判断し、対応する必要があることを念頭に置いておくことが大切です。
体調不良時やけがをした場合に助けを呼ぶ手段が限られるため、「誰にも頼らず最低3日間はしのげる」備えをしておく必要があります。
また、災害発生時に自宅にいない可能性も高いため、職場や通学先からの帰宅ルートの確認や、普段使うカバンにも簡易グッズを常備するといった工夫も効果的です。
ひとり暮らしに必要な防災アイテムチェックリスト
- 飲料水・非常食(1人3L×3日分、調理不要なものが◎)
- 簡易トイレ・ティッシュ・ウェットシート類
- モバイルバッテリー(フル充電)・手回しラジオ
- LED懐中電灯・予備電池
- 現金(小銭含む)・身分証コピー
- 常備薬・救急セット
- 防犯ブザー・笛(SOS用)
- 保温シート・簡易寝具・着替え(防寒対応)
- 緊急連絡先のメモ(スマホ以外にも紙で)
- ドア付近に非常用バッグを常備
防災グッズを選ぶときのコツ

防災グッズは「とりあえず揃える」だけでは、本当に必要なときに役立たないことがあります。
いざという時に使いやすく、安心できる備えにするためには、中身の“質”や“使い勝手”にも注目して選ぶことが大切です。
ここからは、用途や使用シーンを想定しながら、自分に合ったアイテムを選ぶポイントをわかりやすくご紹介します。
用途と使用頻度をイメージする
災害時に本当に役立つ防災グッズとは、「使うシーンが想像でき」、「日常でも抵抗なく使えるもの」を選ぶことが重要。「意識しないと持っていない物」と「日常的に使う物」を分類し、両方をバランスよく備えることが大切です。
例えば、非常時にしか出番がないグッズ(例:簡易トイレ、手回しラジオ、防災頭巾)は、必要性が高いものの普段使わないため、使い方を事前に確認し、忘れずバッグに準備しておくと便利。
一方、日常生活で使うもの(食品や日用品など)を少し多めに購入して、使いながら補充するローリングストック方式にすることで、慣れた味や使いやすさを維持しつつ、非常時にも対応できる備えが可能です。
定期的な見直しと入れ替えも重要
防災グッズは用意して終わりではなく、定期的な見直しと入れ替えが欠かせません。
食料や水には賞味期限があり、電池や薬も劣化します。衣類や子ども用品はサイズの変化にも注意が必要です。
年に1〜2回を目安に中身を点検し、季節や家族構成に応じてアップデートしましょう。
防災の日(9月1日)など、見直すタイミングを決めておくと続けやすくなります。
コンパクトで軽量なものを選ぶ
災害時には、限られた時間と体力で避難する必要があります。非常用バッグに入れる防災グッズは、できるだけコンパクトで軽量なものを選ぶことが重要です。
特に徒歩での避難を想定すると、重すぎる荷物は大きな負担になります。圧縮できる衣類や多機能ツール、小型の防寒グッズなど、持ち運びやすさを意識して選ぶことが、命を守る備えにつながります。
100均・ホームセンター・ネットの活用法
防災グッズは専用品だけでなく、100円ショップやホームセンター、ネット通販でも手軽にそろえることができます。
例えば、圧縮袋やビニール手袋、ウェットティッシュなどは100均で十分対応可能です。ホームセンターでは水や簡易トイレ、カセットコンロなどのまとめ買いが便利。
ネット通販では口コミやレビューを参考に、自分に合ったグッズを比較・選択できるのが魅力です。賢く活用して、無理なく備えましょう。
まとめ:今すぐできる備えから始めよう

災害はいつ起こるか分かりません。大切なのは、「備えなきゃ」と思った今この瞬間から、できることをひとつずつ始めることです。
まずは最低限の防災グッズをチェックし、自分や家族の生活に合わせた準備を。
完璧を目指す必要はありません。今日できる小さな備えが、いざというとき大きな安心につながります。定期的な見直しも忘れずに、日常に防災を取り入れていきましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。