お気に入りのニットは、着るだけで気分を上げてくれる特別な一枚。でも「毛玉がすぐできる」「洗濯したら縮んでしまった」「型崩れしてしまった」…そんなトラブルを経験した方も多いのではないでしょうか。
ニットは繊細な素材だからこそ、正しいお手入れと保管方法を知っておくことが長持ちの秘訣です。
この記事では、洗濯・干し方・毛玉対策・収納のポイントまで、羊毛のプロに聞いた“ニットを美しく保つための実用的なケア方法”をわかりやすく解説します。
今日から取り入れられるヒントで、あなたのお気に入りニットを長く愛用しましょう。
ニットのお手入れが特に大切な理由

これからの季節、まさに活躍してくれるニット。ニットとひと口に言っても、ウールやカシミヤ、シルクなどの天然素材からアクリル、ナイロンなどの化学繊維、綿、麻などの植物繊維までさまざまです。
お気に入りのニットを長くきれいに着るためには、少し特別な気配りが大切です。その理由は、ニットならではの「構造」と「素材」にあります。
ふんわり感と引き換えの「弱点」
ニットは糸を「編んで」作られています。そのため、シャツなどの「織物」と比べて生地に隙間が多く、ふんわりと柔らかいのが魅力です。しかしその反面、摩擦や水分、重さに弱く、形が崩れやすいという繊細な一面も持っています。
まるで「生きている」ような繊維
特にウールやカシミヤなどの動物の毛から作られたニットは、「生きている繊維」といわれるほどデリケート。水や熱にとても敏感で、間違ったお手入れをするとトラブルが起きやすくなります。
繊維の表面は、髪のキューティクルのような「うろこ状」をしています。これが水や摩擦で絡み合うと、元に戻らなくなり縮んでしまいます。また、摩擦に弱いため毛玉ができやすく、水分や重みで伸びやすい性質があります。
お気に入りのニットを長持ちさせる!正しい洗濯方法

大切なニットを自分で洗うのは少し勇気がいりますよね。でも、いくつかのポイントさえ押さえれば、風合いを保ったままきれいにすることができます。さっそく手順を見ていきましょう。
洗う前に洗濯表示をチェック
まず、洗濯表示タグを見て、洗っても大丈夫なニットか、洗濯するには何が必要かを確認します。「手洗い」や「洗濯機」のマークがあれば、自宅で洗えます。特にウール・カシミヤなどの動物性繊維はアルカリに弱いため、中性洗剤の使用が基本です。
「水洗い不可」や「ドライクリーニング」の表示なら、プロにお任せしましょう。
【手洗い or 洗濯機】洗い方を選ぶ
手洗いであれば、摩擦や型崩れを最小限に抑え風合いを長持ちさせることができます。お湯ではなく水を使用することで、温度変化による縮みを防げます。軽く押し洗いした後、タオルで水気を取りましょう。
洗濯機を使用する場合は、おしゃれ着洗いコース+ネット使用+単独洗いが基本。摩擦を防ぐため、他の衣類と一緒に洗わないことがポイントです。脱水は短時間(30秒〜1分程度)に留め、強い回転で叩きつけられないよう注意しましょう。
<手洗いの方法>
- 洗面器に水をはり、中性洗剤を溶かす。
- ニットを優しく沈め、20〜30回ほど「押して、離して」を繰り返す。
- きれいな水に入れ替え、同じように押しながら2回ほどすすぐ。
- 優しく絞った後、乾いたバスタオルの上に広げ、挟み込むようにして優しく水気を取る。
洗剤・水温選びの注意点
洗濯洗剤は「おしゃれ着用」や「中性洗剤」を選びましょう。ウールやシルクなどの動物性繊維はアルカリ洗剤に弱く、タンパク質が変質して硬くなる恐れがあります。水温は常温で十分。お湯を使うと温度差で縮みが起きることがあるので避けましょう。
それから、もうひとつ意外と知られていないポイントが。それは、柔軟剤の使用を控えることです。せっかくの縮み防止加工が、柔軟剤の成分で弱まってしまう可能性があるので注意しましょう。
ニットを長持ちさせる最大のコツは「洗いすぎない」こと
お気に入りのニット、できるだけ長く着たいですよね。それなら、一番大切なのは洗いすぎないことです。
一度着ただけで洗濯をするのではなく、普段のお手入れはブラッシングや陰干しを行い、シーズンが終わって衣替えをする時に一度洗うだけ。普段は風通しの良い場所で休ませてあげるだけで十分です。
カシミヤやアンゴラといった繊細で高価なニットは、無理に家で洗おうとせず、クリーニング店に任せるのが一番安心です。もしご自宅で洗うなら、もみ洗いはせず、洗剤を溶かした水に静かにつけておく「つけ置き洗い」にしましょう。
ニットの干し方・乾燥の工夫

洗ったニットを、ハンガー干しをしていませんか?丁寧に洗ったニットも、干し方を間違えると台無しに。型崩れや縮みを防ぐための、簡単で効果的な乾燥のコツをご紹介します。
【基本のルール】ニットは必ず「平干し」で
なぜニットは平干しが良いのでしょうか? 水分を含んだニットは非常に重く、ハンガーに吊るすと、その重みで生地が伸びてしまいます。
特に肩周りや着丈がだらりと伸び、元に戻らなくなることも。これを防ぐ最も確実な方法が、平らな場所に広げて干す「平干し」です。
直射日光は色あせや繊維を傷める原因に。必ず風通しの良い日陰や室内で干しましょう。室内の湿気が気になる時は、扇風機やサーキュレーターで風を送ったり、エアコンの除湿機能を使ったりすると、効率よく乾かせます。
ウールのニットは分厚くて乾きにくそう…」と思われがちですが、実はウールは湿気を外に逃がす力に優れており、コットン(綿)素材よりも意外と早く、カラッと乾きます。干す前に、ニット全体の形を優しく手で整えます。
もし袖口や裾のリブが伸びてしまっていたら、ヘアゴムなどで軽くきゅっとまとめておくと、乾いたときに形が戻りやすくなります。市販の「平干しネット」を使うと便利ですが、なければお風呂のフタやプレイマットの上に乾いたバスタオルを敷き、その上にニットを広げてもOKです。
毛玉・シワ対策の基本

お気に入りのニットを長く愛用するために欠かせないのが、毛玉とシワのケアです。
どんなに上質な素材でも、着方や扱い方次第で見た目の美しさが変わります。毛玉は「使い込んだ証」ではありますが、適切なケアを続けることで見た目も風合いも驚くほど長持ちします。ここからは、家庭でできる簡単なお手入れ方法を紹介します。
毛玉ができる理由と予防法
毛玉の主な原因は、繊維同士の摩擦です。特に、腕を動かしたりバッグの持ち手があたる袖口や脇など、動きの多い部分にできやすくなります。
天然繊維は表面の細い毛が絡まりやすく、日常の摩擦で自然と毛玉が育ってしまうのです。
対策としては、毎日同じニットを着ないこと。1日着たら翌日は休ませて、繊維をリセットしてあげましょう。
また、着る前に軽くブラッシングをしておくと、表面の毛並みが整い、摩擦を防ぐ効果もあります。コートやバッグとのこすれを減らすために、アウターとの組み合わせやバッグの持ち方を見直すのも大切です。
毛玉取り器・ブラシの正しい使い方
毛玉ができたときは、焦って強く削らないこと。毛玉取り器を使う際は生地に強く押し当てず、軽く滑らせるように動かします。生地の表面を削りすぎると、繊維が痩せて薄くなり、次の毛玉ができやすくなるため注意が必要です。
普段のケアとしておすすめなのが洋服ブラシ。着用後に毛流れを整えるだけで、付着したほこりや小さな繊維くずが取れ、毛玉の原因を減らせます。ウール用の柔らかいブラシを選ぶと安心です。お気に入りのニットこそ、日々の“ひと撫で”が長持ちの秘訣です。
アイロン・スチームでシワを整えるコツ
シワを取るときは、「熱を加える」より「蒸気で整える」イメージで。アイロンを直接押し当てると繊維が潰れ、風合いが失われる原因になります。必ず低温+当て布を使用し、軽く押さえる程度に。
そして、よりおすすめなのはスチームアイロン。生地から数センチ浮かせ、蒸気をふんわり当てることで、自然なふくらみを保ちながらシワを取ることができます。
スチーム後は完全に乾かしてから収納しましょう。湿気が残ると、せっかくふんわり仕上がったニットがカビや臭いの原因になってしまうことも。
着用後にブラシをひと手間かけるだけでも、ニットは驚くほど長持ちします。毛玉は“身の内”。無理に削るのではなく、優しく整える気持ちで付き合ってあげてください。
ニットの収納・保管方法

お気に入りのニットを長く着続けるためには、シーズンオフの保管方法がとても重要です。
どんなに丁寧に洗っても、しまい方を誤ると「型崩れ」「虫食い」「黄ばみ」などのトラブルが起きやすくなります。
最後に、型崩れさせず清潔に、次の季節も気持ちよく着られるための収納と保管のコツを紹介します。
ハンガーより畳み収納が良い理由
ニットは柔らかく伸縮性があるため、吊るすと自重で肩や裾が伸びてしまうことがあります。特に薄手やゆったりしたデザインのものほど、ハンガー跡が残りやすく、型崩れの原因に。そのため、畳んで収納するのが基本です。
クローゼットの中でも、平らな棚や引き出しに平積みするのが理想的。重ねすぎると下のニットが押し潰されてシワができやすいため、3枚程度までにとどめましょう。よく着るものは上段、シーズンオフのものは下段や奥に置くと出し入れもスムーズです。
長期保管時の防虫・湿気対策
長期間保管する前には、防虫剤と除湿剤を併用しましょう。どちらも同じ場所にまとめて置くのではなく、引き出しの四隅や上下にバランスよく配置すると効果的です。
収納ケースは通気性のある布製や不織布タイプを選び、湿気がこもらないようにします。クリーニングから戻った衣類は、ビニール袋を外して湿気を逃がすことが必須です。ビニールのまま保管すると内部に湿気がこもり、カビや臭いの原因になります。
また、タンスの中やクローゼットの環境も大切。梅雨時や湿度の高い季節には、除湿剤を定期的に交換する、時々扉を開けて風を通すなどのひと手間で、カビや虫の発生を防げます。
型崩れや黄ばみを防ぐ工夫
収納前には必ず、軽く洗う・ブラッシングする・汚れを落とすなどのケアを行いましょう。皮脂汚れや食べこぼしが残ったまま保管すると、虫食いの原因になります。洗った後は完全に乾かしてから収納を。わずかな湿気が残っていると、ニットがカビや臭いを吸収してしまいます。
さらにおすすめなのが、収納前にアイロンやスチームを軽くあてること。繊維を整えることで次のシーズンもきれいな形で着ることができます。また、熱によって虫の卵も駆除できるので、虫食いを防ぐことにもつながります。
シーズンオフの前に“年に一度の洗濯”をしてからしまうのが理想です。虫食いは、実は“食べこぼし跡”が原因のことが多いんですよ。アイロンの熱は虫の卵対策にもなります。
少し面倒に思えるひと手間も、次の冬に袖を通した瞬間の“ふんわり感”を保つための大切な準備。しまうときこそ、ニットへの愛情を込める時間にしたいものですね。
まとめ:ニットを長持ちさせる一番の秘訣

ニットは「繊細だからこそ、丁寧に扱う」ことが何よりのポイント。水で洗い、中性洗剤を使い、平干しする――この基本の3ステップを守れば、日々のお手入れは決して難しくありません。
そして、頻繁に洗わず、着たあとはしっかり休ませてあげることが、実は一番のケアなのです。
お気に入りのニットを長く着るためにも、少しの手間と愛情をかけることを忘れずに。
季節の変わり目に袖を通したとき、その柔らかさとぬくもりがきっと、丁寧に過ごした時間を思い出させてくれるはずです。
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