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【管理栄養士監修】健康寿命をのばす!タンパク質を効率よく摂る食べ方

【管理栄養士監修】健康寿命をのばす!タンパク質を効率よく摂る食べ方
大槻 万須美 (管理栄養士/フードスタイリスト/腸内ケアフードアドバイザー)

監修者

管理栄養士/フードスタイリスト/腸内ケアフードアドバイザー

大槻 万須美

楽しく食べて健康に。
食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。
子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。

健康寿命をのばすためには、筋肉や骨、臓器の健康を支える栄養素である「タンパク質」の摂取が欠かせません。しかし、年齢や生活スタイルによって必要量は変わるうえ、効率よく摂取するには工夫が大切です。
本記事では、管理栄養士・大槻万須美さんの監修のもと、タンパク質の役割や摂取目安、効率的な食べ方、日常に取り入れやすい食材やメニューの工夫までを解説します。
今日から実践できる「タンパク質習慣」を身につけ、健康寿命を意識した生活を始めましょう。

その不調、タンパク質不足かも?

その不調、タンパク質不足かも?

「最近なんだか疲れやすい…」「身体を動かすのが少し面倒に感じる…」もしそんな風に感じることが増えたなら、その原因は「タンパク質不足」かもしれません。

タンパク質は、私たちの身体を支える最も基本的な栄養素。筋肉や内臓、髪の毛や爪に至るまで、全身のあらゆる部分を作る「健康の土台」です。

なぜタンパク質は「健康の土台」なのか

タンパク質は、単に筋肉を作るだけの栄養素ではありません。私たちの身体の中で、実にさまざまな役割を担っています。

タンパク質は、骨・臓器など身体の構成要素をつくるだけでなく、ホルモンや酵素の材料にもなる“生命活動の主役”です。

身体の修復や代謝、免疫の維持など、私たちの身体を動かすあらゆるプロセスに関与する重要な栄養素といえます。

また、筋肉はエネルギー代謝全体の約20%を担っており、体温維持や基礎代謝を高めるうえでも欠かせない存在

タンパク質をしっかり摂ることは、単に「筋肉を増やす」だけでなく、内臓や代謝を健やかに保つことにも直結しています。

放っておけない!タンパク質不足が引き起こす身体のサイン

加齢とともに食事量や咀嚼力が低下し、肉や魚を避けがちになる高齢者は要注意。

タンパク質が不足すると筋肉量が減少し、サルコペニア(加齢性筋肉減少症)やフレイル(虚弱)につながります

一度筋肉が減ってしまうと、立ち上がる・歩く・物を持つなどといった日常生活の動作が難しくなり、健康寿命を縮める原因に。

さらに近年では、若年女性の「痩せ志向」による栄養不足も問題視されています。

見た目のスリムさを優先して食事量を少なくしたり、いびつな栄養バランスになったりした結果、将来的に代謝の低下や骨粗しょう症など隠れ栄養失調”に陥るリスクもあるのです。

「動ける身体」は日々の食事でつくる!

転倒予防や骨折防止、そして何より“自分の足で歩ける人生”を守るには、筋肉を維持することが欠かせません。ペットボトルのふたが開けにくくなったり、歩くスピードが遅くなったり――それは筋力低下のサインです。

タンパク質を毎日の食事で少しずつ意識的に摂ることが、「動ける身体」=自立した生活を支える最良の投資になります。

タンパク質は身体に欠かせない重要な栄養素です。タンパク質は日々の食事で補うことができるので、好きなタンパク質食材を一つ増やすところから始めましょう。無理なく続けることこそ、健康寿命をのばす第一歩です。

あなたの適量は?年齢・運動量で変わるタンパク質摂取の目安

あなたの適量は?年齢・運動量で変わるタンパク質摂取の目安

多くの人が気になるのが、タンパク質の“適量”です。

どれくらい摂れば良いのか、必要な量は年齢・性別・体格・運動量によって変わります。

過不足が続くと、筋肉や代謝の働きに影響が出るため、自分に合った目安を知ることが第一歩です。ここでは、大槻万須美さんの監修コメントとともに、厚生労働省の最新データも踏まえてご紹介します。

まずはここから!成人が摂るべき1日の基本量と計算方法

基本の考え方はシンプルです。

体重1kgあたり約1gのタンパク質を1日の目安として摂取しましょう。


たとえば体重50kgの人であれば、約50g/日が必要量の目安になります。

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、男性(18〜64歳):65g/日、女性(18〜64歳):50g/日が推奨量とされています。

高齢者・活動量の多い人はさらにプラスで摂取を

年齢を重ねるほど筋肉量は自然に減少します。高齢者では食事量が減るうえ、肉や魚を敬遠しがちになるため、タンパク質不足が起こりやすい傾向にあります。

体重1kgあたり1.0〜1.2g程度を目安に。筋肉を維持するためには“少し多め”を意識することが大切です。

筋肉を減らさないためには

健康に欠かせない筋肉量を維持する秘訣は、毎食こまめなタンパク質摂取です。一度にたくさんのタンパク質を摂っても、身体が一度に吸収できる量には限りがあります。吸収しきれなかった分は、残念ながら体外に排出されてしまいます。

大切なのは、朝・昼・晩の3食、できれば間食も活用して、タンパク質をコンスタントに身体に届け続けることです。

一度にまとめて摂るのではなく、食事や間食に分けて少しずつ摂ることで、タンパク質の吸収率がぐっと高まり、効率的に筋肉の維持・合成に活用されます。

タンパク質を効率よく摂る食べ方

タンパク質を効率よく摂る食べ方

タンパク質は「量」だけでなく「摂り方」も大切。同じ量を食べても、摂取のタイミングや組み合わせ次第で吸収率や体への利用効率が大きく変わります。ここからは、“しっかり吸収して、きちんと使える”ための食べ方のコツをご紹介します。

一度にまとめて摂らない!「分けて摂る」ことで吸収効率をアップ

「朝は軽め、夜にまとめて…」という食事スタイルはNG。

タンパク質は一度に大量に摂っても吸収しきれず、腸で分解・腐敗してしまう場合があります。

身体は一度に使えるタンパク質量が限られているため、1日を通してこまめに摂ることがポイントです。吸収のタイミングを分散させることで、筋肉や代謝の働きを安定的にサポートできます。朝食・昼食・夕食に加え、小腹がすいた時にチーズやナッツをプラスするのもおすすめです。

3食に分けて、もし取り切れない分はゆで卵やヨーグルトなどを間食で補うと良いですよ。

両方のいいとこ取り!動物性×植物性のバランス戦略

タンパク質は、大きく分けて動物性タンパク質植物性タンパク質があります。それぞれに長所があるため、両方を組み合わせるのが理想的です。

たとえば「焼き魚+冷ややっこ」や「鶏むね肉+納豆ごはん」といった“動植物ミックス”メニューを意識することで、タンパク質の質を表す「アミノ酸スコア」を高め、吸収率もアップします。

種類主な食材特徴
動物性肉・魚・卵・乳製品などアミノ酸バランスがよく吸収率が高い。筋肉維持に効果的
植物性大豆製品(豆腐・納豆・豆乳)など食物繊維やフィトケミカルが豊富で腸内環境を整える

難しく考えずに、“旬の食材にトッピングとして組み合わせる”ことから始めましょう。ごまと旬の魚、季節のみそ汁と卵、きなことヨーグルトなど、身近な食材で十分です。

飽きずに継続!彩り・食感で「食べる楽しみ」を

栄養バランスを意識しつつも、食べる楽しみを忘れないことが継続のカギ。サラダチキンやツナ缶、豆腐などの高たんぱく食材も、味付けや彩りを変えるだけで飽きずに食べられます。

たとえば、ツナ缶+トマト+大葉で「和風たんぱくサラダ」、サラダチキンにキウイやレモンを添えて「さっぱり冷菜」、豆腐+温泉卵+刻みのりで「手軽な一品」など、日頃からよく食べる食材をベースに献立を考えてみましょう。

“栄養のために食べる”から“楽しみながら食べる”へ。その意識が、健康寿命をのばす最大のコツです。

今日から実践!高タンパク質を叶えるメニュー

今日から実践!高タンパク質を叶えるメニュー

「タンパク質を摂らなきゃ!」と思っても、毎日の献立づくりは意外と大変。

そんなときこそ、身近な食材を上手に選び、ちょっとした工夫で継続できる仕組みをつくることが大切です。

ここでは、大槻万須美さんおすすめの“高タンパク食材リスト”と、忙しい人でも無理なく続けられる簡単メニューを紹介します。

コンビニでも買える高タンパク食材リスト

「コンビニやスーパーでも、たんぱく質は十分摂れますよ」と大槻さん。保存が利くものや手軽に食べられるものを常備しておくと、自然と“たんぱく質習慣”が身につきます。

食材食材例特徴・ポイント
肉・魚類サラダチキン、ツナ缶、さば缶、いわし缶、鶏むね肉、ささみ高タンパク&低脂質。味のバリエーション豊富で飽きにくい。調理いらずで便利。
卵・乳製品卵、チーズ、ヨーグルト、牛乳吸収率が高く、朝食・間食にも◎。卵1個に約6gのたんぱく質。
大豆製品豆腐、納豆、豆乳、おから植物性タンパク質の代表。腸内環境を整える作用も。
魚介加工品はんぺん、かまぼこ、ちくわ、魚肉ソーセージ調理不要でおでん・サラダ・おつまみにも使える万能食材。
その他プロテインドリンク、プロテインバー間食代わりに不足分を補う用途で活用。成分表示をチェックして選ぶのがコツ。

「朝・昼・夜+間食」で、1日トータルのたんぱく質バランスを整えるのが理想的。タンパク質を効率よく筋肉につなげるためにも炭水化物もしっかり摂りたいですね。大槻さんおすすめの“タンパク質のための黄金チーム”メニューはこちら。

◆朝食

  • ゆで卵+ヨーグルト+バナナ

 → ビタミンB6やDも一緒に摂れて代謝サポート。

  • 納豆ごはん+豆腐の味噌汁

 → 植物性タンパク質中心でもバランス◎。

 ◆昼食

  • サラダチキン+野菜スープ+おにぎり

 → 手軽に15〜20gのたんぱく質が確保できる組み合わせ。

  • ツナと豆腐の和風パスタ

 → 炭水化物と合わせて“筋肉のエネルギー源”にも。

 ◆夕食

  • 魚の缶詰(さば・いわし)+野菜炒め+ご飯

 → オメガ3脂肪酸も一緒に摂れて、抗炎症効果も期待。

  • 鶏むね肉のソテー+ブロッコリー+豆乳スープ

 → 高タンパク+抗酸化食材で疲労回復にも◎。

◆ 間食

  • チーズひと切れ+ナッツ
  • プロテインドリンク(糖質控えめタイプ)
  • ゆで卵1個で手軽に6gプラス

保存できる缶詰やサラダチキンをストックしておけば、“今日は疲れた日”でも安心。食事で足りない分を間食で上手に補う”という柔軟さが続けるコツ。食べやすい形で続けることが、健康寿命をのばす秘訣です。

賢く時短!プロテインや市販品のメリットと注意点

たんぱく質を効率よく摂るうえで、市販のプロテイン製品を上手に活用するのも有効。ただし、“置き換え食”として頼りすぎるのはNGです。

食事で摂れないときの補助として活用したり、成分表示を見て「たんぱく質量」「糖質量」「添加物」を確認しましょう。

タンパク質ばかりに偏ると、ビタミン・ミネラル・食物繊維などが不足し、便秘や肌荒れ、免疫力の低下を招くこともあります。食事の楽しみを忘れず、あくまで不足分を埋めるために活用しましょう。

たんぱく質は“貯めておけない栄養素”。食べた分は体内で消費され、余分な分は排出されてしまいます。つまり、「多く摂る日」より「毎日コツコツ摂る日々」が大切なのです。

まとめ:健康寿命を支える“タンパク質習慣”を今日からスタート!

まとめ:健康寿命を支える“タンパク質習慣”を今日からスタート!

タンパク質は、私たちの筋肉・臓器・代謝・免疫を支える“体の土台”

そして、その土台を守ることこそ、健康寿命をのばすいちばんの近道です。今日からできることは、小さな一歩で構いません。

タンパク質を摂ることは筋肉をつくるためだけではなく、「自分らしく生きる時間を延ばすため」の日々の選択。食を楽しみながら、身体をいたわる。それが、健康寿命をのばすいちばん“おいしい習慣”です。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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