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冬をおいしく乗り切る!管理栄養士が教える「保存食」づくりと活用術

冬をおいしく乗り切る!管理栄養士が教える「保存食」づくりと活用術
松井 みき (管理栄養士/料理講師歴20年/「Le Cercle(ル・セルクル)」主宰)

監修者

管理栄養士/料理講師歴20年/「Le Cercle(ル・セルクル)」主宰

松井 みき

幼少期から「食べること」「食に関すること」が大好きで、大学で栄養学を専攻。子どものアレルギーを機に「安心できる食」を見直し、季節の恵みを活かした保存食に魅了される。
現在は愛知県蒲郡市を拠点に、毎月約70名の生徒と向き合う少人数制の料理教室とオンラインコミュニティ「まあるい食卓」を運営。暮らしを整える手段としての“保存食のある日常”を伝えている。

オンライン教室「まあるい食卓」

冬は空気が乾燥し、寒さも厳しくなる季節。体を温める食事や、長く保存できる食品をうまく取り入れることが、健康な冬を過ごすポイントです。本記事では、管理栄養士の松井みきさんにお話をお伺いし保存食の基本から、簡単に作れる冬向けレシピ、日常の献立への活用方法まで詳しくご紹介します。
「いざという時の備え」としてだけでなく、毎日の食生活を豊かにするアイデアとしても参考になる内容です。

冬こそ「保存食」が頼もしい味方です

寒さが厳しくなる冬。身体を温める食事を心がけたいと思いながらも、忙しい日々の中ではつい簡単なもので済ませてしまうこともありますよね。そんなとき、冷蔵庫に“手作りの保存食”があると、驚くほど気持ちがラクになります。

松井みきさんは、20年以上にわたって「暮らしを整える保存食」を伝え続けてきた専門家。松井さんは、保存食は“手間がかかりそう”“昔の人の知恵”という印象を持たれる方が多いですが、実はもっと気軽で、現代の忙しい暮らしにもぴったりと言います。

保存食とは?難しく考えず“ちょっと長持ち”から

保存食とは?難しく考えず“ちょっと長持ち”から
(画像提供:Le Cercle)

保存食というと、手間がかかる特別なものを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし本来の意味はとてもシンプルで、いつもの食材や料理を、少し長くおいしく食べられるように工夫したもの

つまり、毎日のごはん作りの延長線上にある“暮らしの知恵”なのです。特別な材料や技術がなくても大丈夫。たとえば、余裕のある日に少し多めに作って冷蔵しておくおかずや、調味料をまとめて仕込んでおくことも立派な保存食。

「長期保存のために作る」というより、「日々の食事づくりを助けるための工夫」と考えると、ずっと身近に感じられるはずです。

普通の食材よりも少し長く保存できるものは、すべて保存食だと考えています。たとえば、煮干し粉とかつお粉を1:1で混ぜただけのものを冷蔵庫にストックしている「だし粉」。それだけでも立派な保存食です。
だし粉はだしパックの代わりになるだけでなく、栄養素が丸ごといただけて日々のお味噌汁作りに活躍します。

「保存食」は梅干しやらっきょう漬けといった時間のかかる伝統的なものだけでなく、”日々のごはん作りをちょっと助けてくれる食品”だと思っています。わざわざ作る特別なものではなく、暮らしに自然と寄り添うものなのです。

寒い季節こそおすすめ!冬に保存食を仕込むメリット

寒い季節こそおすすめ!冬に保存食を仕込むメリット
(画像提供:Le Cercle)

冬は空気が乾燥し、気温も低くなる季節。実はこの「寒さ」こそが、保存食づくりに向いているのです。また、冬は身体を温める野菜が旬を迎える時期。れんこん、ごぼう、にんじんなどの根菜類や、味噌、甘酒といった発酵食品も身体を温める代表的な食材です。

煮る・蒸す・焼くといった“火を通す”といった調理法を取ることで、血行を促し、内側から温まります。また、手作りの保存食であっても、塩分濃度を守り、冷暗所または冷蔵庫で管理すれば、数日〜数ヶ月おいしさが続きます。

冬は気温が低く、 “発酵食品作り”にぴったりです。雑菌の繁殖が抑えられるため、食材が傷みにくく、安心して作ることができます
また、冬場の気温で作る白菜漬け、キムチ、ザワークラウトなどはちょうどよく乳酸発酵が進み、味わい深く仕上がります。そのうえ、発酵によって増える微量栄養素を摂取することができますよ。
キムチは鍋にしたり豚キムチに、ザワークラウトや白菜漬けで煮込み料理を作れば、身体があたたまります。野菜が少なくなる時期でも、保存しておいた漬物・瓶詰め・乾燥野菜等を使えば、栄養不足を補うことができます。
また、冬の野菜は身体を温めてくれる働きがあるものが多く、里芋やごぼう、にんじん、大根等はカットしてまとめて出汁で煮て火を通しておく。これだけでも短期間の日持ちではありますが立派な保存食。食事作りの際に煮物やポタージュ等いろいろなお料理に短時間で展開できます。
身体をあたためてくれる代表食材の生姜は昆布やかつおぶしと佃煮にしたり、生姜入りの鶏そぼろ、醤油とみりんと合わせて生姜焼きのタレにしておくと忙しい朝でもさっと出すだけ、またお弁当用にことが使うことができて重宝しています。

冬向きの保存食の種類

冬になると身体が冷えやすく、免疫力が下がりやすいといわれます。そんな時期にこそ、身体の内側から温めてくれる発酵食品が頼もしい味方。発酵の過程で生まれる酵素や乳酸菌が腸内環境を整え、栄養の吸収を助けてくれるほか、体温の維持にもつながります。

さらに、冬は日照時間が短く、ビタミンDが不足しやすい季節。ビタミンDは骨の健康だけでなく、免疫機能の維持にも関係するため、意識して摂りたいところです。干ししいたけやイワシ、鮭などのビタミンDを多く含む食材は、保存食にすることでより手軽に摂取できます。

<ビタミンDを多く含む保存食例>

  • 干ししいたけを生姜と煮て「しいたけの佃煮」に
  • イワシをオリーブオイルに漬けて「オイルサーディン」に
  • 焼いた鮭をほぐして「鮭フレーク」に

これらは冷蔵で数日、冷凍すれば数週間と日持ちするうえ、忙しい日のご飯のお供としても大活躍します。

冬はどうしても日照時間が短く、ビタミンDが不足しやすい季節です。干ししいたけやイワシはビタミンDが豊富で、オイル漬けや佃煮などの保存食にすると長く楽しめます。
発酵食品も身体を温めてくれるものが多いので味噌や甘酒等を上手に取り入れて“発酵のある暮らし”を意識してください。腸が元気になると、血流が良くなり身体も心もぽかぽかしてきますよ。

保存食作りの基本ルール

保存食作りの基本ルール
(画像提供:Le Cercle)

保存食の魅力は、長くおいしく食べられること。しかし、その“安心”を守るためには、作り方と管理の基本をきちんと押さえることが大切です。ほんの少しの工夫で保存食は長持ちし、安全に楽しめるようになります。

衛生管理がすべての基本

まず意識したいのは衛生管理です。使う容器や道具は、必ず清潔な状態にしておきましょう。長期保存したい場合には瓶や密閉容器は煮沸消毒またはアルコールで拭いておくと安心です。

そして、作った日付と中身をラベルで記録しておきましょう。また、水分は腐敗の原因になりやすいため、食材の水気をよく切ることもポイント。汁に浸っているタイプの保存食では、材料が液体にしっかり浸かるようにしておくとカビを防げます。

保存環境を整える

次に大切なのが保存環境です。昔ながらの家には「土間」や「蔵」などの冷暗所がありましたが、現代の住まいではなかなか難しいですよね。その場合は、冷蔵庫の野菜室が最適です。温度変化が少なく湿度も安定しているため、保存に向いています。

常温保存する場合も、直射日光の当たらない場所や風通しのよい棚など、温度が一定に保てる場所を選びましょう。

こうした基本を守るだけで、保存食の安全性はぐっと高まります。自家製の味を長く楽しむために、まずは清潔・記録・環境の3つを心がけましょう。

この冬味わいたい、手軽に始められるおすすめ保存食

この冬味わいたい、手軽に始められるおすすめ保存食
(画像提供:Le Cercle)

保存食というと時間も手間もかかるイメージがありますが、実はとても身近なものから始められます。
初めての方にも作りやすく、普段の料理に重宝しやすいものをご紹介します。

調味料も立派な保存食

普段の料理で出番が多い分、作ったその日からすぐ使えて日持ちも良いのが調味料の魅力。今回は冬が旬の柑橘を使った2品をご紹介します。

  • 自家製ポン酢
    めんつゆ(3倍濃縮)と柑橘類(ゆず、かぼす、すだち、だいだい等)の果汁を1:1で混ぜ合わせる。
  • ハニーレモンドレッシング
    レモン汁・はちみつ・水・粒マスタード・油は各大さじ1ずつ、塩小さじ1/3をよく混ぜるだけで完成。サラダだけでなく温野菜や蒸し野菜にかけるのもおすすめです。

甘い保存食

砂糖には食材中の水分を引き出す働きがあり、微生物が繁殖しにくい環境を作ります。そのため、砂糖を使うと保存性が高まり、風味も長く保てます

冬に出回る苺でジャムを作ったらパンに添えるだけでなく、牛乳で割って苺ミルク、クラッカーにクリームチーズとジャム、またグラスにコーンフレークとバニラアイス、ジャムと苺を乗せたら立派なパフェにも変身!ひとつの保存食からさまざまなデザートがうまれます。

旬の果物を使ったジャムやコンポートも人気です。リンゴを赤ワインと水・砂糖で煮て八角やシナモンスティックを加えると、香り豊かな冬のデザートになります。
あたたかいコンポートにアイスクリームとパイ菓子を添えると最高です!こうした楽しみのある保存食が冷蔵庫にあると、食卓が豊かなります。

保存食を日常の献立に生かすコツ

保存食を日常の献立に生かすコツ
(画像提供:Le Cercle)

保存食は“作ること”が目的ではなく、“使い切ること”も大切です。せっかく作っても、冷蔵庫の奥で眠ってしまってはもったいないですよね。毎日の食事の中に、自然に取り入れていく工夫をすることで、保存食は本当の意味で「暮らしの味方」になります。

“よく使う味”を常備する

毎日の料理でよく使う調味料や、家族が好きな食材を保存食として仕込むのが長続きの秘訣です。食べ慣れた味なら無理なく使い切れるし、飽きることもありません。

日々の料理の助けに

保存食は、毎日のごはんをちょっとラクにしてくれる存在です。

たとえば、「朝に塩麹+柚子胡椒につけておいた鶏肉を夜帰ってから焼く」「焼肉のたれで豚肉と玉ねぎを炒めてお弁当に入れる」「自家製めんつゆをベースに豚丼を作る」「まとめて作って冷凍しておいたミートソースでミートドリアを作る」「ピクルスをサラダや付け合わせに添える」といったやり方を取り入れれば、料理の味わいが広がり、毎日の料理が時短になります。

塩分や糖分は“使うときに調整”

保存性を高めるためには、ある程度の塩分や糖分を使う保存食も少なくありません。しかし、食べるときに濃度を調整したり、使う量を加減したりすれば、塩分の摂りすぎは防げます。

塩味を決めるのは、仕込みの段階ではなく“調理や食卓で”。仕込むときはあくまで保存を優先し、味の仕上げは食べる直前に整えるのがコツです。

塩分をさらに控えたいときは、香りや辛みでおいしさを引き立てるのもおすすめ。生姜やにんにく、青じそ、みょうが、レモン、山椒などの香味野菜や唐辛子系の調味料を加えると、風味が豊かになり満足感がぐっと高まります。

香味野菜やスパイス、辛みを上手に使うことで、 “おいしさ”を演出できます。
たとえば、にんにく醤油やレモン麹、豆板醤、カレー粉などを使って香りを楽しむ事を意識してみてください。そんな保存食で味に変化をつけたり、アクセントを加えると同じメニューでもぐっとバリエーションが広がりますよ。
また、甘みのある保存食は、少量でも満足感が得られ、保存性も高まります。ただし、糖分の摂りすぎにならないよう、食べすぎには注意しましょう。

まとめ:保存食で冬の暮らしをもっと楽しく

まとめ:保存食で冬の暮らしをもっと楽しく
(画像提供:Le Cercle)

冬は身体を温める食事や栄養補給が欠かせない季節。しかし、毎日きちんと料理をするのは難しいものです。そんなとき、少しの保存食が、あなたの暮らしをやさしく支えてくれます。

冷蔵庫に塩麹やポン酢、手作りのドレッシングがあるだけで、料理が豊かになりちょっと楽しくなる。そんな小さな喜びを積み重ねながら、この冬をおいしく、健やかに過ごしてみませんか。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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