夏の風物詩として、日頃お世話になっている方へ感謝の気持ちを伝える「お中元」。
「贈ってみたいけれど、マナーがよくわからない」「喜ばれる贈り物が知りたい」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、お中元の意味や贈る時期といった基本のマナーから、相手に喜ばれる品物の選び方、贈る際のマナーまで、詳しく解説します。お中元に関する疑問やお悩みを解決して、感謝の気持ちを伝えましょう。
お中元とは?意味と由来

お中元は、いつどこで始まったのでしょうか?
その起源には諸説ありますが、中国から平安時代に伝わり、江戸時代に広まったとされています。もともとは日頃の感謝や思いやりを示す贈り物として発展し、食品や日用品を贈る習慣が根付いていきました。
また、盂蘭盆会(うらぼんえ)とも関係があり、祖先供養の意味も含まれているとされています。室町時代には公家が乾麺を贈り、江戸時代には庶民の間にも広まりました。特に、健康や無病息災を願い、麺類が好まれたといわれています。さらに、商人が取引先へ贈る習慣が加わり、現在のお中元の形へと発展しました。
お中元は元々、インドの仏教行事に由来し、先祖供養が起源といわれ、「盂蘭盆会(うらぼんえ)」に由来するという説が有力です。お釈迦様の弟子の木蓮が、亡くなった母親を救うために供養を行ったという故事が起源とされています。これが中国を経て日本に伝わり、元々は先祖供養や親族への贈り物が中心でしたが、時代とともに日頃お世話になっている方への贈り物へと変化しました。
お歳暮との違い
お中元とお歳暮は、どちらも日本の贈答文化で重要な役割を担いますが、時期と意味合いが異なります。お中元は夏の贈り物で、日頃の感謝を伝えるため、7月上旬から8月中旬に贈ります。一方、お歳暮は年末の贈り物で、1年間の感謝を込めて11月末から12月20日頃に贈ります。
地域によって時期が異なる場合もあり、2つあわせて「盆歳暮」とも呼ばれます。
お歳暮は日本の商習慣に由来し、年末の支払いの際に顧客へ感謝の品を贈ったことが始まりです。こちらも現代では、1年間の感謝を込めて贈る年末の贈り物として定着しています。お中元とお歳暮はセットで贈られることが多いですが、近年ではお歳暮を重視する傾向があります。
お中元を贈る時期と地域差

お中元を贈る時期は、地域ごとのお盆の習慣に影響を受けています。一般的に、東日本(関東・東北)では早めに贈る傾向があり、西日本(関西・四国・九州)では比較的遅めに贈られることが多いです。地域ごとの習慣を考慮し、適切な時期に贈ることがマナーとされています。
一般的な贈る時期
お中元を贈る時期は地域によって異なるため、相手の住んでいる地域の習慣を把握することが大切です。
近年では全国的に7月1日から8月15日の間に贈る傾向が強まっていますが、地域ごとの違いも考慮することが大切です。贈る際は、相手の地域の習慣を確認し、適切な時期に贈ることを心がけましょう。
エリア | 時期 |
---|---|
北海道 | 7月15日から8月15日 |
関東地方 | 7月1日から7月15日頃 |
関西地方 | 8月1日から8月15日(現代では7月1日から8月15日まで) |
九州地方 | 8月1日から8月15日が一般的ですが、かつては7月中に贈ることも多かったため、地域によって異なる場合があります。 |
沖縄 | 旧暦のお盆に合わせるため、毎年贈るべき日が異なり、注意が必要です。 |
最近では、準備を早める人が増えており、百貨店などでは早期からお中元商戦が始まるなど、6月頃から商品が並んでいます。冠婚葬祭などの習慣は地域によって差がある場合があるので、贈り先のエリアの適切な時期を確認しましょう。
今さら聞けない?お中元の基本マナー

お世話になっている方への感謝の気持ちを込めて贈るお中元。贈る相手から熨斗(のし)の書き方、贈ってはいけないものまで、意外と知らないマナーも多いのではないでしょうか。
ここからは、トータルマナー株式会社の田野さんに、お中元の基本マナーについて解説していただきます。誰に贈るのか熨斗や包装のマナー、避けるべき贈り物、そして万が一遅れてしまった場合の対応まで、お中元に関するさまざまな疑問を解消しましょう。
贈る相手は誰か
お中元は、日頃の感謝の気持ちを形にする贈り物です。誰に贈るべきか迷う方もいるかもしれませんが、基本的には「お世話になっている方」へ贈ります。相手との関係性を考慮し、心を込めて贈り物をすることで、より良い関係を築くことができるでしょう。
職場の上司
日頃の指導やサポートへの感謝を込めて。特に、個人的にお世話になっている方には、心を込めた品を選びましょう。
取引先
ビジネスパートナーとして、日頃の協力関係に感謝の気持ちを伝えます。今後の良好な関係を築くためにも、丁寧な贈り物を選びましょう。
親族
両親、兄弟、親戚など、普段なかなか会えない家族へ贈るのも良いでしょう。特に遠方に住む家族には、近況を知らせる良い機会になります。
恩師
学生時代にお世話になった先生や、習い事の先生など、人生の師と仰ぐ方へ感謝の気持ちを伝えます。
お中元、上司、取引先、親族、恩師など、お世話になっている方々に贈ります。特に、普段なかなか会えない家族や親族に贈ることは、感謝の気持ちを伝える良い機会となります。お中元の金額の目安は、一般的に3,000円から5,000円程度とされています。あまり高価なものを贈ると、相手に気を遣わせてしまう可能性があるので注意が必要です。最も大切なのは、ご自分の家庭の状況に合わせて、無理のない範囲で贈ることです。相手への感謝の気持ちを込めて、品物を選ぶことが重要です。
熨斗(のし)や包装のマナー
贈り物には、感謝の気持ちを表す熨斗(のし)と包装が欠かせません。お中元用の熨斗紙には「御中元」と表書きし、贈り主の名前を丁寧に書き入れます。毛筆や筆ペンを使用するのが正式なマナーです。
熨斗の掛け方には「外熨斗」と「内熨斗」の2種類があります。外熨斗は、包装紙の上からのし紙をかける方法で、差出人の名前を知らせたい場合に適しています。一方、内熨斗は包装紙の内側にのし紙をかける方法で、配送する際や、贈り物が傷つかないように配慮したい場合に適しています。どちらを選ぶかは、贈る状況や相手との関係性によって判断しましょう。
お中元は日頃の感謝を示す大切な贈り物です。熨斗紙は贈答の意思表示であり、感謝と敬意を表すために必要です。無地の熨斗紙は避け、贈る目的を明確にしましょう。贈り主の名入れは、基本的には世帯主です。ご夫婦であればご主人の名前が一般的でしょう。奥様の実家へ贈る場合も同様です。これは、世帯としての贈り物を意味するためです。熨斗と名入れは、相手への感謝の気持ちを伝える上で重要な役割を果たします。
贈ってはいけないもの
お中元は日頃の感謝を伝える贈り物ですが、贈る品物には注意が必要です。まず、刃物やハサミなどの「切れるもの」は、縁を切ることを連想させるため避けましょう。香典など、不幸を連想させるものも同様です。生鮮食品は鮮度が落ちやすく、相手に迷惑をかける可能性があるため不向きです。
また、アレルギーを引き起こしやすい食品や、香辛料などの嗜好が分かれる食品も避けましょう。特に、高齢者や小さな子どもがいる家庭に贈る場合は、食品選びに細心の注意が必要です。
お中元を贈る際、家族構成がわからずに量が多すぎるものを選んでしまうことがあります。特に夫婦2人暮らしの場合、大量の品よりも、少量でも高級なものの方が喜ばれることが多いです。さらに、贈り物にはマナーがあり、下着や靴下など肌に直接触れるものは、希望がない限り避けた方がよいでしょう。また、金券は現金と同じ扱いになるため、カタログギフトの方が無難です。他にも、櫛やハンカチは「苦」や「別れ」を連想させるため、相手によっては避けた方がよいでしょう。偶数・奇数の考え方もありますが、最近はあまり気にしない人も増えています。
遅れた場合の対応
お中元の時期を過ぎてしまった場合は、適切な対応を取ることが大切です。7月15日を過ぎ、立秋(8月8日頃)までに贈るなら「暑中見舞い」、立秋以降であれば「残暑見舞い」として贈るのが一般的です。また、贈り物を送る前に「送り状」を用意すると、気持ちをしっかり伝えられます。
さらに、遅れた理由を簡潔に説明した手紙を添えると、より丁寧な印象を与えます。相手への配慮を忘れず、心のこもった対応を心がけましょう。
お中元の時期を過ぎてしまった場合は、お世話になった感謝の気持ちを伝える手紙を添えると丁寧です。特に、お中元は一度贈ると最低3年は継続するのが習慣とされているため、単発のお礼なら手紙だけで気持ちを伝えるのも一案です。3年後にやめたい場合は、品物を贈らず、お礼の手紙のみを送り「今年で最後に」と伝えるのが自然な流れ。相手に負担をかけない配慮が大切です。
喜ばれるお中元の選び方

日頃の感謝を込めて贈るお中元。せっかく贈るなら、相手に喜んでもらいたいですよね。しかし、どのようなものが喜ばれるのか、どう選べば良いのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
お中元の贈り物の選び方から贈る際のマナーまで、詳しく解説します。
消費できる「消え物」
お中元を選ぶ際、相手に喜ばれ、かつ負担にならない贈り物として、「消え物」がおすすめです。消え物とは、食品や飲料、日用品など、使ったり食べたりすればなくなるものを指します。形に残らないため、相手に気を使わせにくい点が魅力です。食品類では高級フルーツや和菓子、洋菓子、そうめん、海産物などが人気です。飲料類ではジュースやビール、コーヒー、紅茶などがよく選ばれます。
また、調味料として高級オイルや醤油、だしセットなども喜ばれる品のひとつです。さらに、洗剤やタオル、石鹸などの日用品も実用的で、幅広い世代に受け入れられやすいでしょう。
親しい間柄なら、相手が欲しいものを直接聞いたり、普段の会話から好みを把握したりするのも良いでしょう。家族構成や好みが分からない場合は、基本的に後に残るものは避けた方が良いでしょう。
相手が喜んでくれるものを贈る
お中元選びでは、相手のライフスタイルや嗜好に合わせることが大切です。お酒を飲まない家庭にはアルコール以外の飲料やお茶を選ぶ、健康志向の方にはオーガニック食品を贈るなど、配慮のある選び方が喜ばれます。
また、最近ではカタログギフトも人気です。相手が自由に好きな商品を選べるため、好みが分からない場合にもおすすめです。相手が気持ちよく受け取ってくれるよう、心を込めてお中元を選びましょう。
お中元は、相手に喜んでもらうことが一番の目的です。そのため、相手との関係性や好みを考慮して品物を選ぶことが大切です。相手の趣味嗜好がわからない場合は、特に注意が必要です。
直接渡す vs. 配送、どちらが良い?
お中元を贈る際、直接訪問して手渡すか、配送するか迷う方もいるでしょう。どちらの方法も失礼には当たりません。直接訪問して渡す場合、事前に相手の都合を確認し、訪問日時を調整しましょう。特に忙しい時期は、相手の負担にならないよう配慮が必要です。「心ばかりですが」「お口に合うと良いのですが」などの言葉を添え、感謝の気持ちを伝えましょう。のし紙が相手から見えるように、向きを正して渡します。
一方、配送の場合は遠方の方や忙しい方に贈る際に便利です。感謝の気持ちや贈り物の説明を添えましょう。どちらの方法を選んだとしても感謝の気持ちを伝えることが一番重要です。
お中元を贈る際、直接手渡しするのが最も丁寧ですが、現代では配送も一般的になっています。品物が届く前に、葉書などで送り状を出すのが丁寧です。「いつ、どこから、何を贈ったか」を知らせると親切です。配送日を指定している場合でも、事前に連絡しましょう。目上の方へは葉書や手紙など、正式な手段で連絡しましょう。親しい方の場合はLINEや電話など、普段使っている連絡手段で問題ありません。
お中元を受け取った際のマナーQ&A
お中元は贈るだけでなく、受け取った際のマナーも大切です。相手の心遣いに感謝し、失礼のない対応をすることで、今後の良好な関係に繋がります。お中元を受け取った際の適切な対応や、お返しをする必要があるのかなど、知っておきたいマナーについて見ていきましょう。
品物が届いたら、できるだけ早くお礼を伝えるのがマナーです。手紙や葉書で感謝の気持ちを伝えるのが最も丁寧です。親しい間柄であれば、電話やメールでのお礼でも問題ありません。
お中元は基本的に「お返しなし」の贈り物です。お返しをすると、相手に気を使わせてしまうことがあります。ただし、感謝の気持ちを伝えることは大切です。お中元を受け取った後、お礼状はできるだけ早く、受け取った日から1〜2日以内に送りましょう。
現代のマナーにおいて最も重要なのは、相手への心遣いです。相手に喜んでもらえるよう、心を込めて行動しましょう。
まとめ:心のこもったお中元で感謝を伝えよう

お中元は、日頃の感謝を伝える大切な機会です。マナーを守ることで、より一層気持ちが伝わり、相手との絆を深めることができます。形式にこだわるだけでなく、相手の好みや家族構成などを考慮し、心を込めて品物を選ぶことが大切です。贈る時期や贈り方、受け取り方など、基本的なマナーを理解し、心のこもったお中元で感謝の気持ちを伝えましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。