海外には、不動産投資で日本よりも高い利回りが見込める国が多数存在しています。本記事では、2025年最新データに基づき、世界の都心部賃貸収益率ランキングをご紹介します。ただし、海外不動産投資にはリスクが伴うため、経済成長、法規制、税制、為替、政治安定性、物件管理、出口戦略といった選び方の他、リスク対策についても徹底解説は欠かせません。
高利回りの魅力と潜在的リスクを理解し、賢く海外不動産投資を始めましょう。
- 2025年最新の世界の都心部賃貸収益率ランキングから、高利回り国の実情と、その背景にある経済・社会特性を具体的に理解できる。
- 海外不動産投資における「経済成長」「法規制」「税制」などの多角的な視点から、投資先選びで見落としがちな重要ポイントを把握し、失敗を防ぐヒントが得られる。
- 地域ごとの特性を踏まえた投資戦略の立て方や、リスクと収益性のバランスを見極める具体的なアプローチを検討できる。


【2025年最新版】世界の都心部賃貸収益率ランキング

世界中の生活費に関するデータを掲載したオンラインプラットフォーム「Numbeo」によれば、世界各国における都心部の賃貸収益率ランキングは以下のようになっていました。
【世界】都心部の賃貸収益率ランキング(104か国中)
ランク | 国 | 都心部の賃貸収益率 |
---|---|---|
1 | キューバ | 24.0 |
2 | アメリカ合衆国 | 11.7 |
3 | 南アフリカ | 10.3 |
4 | カメルーン | 9.2 |
5 | ベネズエラ | 9.0 |
6 | パナマ | 8.7 |
7 | キルギスタン | 8.5 |
8 | ジョージア | 8.1 |
9 | カザフスタン | 7.8 |
10 | アイルランド | 7.7 |
(省略) | ― | ― |
99 | 日本 | 2.1 |
参考:Numbeo|Gross Rental Yield City Centre by Country 2025
日本は調査対象となった104ヵ国中99位という結果に終わっています。収益性の高さだけに着目すると、あえて日本ではなく海外で不動産投資をすることには一定のメリットがあると言えるでしょう。
世界トップ10の高収益国と市場特性
世界トップ10の高収益国の市場特性について、それぞれ見ていきましょう。
【キューバ(24.0%)】
キューバの不動産市場が高収益な背景には、政府による規制緩和と観光客からの短期賃貸需要の増加があります。ただし、インフラの老朽化や、基本サービスの不足、他のカリブ海地域に比べて競争力が低下しているため、観光客が減少傾向にある点には注意が必要です。
【アメリカ合衆国(11.7%)】
経済規模が大きく、流動性の高い市場です。主要都市では高い需要と安定した賃料収入が見込めますが、物件価格が高く、州によって法規制や税制が異なるなど、仕組みが複雑なため、綿密な調査が必要です。
【南アフリカ(10.3%)】
豊富な鉱物資源と整備されたインフラを持つアフリカ経済の要です。外国人による不動産取得に規制が少なく投資しやすい反面、治安の悪化や社会情勢の不安定さがリスクとして挙げられます。特にヨハネスブルグのような一部都市では、治安に十分な注意が必要です。
【カメルーン(9.2%)】
中央アフリカの経済ハブであり、人口増加と都市化が進んでいます。一方で、法規制の未整備や政治的腐敗が投資リスクとなる可能性があります。
【ベネズエラ(9.0%)】
豊かな石油資源を持つ国ですが、深刻な経済危機と、独裁政権による政治的不安定さにより、ハイリスク・ハイリターンの市場となっています。現在の情勢では、新規の投資は極めて高いリスクを伴うでしょう。
【パナマ(8.7%)】
パナマ運河を中心とした国際貿易の要衝で、経済成長が著しい国です。外国人投資家にも開かれた法制度が魅力ですが、成長が鈍化している点と、不動産市場の過熱には注意が必要です。
【キルギスタン(8.5%)】
中央アジアに位置し、経済発展途上の新興国です。人口増加を背景に不動産市場の成長が見込まれる一方で、政治的安定性や法制度の透明性に課題があります。
【ジョージア(8.1%)】
観光業が盛んで、不動産投資について、比較的外国人に友好的な政策をとっています。一方で、ロシアとの領土をめぐる緊張が続いているなど地政学的なリスクが懸念されます。
【カザフスタン(7.8%)】
豊富な天然資源を有し、中央アジア最大級の経済規模を持つ国です。政府による経済改革が進んでいますが、政情の変動や電子化による国民の監視体制の強化がリスクとなりえます。
【アイルランド(7.7%)】
欧州のITハブとして発展し、若い労働人口の流入が住宅需要を押し上げています。ただし、近年は住宅価格が高騰しており、市場の過熱に注意が必要です。
地域別ランキングから見る投資チャンス
一口に海外での不動産投資といっても、どこで行うかによって収益率は大きく異なります。
ここでは、ヨーロッパ・東南アジア・東アジアの3つの地域における都心部の賃貸収益率を比較してみましょう。
【ヨーロッパ】都心部の賃貸収益率ランキング(40か国中)
ランク | 国 | 都心部の賃貸収益率 |
---|---|---|
1 | アイルランド | 7.7 |
2 | モルドバ | 6.8 |
3 | アイスランド | 6.1 |
4 | モンテネグロ | 5.7 |
5 | ポルトガル | 5.6 |
6 | マルタ | 5.5 |
7 | ウクライナ | 5.4 |
8 | ベラルーシ | 5.3 |
9 | スペイン | 5.3 |
10 | オランダ | 5.0 |
参考:Numbeo|Europe: Gross Rental Yield City Centre by Country 2025
ヨーロッパの不動産投資は、全体的に安定しているものの、利回りは新興国に比べて控えめです。首位のアイルランド(7.7%)はIT産業の発展で家賃が急騰中ですが、価格高騰に注意しましょう。モルドバ(6.8%)は農地・森林以外の不動産は外国人でも所有可能ですが、規制動向の確認が重要です。
アイスランド(6.1%)は治安が良い半面、外国人所有に許可が必要になります。ウクライナ(5.4%)は高利回りながら、紛争中のため極めて高いリスクを伴います。ヨーロッパは比較的リスクが低い傾向にありますが、安定性と収益性のバランスを考慮し、各国特有の規制やリスクを理解したうえでの投資判断が不可欠な点は変わりません。
【東アジア】都心部の賃貸収益率ランキング
ランク | 国 | 都心部の賃貸収益率 |
---|---|---|
1 | 日本 | 2.1 |
2 | 香港(中国) | 1.9 |
3 | 中国 | 1.6 |
4 | 台湾 | 1.4 |
5 | 韓国 | 1.2 |
参考:Numbeo|Eastern Asia: Gross Rental Yield City Centre by Country 2025
東アジアでは、日本が首位にランクインしています。ランキング5位の韓国では、中央銀行にあたる韓国銀行が政策金利を引き上げたことで、住宅ローンの返済負担が増加しました。このことがきっかけで不動産投資に対し消極的な国民が増えていましたが、現在は政策金利が低下傾向にあるため、再び需要が旺盛になる可能性もあります。
なお、韓国で外国人が不動産を取得すること自体は可能ですが、韓国内の居住状況、個人または法人によって適用される法令および手続きが異なるため注意しましょう。
【東南アジア】都心部の賃貸収益率ランキング
ランク | 国 | 都心部の賃貸収益率 |
---|---|---|
1 | インドネシア | 6.2 |
2 | マレーシア | 3.8 |
3 | ベトナム | 3.0 |
4 | フィリピン | 3.0 |
5 | タイ | 2.9 |
6 | シンガポール | 2.9 |
参考:Numbeo|South-Eastern Asia: Gross Rental Yield City Centre by Country 2025
東南アジアでは、経済成長が著しいインドネシアが6.2%と高い収益率を示しています。タイでは、外国人によるコンドミニアムの区分所有が認められていますが、土地の所有は原則として禁止されています。フィリピンでは、外国人はコンドミニアムの総床面積の40%までしか所有できないといった規制があります。
日本との利回り比較で見える海外投資の魅力
日本の都心部の賃貸収益率が2.1%であるのに対し、キューバの24.0%など、驚くべき高利回りを示す国々と比較すると、その差は最大で10倍以上にもなります。東アジア5か国の中でも、日本は最も高い収益率ですが、それでも世界の平均と比較すると低い水準にあります。
なぜ、国内外でこれほど収益率に差がつくのでしょうか。その主な理由は、経済成長率、人口動態、金利水準、そして不動産市場の需給バランスにあります。
日本は少子高齢化が進み、人口減少に直面しているため、不動産需要の伸びが限定的です。 また、低金利が長期間続いていることで、国内不動産投資の収益性は頭打ちとなっている傾向があります。一方で、高収益の国々は、急速な経済成長、若年層の人口増加、都市化の進展などにより、賃貸需要が旺盛です。さらに、高金利政策を取っている国では、賃貸利回りも高くなる傾向があります。
これらをふまえ、改めて日本国内投資と海外投資のメリット・デメリットを比較してみましょう。
日本国内投資 | 海外投資 | |
税 | 比較的明確な税制。譲渡益課税など。 | 各国で税制が大きく異なる。二重課税のリスク、税制優遇も。 |
為替 | 為替リスクなし。 | 為替変動リスク(円高・円安)が直接収益に影響。 |
法規制 | 馴染みがあり、理解しやすい。 | 各国の法規制、外国人所有制限、不動産登記制度など調査が必須。 |
管理コスト | 現地での管理会社選定が容易。日本語対応が可能。 | 現地管理会社との連携、言語の壁、遠隔での管理コスト。 |
海外投資の最大の魅力は、よりも高収益を追求できる可能性がある点です。さらに、日本の経済状況だけに頼らずに投資先を分散できる点も重要です。特定の地域に投資が集中するリスクを減らすことで、全体の投資リスクを抑えられます。
海外不動産投資でおすすめの国を選ぶ7つのポイント

海外不動産投資は、日本での不動産投資とは違い、さまざまな点に配慮して進めなくてはいけません。何となく収益が出そうだから、という理由で安易に選ぶと失敗する可能性は十分にあります。
以下では、失敗を防ぐためのポイントについて解説します。
経済成長率と人口動態
経済が成長し、人口が増加する国では、不動産需要が高まり、結果として賃料収入の増加や物件価格の上昇が期待できるでしょう。具体的には、GDP成長率、人口増加率、都市化率が高い国のほうが、長期的な不動産投資において有利と言えます。
例えば、インドネシア、フィリピン、インドなどは、若年層が豊富で都市部への人口流入が続き、不動産需要が旺盛です。
特に、生産年齢人口が多く経済成長が加速しやすい「人口ボーナス期」の国は大きなチャンスを秘めていると言えます。ただし、将来を予測するには、政府の経済政策やインフラ計画などを踏まえた総合的な判断が必要です。
また、現在の高い成長率だけでなく、それが持続可能か、また不動産市場に適切に反映されるかを見極めないと、不動産バブル崩壊の影響を受ける可能性があります。こうした失敗を回避するには、経済成長や人口増加のデータに加え、実際に住宅着工数や賃貸契約数が伸びているかなど、具体的な不動産市場の需給データを確認しましょう。
法規制と外国人投資家への開放度
海外不動産投資における出口戦略と流動性は、投資の成功を左右する最終的に最も重要な要素の一つです。外国人による不動産所有は国ごとに大きな制限があるため、これを怠ると投資自体が不可能になることもあります。たとえば、タイではコンドミニアムの外国人所有比率が49%まで、ベトナムでは総戸数の30%までといった制限が設けられています。
一方で、マレーシアのように外国人に対して比較的寛容な国もありますが、それでも最低購入価格が定められているケースが見られます。また、各国は外国人投資家向けの優遇制度を設けることもありますが、ポルトガルのゴールデンビザのように近年では規制強化や廃止の動きが見られるため注意が必要です。
投資家が陥りやすい失敗としては、現地エージェントの「大丈夫」という言葉を鵜呑みにしてしまう点が挙げられます。現地の法規制は複雑であり、解釈を誤るとトラブルに巻き込まれる可能性があります。
失敗を防ぐためには、対象国の不動産関連省庁の公式情報源を定期的に確認し、さらに現地の弁護士や専門家から複数の意見を聞いて、最新情報を自ら把握できる体制を整えることが重要です。
税制優遇と投資コスト
海外不動産投資を検討する際には、対象国の税制優遇とそれに伴う投資コストを事前に把握することが重要です。なぜなら、税金やさまざまな諸費用は、物件の表面的な利回りを大きく下回る要因となり、最終的に投資家が手にする収益に直接影響するからです。
不動産を取得する際には、印紙税や登記費用、仲介手数料といった費用が発生し、これらの金額は国によって大きく異なります。また、物件を保有している期間中は固定資産税や賃料収入に対する所得税が課され、将来的に物件を売却する際にはキャピタルゲイン課税が適用されます。これらの税率や計算方法、さらには日本の税制との関係(例えば外国税額控除が適用されるかなど)についても、詳細な確認が不可欠です。
実質利回りを算出するための計算方法は、表面利回りからこれらの諸費用や税金を差し引いたものです。
例えば、物件価格1,000万円、年間賃料収入60万円(表面利回り6.0%)の物件があるとします。
項目 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
物件価格 | 1,000万円 | – |
年間賃料収入 | 60万円 | – |
取得時諸費用 | 50万円 | 印紙税・登記費用・仲介手数料など |
年間固定資産税 | 5万円 | – |
年間管理費用 | 10万円 | – |
年間所得税 | 3万円 | – |
この場合、年間手残り収益は 60万円−5万円−10万円−3万円=42万円 となります。
実質利回りは 42万円/(1,000万円+50万円)×100=約4.0 %となり、表面利回りの6.0%から大きく減少することがわかります。
税制優遇措置が用意されていたとしても、特定の条件を満たす場合にのみ適用となることも多くあります。シンガポールで外国人向けの追加印紙税が導入されるなど、将来的に税制自体が変更になる可能性も常に存在するため、安易に税制優遇だけで投資先を選んでしまうと、予期せぬコスト増につながるリスクがあります。
失敗を避けるためには、不動産の取得時、保有期間中、そして売却時の全ての段階で発生する税金と諸費用を具体的に算出し、それらを踏まえたうえで実質的な利回りを計算することが大切です。これにより、想定外のコストによる収益の減少を未然に防ぐことができます。現地の税制の最新情報も、常に収集しておきましょう。
為替リスクと通貨安定性
海外不動産投資では、為替リスクと通貨の安定性が投資収益を大きく左右する非常に重要な要素となります。なぜなら、物件購入時の外貨支払い、そして受け取った外貨建ての賃料収入を日本で使用するために円に交換する際など、あらゆる場面で為替変動の影響を受けるからです。
これにより、為替レートの動き次第では期待していた利益が減少したり、最悪の場合には損失が発生したりする可能性もあります。
このようなリスクを軽減するために、為替予約といった通貨ヘッジの活用も有効な手段ですが、これには当然コストがかかるため、その費用対効果を慎重に検討すべきでしょう。投資先の通貨が安定しているかを評価するには、その国のインフレ率、金利政策、財政状況といった経済指標を注意深く観察することが大切です。
例えば、高金利だからその国の通貨は安定していると安易に判断してしまいがちですが、実際には、高金利政策は高すぎるインフレを抑制するために導入されることもあり、必ずしも通貨が安定していることを示すわけではありません。
したがって、投資先の通貨の過去の変動履歴に加え、その国のインフレ率や金利政策の推移も合わせて分析することが重要です。
その国の経済が健全かどうか、政府の財政は安定しているか、貿易は黒字か赤字か、物価が安定しているかなど、通貨の強さを決める基本的な経済状況をきちんと把握する基準を持つことが、海外不動産投資における為替リスク管理において非常に大切になります。
H3:2-5.政治的安定性とカントリーリスク
政治体制の不安定さや治安の悪化は、法制度の突然の変更、資産没収、社会混乱などを引き起こし、不動産価値の暴落や投資の回収不能に直結する危険性があります。
政治体制、治安状況、法制度の安定性を評価する指標として、世界各国の平和度を数値化した世界平和度指数(Global Peace Index)などが参考になります。
順位 | 国名 | スコア |
---|---|---|
1位 | アイスランド | 1.095 |
2位 | アイルランド | 1.260 |
3位 | ニュージーランド | 1.282 |
4位 | オーストラリア | 1.294 |
5位 | スイス | 1.294 |
6位 | シンガポール | 1.357 |
7位 | ポルトガル | 1.371 |
8位 | デンマーク | 1.393 |
9位 | スロベニア | 1.409 |
10位 | フィンランド | 1.420 |
出典:シンクタンク経済平和研究所(Institute of Economics and Peace:IEP)「世界平和度指数2024年版(Global Peace Index 2024:GPI)」
シンガポールやマレーシアのように政治的に安定した国がある一方で、2022年2月から紛争が続くウクライナ(162位)や、過去に内戦や麻薬問題に直面したコロンビア(140位)のように政情不安定な国への投資は、極めてリスクが高いことを認識すべきです。カントリーリスクは政治的側面だけでなく、経済的・社会的・環境的リスクも含むため、それらが不動産投資に与える影響と対策方法を検討しましょう。
高リターンが見込める新興国だからという理由だけで、政治的・社会的なリスクを軽視してしまいがちです。高リターンには常に高リスクが伴うという原則を忘れず、最悪のシナリオも想定しておきましょう。
投資を検討する国の政府発表、国際機関のレポート、大手メディアの報道など、複数の情報源から政治情勢や治安情報を確認し、現地の生きたデータを多角的に分析する基準を持つことが重要です。
物件管理の容易さと現地サポート体制
自身が所有する物件であっても、遠隔地にあるため頻繁に足を運ぶのは現実的ではありません。そのため、精神的・肉体的な負担なく管理を任せられる環境が不可欠です。具体的には、日本からのフライト時間が短く、時差が少ない国を選ぶと良いでしょう。例えば、東京(羽田)からフィリピン(マニラ)へは約5時間、時差は1時間、タイ(バンコク)へは約7時間、時差は2時間と、比較的アクセスしやすい国もあります。
現地の管理費用は、フィリピンの場合、月額賃料総額の8~12%、タイ(バンコク)では賃料収入の10~20%が相場とされていますが、これらはあくまで参考であり、実際の価格は物件や管理会社によって異なりますので、事前に確認が必要です。
管理は現地会社に任せることが多いため、質の良い管理会社を選ぶことが極めて重要です。特に、日本語対応が可能な会社を選ぶと、コミュニケーションの障壁が低くなり、トラブル発生時にも迅速な対応が期待できます。
管理費用が安いという理由だけで管理会社を選ぶと、サービスの質が低く、トラブル対応の遅れや物件メンテナンスの不備から、結果的に大きな損失につながる可能性があります。遠隔管理の限界を理解せず、現地パートナー選びを疎かにしてしまうと失敗に繋がりやすいでしょう。
物件購入前に、複数の現地管理会社から見積もりを取り、日本語対応の有無、レポート頻度、緊急対応などサービス内容を比較検討し、信頼と実績のあるパートナーを見つけることが重要です。
出口戦略と流動性
海外不動産投資では、出口戦略と流動性が成功を左右します。売却時の規制(保有期間制限など)や売却益への課税は、最終的な手取り額に大きく影響するため、投資前に必ず確認が必要です。
【主要国の売却時税金例】
- アメリカ合衆国: 売却益に連邦税(長期保有優遇あり)、州独自の税が加わる場合も。外国人には売却代金の一部源泉徴収(FIRPTA)あり。
- オーストラリア: キャピタルゲイン税。12ヶ月超保有で課税対象利益が50%軽減。非居住者には源泉徴収税。
- タイ:印紙税、特定事業税(短期保有の場合)。源泉徴収税は、個人の場合、不動産評価額に基づいて累進税率で計算される。
国によって税率や費用が大きく異なるため、専門家への相談が不可欠です。
中古物件市場の成熟度も重要です。都市部は活発ですが、地方やニッチな物件では買い手が見つかりにくいことも。過去の取引事例、流通物件数、平均売却期間で評価しましょう。
売却タイミングは、経済成長率、金利、不動産価格指数、専門家情報から見極めます。安易に、「流動性が高い=売りやすい」と判断してしまうと、想定外の高い税金や、売却に時間がかかり維持費で利益が目減りするケース、売却代金の国外送金制限で資金が塩漬けになることも起こり得ます。
投資前に売却時期を設定し、税金や費用、流動性を考慮した現実的なシミュレーションを行うことで、明確な出口戦略を立て、後悔のない投資を目指しましょう。
アジア・欧米・新興国の地域別投資比較

海外不動産投資において、投資エリアの選択は収益性とリスクを左右する重要な要素です。東南アジアは非常に成長性が高く、魅力的な投資エリアとして、経済成長に伴い、都市化が進み、人口増加も著しいことから、不動産市場は活況を呈しています。一方で、欧米市場は安定性と流動性において優位性を持ち、新興国は高い利益率が狙える可能性があります。
東南アジア各国の収益率と投資環境分析
東南アジアは、その目覚ましい経済成長と旺盛な人口増加、そして国際的な観光需要の高さから、海外不動産投資において特に注目される地域です。しかし、一口に東南アジアといっても、各国で収益率や市場特性が大きく異なるため、それぞれの投資環境を詳細に分析することが重要です。
国 | 収益率 | 市場特性 |
---|---|---|
インドネシア | 6.2% | 中間層の拡大が住宅需要をけん引、商業施設やオフィス開発も活発 |
マレーシア | 3.8% | 外国人投資家が比較的参入しやすい |
ベトナム・フィリピン | 3.0% | ベトナムは活発な開発が続いており、フィリピンはBPO産業の成長がオフィスや住宅の賃貸需要を押し上げている |
タイ・シンガポール | 2.9% | バンコクは外国人駐在員や観光客からの安定した賃貸需要があり、シンガポールは成熟市場でASEANの金融ハブとしての役割がある、 |
東南アジアの不動産市場は、各主要都市で独自の投資環境を持ちます。ジャカルタ(インドネシア)は人口増と経済成長で、若干陰りがあるものの、住宅・商業需要が依然として活発です。クアラルンプール(マレーシア)は外国人投資家が参入しやすく、コンドミニアムが人気を集めています。
ホーチミン(ベトナム)は急成長するコンドミニアム市場が魅力ですが法制度の透明性に注意が必要です。マニラ(フィリピン)は英語圏でBPO産業が需要を牽引し、バンコク(タイ)は観光需要が安定した成熟市場となっています。
これらの国々には高い経済成長率、旺盛な人口増加、堅調な観光需要という共通メリットがあります。しかし、法規制や治安、価格水準に国ごとの差異があるため慎重な選定が必要です。2015年のASEAN経済共同体(AEC)発足は、貿易・投資・人材の自由化を促し、企業進出や人口移動を活発化させることで、不動産需要をさらに押し上げています。
タイの経済回廊開発やベトナムへの直接投資の増加はその良い例で、長期的な不動産価値向上に繋がるでしょう。
ヨーロッパ市場の安定性と収益性のバランス
安定性・収益性のバランスが取れているという意味では、ヨーロッパ市場は優れています。以下の4つの国について、収益率と市場特性をまとめました。
国 | 収益率 | 市場特性 |
---|---|---|
アイルランド | 7.7% | Google、Microsoftなど世界的なIT企業の欧州本部を構える「ヨーロッパのシリコンバレー」。若い労働者が多く移り住んでおり、2010年から2022年の間に家賃は約84%値上がりしている。 |
モルドバ | 6.8% | ウクライナと同様旧ソ連構成国の一つであるが、2025年6月時点では政情は安定している。ただし、外国人による農地・森林以外の不動産の購入が禁止されているため、現実的には短期(1~3年)あるいは長期(5~99年)の賃貸借を取得する形での投資となる。 |
アイスランド | 6.1% | 2008年から連続して世界平和指数首位を維持しており、殺人・暴力犯罪の発生件数が極めて少ない。ただし、国籍が欧州経済圏(EEA)加盟国以外の外国人が不動産を取得する場合、法務大臣の許可が必須。 |
ウクライナ | 5.4% | モルドバと同様旧ソ連構成国の一つ。海外からの投資を呼び込むため、10万ドル以上の不動産投資をした外国人に対し、無期限の永住権を付与している。多数の国外IT企業が開発拠点を置いていることから「東欧のシリコンバレー」とも呼ばれる。 |
ウクライナは2022年2月からロシアと戦闘状態にあり、2025年6月現在も外務省より退避勧告が継続して発令されています。そのため、物件の視察を目的として現地に渡航するのは現実的ではありません。しかし、日本の大手IT企業グループ・楽天が首都・キーウに新しいオフィスを開設するなど、戦争終結後を見据え徐々に海外からの投資も再開しつつあります。
また、ウクライナは地震が少ないうえに、物件を低価格で購入できるのが大きなメリットです。戦争終結後は、EUやNATOへの加盟およびそれに伴う西側諸国からの本格投資が開始されることが期待されます。国外に退避していたウクライナ人を始めとする住民が戻ってくる可能性がある以上、住まいの需要が増えるため、不動産投資でも一定の成果を見込めるでしょう。
高成長新興国のリスクとリターンの見極め方
高成長新興国への投資は、高いリターンが見込める反面、犯罪率の高さやクーデター・内戦の可能性が懸念材料となります。不動産投資で注目されるアフリカ諸国の収益率と市場t九生をまとめました。
国 | 収益率 | 市場特性 |
---|---|---|
南アフリカ | 10.3% | アフリカ大陸唯一のG20参加国であり、豊富な鉱物資源を有する工業国。インフラも欧州並みに整備されている。外国人の不動産取得に対し規制がないため取り組みやすいが、ヨハネスブルグなど治安が極めて悪い場所もあり、慎重な判断が必要。ケープタウンなど、比較的治安のよい場所の物件を購入するのが前提となる。 |
カメルーン | 9.2% | 発展途上のため豊富な資金需要があり、高い期待利回りが見込める。不動産税は存在するものの、取得税や管理費が安く、乱高下の少ない安定した市場との見方もあるが、土地所有権は一部制限されている。 |
ケープタウン | 9.53% | 高い利回りと比較的良好な治安が特徴。外国人駐在員や観光客による賃貸需要が高く、多様な高級物件やリゾート不動産が豊富。外国人規制は少ないものの、一部で価格高騰抑制の動きも見られる。 |
ヨハネスブルク | 11.38% | ヨハネスブルグは南アフリカ経済の中心地であり、アパートの平均賃貸利回りは約11.38%と高い。一方で、治安課題を抱えており、企業や住民の郊外移転が進んでいる。オフィス空室率が高い一方、高級住宅市場は回復基調。 |
新興国での不動産投資には一定のリスクもあるのが事実です。
大きなリスクとして「政治的・経済的不安」「言語の壁」が挙げられます。
国内で政治的・経済的な不安が起きれば、不動産投資をはじめとしたさまざまな経済活動に影響が波及するのは避けられません。例えば、南アフリカでは2021年7月にジェイコブ・ズマ元大統領が収監されたことを理由に、国内各所で暴動が起きました。また、新興国の場合、現地の不動産会社を通じて投資をすることになりますが、言語の壁も立ちはだかります。このような事情があるため、まずは日本語もしくは英語でやり取りができるエージェントを見つけるのが急務になるでしょう。
地域特性を活かした分散投資戦略
海外不動産投資において、地域特性を活かした分散投資戦略は、リスクを軽減しつつ安定的なリターンを追求するために非常に有効です。特定の地域や国に投資を集中させると、その地域の経済変動や政治リスク、自然災害などの影響を集中的に受けてしまうため、ポートフォリオ全体が脆弱になります。
異なる経済サイクルや市場特性を持つ地域に投資することで、どこかの市場が低迷しても、他の市場でカバーできる可能性が高まり、全体的なパフォーマンスの落ち込みを抑えることが可能となります。
分散投資の基本的な考え方として、以下の3つのタイプに分け、それぞれに適切な配分を行うことが推奨されます。
■先進国(安定性重視)
アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリアなどがこれに該当します。経済が成熟しており、法制度が整備されているため、賃料収入の安定性や流動性が高いのが特徴です。大きなキャピタルゲインは期待しにくいですが、ポートフォリオの安定化に大きく寄与します。
■新興国(成長性重視)
ベトナム、フィリピン、インドネシア、カンボジアなどが代表的です。高い経済成長率と人口増加を背景に、大きなキャピタルゲインや賃料収入の増加が期待できます。一方で、政治的・経済的リスク、法制度の未整備、為替変動リスクも高まります。
■中進国(バランス型)
マレーシア、タイ、ポルトガル、スペインなどが挙げられます。経済成長が一定程度進んでおり、法制度も整備されつつあるため、安定性と成長性のバランスが取れています。リスクとリターンのバランスを重視する投資家におすすめです。
為替リスクと地政学リスクを考慮した最適なポートフォリオ構築も重要です。例えば、2022年以降の急激な円安は、外貨建て資産の円換算価値を押し上げ、海外不動産投資の収益にプラスに作用しました。しかし、将来的な円高に転じた場合のリスクも考慮し、複数の通貨建ての不動産を組み合わせることで、為替変動の影響を緩和できます。
また、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻のような地政学リスクは、特定の地域の経済や不動産市場に壊滅的な影響を与える可能性があります。このようなリスクを避けるためにも、投資先を地理的に分散させることは極めて重要です。
以下に、投資目的別のポートフォリオ構築例を示します。
投資スタイル | 先進国 | 中進国 | 新興国 | 概要 |
---|---|---|---|---|
積極運用 | 20% | 30% | 50% | 高いリターンが狙えるが、地政学リスクが大きい |
バランス型 | 40% | 40% | 20% | 積極運用よりリスクを少し抑えつつも、ハイリターンを狙うスタイル |
安定型 | 50% | 40% | 10% | リスクを抑え、安定したリターンを狙うスタイル |
海外不動産投資の資金調達にセゾンの不動産フリーローンを活用

海外不動産投資の際、物件価格の20〜40%にも及ぶ初期費用は大きな課題となるでしょう。
そこで役立つのがセゾンの「不動産フリーローン」です。このローンは、ご自身が所有する自宅以外の国内不動産を担保に、最大10億円未満の融資が可能な点が最大の特長です。海外不動産を直接担保にすることが難しい他金融機関と比べ、国内資産を活用できるのは大きな強みと言えます。
このローンは、投資に必要な初期費用の調達に適した極度型ローンの形式をとります。設定された融資枠内で必要な時に必要な金額を借り入れられるため、海外物件の購入タイミングや諸費用、リフォーム費用など、さまざまな資金ニーズに柔軟に対応できます。
例えば、国内に投資用マンションを持つ40代会社員Aさんが、海外の3,000万円の物件購入で不足する1,000万円を調達したい場合、国内マンションを担保にセゾンのフリーローンを利用できます。このローンは事業性・投資性資金としても活用でき、さらに、最終返済回までの約定返済を利息のみにできる元金据置返済といった柔軟な返済方法も選択可能なため、海外物件からの賃料収入が安定するまでの負担を抑えられます。
融資枠の大きさや資金使途の自由度が高く、海外投資を後押ししてくれるでしょう。


おわりに
2025年最新の世界賃貸収益率ランキングによると、キューバが24.0%と突出するなど、海外不動産投資は高収益性が期待できます。海外投資は国内投資に比べ、経済成長、人口増加、金利水準、需給バランスといった要因で高利回りが期待できる一方、各国の法規制、税制、為替リスク、政治的安定性、物件管理、出口戦略など多角的な検討が不可欠です。
海外不動産投資の成功には、これらの多岐にわたるリスクとリターンを正確に把握し、適切な資金計画を立てることが重要です。
海外不動産投資の初期費用を用意する場合は、セゾンの不動産フリーローンが有効な選択肢となります。ご自身が所有する国内の自宅以外の不動産を担保に、最大10億円未満の融資が可能であり、海外不動産を直接担保とするのが難しいケースでも資金調達を支援します。資金使途が自由な極度型ローンで、元金据置返済も選択できるため、海外からの賃料収入が安定するまでの期間も柔軟に対応できます。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。