昨今のインフレや先行き不透明な金融市場を背景に、実物資産としての「不動産」に注目が集まっています。ただ、不動産に限りませんが、年を重ねるにつれて未経験の投資を始めるハードルはあがるもの。しかし、不動産投資に限っては「50代に向いている投資手法」だと、不動産投資専門FPの伊豫田誠氏はいいます。いったいなぜなのか、その根拠と不動産投資のコツについて詳しくみていきましょう。
“第2の年金”として、「不動産投資」を始める人が増えている
最近、日々の生活で食費や光熱費の値上がりを実感する機会が増えてきました。
一方、給料や貯金は思うように増えない……そのようななか、たとえば定年退職が現実味を帯びてきた50代であれば、「老後の資金が足りるのか」「年金だけで生活できるのか」といった不安を抱えている人も少なくないでしょう。
こうした経済環境もあり、インフレに強い実物資産として「不動産投資」に注目が集まっています。値動きの激しい株式やFX、低金利の預金とは異なり、やり方次第で安定的に家賃収入を得られる不動産を“第2の年金”として活用する人が増えているのです。
不動産投資のキホン…メリット・デメリット
ところで不動産投資とは、マンション・アパート・戸建て住宅・土地などの不動産を購入し、主に家賃収入※1や売却益※2を目的とする投資手法です。
※1 家賃収入……入居者から毎月安定して得られる収入
※2 売却益……不動産を売却したときに得られる利益
株式やFXのように1日に価格が大きく変動するわけではないため、初心者でも比較的取り組みやすい投資対象といえます。
不動産投資の主なメリットは下記の4つです。
不動産投資のメリット1．物価上昇（インフレ）に強い
不動産は、物価上昇（インフレ）にともなって家賃や物件価格が上昇する傾向にあります。よって、インフレで価値が下がる現金に対するリスクヘッジが期待できるのです。
不動産投資のメリット2．安定収入が得られる
所有する不動産に入居者がいる限り、安定した家賃収入を得ることができます。この家賃収入を継続して得るために物件オーナーはさまざまな工夫を講じるわけです。
不動産投資のメリット3．節税メリットを享受できる
不動産投資は、減価償却費やローンを利用することで、所得税や住民税の節税効果を得ることができます。特に、高収入の人にとっては不動産投資の節税効果が大きなメリットとなるでしょう。
不動産投資のメリット4．生命保険の代わりになる
不動産をローンで購入する際は団体信用生命保険への加入が必須です。これにより、万が一のときにローン残債が免除され、不動産を家族に遺すことができます。
一方、不動産投資には下記のようなデメリットも存在します。
不動産投資のデメリット1．空室リスク
当然ですが、所有する物件に入居者がいなければ家賃収入は得られません。入居者を確保するためには、良好な立地選びや管理方法の工夫が必要不可欠です。
不動産投資のデメリット2．初期費用が高い
いうまでもありませんが、不動産は高額な資産です。また、投資（物件の購入）にあたっては数百万円の初期費用が必要なケースがあります。頭金や仲介手数料、登記費用など、ある程度まとまった現金の準備が必要です。
不動産投資のデメリット3．災害や修繕リスク
不動産は自然災害（地震、火災など）や老朽化により、突発的に修繕費用が必要になるケースがあります。これに対する備えとして、火災保険や地震保険に加入し、定期的なメンテナンスを行うことが重要です。
不動産投資のデメリット4．一般的な金融商品よりも流動性が低い
不動産は株や債券、FXなどの金融商品と違って即座に売買できるわけではありません。売却を急ぐほど売却価格が希望どおりにいかない場合があるため、売却を見込んでの投資には時間的な余裕が必要です。
いくら慎重に考えても、投資ですからリスクはゼロにはなりません。しかし、事前に理解して適切な対策を講じることで「負けにくい不動産投資」を実践することは可能です。
不動産投資は「50代から始めても遅くない」といえるワケ
「投資は若いうちから始めるべき」とよくいわれますが、不動産投資は50代からのスタートでも遅くありません。むしろ、人生経験や資金力があるからこそ堅実に取り組みやすいという分、不動産投資は50代に向いている資産運用手法ともいえるでしょう。
不動産投資を50代から始めるメリットは、主に下記の3つが挙げられます。
信用力が高い
50代は長年の勤続実績や安定した収入を武器に、若い人よりも有利な金利条件でローンを組める可能性があります。
節税効果が得られる
50代は所得のピークにある人が多く、所得税や住民税の負担が大きくなりがちです。この点先述したように、不動産投資は減価償却費やローンの金利、管理費用などを経費として計上することができるため、課税所得を減らすことが可能です。高収入であるほど節税メリットが大きいため、家計にゆとりをもたらすことができるかもしれません。
現金価値の下落に備えることができる
足元のインフレ環境下、預貯金だけでは大切な資産を守ることが難しくなっています。そのようななか、一定の貯えがある50代だからこそ、その一部を不動産という実物資産に振り分けることで、インフレ対策や資産の目減り防止につなげることができるのです。
ローンは「完済できなくても大丈夫」
ここまで読んだ人のなかには「50代でローンを組むと、完済するには時間が足りないのでは？」と心配する人もいるかもしれません。実際、そのような相談を受ける機会も多いです。
しかし、不動産投資ローンに限っていえば、完済することが目的ではありません。
不動産ローンを組むと団体信用生命保険への加入が義務づけられるため、万が一のことがあってもローン残債は保険で相殺され、家族にはローンのない不動産をそのまま遺すことができます。
このように、不動産投資は冷静な判断と先々を見据えた戦略があれば50代からでも十分に始められる投資です。特に、時間的な制約があるからこそ、安定性・現実性を重視した“負けにくい投資手法”として不動産は最適な選択肢のひとつといえるでしょう。
ただし不動産投資には、年齢にかかわらず初心者がハマりがちないくつかの“落とし穴”が存在します。
初心者が不動産投資でハマりがちな「4つ」のリスク
不動産投資で失敗しないためには、リスクを「悪いもの」と捉えるのではなく、「想定して、備えるべきもの」として受け止めることが重要です。不動産投資で代表的なリスクは下記の4つです。
空室リスク
「空室リスク」は家賃収入が途絶える最大のリスクといえます。立地や需要のリサーチをしっかり行い「入居が決まりやすい物件」を選ぶことが最優先です。一般的に、利回りが高い物件ほど空室リスクも高い傾向になりますが、信頼できる管理会社と提携することで入居者募集や対応もスムーズになります。
修繕・老朽化リスク
建物は時間とともに劣化するため、修繕費やメンテナンス費用を見越して「修繕積立金」を確保しておくことが大切です。また、物件購入時の建物診断も有効でしょう。
金利上昇リスク
金利の上昇によって返済額が増えるリスクがあります。そのため、変動金利を選択する場合は金利上昇に備えた「返済余力」を持ってローンを組んでおきましょう。
自然災害などの突発的リスク
地震や火災などの突発的リスクに備え、火災保険・地震保険への加入は必須でしょう。また、ハザードマップを確認して災害リスクの低いエリアを選ぶことも重要です。
こうしたリスクは、適切な知識と事前対策によって回避・最小化できます。事前の情報収集と戦略立案を怠らなければ、不動産投資は初心者にとっても非常に扱いやすい資産形成の手段といえるでしょう。
不動産投資は、信用力と資金力が高い「50代」に向いている
不動産投資は、次のような特性や考え方を持つ人に向いています。特に50代は、信用力や資金面での強みがあり、スタートには最適な年代です。
・長期で安定収入を得たい人
……年金以外の収入を確保したい人にぴったりです。
・信用力と資金力がある人
……長年の勤続実績や潤沢な自己資金がある人はスタートしやすい環境にあります。
・現金の目減りを避けたい人
……インフレ下で現金を持ち続けるリスクに対し、不動産は有効な実物資産です。
まとめ…不動産投資は堅実に未来を築くための“有効な選択肢”
不動産投資は「安定収入」「インフレ対策」「節税」「資産承継」といった面で非常に実用的な資産形成手段です。特に、物価上昇が続いて先行きが見えにくい現在においては “守りながら増やす”という視点がますます重要になっています。
50代は“投資のラストチャンス”ではなく“不動産投資のスタートライン”です。信用力や資金力といった自らの武器を活かし、いまからでも“負けにくい投資”を始めてみてはいかがでしょうか。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。
