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50代からの不動産投資…インカムゲインとキャピタルゲイン、どちらを狙うのが正解?→現役大家の回答

50代からの不動産投資…インカムゲインとキャピタルゲイン、どちらを狙うのが正解?→現役大家の回答
伊豫田 誠(FP事務所ストラット代表・不動産投資専門ファイナンシャルプランナー)

執筆者

FP事務所ストラット代表・不動産投資専門ファイナンシャルプランナー

伊豫田 誠

1972年生まれ、愛知県出身。東証一部上場企業・外資系保険会社の勤務を経て、2005年に自動車販売修理店および保険代理店で独立する。その後、会社は年商2億・従業員数15名に成長し、個人でも不動産投資を行い経験や実績を重ね45歳のときにセミリタイヤ(FIRE)を達成する。2010年より「FP事務所ストラット」を開設し、会社員・公務員に向けて、最適な投資などを『不動産投資セミナー』を通して伝える活動を行っている。

老後資金への不安や資産形成の焦りを抱える50代にとって、不動産投資は有力な選択肢です。大きな金額を扱う不動産投資だからこそ、しっかりと正しい知識をつけて臨みたいところ。そこで、現役の大家である伊豫田誠FPが「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」という2つの収益モデルについて、それぞれのメリット・デメリットや適した投資スタイルを具体例とともに紹介します。

インカムvs.キャピタル…不動産投資で重視すべきは?

インカムvs.キャピタル…不動産投資で重視すべきは?

勤め人の場合は特に、50代に入ると定年退職後(≒老後)がグッと身近に感じるという話をよく聞きます。そして同時に「老後資金が足りるか不安」「退職金をどう運用すべきかわからない」といった悩みを抱いている人が多いです。

こうしたなか、安定収入と資産形成を同時に狙える選択肢として「不動産投資」の有効性が注目されています。今回はそんな不動産投資の利益構造に焦点をあててみていきましょう。

不動産投資で得られる利益は大きく分けると2つです。まずは家賃収入などで継続的に得られるインカムゲイン(家賃収入)。そして、物件を売却して得るキャピタルゲイン(売却益)です。

インカムゲイン…安定収入で老後を支える

「インカムゲイン」は保有する物件から得られる家賃収入のこと。毎月一定の収入を得られるのが魅力です。特に、年金受給額が心もとない現代において、「+αの収入源」として注目されています。

インカムゲイン重視の場合、おすすめのターゲットは、地方エリアの中古アパート物件。物件価格が比較的安く、利回りも高めであるため、インカム狙いに適しています。

表面利回り10%の物件を購入できれば、管理費や空室リスクを加味しても、月10万円程度の手取り収入を目指せるケースもあります。

【物件例】

物件価格:4,000万円

頭金:1,000万円(残り3,000万円は融資)

表面利回り:10%(年間家賃収入400万円)

キャッシュフロー:年間純利益約120万円(管理費・税金・空室率などを引いた後)

〈メリット〉

  • 定期収入として安定感がある
  • 長期保有によりローン完済後の利益拡大が見込める
  • インフレによる物価上昇や現金価値下落のリスク対策になる

〈デメリット〉

  • 初期投資(頭金など)がある程度必要
  • 修繕・管理に手間がかかる
  • 空室リスクによる収入のブレも考慮が必要

 「堅実に将来の安心を育てたい」……そんな人に向いているのがインカム型投資です。

キャピタルゲイン…短期間で資産を増やす勝負型

次にキャピタルゲインは、物件を売却した際に得られる利益のことを指します。レバレッジ(借入)を活用しやすいため、自己資金が少なくても始めやすく、資産形成のスピード感を重視する50代にも一定の人気があります。

キャピタルゲイン重視の場合、おすすめのターゲットは都心部・再開発エリアの新築や築浅ワンルームマンションでしょう。

首都圏や再開発が進む地域では資産価値の上昇を期待できる物件が多く、キャピタルゲインを狙いやすい環境が整っています。特に、新築や築浅のワンルームマンションは売買が活発で出口戦略が描きやすく、単身者向けの入居需要も堅調です。

【物件例】

物件価格:3,000万円(都内・新築のワンルームマンション)

頭金:10万円(残りはローン)

キャピタルゲイン:5年後、ローン残債2,600万円の物件を価格2,900万円で売却した場合、 差額300万円の売却益

〈メリット〉

  • 少額の自己資金で始められる
  • 高収入&信用力があるうちは融資も通りやすく、複数物件の購入が可能
  • 購入後の数年は節税効果が高い

〈デメリット〉

  • エリアやタイミング次第では、短期間で利益が出ないことも
  • 売却まで家賃収入よりローン返済が上回る“マイナスキャッシュフロー”に陥るリスク

比較的短い期間で資産を増やしたい人や、高収入・信用力を効率よく活用したい人に適した投資手法だといえるでしょう。

不動産投資の“正解”は「投資目的」によって異なる

不動産投資の“正解”は「投資目的」によって異なる

不動産投資において、どちらの手法が正解かは人それぞれ異なります。特に50代は、定年や老後といった将来像が現実味を帯びる年代。そのため、自分自身のライフプランや資産状況に応じて投資の目的を明確にし、それに適した戦略を選ぶことが重要です。

たとえば、「定年後の収入源が年金だけというのは不安」という人であれば、インカム型で家賃収入を得るのがいいでしょう。一方、「会社員のうちに銀行融資を活用しながら資産形成を加速させたい」という人であれば、キャピタル型で売却益を狙うのがおすすめです。

「あと数年で退職金が入る。その資金で資産を一気に増やしたい」という人であれば、キャピタル→インカムのミックス型も有効といえます。

このように、目的に応じて柔軟に戦略を立てることが不動産投資成功のポイントです。

インカムとキャピタルの「使い分け」がポイント

筆者自身、30歳で不動産投資をスタートし、キャピタル型で資産を増やし、その後インカム型へとシフトしてきました。その実体験から「両方を使い分ける戦略」をおすすめしています。

たとえば初期は、融資枠を活かしてキャピタル型で資産を拡大。中期以降は、初期で得たキャピタルゲインを使って一部の物件の返済を進めながらインカムゲインを得る。その後、キャピタルゲインを利用してインカム重視の中古アパートに買い替える、という戦略が考えられます。

このように、世代やタイミングによって戦略を変えることで、より無理のない形で不動産投資を継続することができます。

重要なのは「インカムとキャピタル、どちらが正解か」ではなく、「自分にとっての正解はどちらか」を見極める視点です。

「安定」か「スピード」か…目的に合わせた選択を

「安定」か「スピード」か…目的に合わせた選択を

ここまでみてきたように、インカムゲインとキャピタルゲインにはそれぞれの性質とメリット・デメリットがあります。これらを理解したうえで、自分の投資目的に合った戦略を選びましょう。

投資に“絶対の正解”はありません。しかし、「年齢」「資産状況」「将来のライフプラン」を踏まえて、自分にとってベストなバランスを見極めることが、不動産投資成功のカギとなります。

50代からの投資は時間に限りがあるからこそ、最初の一手がとても大切です。とはいえ、焦らず堅実に、柔軟な考えで投資に臨むことをおすすめします。

「〇〇が言っていたから」「〇〇に書いてあったから」と鵜呑みにするのではなく、それらを参考にしながら、あなたに合ったスタイルをみつけていきましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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