新築・中古を問わずマンション価格が高騰するなか、少額から始めることができ、安定した需要が期待できるワンルームマンション投資。
とはいえ、押さえておかなければいけないリスクは存在します。リスクを軽視した結果「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、ワンルームマンション投資について「収益」「節税」「リスク」の3つの観点でみていきましょう。
自身も大家経験のある税理士/CFPの宮路幸人氏が解説します。
高騰続く不動産…投資のハードルは

2025年10月現在、不動産価格の上昇は依然として続いています。特に都市部ではマンション価格の上昇が顕著であり、その背景には、建築費の高騰や供給不足、富裕層による需要集中など、複数の要因が重なっています。
こうした影響から、新築マンションはもちろん、最近は中古物件の価格も上昇傾向にあります。
国土交通省「不動産価格指数(令和6年10月・令和6年第3四半期分)」によると、2010年の価格水準を100とした場合、2024年のマンション価格指数は206.9を記録しました。これはつまり、2010年比で平均価格が2倍以上に上昇した計算です。
このように不動産投資のハードルが高まるなか、比較的少ない自己資金でスタートできる「ワンルームマンション投資」について相談を受ける機会が増えました。
ワンルームマンション投資のメリット
「初期費用が抑えられる」という点は、ワンルームマンション投資の大きなメリットのひとつでしょう。
また、ワンルームマンションは独身の社会人や一人暮らしの学生など、単身者を対象とした物件です。そのため、ファミリータイプのマンションと比べて需要が多く、稼働率を高めやすい傾向にあります。
加えて、近年は未婚化・晩婚化が進んでいるほか、企業による借り上げ社宅のニーズが高まっていることなども追い風となっているようです。
ワンルーム投資のリアルな収益事情

ワンルームマンション投資に限りませんが、不動産投資の収益は大きく分けて、家賃収入(インカムゲイン)と売却益(キャピタルゲイン)の2つです。
家賃収入(インカムゲイン)
利回りは築年数によって左右されるところが大きいですが、健美家「収益物件市場動向 四半期レポート 2025年1月~3月期」によると、ワンルームマンションの場合、東京都23区における新築から築20年までの物件の表面利回りは、おおむね4~6%程度でした。
売却益(キャピタルゲイン)
売却益(キャピタルゲイン)は物件ごとの価格変動によるため一概にはいえませんが、参考までに、株式会社TOCHU「東京都23区ワンルームマンション成約価格・賃料・利回りに関するトレンド調査【2017~2024】(TOCHU調べ)」をみていくと、2024年に取引された東京23区内ワンルームマンションの平均成約価格は2,254万円でした。
これは、2017年の1,466万円と比べて788万円(53.8%)の上昇です。8年間で大きく値上がりしていることがわかります。
2020年には新型コロナウイルスの影響で一時的に価格が落ち込んだものの、その後は回復し、再び上昇に転じているようです。さらに、m2あたりの単価も2017年の75万円から2024年には99万円へと大きく上昇しています。
ワンルームマンション投資で期待される「節税効果」

ここからは、ワンルームマンション投資で期待できる「税制面のメリット」について掘り下げていきます。
「減価償却」による節税効果
不動産投資における「税制面のメリット」として一般的なのが、減価償却による節税効果でしょう。これは、ワンルームマンションであれば建物部分が減価償却の対象となるため、必要経費として計上することができるという仕組みです。
特に中古物件の場合は償却期間が短いため、早期に経費化できます。
また不動産所得が赤字となった場合には、給与所得と損益通算することで、所得税や住民税を圧縮することも可能です。
たとえば、年収800万円以上の会社員が中古ワンルームマンションを購入し、不動産所得が赤字になった場合、給与所得と損益通算することで、所得税や住民税の一部が還付される場合もあります。
ただし、「赤字による節税」はあくまでも不動産所得で損をしている状態です。そのため、将来的に売却益などでその損失を賄えるかどうか、慎重に見極める必要があるでしょう。
節税効果はあくまでも附帯的なメリットであり、原則は「投資としての採算性」がもっとも重要です。
「相続・贈与税」による節税効果
また、現金を不動産に変えて、財産の相続税評価額を圧縮することができます。
たとえば、1億円の相続方法を考えてみましょう。
1億円を「現預金」で相続する場合、1億円がそのまま相続税評価額となります。一方、1億円を「不動産」に変えて相続する場合、土地は「路線価」や「固定資産税評価額」に基づいて評価されるため、相続税評価額は時価(7〜8割程度)となります。
加えて、賃貸用物件であれば一定の評価減が認められるため、さらなる節税効果が期待できるのです。
なお、マンションの評価方法は従来、タワーマンションなど資産価値の高い物件であっても、相続税評価額は市場価格の3~4割程度でした。
ただし、令和6(2024)年1月1日以降の法改正により、戸建てと同程度(おおむね時価の6割)まで評価額が引き上げられています。
この改正により節税効果は限定的となりましたが、それでも現金をそのまま相続する場合と比べると、一定の節税効果は享受できます。値崩れしにくい好立地の物件は、依然として高い需要があるのです。
〈参考〉
新たな評価方法では、一室の区分所有権に係る「区分所有権(建物部分)」および「敷地利用権(敷地部分)」の価額に、それぞれ「区分所有補正率(※)」を乗じて、居住用区分所有財産の相続税評価額を算出する仕組みとなっています。
(※)区分所有補正率……居住用の区分所有財産に係る相続税評価額を、一般的な市場価格(理論値)の6割相当額まで引き上げることを目的とした補正率のこと。
ワンルーム投資に潜む無視できないリスク

ここまではワンルームマンション投資のメリットを中心に説明してきましたが、投資である以上、当然ながら「リスク」も存在します。
まず、前述のとおり、ワンルームマンションはファミリー向け物件よりも需要が多いというメリットがあります。一方、ファミリー向け物件よりも、入れ替わる頻度が多い点には注意が必要です。
退去者が出ると「空室」となり、その都度新たな入居者を募集しなければなりません。特に複数の物件を所有していない場合、「空室=家賃収入ゼロ」となるため、キャッシュフローが不安定になるリスクがあります。
また、入居者の入れ替わりが多くなると、原状回復費用や修繕費などの維持・管理コストがかさむ点もデメリットでしょう。
加えて、ワンルームマンションは「一時的な居住」を目的とするケースが多いため、ファミリー向け物件よりも「実需」が少ないです。そのため流動性が低く、資産価値が下落しやすい傾向がある点にも注意が必要です。
したがって、ワンルームマンション投資を始める前に、検討している物件が「競争力の落ちにくい物件かどうか」を見極める必要があるでしょう。
投資の成否を左右する「出口戦略」の重要性

ワンルームマンション投資は、実物不動産のなかでは比較的始めやすい投資です。しかし、だからこそ、これまで紹介したリスクや、これから解説する「物件選びのポイント」を正しく理解しているかどうかが、投資の成否を大きく左右します。
まず重要なのは、物件を購入する前に「収益性」を確認することです。ある程度負荷をかけた条件で利益が出るかどうか、綿密にシミュレーションしておきましょう。これにより、検討中の物件が「適正価格かどうか」がわかります。
また、ワンルームマンション投資で「節税効果」にとらわれすぎるのは禁物です。
節税を目的に収益性の低い物件を購入すると、最終的に「節税効果を上回る損失」を被る可能性があります。
不動産所得が赤字になったとしても、先述のように給与所得と通算して一時的に税負担を軽減することはできますが、長期的収益が上がらない状態が続いては本末転倒です。
不動産は通常、築年数の経過とともに劣化し、競争力が落ちて賃料が下がりはじめます。競争力を高めようとすれば修繕費がかさみ、収益性が悪化する事態になりかねません。
「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、投資を始める前に「出口戦略」まで考えておくことが大切です。
たとえば、「近隣に同じようなワンルームマンションが建設されるという話を聞いた」「空室期間が以前より長くなってきた」「数年以内に大規模修繕が必要になりそうだ」など、売却を検討する“兆候”や条件をあらかじめ定めておくことも大切です。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。