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中高年が急にやる気をなくす原因と対策

斉藤 恵一 セルフマネジメントプロデューサー

執筆者

セルフマネジメントプロデューサー/日本心理学協会 認定心理士

斉藤恵一

大学時代に歌舞伎町のホストの世界に飛び込むも半年間売り上げゼロ。そこから心理学を学びセルフブランディングに取り組み、約6年間売上げNO.1となる。現在は企業向けのコンサルティングやメンタリング、人材育成に取り組む一方、「ナカイの窓」や「ダウンタウンDX」等テレビ出演及び書籍やコラムの執筆等で活動中。

長い間バリバリに仕事に情熱を持って取り組んでいたのに、突然、燃え尽きたかのようにやる気を失ってしまうことがある。あなたの周りにそんな方はいませんか? 

また、あなたご自身に心当たりはありませんか?このように突然やる気を失ってしまうのは年代で見ると40代から50代の中高年に多く見られるようですが、その原因と対策についてお伝えしたいと思います。 

突然襲いかかる心のモヤモヤ 

40代、50代の中高年が何故、突然やる気を失うのか?意識ははっきりしているのに、なぜかやる気が湧かず、これまでのようにがむしゃらに働くという気になれない。それは本人ご自身にとっても大きな心の危機となりますし、職場においても困惑されるでしょうし、家庭においても心配な出来事になります。しかも、このような状態に陥るのは決して特別なことではなく、可能性は誰にでもあります。では、このような方々の心の中ではいったい何が起こっているのでしょうか。 

これまでがむしゃらに働いてきたのに突然やる気を失うと、周りの反応としてはかなり戸惑ってしまうことでしょう。「一体どうしたのだろう?」「何があったのだろう?」本人がその原因に気付いていればまだ救いはあるのかもしれませんが、多くの場合、本人ですらその理由がわからずに焦りを感じてしまうことが多々あります。 

「何かわからないけれど、心がモヤモヤする」「何があったわけではないけれど、心が晴れない」「何に怒っているのかわからないけれど常にイライラしている」など、40代から50代になると、こういったことをよく聞くようになります。しかし、その原因が何なのかわからないことが多いでしょう。そのようなモヤモヤは、誰もが感じることがあるし、対応策がわからないので、焦りや不安が膨らんでいきます。

誰もが陥りがちな燃え尽き症候群 

これまで毎朝、満員電車にぎゅうぎゅう詰めにされて通勤することが当たり前だと思っていたし、何の疑問もなく乗っていた。ところがある朝、突然、満員電車に乗ることに抵抗を感じて、電車を見送ってしまう。そんな経験はありませんか?さらにそれをきっかけにこれまでの人生の中にある「当たり前」に疑問を感じるようになり、「いつまでこんな人生が続くのだろうか?」「こんな毎日の連続で人生を終えてしまっていいのだろうか?」という思いに襲われる。

また仕事においても急にやる気を失い、身が入らなくなるということがあります。 

比較的意識も高く、ノルマを達成することが喜びであり、その喜びを得るためにノルマを達成することをまた目標に頑張り、それなりに評価も得ていたし、特に不満があったわけでもないのに、突然、仕事を頑張っていることに疑問を感じ、数字を追いかける毎日がむなしくなり、仕事に身が入らなくなっていくのです。 

実はこういうことはよくある話で、やる気を失うきっかけは千差万別のようですが、中高年期になると、これまで通りにいかないと感じる方が多いです。そうすると自問自答するように、このような心の声が聞こえてくる。 

「自分の人生、これで良いのだろうか?」「はたして自分はこういう生活を望んでいたのだろうか?」「このまま突っ走ってしまっていいのだろうか?」 

若い頃というのは、夢や理想に向けてただがむしゃらに頑張り、そのうち次第に仕事にも慣れてきて、できなかったことができるようになり、わからなかったことがわかるようになる。そうすると課題も乗り越えてスキルも上がり、自ら成長を感じることが多くあります。その充実感がまた頑張る原動力にもなってきたわけです。 

ところが40代から50代になると、ある程度経験も積み、知識も能力もこれまで仕事をしていく中で成長している感覚があまり感じられず、自分の能力の限界を感じ始めたり、これ以上の出世が望めないと感じたりして、また、時代の進化によってビジネス環境の変化についていくのが難しくなり、これまでのような充実感や達成感のようなものを感じにくくなっていきます。

記憶力の衰えを感じたり、これまでは夜中に帰宅しても翌日はなんともなかったのに、疲労感が残り、気力が湧かないと感じるようになったりして、漠然と自分の仕事人生の限界を感じて不安に駆られることもあるかと思います。

若い頃は野心を持ってあんなに頑張ってきたのに、当時イメージしていた理想と今の現実を比べた時に、どこか少し寂しさを感じたりして、もっと評価されても良いはずなのにと不満を感じたりして、そんな時、ふと我に返って、「自分は何をやっているのだろう?」といった気持ちになる。ノルマに追われる日々に対しても、「こんな毎日にどんな意味があるのだろう?」といった疑問が湧いてくる。そうなると、いわゆる燃え尽き症候群のように全てのやる気がなくなってしまうという感覚になります。 

このなんとも表現し難いモヤモヤ感は、仕事で何らかの行き詰まりを感じている方ばかりではなく、仕事も順調で評価も高く、何の不満もないだろうと周囲から見られている方が、50歳が見えてくる頃に、急にむなしさに襲われることがあります。仕事では順調に成果を出してきたし、出世もしてサラリーマン生活としては順調にきたのに、どこか何かが埋まらない。この「何か」がなんなのか、振り返ってみると、どうも自分を生きていない感覚になる。これまでの自分は、組織の一員として動くのが当たり前だと思っていたけれども、いつの間にかアイデンティティーを見失い、自分らしい生き方からそれてしまったような感覚。

せっかくの一生に一度の大切な人生を、ただ、組織のひとりとして駆け抜けてしまったような感覚が虚しさや寂しさというものとつながり、果たしてこのままで良いのだろうかという、漠然と人としての生き方に疑問が湧いてくると、何もかもがむなしく感じられてくるわけです。 

これからの生き方を変えるチャンス  

どんなに仕事のキャリアが順調であっても、人生の折り返し点に差しかかって、気が付くとむなしい人生になっていたと感じる方が、実は意外と多いものです。 

そこであらためて「自分らしい人生になっているだろうか?」「こんなふうに仕事に追われるばかりの人生に意味があるのだろうか?」 

などという疑問が浮かび、かといってこれまで自分らしさを追求してこなかったことで、やり方も生き方もわからず戸惑ってしまい、これからの人生の意味付けをめぐる葛藤をするようになるわけです。 

これまでのように組織の中で評価される存在として頑張るというだけでなく、これまでとは違った形で人生を意味付けるという新たなる課題が生まれてくるのです。そう考えてみると40代から50代の人たちが感じる心の危機も、生き方を軌道修正するチャンスというように前向きにとらえることができます。

全ての感情はサインです。意識高く成長を求め常に何かを感じようとアンテナを張ってきたからこそ気付けたサイン。ということはこれまでの頑張りを否定する必要はなく、頑張ってきたからこそこのチャンスがあなたの前に訪れたということになります。

だからまずは、これまでの自分をよく頑張ってきたと褒め称え、そして、これからの人生に期待を膨らませ、どのようにして自分らしいと思える、自分なりに納得のいく人生にしていけるか。どうしたら自分の人生を意味あるものにしていけるか。そうした自分自身への自問自答がこの時期には必要で重要な課題なのでしょう。そして、出てきた解答を素直に受容できることができればこれからの人生はもっと素敵なものになるのではないでしょうか。 

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