日本人の平均寿命が伸び、生前整理や終活という言葉をよく耳にする昨今、ご自身のお墓について考えることもあるかもしれません。現代では、一般的な継承墓をはじめ共同墓、樹木葬といったお墓の種類が多様化しています。希望に沿ったお墓選びが大切ですが、どんな種類のお墓があるのかわからない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、お墓の種類や特徴をご紹介するとともに、多様化した背景や選び方のコツも解説します。お墓について基礎知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
(本記事は2023年12月25日時点の情報です)
この記事を読んでわかること
- お墓の種類が多様化してきた背景にあるのは、民間霊園の拡大や永代供養サービスの普及
- お墓の種類は、継承を必要とする継承墓・一代限りの個人墓や夫婦墓・共同墓・樹木葬など
- 墓地の種類は、寺院墓地や教会墓地、民営墓地、公営墓地
- お墓選びは、墓地・霊園・石材店選びをする前に希望条件を細かく決めておくことが大切
なぜ現代のお墓は多様化しているのか
現代の日本でお墓というと、亡くなった方を弔い遺骨を埋葬しておくための場所とされています。しかし、はるか昔は現代と異なる意味でお墓が作られていました。まずは、時代とともに変化したお墓が持つ意味と、多様化した背景を見ていきましょう。
お墓が持つ意味とは
お墓が持つ意味を考えるには、古墳時代まで遡ります。今から1750年ほど前の3世紀後半から5世紀にかけて、奈良県を中心とする近畿地方や九州地方、関東地方でさまざまな形状の古墳が作られました。その頃の古墳は地方の有力な豪族の墓と考えられており、故人を弔うというよりは権力の誇示や継承のためという意味合いが強い傾向があったのです。
しかし、江戸時代を皮切りに時代が進むにつれ、お墓が持つ意味にだんだんと変化が生じ、今では、故人の冥福を祈り偲ぶものとして認識されるようになりました。お墓には故人の魂が宿るとされ、心のつながりを感じられる場所といった意味合いがあります。また、代々続く先祖への感謝とともにご自身の命の大切さを振り返る場所ともいえるでしょう。
お墓が多様化してきた背景
お墓の種類が多様化してきた背景には、宗旨宗派を不問とする民間霊園の拡大が挙げられます。そもそも日本では、江戸時代から宗旨宗派に従い寺院墓地に継承墓を建て、菩提寺と深い関係性を築いてきました。しかし、民間霊園の広がりにより、菩提寺から離壇して民間霊園に改葬を行う家が増加し、それぞれの希望に沿ったお墓の形が増えてきたのです。
他にも、家族で守っていくものとして考えられていたお墓の管理を永代供養によって手放したり、墓じまいしたりする家が増え、お墓や埋葬に対する考え方も変化しているようです。個人墓や夫婦墓といった継承者が不要な個人的に建てるお墓が増えたことも、種類が多様化した理由のひとつといえるでしょう。
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多様化するお墓の種類をご紹介
民間霊園や永代供養サービスの普及により多様化しているお墓の種類ですが、実際にどのようなお墓があるのでしょうか。ここでは、一般墓といわれる継承墓や個人墓の他、海洋散骨や手元供養などあまり聞きなれないお墓についてもご紹介します。
一般墓
始めはご存知の方も多い一般墓について見ていきましょう。伝統的な縦長の墓石でできているお墓や、シンプルなデザインの洋風のものもあり、バリエーションが増えています。
先祖代々で継承してきたお墓(継承墓)
先祖代々にわたって継承してきたお墓のことを「継承墓」といいます。世間的にも昔から馴染みのあるお墓で、寺院や霊園に建てた墓石を家族の代表である「墓守」によって管理されることが特徴です。
墓石の表面には「〇〇家先祖代々之墓」や「〇〇家之墓」、裏面には故人の名前や没年月日などが刻まれています。宗教の考え方や少子高齢化で継承していくことが難しいとされる現代で、継承墓を選択する数は減少傾向です。
個人で入るお墓(個人墓)
「個人墓」とは、その名のとおりひとりで埋葬されるお墓のことをいいます。継承者がいないため、永代供養サービスがセットになっているのが特徴です。永代供養サービスにより、墓石の管理や整備、供養をし続けてくれます。一般的に個人墓の管理は33~50年ほどで、期間が過ぎると遺骨が墓石から合祀墓へと移される仕組みです。
終活などを機に生前にお墓を建てる「生前墓」として利用する方が多く、ご自身の好きなデザインを自由に選べることから注目が高まっています。
夫婦で入るお墓(夫婦墓)
個人墓と同様に永代供養される「夫婦墓」は、夫婦だけで埋葬されるお墓のことです。夫婦のみで完結するため、両親や子ども、孫が同じお墓に入ることはありません。子どもにお墓の管理の負担をかけたくない方や、継承者がいない方から人気が集まっています。個人墓も夫婦墓も、継承者を想定せずに建てるのが基本です。
両家を合祀したお墓(両家墓)
「両家墓」とは、夫婦それぞれの家で代々受け継がれてきたお墓を、併せて埋葬することです。これには、社会問題にもなっている少子化が関係しています。例えば、ひとりっ子同士や、両家の長女と長男が結婚するといったケースも増えてきました。結婚した者同士がそれぞれのお墓を継ぐことができなくなった場合、両家墓を建てることがあります。
両家墓は、ふたつのお墓をひとつに合わせて管理していくという、合理的なメリットがある一方で、トラブルの元になりやすい選択肢です。両家墓を建てる場合は、家族や他の親族とよく相談してから決めると良いでしょう。
納骨堂
施設の室内に設置された納骨スペースのことを「納骨堂」といいます。メリットは、宗旨宗派などの宗教的制限がない、納骨や管理にかかる費用が安い、墓石のような管理がいらないといった点です。
他にも、室内のため天候に左右されず好きなタイミングでお参りができたり、生前に購入できたりする点から人気を集めています。
一方で、契約年数満了後にどうするか考えなければいけないのがデメリットです。そのため、継承者がいない場合は永代供養墓などに合祀する方が増えています。
共同墓
「共同墓」とは、個人の墓標を建てず見ず知らずの方と一緒に埋葬してもらう方法で、お墓の管理が必要ありません。そのため、一般的なお墓より費用を安くできることが魅力のひとつです。また、同じ宗教や趣味などでつながった、家族でない方と共同のお墓に入る新しいスタイルも増えています。
ただし、多くの共同墓では、骨壺から遺骨を取り出して他人のものと混ぜて埋葬します。よく知らない方と一緒にお墓に入ることに抵抗のある方にはおすすめできません。
また、後で骨を返してほしい、といったことは物理的に無理なため、家族と話し合いながら慎重に決める必要があります。
樹木葬
自然葬の一種である「樹木葬」は、墓地や霊園に遺骨を埋葬し、その近くにある樹木を墓標の代わりに見立て故人を弔うことです。遺骨を骨壺から取り出して埋葬する方法や、骨壺のまま埋葬する方法があります。
また、墓地や霊園の中央にシンボルとなる木を植えたり、遺骨ごとに新しい植木を増やしたりと、形式はさまざまです。樹木葬では、管理を任せる永代供養が多数を占め、骨壺のまま埋葬するケースでは、一定期間が経過すると合祀されます。
海洋散骨
埋葬方法としては少数派ともいえる「海洋散骨」ですが、近年増加傾向にあります。自然に還してあげられることや、お墓を建てないため費用を抑えられることが選ばれている理由です。散骨時には、1~2mm以下のパウダー状にしてまきます。
他にも、ヘリコプターなどに乗って空から海に散骨する「空中散骨」や、自己所有している山林、または山林の所有者に許可を得ている場合に行われる「山林散骨」、遺灰を専用カプセルに入れて宇宙まで打ち上げる「宇宙散骨」といった散骨方法もあります。
手元供養
「手元供養」は、パウダー状にした遺骨をアクセサリーなどに加工して、身に着ける供養方法です。お墓が遠方にありお参りすることが困難な方や、故人を身近に感じながら過ごしたい方に便利でしょう。
アクセサリーに使用する材質によって費用が異なります。また、アクセサリーなど別の形にせず遺骨をそのまま自宅で保管するというケースもあり、その場合の費用はかかりません。
墓地や霊園の種類を解説
墓地や霊園の種類には、寺院墓地や教会墓地、民営墓地、公営墓地があります。ここでは、それぞれの種類について詳しく見ていきましょう。
寺院墓地・教会墓地
お寺が運営している墓地のことを「寺院墓地」といい、お寺と隣り合う敷地や境内に設けられています。お寺が管理をするため信頼度が高く、葬祭などの相談ができる点がメリットです。お寺の檀家になることが一般的ですが、最近では檀家になることを求めない寺院墓地も増えています。
また、教会が運営する「教会墓地」では、信者であることを前提に納骨を受け入れています。ご自身がキリスト教を信仰している場合は、一度相談してみると良いでしょう。
民営墓地
「民営墓地」は、宗教法人や公益法人が主体的に経営を行っている墓地です。寺院や教会と異なり、宗教のしばりがないため墓地を自由に選択できる反面、石材店の指定があるところが少なくありません。
費用は高い傾向ですが、その分設備やサービスが行き届いているため満足度が高いといえるでしょう。しかし、経営主体に代わって民間企業が運営していることから、場合によっては倒産などの可能性があるため注意が必要です。
公営墓地
民営墓地と違い、倒産などの心配がなく安心して利用できるのが「公営墓地」です。都道府県や地方公共団体などが開発・運営をしており、寺院墓地や民営墓地と比べると費用が安い点がメリットといえます。檀家にならなくても良く、宗旨宗派の制限や石材店の指定もありません。このような点から首都圏では人気を集めています。
お墓の選び方とは?
最後に、お墓の選び方のポイントをご紹介します。お墓選びに迷っている方は、比較検討の材料として参考にしてください。
お墓に求める条件を話し合う
まずは、お墓にどんな条件を求めるか、家族で話し合うところからスタートしてみましょう。お墓に求める条件とは、例えば以下のような項目があります。
- 管理は誰が行うのか(継承者が行う・永代供養で管理を任せる)
- お墓の種類について(墓石のデザイン、埋葬方法、お墓のイメージなど)
- 希望の立地やかけられる予算
お墓に求める条件は人それぞれ異なります。ご自身の希望や家族の希望を照らし合わせ、お互いが納得のいく話し合いになるよう努めることが大切です。
希望に合う墓地や霊園を探す
希望条件の洗い出しが完了したら、次に墓地や霊園探しに移ります。墓地や霊園探しでは、インターネットの利用が主流です。インターネットでは予算やエリア、人気の条件など希望に合わせて簡単に絞り込めます。気になる墓地や霊園が見つかったら、資料請求をして詳細を確認してみると良いでしょう。
墓地や霊園を申し込みお墓のデザインを決める
墓地や霊園が決まり次第、石材店の選定に入ります。石材店を決める際は、ぜひ相見積もりを取ってください。お墓は墓石の種類や墓地の広さ、使用する石材の量、工事のしやすさなどによって価格が大きく異なるからです。
また、お墓についてさまざまなアドバイスを受けられる、連絡を取り合いやすいといった石材店を選ぶと、お墓を建てた後も安心でしょう。お墓にこだわりたい方は、石材店の指定がない墓地や霊園を選ぶことがポイントです。
お墓の管理が大変な時は代行サービスを利用する方法も
仕事や子育てなど毎日時間に追われていたり、お墓が遠方にあったりするとなかなかお参りできず困っている方も多いかもしれません。お墓の管理を怠ると、雑草が生い茂ったり墓石の劣化が進む原因になったりします。お墓の管理が大変な場合は、お墓参りやお墓の掃除代行サービスを利用する方法がおすすめです。
セゾンカードでおなじみのクレディセゾンのグループ会社「くらしのセゾン」では、さまざまな事情によりお墓参りができない方のために、お墓参り・お墓掃除代行サービス「墓もりくん」というサービスを行っています。「供えるお花は故人の好きだったものにしてほしい」といったニーズにも柔軟に対応可能で、作業完了後には写真付きの報告書でお知らせするので安心です。全国各地にネットワークを構築しているため、お墓のことでお困りの場合はぜひ「くらしのセゾン」へご相談ください。
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また、「セゾンの相続」では専門企業と提携して「お墓探し探しサポート」というサービスも行っております。樹木葬や納骨堂、海洋散骨など、永代供養付きのお墓や、ペットと一緒に入れるお墓など、さまざまなお墓の形態を紹介してくれます。無料で相談できますので、「自分の死後、お墓を管理してくれる方がいない」「お墓の種類が多くてどう選んでいいかわからない」という方はぜひ問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。
おわりに
少子高齢化が進む中、お墓のあり方について考え方に変化が生じ、継承者のいないお墓や自由なデザインのお墓が増え種類が多様化してきました。選択肢が増えた分、ご自身がお墓に求める条件をしっかりと洗い出す必要があります。お墓の管理でお困りの場合は、代行サービスの利用も検討しましょう。代々受け継がれてきたお墓以外の選択をする場合は、家族や周りの親族とよく話し合うことが大切です。
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