いわゆる富裕層だとより効率的な資産運用ができるのが実情です。「お金はお金のあるところに集まる」といわれることがありますが、それはなぜなのでしょうか。
この記事では、富裕層が資産を増やせる理由や、効率よく資産を増やすための方法をご紹介します。将来に向けて何から始めれば良いのかわからず悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
(本記事は2023年12月25日時点の情報です)
- 富裕層の明確な定義はないが、「純金融資産保有額1億円以上」が目安
- 富裕層が資産を増やせる理由は、お金をかけるところを見極め、リターンを生む可能性のあるところにしっかりとお金をかけているから
- さまざまな投資先に分散投資することで、リスクを抑えた運用で資産を守りながら増やしている
- 運用を早く始めたほうが効率よく資産を増やせる
富裕層とは?資産家との違い
富裕層と聞くと、いわゆる「お金持ち」のイメージがあるかもしれませんが、実際にどのような人を富裕層と呼ぶのでしょうか。ここでは、富裕層の定義や特徴、富裕層に該当する人がどのくらいいるのか解説します。
富裕層の定義
富裕層の明確な定義はありませんが、野村総合研究所(NRI)の調査では、「純金融資産保有額1億円以上5億円未満」の世帯を「富裕層」、「同5億円以上」の世帯を「超富裕層」としています。ここでいう純金融資産額とは、保有する金融資産の合計額から借入などの負債を差し引いた金額のことです。
「億万長者」や「億り人」のような言葉もあり、資産1億円以上というのは一般的な「お金持ち」のイメージとも合致するかもしれません。富裕層をお金持ちという意味で定義するなら、上記の富裕層と超富裕層を合わせた「純金融資産保有額1億円以上」の人(世帯)を指すと考えて良いでしょう。
お金持ちを指す言葉には、富裕層のほか、「資産家」や「高所得者」などもあります。
資産家とは、財産(ストック)を多く持つ人や一族などを指す言葉です。財産には金融資産(預貯金、株式、債券など)のほか、不動産などの実物資産も含まれます。一般に資産家という場合、実物資産を多く持ち、保有する資産を運用して収入を得ている方を指すことが多いようです。
高所得者とは、所得(収入)の多い人のことで、入ってくるお金(フロー)に着目した言葉、日本では一般的に年収1,000万円以上の方を指すことが多いようです。
高所得者で富裕層や資産家の方もいますが、収入だけでなく支出も多ければ資産は増えないため、必ずしも「高所得者=富裕層/資産家」というわけではありません。
日本の富裕層の割合
野村総合研究所(NRI)が各種統計などをもとに行った推計によると、日本における富裕層(純金融資産保有額1億円以上5億円未満)は139.5万世帯、超富裕層(同5億円以上)は9.0万世帯となっています。全体に占める割合は、富裕層が2.58%、超富裕層が0.17%です。
引用:野村総合研究所(NRI)
野村総合研究所(NRI)のサイトでは、世帯の純金融資産保有額を5つの階層に分け、その世帯数と保有資産額を示した階層ピラミッドで示しています。富裕層と超富裕層をあわせた割合は2.74%ですが、保有資産額では22.30%を占めており、少数の富裕層に資産が集中していることがわかります。
富裕層はどんな人?
日本における富裕層の職業としては事業オーナーが多く、金融資産1〜5億円の富裕層では、約3分の1を事業オーナーが占めていることがNRIの調査で明らかになりました。そのほか、医師や地主などが多くを占めています。
生活水準は、マス層に比べると高い傾向です。しかし、贅沢三昧をしている方はあまりおらず、比較的質素な生活をしている方のほうが多いようです。収入が上がっても生活レベルを上げずに堅実な暮らしができるからこそ、大きな資産を築けたともいえるでしょう。
お金をかけるべきところをしっかり見極め、効果的にお金を使うのも富裕層の特徴です。事業を含む投資や子どもの教育、健康など、リターンを生む可能性のあるところにはしっかりお金をかけるため、さらなる資産の増加へとつながっていきます。
一定以上の資産を持つ富裕層では、積極的にお金を増やすよりも、お金を減らさないことを重視する方が多い印象です。
富裕層の資産運用が効率的な理由
富裕層の資産運用は効率が良く有利といわれていますが、それには理由があります。ここでは、次の3つの理由について見ていきましょう。
【富裕層の資産運用が効率的な理由】
- 運用できる資金が多い
- 幅広い商品に投資できる
- 分散投資でリスクを抑えられる
運用できる資金が多い
運用できる資金が多いほど、効率よく資産を増やすことができます。
例えば、年5%の利回りで1年間運用できた場合、運用資金が1億円であれば税引前で500万円の利益が得られます。しかし、運用資金が100万円では、同じように運用しても利益は5万円しか得られません。
1年で100万円の利益を得るために必要なリターンは、運用資金が100万円では年100%ですが、運用資金が1億円あれば、年1%で済みます。
このように運用資金が多ければ、リスクを抑えた安定的な運用でも資産を増やしていけるわけです。
また、お金に余裕があれば生活費などのために運用資産を切り崩す必要がないため、運用で得た利益はそのまま投資に回せます。再投資した利益が利益を生み、資産は雪だるま式に増えていきます。これが複利効果です。
これから資産を築いていきたい方にとっては、支出をコントロールして運用に回すお金を確保し、複利効果を活用することも重要です。
幅広い商品に投資できる
運用資金が多ければ投資できる商品の幅が広がり、収益を得られるチャンスも広がります。
また、取引金額が大きくなると証券会社や不動産会社などからお得意様(優良顧客)として扱われることもあり、条件の良い商品を優先的に案内してもらえる可能性が高くなります。
分散投資でリスクを抑えられる
運用資金が豊富であれば、さまざまな商品に分散投資しやすく、リスクの軽減にもつながります。
分散投資とは、さまざまな国や地域、商品に資金を分散して投資する方法です。特定の投資先に資金を集中させてしまうと、投資した会社の倒産などで一度に大きな損失を出し、資産を大きく減らしてしまうリスクがあります。複数の投資先に資産を分散していれば、たとえ投資先の一つが倒産しても、資産の大部分を失うことはありません。
このようにリスクを抑えた運用で資産を守りながら増やしていくのも、富裕層の資産運用の特徴といえるでしょう。
運用資産の少ない方でも、投資信託を利用すれば少額から分散投資を実践することが可能です。
準富裕層でも老後が不安になるケースも
準富裕層は富裕層には及ばないものの一定の金融資産を持ち、一般的には裕福とされる人(世帯)です。しかし、準富裕層であっても老後に不安を抱えている人もいます。
準富裕層とは
野村総合研究所(NRI)の定義によると、準富裕層は「純資産保有金額5,000万円以上1億円未満」の世帯とされています。
準富裕層には、インカムリッチ・プロフェッショナルと呼ばれる高所得者が多いのが特徴。具体的な職業としては勤務医、弁護士、会計士などの士業、大手企業や外資系企業に勤める会社員が挙げられ、おおむね年収1,000万円以上の人(世帯)です。近年では夫婦ともに高所得の、いわゆる「パワーカップル」が増えており、準富裕層となる世帯もあります。
経済的に豊かな準富裕層ですが、仕事が激務でお金を使う暇のない方や、資産があっても運用していない方もいるようです。
日本の準富裕層の割合
野村総合研究所(NRI)の推計によると、日本における準富裕層は325.4万世帯、全体に占める割合は6.01%です。
準富裕層の年齢分布についても確認しておきましょう。
金融広報中央委員会が実施した「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯](令和4年)」によると、金融資産保有世帯で3,000万円以上の金融資産を保有している世帯の年代別割合は以下のとおりです(この調査における金融資産額は金融負債(借入等)を差し引く前の金額であり、便宜上3,000万円以上の金融資産を保有する世帯を準富裕層(以上)の世帯とします)。
【年代別・金融資産3,000万円以上の世帯の割合(金融資産保有世帯)】
世帯主の年代 | 金融資産3,000万円以上 の世帯の割合 | (参考)金融資産保有額(全体) | |
平均値 | 中央値 | ||
20歳代 | 1.2% | 315万円 | 130万円 |
30歳代 | 3.2% | 710万円 | 350万円 |
40歳代 | 7.2% | 1,114万円 | 500万円 |
50歳代 | 14.7% | 1,705万円 | 780万円 |
60歳代 | 25.0% | 2,217万円 | 1,112万円 |
70歳代 | 22.5% | 2,257万円 | 1,150万円 |
参照元:「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]令和4年調査結果」|金融広報中央委員会
金融資産3,000万円以上の世帯の割合は、40歳代以下で1割を下回り、退職金などの受け取りのある60歳代で最も高い25.0%となっています。年齢を重ねるにつれ資産も増えていくのが一般的な傾向ですが、早い時期から計画的に資産形成を進めることで資産の増加ペースは早めることが可能です。
富裕層・準富裕層を目指すには何をするべき?
マス層、アッパーマス層から富裕層、準富裕層を目指すためにするべきこととして、次の3つが基本です。
【富裕層・準富裕層を目指すためにするべきこと】
- 家計の無駄を減らす
- 収入を増やす
- 資産を運用して増やす
これらをなるべく早い時期に始めることが、富裕層、準富裕層への第一歩といえるでしょう。
家計の無駄を減らす
いくら収入が多くても、入ってくる以上にお金を使っていると資産は増えません。家計を見直し、無駄な支出があれば減らしましょう。手取り収入のうち、2割以上を貯蓄や投資に回わせるのが理想です。
お金があると使ってしまい残らないという方は、毎月の収入から最初に貯蓄や投資に回すお金を確保し、残ったお金で生活をやりくりする「先取り貯蓄(投資)」を実践しましょう。
収入を増やす
貯蓄や投資に回せるお金を増やすために、収入を増やす努力も必要です。まずは本業での昇給を目指し、資格取得などスキルの向上に努めましょう。時間的な余裕があれば、副業を始めることを検討しても良いでしょう。
現在の仕事では昇進や昇給が期待できない場合は、転職も選択肢のひとつになります。
資産を運用して増やす
効率よく資産を増やすためには、現金のまま持つのではなく運用して増やしていくことも大切です。近いうちに必要になるお金は現金や預貯金で確保したうえで、当面使う予定のない余裕資金はリスク資産での運用を検討しましょう。運用方法には、例えば次のようなものがあります。
株式投資
企業が発行する株式を購入し、値上がり益(キャピタルゲイン)や配当金(インカムゲイン)を狙う投資方法です。投資した企業が成長して株価が上昇すれば大きな利益が得られる可能性があります。
また、株式を保有する株主には企業の得た利益の分配を受ける権利があり、定期的に配当金を受け取れるのも株式投資のメリットです。ただし、経営方針により配当が行われないケースもある点には注意してください。
一方、株価は下落することもあり、投資した企業が破綻した場合には投資した資金をすべて失うリスクがあります。これが株式投資における最大のリスクであり、デメリットです。また、信用取引を行った場合、投資した金額以上の損失が出ることもあります。
投資信託
投資家から集めた資金をまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資し、その運用成果を投資額に応じて投資家に分配される金融商品です。
投資信託のメリットは、少額からさまざまな地域や資産に分散投資できる点です。専門家によって運用され、個人では買えない(買いにくい)商品にも投資できます。
専門家が運用するといっても必ずしも儲かるわけではなく、損失が出ることもあります。購入時手数料や運用管理費用(信託報酬)などのコストがかかる点にも注意が必要です。
不動産投資
アパートやマンションなどの賃貸用不動産を購入して、家賃収入を得る投資方法です。
安定した家賃収入が期待できるほか、税負担の軽減につながることもあり、税率の高い高所得者の税金対策としても有効です。不動産の購入が目的であればローンも組みやすく、手持ち資金よりも大きな金額の不動産を購入し、効率よく資産を増やすことも可能です。これを「レバレッジ効果」といいます。
一方、空室や家賃滞納、災害などのリスクがあり、維持・管理・修繕、固定資産税などの手間やコストがかかります。
また、現物の不動産を購入するためには数百万~数千万円単位の資金が必要ですし、売却して換金するには時間を要する可能性があります。
住宅ローンでマイホームの購入を検討している場合は、賃貸物件のローンが住宅ローンの審査に影響するおそれがある点にも注意が必要です。
それぞれの投資方法にはメリット・デメリットがあり、うまくいかないこともあります。書籍やセミナーなどで仕組みやリスクについて学び、よく理解したうえでご自身に合った方法で投資を始めてみましょう。
おわりに
富裕層とは、「純金融資産保有額1億円以上」の世帯(超富裕層を含む)、準富裕層とは「純金融資産保有額5,000万円以上1億円未満」の世帯をいいます。
富裕層が資産を増やせる理由は、お金をかけるところを見極め、リターンを生む可能性のあるところにしっかりとお金をかけているからです。保有する資産をさまざまな投資先に分散投資することで、リスクを抑えた運用ができ、資産を守りながら増やしていけます。
これから将来に向けて資産形成を始める方は、家計の無駄を減らしたり、収入を増やしたりして資金を確保し、運用することで資産を増やしていきましょう。早く始めれば複利効果が発揮され、効率よくお金を増やせます。まとまった資金がない方も、少額から始められる積立投資から資産形成を始めてみてはいかがでしょうか。