事業を継続していく際には多くの支出が発生しますが、経費としてすべて処理できる訳ではありません。
この記事では、費用の中でも上限金額が決められている接待交際費について詳しく解説します。接待交際費と間違いやすい科目や、接待交際費として経費計上するときのポイントもお伝えしていきますので、参考にしてください。
(本記事は2023年12月25日時点の情報です)
- 接待交際費は事業に関係ある方をもてなす際に発生した費用
- 接待交際費の上限は資本金によって決まり、資本金1億円以上100億円以内の法人の場合は「接待飲食費の50%」か「接待交際費800万円」が上限
- 会議費や福利厚生費は接待交際費と混同しやすいが使う相手や金額によって科目が異なる
- 接待交際費は必要事項を正しく記録しておき、帳簿・領収書は最低7年保管が必要
接待交際費について
法人における接待交際費は、税法上「交際費」とされます。国税庁によると、交際費とは「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」とされています。
つまり、仕事のうえで関係のある方や企業をもてなすための費用といえるでしょう。
接待飲食費とは?具体例を解説
接待交際費とは、主に取引先や仕入先などとの飲食費用のことを指し、「接待飲食費」と「接待飲食費以外の接待交際費」に分類されます。
例えば、案件の打ち上げに取引先や協力企業の方と居酒屋やカラオケへ行くときの費用は接待飲食費です。
接待飲食費以外の接待交際費とは
一方で、取引先などとの飲食費用以外はすべて「接待飲食費以外の接待交際費」に該当します。例えば、得意先へのお中元やお歳暮、結婚や独立のお祝い、香典などが接待飲食費以外の接待交際費です。
関連記事:個人事業主が納める税金とは?税金の種類&節税対策を理解しよう
参照元:国税庁|No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|
接待交際費の上限額について
取引先をもてなすための費用は接待交際費として計上できますが、法人の場合は個人事業主と同じようにすべての接待交際費が上限なく経費として認められる訳ではありません。
つまり、交際費は原則として損金算入されず、会計上は経費であっても税金の計算上では経費としないということです。
しかし、資本金・出資金の額や一定の要件を満たせば、一部を損金算入することは可能です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
大企業の場合
期末の資本金が1億円を超える法人の場合、接待飲食費として支払った金額の50%を上限として損金と算入します。接待飲食費以外の接待交際費は計上できません。また、資本金もしくは出資金が100億円以上の法人は、すべての接待交際費が損金として算入されないので、注意が必要です。
中小企業の場合
資本金または出資額が1億円以下の中小企業の場合、下記のどちらかの金額を任意で選べます。
- 接待飲食費の50%
- 年間800万円以下の接待交際費の全額
接待飲食費が年間で1,600万円を超える場合は「接待飲食費の50%相当の金額」を選択したほうが節税につながりますが、それ以下の場合は「年間800万円以下の接待交際費の全額」のほうが損金に算入できる金額が大きくなるため有利です。
個人事業主の場合
個人事業主の場合、接待費交際費に上限はありません。ただし、厳密にいうと事業収入を得るために必要な接待交際費かどうかで判断されます。
特に、接待飲食費の場合、「日時・場所・誰と・いくら」の4点が明記されていることが重要です。領収書の余白や接待飲食費の一覧表などで管理しておきましょう。
参照元:国税庁|No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|
接待交際費の5,000円基準とは?詳しく解説
接待交際費の上限についてご説明しましたが、特に注意が必要なのが接待飲食費の金額です。
1人当たり5,000円以下の接待飲食費
国税庁の定義では、接待飲食費を参加した人数で割ったときに5,000円以下となる場合は交際費から除かれるとされています。社外の方との接待飲食費が5,000円以下となる場合は、接待交際費ではなく「会議費」の勘定科目として計上することが可能です。
ただし、経費として計上するためには、以下の必要事項を記載した書類が必須です。
- 飲食した年月日
- 参加した人の名前と関係
- 参加人数
- 合計金額
- 会食場所
そのため、居酒屋などで飲食した際の費用を会議費として計上するのは難しいでしょう。
5,000円は税込か税抜か
「1人当たり5,000円以下」という基準ですが、消費税の扱いはどうなるのでしょうか。
この場合、その法人が採用している経理方式が税込みか税抜きかによって異なります。つまり、経理方式で税込経理を採用している場合は消費税を含めて5,000円以下、税抜経理を採用している場合は消費税を含めず5,000円以下という扱いです。
割り勘で支払った場合
それでは接待に伴う飲食代を接待した相手と折半した場合はどうなるのでしょうか。この場合も、飲食費として支払った総額を参加人数で割った金額で判断されます。
しかし、割り勘になった場合は総額がわからないこともあるでしょう。その場合は、その法人が負担した金額が1人当たりおよそ5,000円であると判断できれば、支払った金額をもって判定可能としています。
参照元:国税庁|No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|、国税庁|6 第61条の4《交際費等の損金不算入》関係|
接待交際費と間違えやすい費用
実際には、接待交際費にに含まれるのか判断が難しい項目もあります。ここからは、接待交際費と間違いやすい費用について確認していきましょう。
会議費
会議費とは、文字通り会議に必要となる費用のことです。例えば、会議に必要な会議室を借りる費用や資料作成費、会議の際に配るお茶やお茶菓子の代金も会議費に含まれます。
社外の方をもてなす際の接待交際費との大きな違いは、参加するのが社内の方でも問題ない点です。社内でランチミーティングをしたときの飲食費も会議費として計上できます。
接待交際費を損金に算入するためには上限金額がありますが、会議費に上限はありません。そのため、会場選びや食事のコースを工夫して1人当たり5,000円以下に抑えることで、会議費として経費に計上でき、節税につながります。
福利厚生費
福利厚生費とは、法人が従業員の慰労や従業員のための制度に支出する費用です。接待交際費と福利厚生費の大きな違いは誰のための費用なのかという点にあります。例えば、取引先と案件の打ち上げをする場合は接待交際費となり、自社の従業員をねぎらう飲食であれば福利厚生費となります。
ただし、自社の従業員をねぎらう飲食の場であっても接待交際費に含まれるものもあるので注意が必要です。社内行事として従業員全員に一律で参加の機会が与えられている忘年会や運動会、社員旅行は福利厚生費とされますが、一部の従業員だけで会食する場合は接待交際費となります。
広告宣伝費
広告宣伝費とは、企業や自社サービスを宣伝するための費用のことです。接待交際費とは無関係のように思えるかもしれませんが、混同しやすいのが取引先や顧客に配るカレンダーや手帳、手ぬぐいといった粗品です。
国税庁によると、不特定多数の方への宣伝効果を意図する費用は交際費に含まれず、広告宣伝費であるとしています。
寄附金
寄附金は見返りを求めずに無償で与えた金額を指します。接待交際費との違いは、寄附した相手との関係性です。例えば、近所の神社でお祭りがある際にお金を支援する場合、直接会社の売り上げにつながる訳ではないため寄附金となります。
一方、同じ神社への支援であっても、仕事のうえで取り引きのある神社であれば会社の売り上げにつながるとして、接待交際費とみなされる場合もあります。
研修費
研修を目的とした旅行の費用は接待交際費と思うかもしれません。しかし、業務の遂行を目的とした旅行なら、研修費として計上できます。上限のある接待交際費と異なり、研修費は全額損金として算入することが可能です。
参照元:国税庁|交際費等(飲食費)に関するQ&A
国税庁|No.5261 交際費等と福利厚生費との区分|
国税庁|No.5260 交際費等と広告宣伝費との区分|
国税庁|No.5262 交際費等と寄附金との区分|
接待交際費として損金算入するためのポイント
接待交際費として計上できれば、上限金額まで損金として算入できます。そのためには、接待交際費であると判定する材料になる書類をきちんと残しておくことが重要です。
領収書に必要事項を記録する
接待交際費として計上するためには以下の項目が明記された書類が必要です。
- 接待のあった年月日
- 参加した得意先の名称・氏名とその関係性
- 参加した人数
- 費用の総額
- 飲食店などの名称・所在地
- その他、費用を明確にするために必要な事項
これらが明記されていない領収書だと、交際費として認めてもらえない場合があるので注意しましょう。
帳簿や書類は7年間保管する
国税庁のホームページによると、法人税法において帳簿や領収書など7~10年間保管しなくてはなりません。
保管年数は赤字があったかどうかで異なりますが、これらを保管せず処分してしまったことが税務調査で明らかになると保存義務違反となります。最悪の場合、追徴課税が発生するだけでなく、会社法上の罰則として100万円以下の過料を払わなくてはならないケースもあるので、帳簿などの管理はしっかりと行いましょう。
摘要はわかりやすく書く
仕訳帳などの摘要欄は書き方に厳格なルールはありませんが、その分具体的にわかりやすく書くことが重要です。帳簿を見たとき、接待交際費として判断できるよう、「誰に・誰と」と具体的にわかるようにしましょう。
例えば、取引先の担当者2名との接待の場合は「(飲食店名)にて接待 (社名)(氏名)様 他1名」など、正しい内容で記載してください。
接待交際費を計上する際の注意点
その他、接待交際費を計上するためにはどのような点に注意すればいいのでしょうか。ここでは、以下2点について解説します。
【接待交際費を計上する際の注意点】
- 私的な飲み会を計上しない
- 限度額は変更される可能性もある
私的な飲み会を計上しない
当然のことですが、事業に関係のない私的な費用は経費として認められません。気軽な気持ちで事業に関係のない費用を計上してしまうと、税務署から指摘を受けるだけではなく罰則が科せられることもあります。企業としての社会的な信用も低下しかねないため、計上は正しく行いましょう。
限度額は変更される可能性もある
接待交際費の上限金額など、経済状況や社会情勢によって変更されてきました。そのため、今後も変わる可能性はあります。
実際に2023年12月現在、政府・与党では2024年度の税制改正に向けて交際費の5,000円基準を10,000円に引き上げる方向で調整に入ったと報じられています。経費処理を正しく行い、節税などを有利に進めるためにも、今後の動向を確認していく必要があるでしょう。
経費管理をもっと簡単に!おすすめのカード2選
このように、複雑な経理処理をよりスムーズにするためには会計ソフトを利用すると便利です。連携できるビジネスカードを使うことで、効率的な経理管理に役立つだけではなく、ポイントを活用して経費削減も期待できるでしょう。ここからは、おすすめのビジネスカードを2つご紹介します。
セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード
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おわりに
接待交際費は、企業の規模によって上限金額が決められています。上限金額を超えると損金として算入できないため、接待交際費と間違いやすい費用についても正しく理解して計上することが重要です。ルールをしっかり理解して、有効な節税につなげることをおすすめします。