会社を設立する際の費用はどれくらいかかるのかご存じでしょうか。会社設立の際にかかる費用は、株式会社、合同会社など会社の形態によって異なります。
この記事では、会社設立の際にかかる費用や費用削減の方法について解説します。これから会社設立を予定しているけれど株式会社と合同会社のどちらを選ぶべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
(本記事は2023年12月20日時点の情報です)
- 会社設立にかかる費用の相場は株式会社、合同会社によって異なる
- 会社設立の際に必要な主な費用は法定費用、資本金、印鑑証明代など
- 社会的な信用度を高めて法人向けの事業をしていきたい、多額の資金を調達したいという場合は法人化がおすすめ
- 会社設立後には社会保険料、家賃や備品などの経費、各種税金や士業への報酬などが必要
会社設立にかかる費用相場
会社を設立する際に気になることのひとつが、会社の設立費用ではないでしょうか。会社設立の際に選ばれる形態は株式会社か合同会社が一般的ですが、会社設立の費用はいずれの形態を選ぶかによって額が異なります。
株式会社設立にかかる費用相場
株式会社は、株式を発行して資金を集めて経営する会社です。基本的には、出資者である株主と経営者である取締役の役割が分かれており、所有と経営が分離されます。
ただし、役割が分離されているだけであり、株主と取締役は同一人でも問題はありません。
株式会社を設立する際の費用は、約25万円程度が相場です。
合同会社設立にかかる費用相場
合同会社は株式会社と異なり、出資者と経営者が一緒であり、所有と経営が一致している会社です。合同会社では出資者のことを社員と呼び、社員は出資だけでなく経営も自身で行います。
合同会社を設立する際の費用は約10万円程度が相場となっており、株式会社より費用を抑えられます。
会社設立には主に3つの費用が必要
会社を設立する際に必要な費用は、主に以下の3種類があります。
- 法定費用
- 資本金
- 印鑑証明
それぞれの費用について解説します。
法定費用
法定費用とは、主に会社設立登記の手続きをする際に必要となる費用です。内訳としては、定款用収入印紙代、定款の謄本手数料や認証料、登録免許税などが挙げられます。
法定費用の額は、会社の形態や資本金によって異なります。
また、合同会社の場合は株式会社と異なり、公証人役場での定款認証の必要がありません。そのため、定款の謄本手数料や認証手数料が必要なく、株式会社と比べて設立費用が抑えられます。
資本金
かつては、会社設立に関して「株式会社なら資本金1,000万円以上、有限会社なら資本金300万円以上が必要」というように、資本金の最低金額が決められていました。しかし、2006年に施行された新会社法により、資本金の最低金額の定めがなくなり、現在は資本金1円から会社の設立が可能です。
ただし、資本金1円から会社が設立できるといっても、あまりに低い金額だと事業を開始してから利益が出るまでの運転資金として使える資本金が足りなくなり、事業の継続に支障をきたしかねません。そのため、運転資金のための資本金をある程度用意しておく必要があります。
また、1人で会社を設立する場合と複数人で会社を設立する場合でも、必要な資本金は異なってくるでしょう。
印鑑証明
書面で会社設立登記を法務局に申請する場合、印鑑登録手続きのために「印鑑届出書」を添付書類として提出します。印鑑届出書には、会社代表印と会社代表者の実印を捺さなくてはなりません。また、印鑑届出書と一緒に印鑑登録料を納付する必要があります。
印鑑登録手続きが受理されると会社代表印が法務局に登録され、印鑑証明書の発行が可能になります。会社設立後の様々な手続きの際に印鑑証明書が必要です。印鑑証明書を請求するたびに発行手数料が発生することを覚えておきましょう。
株式会社を設立する方法
株式会社を設立したいと思っても、どのように進めていけば良いのか分からない方も多いのではないでしょうか。ここでは、株式会社を設立するメリットや流れについて説明します。
株式会社を設立するメリット
株式会社を設立することで、多くのメリットを得られます。中でも、合同会社と比較した場合のメリットとして挙げられるのが、会社形態が広く知られており、ネガティブなイメージを持たれにくい点です。
また、遵守すべき法律や規制が合同会社と比べて多いため、社会的な信用も得やすいでしょう。
次に、株式を発行して資金を調達できる点が大きなメリットです。株主が負うのは株式の購入費用以上に損失を負わない「間接有限責任」なので、出資しやすく、会社にとっては資金を集めやすくなっています。
事業を行っていく上でより多くの資金を集め、会社の社会的な信用を高めたい場合は株式会社を設立した方が良いでしょう。
設立までの流れ
株式会社を設立する流れについてご紹介します。
会社の基本的なことを決める
会社を設立するにあたっては、まず会社の基本的なことを決める必要があります。内容としては、事業目的、社名、本店所在地、資本金の額、持株比率、発起人、役員構成、決算期などです。発起人とは、株式会社の設立を企画して出資や設立の手続きを進めていく人を指します。
定款を作成して認証を受ける
次に、定款を作成する必要があります。定款とは、会社を運営していくための重要なルールです。定款の作成は発起人全員で行い、発起人の署名または記名押印を必要とします。
定款には必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」があります。具体的には、社名、会社の目的、本店所在地、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名又は名称及び住所などです。絶対的記載事項に記載漏れがあると、定款自体が無効となってしまうため注意してください。
その他、定款に記載する事項として、定款に記載がないと効力を生じない「相対的記載事項」、会社が任意に決めた「任意的記載事項」が挙げられます。
作成した定款は、公証人によって法令上の問題がないことを証明してもらいます。これを「定款の認証」と呼びます。公証人による定款の認証がなければ、定款の効力は発生しません。
出資金を払う
定款の認証を終えたら、発起人は引き受けた出資金(資本金)を金融機関に払い込みます。株式会社を設立する際、発起人は必ず1株以上引き受けなければならず、遅滞なく出資金の全額を払い込まなければならない旨、会社法によって定められています。
登記登録する
株式会社の設立登記は、本店所在地を管轄する法務局等に申請します。設立登記の申請には、以下の書類の提出と登録免許税の支払いが必要です。
- 株式会社設立登記申請書
- 定款
- 設立時取締役の就任承諾書
- 取締役の印鑑証明書
- 出資金の払込を証する書面
- 印鑑届書
合同会社を設立する方法
続いて、合同会社を設立するメリットや流れを解説します。
合同会社を設立するメリット
合同会社を設立するメリットは、株式会社と比べて設立費用が低い点です。前述のように、合同会社の設立に際しては公証人役場での定款認証の必要がありません。定款の謄本手数料や認証手数料が必要ないため、費用が抑えられます。
また、合同会社は経営上発生する役員の変更や決算公告に関する費用についても、株式会社より抑えることが可能です。さらに、出資者と経営者が一致しているため、事業の拡大などの経営判断を株式会社より迅速に行うことができます。
一般的に、合同会社は創業間もないスタートアップ企業などに適している会社形態と言えるでしょう。会社設立や経営上の費用を抑えられ、迅速な意思決定が可能という合同会社ならではのメリットを享受できるからです。
事業拡大やそのための資金調達の必要が生じた際には、合同会社から株式会社への変更も可能です。
設立までの流れ
合同会社を設立する流れについてご紹介します。
会社の基本的なことを決める
合同会社の設立の際も、株式会社の設立と同様に、まずは会社の基本的な事項を決めなければなりません。内容としては、発起人、社名、本店所在地、会社の事業目的、資本金の額、決算期などが挙げられます。
定款を作成して認証を受ける
合同会社でも、定款の作成が必要です。必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」は、社名、事業目的、本店所在地、社員の氏名及び住所、社員を有限責任社員とする旨、社員の出資目的とその評価基準などです。株式会社と同様、絶対的記載事項に記載漏れがあると、定款自体が無効となってしまいます。
その他、定款に記載するのは、定款に記載がないと効力を生じない「相対的記載事項」、会社が任意に決めた「任意的記載事項」がありますが、この点も株式会社の場合と同様です。
合同会社の定款は、株式会社の場合と異なり、公証人による定款の認証が必要ありません。所有と経営が分離している株式会社と異なり、合同会社ではほとんどの場合、出資者と経営者が一致しています。出資者と経営者間での争いの可能性がないため、公証人による定款の認証を義務づけていないと考えられています。
出資金を払う
合同会社の設立においても、定款の作成後に出資金を払い込まなければなりません。法務局での設立登記申請の際に、出資金の払い込みを確認することになっているからです。
登記登録する
合同会社設立登記は、本店所在地を管轄する法務局などで申請します。設立登記の申請には、以下の書類の提出と登録免許税の支払いが必要です。
- 合同会社設立登記申請書
- 定款
- 代表社員の印鑑証明書
- 払込を証する書面
- 印鑑届書
登録免許税は資本金の7/1000の額とされていますが、6万円に満たない場合は6万円です。株式会社の場合、登録免許税は最低15万円なので、この点も合同会社の方が設立費用を抑えられる理由となっています。
個人事業主との違い
個人事業主と比較して、会社設立のメリットとデメリットをご紹介します。
【会社設立のメリット】
- 社会的な信用度が上がる
- 節税につながる可能性がある
会社設立の際には登記が必要になり、詳細な情報を誰でも閲覧できるため、社会的な信用度が上がります。また、給与所得控除など、個人事業主では経費と認められない費用も経費計上することが可能です。税金の種類は増えますが、結果的に節税につながる可能性もあります。
【会社設立のデメリット】
- 設立の際に費用がかかる
- 経営に際して事務作業が増える
前述のように、会社設立の際には様々な費用がかかります。また、定款作成など必要事項が増える他、設立後も経営に必要な事務作業が多いです。コストや手間の点では、個人事業主より負担がかかる点に注意してください。
関連記事:法人化するメリット・デメリットを解説!個人事業主との違いや知っておくと役立つ知識までお届け
会社設立後にも費用は必要
会社設立後にも、経営維持のために費用が必要です。ここでは、どのような費用が必要になってくるのか解説します。
社会保険料
会社設立後は、社会保険に加入しなくてはいけません。売上や利益に関係なく、従業員の健康保険、厚生年金保険、雇用保険を支払う必要があります。
なお、社会保険料は加入者の収入に応じて異なります。
家賃や備品などの経費
会社設立後は、経営を維持していくための経費が必要です。具体的には、事務所の家賃、水道光熱費、机やパソコンなどの事務用品代、インターネットや電話料金などの通信費、事務所の清掃費用、会社のホームページの運営費用などが挙げられます。
ただし、これらの費用相場は会社の規模や事業内容、地域によって異なってくるため一概にいくらとはいい切れません。
各種税金
会社設立後は法人として税金が課せられます。
まず、法人の所得に対して課せられる法人税が挙げられます。法人税額は、「課税所得×税率-税額控除額」の計算式で求められ、税率は法人の種類や資本金額、年間所得金額で変動します。
次に、会社を登記している都道府県や市町村に対して納める法人住民税が課税されます。会社の規模が小さくても、最低でも約7万円を法人住民税として納税することが定められています。
さらに、法人事業税が科せられます。これは、事業所等を有する都道府県で事業を営んでいることに対する税金です。「課税標準額(所得等)×税率」の計算式で求められ、税率は法人の種類や資本金額、年間の所得金額によって変動します。
この他、消費税および地方消費税、固定資産税、法定外の税金が課せられる場合もあります。具体的な金額は事業内容や会社の規模によって異なってきます。
税理士や弁護士費用
会社設立後は、税理士や公認会計士、弁護士などの専門家を顧問として雇うことが多いです。
会社を経営していくためには、会計や税務、法律に関する専門家の詳しい知識が必要であり、素人が対応するのは難しい場合があるからです。専門家と顧問契約を結ぶ際には、報酬を支払う必要があります。
専門家への報酬は契約内容によって異なります。例えば、税理士と顧問契約を結んだ場合に支払う報酬額の相場は月々3~5万円程度が一般的です。
また、顧問報酬に加えて事業年度が終わると税理士に決算書を作成してもらうために別途費用がかかります。税理士による決算書の作成費用は、会社の売上規模によって異なる点に注意してください。
専門家との契約の際には顧問報酬や手数料、別途必要になる費用などの見積もりを依頼して確認し、検討することをおすすめします。
会社設立にかかる費用を減らすには?
会社設立にかかる費用は、できるだけ減らしたいところです。ここでは、費用を抑える方法について解説します。
公的サポート事業を利用
まず挙げられるのが、公的なサポート事業を利用する方法です。例えば、「産業競争力強化法」に則って各市区町村役場が行っている「特定創業支援事業」というサポートが挙げられます。
各市町村役場が商工会議所などと連携して起業に役立つセミナーや講習会を開催し、受講者は設立登記手続き時の登録免許税が半額になるサービスを受けることが可能です。また、日本政策金融公庫の融資を受ける際に優遇を受けられる費用面のサポートもあります。
また、会社設立直後から補助金をもらえる制度も活用しましょう。具体例として、「小規模事業者持続化補助金」が挙げられます。小規模事業者が新たな販路開拓や生産性向上のための資金を補助金として受けることが可能です。
補助金では会社設立の費用を減らすことはできませんが、資金の一部として利用することで費用面のサポートとなるでしょう。
税理士事務所やサポートソフトのセットプランなどを利用する
税理士事務所やサポートソフトのセットプランなどを利用する方法もあります。
税理士事務所によっては、会社設立直後から顧問契約を結ぶことなどを条件に、会社設立に関する税理士の手数料を無料にしてくれるケースがあります。
専門家に頼む必要がない場合は、会計ソフトの会社設立に必要な書類の作成サポート機能を利用する方法もあります。これらを利用することで、会社設立の費用を削減することができるでしょう。
会社設立後の費用負担を減らすなら、法人カードを作るのがおすすめ
会社設立後は、法人カードを作成することをおすすめします。法人カードを作成することのメリットは、会計ソフトと法人カードを同期させることで経理が自動化され、帳簿付けが楽になること、事業用の支出と私的な支出を明確に分けられるため経費管理がより簡単になること、事業に関するさまざまな支払いが楽になることなどです。
「セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード」なら年会費無料でお持ちいただけます。従業員や家族の方がお持ちいただける「追加カード」も9枚まで無料で発行できます。また、(株)ミロク情報サービスが提供する会計・給与のクラウドサービス「かんたんクラウド」を2ヵ月無料で利用できるなどの特典も充実しているおすすめの1枚です。
【セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードの主な特徴】
- 年会費が永年無料
- 引き落とし口座が法人と個人のいずれかを選べる
- 貯めたポイントを経費削減に充てられる
利用限度額 | ニーズに対応して限度額を設定 |
追加カード | 9枚まで無料で発行 |
優待 | ・エックスサーバー(レンタルサーバー)の初期設定費用が無料 ・「かんたんクラウド™」(クラウドサービス)の月額使用料が3ヵ月無料 |
公式HP | https://www.saisoncard.co.jp/amextop/cobalt-pro/?P5=49W |
セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードの詳細はこちら
また、資金需要にもお応えできるカードローンとして、クレディセゾンの「MONEY CARD」もおすすめです。資金の使途が自由なので、事業用資金としてもご利用いただけます。ATMの入出金手数料は何度でも無料で、指定の口座へ最短数十秒でのお振込みも可能です。
おわりに
会社設立の際に必要な手続きや費用は、会社の形態、事業の内容や規模によって異なります。また、設立後にも税金や社会保険料などの費用が必要です。それぞれの会社形態のメリット・デメリットを十分検討した上で、目指す事業目的に合わせた会社設立を目指しましょう。