資産形成の方法のひとつとして投資信託が挙げられますが、資産の取り崩し方法には主に3種類あります。中でも定率取り崩しは資産の一定割合を年間で取り崩す手法ですが、定率取り崩しの年率は4%がおすすめだとされています。では、なぜ4%が良いのでしょうか。
この記事では、投資信託の資産を取り崩す際の効果的な方法について、特に定率4%の戦略に焦点を当てて解説します。取り崩しの際の注意点もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
(本記事は2024年7月1日時点の情報です)
- 投資信託の資産を取り崩す方法は主に定額、定口、定率の3種類
- 定率4%取り崩しのメリットは、資産寿命を延ばしつつ市場の不確実性にも対処できること
- 取り崩した資金はしっかり管理し、残っている資産の運用成績を悪化させないことが重要
資産の取り崩し方法は主に3種類
ゼロ金利が続く日本では、特に60代以降の方々にとって退職後の生活資金をどのように管理し、活用するかが非常に重要です。退職後の主な収入源として、労働収入、年金収入、資産を活用した収入が挙げられます。
投資信託を取り崩す必要がある場合は、それぞれのライフスタイルや資産状況に応じて、最適な取り崩し方法を選ぶことが重要です。ここでは、主に以下3種類の取崩し方法について解説します。
【資産の主な取り崩し方法は3種類】
- 定額
- 定口数
- 定率
定額
定額取り崩しは、「毎月〇円」など、自分が決めた一定額を定期的に取り崩す手法です。最大のメリットは、取り崩し額が明確な点にあります。
毎月決まった額を受け取るため、収入の計画を立てやすく、生活費や他の支出に対して安定したキャッシュフローを組むことができます。
また、家賃やローンの返済など予測できる定期支出がある場合、収入と支出の見通しが立てやすいため効果的です。
定額取り崩しは、損益にかかわらず毎月決まった額を受け取りたい方に向いている手法といえるでしょう。
一方、市場の変動により資産価値が下落した場合、定額取り崩しでは資産の減少スピードが加速する可能性があります。市況によっては取り崩す額を調整する必要が出てくるかもしれません。
特に、下げ相場の場合は多く取り崩すことになりますが、解約金額を大きくし過ぎると元本を取り崩すのと同じことになるため、注意が必要です。
定口数
定口数取り崩しは、資産の保有口数に対し、一定期間の解約口数を指定して口数に見合った金額を受け取る方法です。
期間を指定するため、取り崩し期間が明確になるのがメリットです。そのため、解約期間が決まっている人に向いているといえるでしょう。
ただし、口数に見合った金額は市況によって異なるため、解約金額が定まらないのがデメリットです。相場によって解約金額が左右されるため、必要となる金額を満たさない可能性があります。
定率
定率取り崩しは、保有資産に対して、ご自身が決めた解約率を乗じた金額を受け取れる方法です。
解約期間は相場によって左右されるため明確ではありませんが、運用成績によっては期間を延ばすことが可能です。そのため、運用益が出ているときに利益を享受したい方に向いている方法だといえるでしょう。
ただし、解約金額が相場によって左右されるため、必要となる金額を満たさない可能性はあります。また、残高が少なくなった場合は、解約できる金額がわずかになってしまうこともあるため注意が必要です。
また、すべての投資信託が定率取り崩しを可能としているわけではないので、利用可能かどうか確認してください。
資産形成の取り崩し定率のメリットとデメリット
定率取り崩しは、市場の変動に対応しながら安定した収入を確保できる方法です。ただし、メリットだけでなくデメリットもあるため、リスクとのバランスを取るためにもあらかじめ双方を押さえておきましょう。
取り崩し定率のメリット
定率取り崩しの最大のメリットは、資産寿命を延ばすことができる点です。相場の動向に応じて取り崩し額が変動するため、市場が低迷している時には少ない額を、市場が好調な時にはより多くの額を取り崩すことができます。
また、定率取り崩しの場合、年月とともに取り崩し額が減少していきます。そのため、初期にまとまった額を受け取ってゆとりのある生活を満喫できますし、ほかの資産運用に回すことでさらなる利益も期待できるでしょう。
長期的に資産を維持し、収入源としての機能を最大限に活かすことが可能です。
取り崩し定率のデメリット
定率取り崩しの場合、定額取り崩しと比べて取り崩せる額がわかりにくいのがデメリットです。
また、資産が減少していくにしたがって受け取れる額も年々減っていく点にも注意が必要です。
相場が下落すれば資産価値が減るため、必要な収入を得るためにより多くの資産を取り崩す必要が出てくるかもしれません。特に、退職後に限られた収入源で生活する方にとっては資産が減るリスクが高まるといえるでしょう。
取り崩し定率のデメリットの克服方法
定率取り崩しのデメリットを克服するためには、資産配分を適切に管理し、市場の変動に対するリスクを減らすことが重要です。
例えば、さまざまな投資先に分散投資を行うことにより、ひとつの資産が目減りしてもほかの投資先の運用益でカバーすることが可能です。運用成績が良ければ資産を維持できるので、切り崩せる額も維持できる可能性があります。
そして、定期的に資産の評価と調整を行い、必要に応じて取り崩し率を調整することで、長期的な資産の維持と安定した収入の確保を目指せるでしょう。多くの額を切り崩せたときに全て使い切るのではなく、あまり切り崩せない年に備えておくことも大切です。
定率取り崩しでの年率の決定方法は?
定率取り崩しは、柔軟に対応できることから多くの投資家に選ばれる方法ですが、重要なのが年率を適切に決定することです。
ここでは、どのように年率を決定するべきか、なぜ特定の年率が推奨されるのか解説します。
定率取り崩しでの年率の決定方法
定率取り崩しで年率をどの程度に設定するかは非常に悩ましいところですが、資産の残高と、月々、年間に必要となる生活費などから妥当な年率を算出し、設定することが大切です。
その際には、リスクをどこまで許容できるか、予想される資産寿命、市場の相場を適切に評価することが欠かせません。
一般的には、よりリスクを取ることができる方、より長期にわたって資産を運用する計画がある方は、高い年率を選択できるでしょう。一方、あまりリスクを取りたくない方、短期的な収入を重視する方なら、低い年率を選択することになります。
4%がおすすめ
資産寿命を維持することに注目すると、「4%」という年率が推奨されています。
なぜ4%かというと、その背景には「4%ルール」という、年間支出の25倍の資産を築いておけば年利4%の定率取り崩しによって資産を維持しつつ生活できるという考え方があるからです。
ただし、この4%という数字はアメリカの代表的な株価指数である「S&P500」の上昇率7%からアメリカのインフレ率3%を差し引いた割合です。日本のインフレ率は従来アメリカより低かったため、実際には4%を上回る可能性が高いと考えておきましょう。
それでも、4%ルールは市場の平均的なリターンを考慮し、長期にわたって資産を維持するのに役立つとされています。インフレや市場の変動に対しても一定の耐性があり、ライフプランや市場の変化に応じて年率を調整することが可能な点からもメリットのある考え方だといえるでしょう。
定率取り崩しの注意点
定率取り崩しは、資産運用の有効な手段ですが、注意すべき点がいくつかあります。これらの注意点を理解し、適切に対処することが、資産を長期間にわたって健全に維持する鍵となります。
取り崩した資金の使い過ぎに警戒
定率取り崩しでは、特に市場が好調な時に取り崩す額が増加するため、使い過ぎには注意が必要です。市場が上昇している時期に取り崩した額が多くなると、その後に市場が不安定になった際、資産の減少に拍車がかかる可能性があります。
そのため、取り崩した資金は計画的に使うことが大切です。例えば、取り崩した資金の一部を不測の事態のための備えとして確保しておく、あるいは低リスクの金融商品に再投資するなどして慎重に使い道を検討することをおすすめします。
残っている資産の運用成果を悪化させない
また、定率取り崩しの場合、残った資産の運用成績を悪化させないよう注意しなければなりません。定率取り崩しでは、市場の下落時に資産の価値が減少すると、その影響で取り崩せる額が減少します。この状態が続くと資産の運用成績がいつまでたっても上がりません。
そのため、市場の変動に対応しつつ、資産のバランスを適切に維持するための戦略を立てることが必要です。例えば、資産の再配分や市場の変動に強い金融商品への投資など、積極的な資産運用を行う必要があるでしょう。
定率取り崩しの大きなメリットは、資産寿命を延ばし、長期的な資産運用において効果が期待できることにあります。最大限にメリットを享受するためには、残っている資産を的確に維持・運用していくことが大切です。
おわりに
投資信託の取り崩し方法、特に定率取り崩しのメリットとデメリット、4%という年率がなぜ推奨されるのか解説しました。
定率取り崩しのメリットは、資産寿命を延ばし、投資資産の基準価額が安い時に多く売却するリスクを避けられることです。資産状況やライフスタイルに合った方法を選択し、より賢く投資戦略を立てて運用していきましょう。
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