事業運転資金の調達に頭を悩ませている経営者の方は多いのではないでしょうか。運転資金の調達は、金融機関からの借入でまかなうケースが一般的です。
今回の記事では、事業運転資金の融資を受けられる金融機関についてまとめ、それぞれの特徴やメリットを解説していきます。本記事を読めば自社の状況に合った金融機関を選択できるようになるでしょう。事業運転資金の調達方法を理解し、資金繰りに悩まずに事業の成長と安定化を目指しましょう。
(本記事は2024年8月2日時点の情報です)
- 事業運転資金の融資を提供する主な金融機関として、政府系金融機関、民間銀行、信用組合・信用金庫、ノンバンクがある
- 運転資金の融資を検討すべきパターンとして売上低迷時、売掛金回収遅延時、事業拡大時などが挙げられる
- 金融機関で運転資金の融資を受ける際は、融資理由と資金使途の明確化、丁寧な書類作成といったポイントに気をつける必要がある
事業運転資金を融資してもらえる金融機関一覧
融資は、運転資金の最も一般的な調達方法です。事業資金の融資は多くの金融機関が取り扱っており、それぞれに異なる特徴があります。最初に主な融資先を紹介します。
政府系金融機関
一般企業向けの融資を取り扱う政府系金融機関には、主に以下の3つがあります。
- 日本政策金融公庫
- 商工組合中央金庫(商工中金)
- 日本政策投資銀行
それぞれについて、以下にて解説します。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は政府が100%出資をする金融機関で、一般貸付のような個人事業主や中小企業向けのさまざまな融資制度があります。さまざまな状況の企業に対応しており、創業間もない企業から経営難で赤字が続く企業まで、状況に合わせて最適な制度選択が可能です。
日本政策金融公庫の融資対象は中小企業の場合、業種と企業規模によって以下のように定められています(一部例外あり)。
- 製造業、建設業、運輸業など:資本金3億円以下 または 従業員300人以下
- 卸売業:資本金1億円以下または 従業員100人以下
- 小売業・飲食店: 資本金5千万円以下または 従業員50人以下
- サービス業:資本金5千万円以下または 従業員100人以下
業種については幅広く対応しており、製造業、卸売業、小売業、サービス業、農林水産業など、ほぼすべての業種が融資の対象となっています。ただし、金融・保険業、不動産業などは一部制限がある場合があります。
運転資金の融資を日本政策金融公庫で受ける場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
- 金利が低めに設定されている
- 返済期間が長め
- 創業期でも申し込める
- 無担保・無保証人で利用できる制度がある
【デメリット】
- 審査期間が長め
- 融資額に上限がある
日本政策金融公庫の融資は運転資金に利用できる制度も複数あり、民間の金融機関よりも金利が低めです。ただし、審査には平均して2週間かかるため、日程に余裕を持った申し込みが必要です。
商工組合中央金庫(商工中金)
商工組合中央金庫(商工中金)は、株主である商工団体に加入する中小企業へ融資する政府系金融機関です。運転資金の融資を商工中金で受けるメリット・デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
- 民間金融機関に比べて金利が低め
- 返済期間が長め
【デメリット】
- 商工中金の株主団体の構成員でないと融資を受けられない
商工中金の融資金利は一般的に民間の金融機関より低いといわれていますが、実際に適用される金利や担保といった条件は審査によって決まります。融資を受けたい場合、まずは最寄りの店舗に相談してみると良いでしょう。なお、融資の相談の段階では、対象となる商工団体に加入している必要はありません。
日本政策投資銀行
日本政策投資銀行は民間金融機関の補完を目的とした政府系金融機関であり、主に大企業や中堅企業を対象としています。運転資金の融資を日本政策投資銀行で受けるメリット・デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
- 民間金融機関に比べて金利が低め
- 返済期間が長め
【デメリット】
- 中小企業への融資は少ない
全体的に大規模なプロジェクトを手掛ける金融機関であり、中小企業向きとはいえません。
民間銀行
民間銀行は、事業者の運転資金需要に対して幅広い融資商品を提供しています。融資対象は幅広く、大企業から中小企業、個人事業主までさまざまです。ただし、銀行によって重点を置く企業規模や業種が異なる傾向があります。例えば、メガバンクは大企業や中堅企業向けが主な融資先であり、地方銀行は主に地域の中小企業を融資先としています。業種についての制限は特になく、銀行の方針や専門性によって特定の業種(例:製造業、IT産業、農業など)に強みを持つ場合があります。民間銀行の中小企業への融資の適用金利は一般的に政府系金融機関より高めですが、ノンバンクより低い傾向にあります。
運転資金の融資を民間銀行で受けるメリット・デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
- 大型の運転資金需要にも対応可能
- 事業者の信用力や取引実績に応じた柔軟な融資条件の設定が可能
- 事業者のニーズに合わせた選択肢が豊富
【デメリット】
- 事業者の信用力や取引実績によって融資条件が大きく異なる
- 審査基準が厳しめで、融資を受けられない場合がある
- 融資審査に時間がかかる場合がある
民間銀行は各行にさまざまな融資商品のラインアップがあり、審査の厳しさも銀行によって異なります。一行で審査落ちしても別の銀行で融資を受けられる可能性はあるので、複数の銀行を当たってみましょう。
信用組合・信用金庫
信用組合や信用金庫は地域に根ざした協同組織金融機関であり、中小企業や個人事業主を主な対象として融資をしています。
運転資金の融資を信用組合や信用金庫で受けるメリット・デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
- 小規模な事業者への融資に積極的
- 貸し渋りや貸し剥がしの可能性が低い
【デメリット】
- 銀行に比べて金利が高め
- 大型の運転資金需要には対応しきれない場合がある
信用組合・信用金庫の主な取引対象は、中小企業や個人事業主です。銀行に比べて融資を受けるハードルは低いものの、小規模なために金利は高めで融資額にも上限がある点に注意が必要です。
ノンバンク(消費者金融)
ノンバンク(消費者金融)は、銀行や信用金庫などの預金取扱金融機関以外の貸金業者を指し、中小企業や個人事業主向けにビジネスローンを提供しています。
運転資金の融資をノンバンクで受けるメリット・デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
- 審査スピードが速く、申し込みから融資実行までの時間が短い
- 事業実績が浅い企業や個人事業主でも融資を受けやすい
- 申し込み手続きが簡便
【デメリット】
- 金利が金融機関と比べて高い
- 融資限度額が低め
ノンバンクの融資は緊急の資金調達には便利ですが、金利が高い点に注意が必要です。利用する場合、返済の計画を立ててから申し込むようにしましょう。
事業運転資金の融資を検討すべき5つのパターン
運転資金はその使途により、以下のような種類があります。
資金名 | 概要 |
---|---|
経常運転資金 | 事業を維持・運営するための資金(仕入れ費用や人件費) |
増加運転資金 | 事業の成長に伴い仕入れや人件費の増加に対応する資金 |
減少運転資金 | 事業縮小に伴う資金(経費削減のための費用など) |
季節運転資金 | 毎年決まった時期に必要となる追加の運転資金 |
上記のような資金の調達で融資が必要となるケースについて、以下にてわかりやすく解説します。
パターン①売上が低迷している
売上が低迷している状況で経営を改善するためには、減少運転資金の調達が必要となるケースがあります。売上が減少しても、過去の仕入れ代金や人件費、光熱費などの支払いは避けられません。
手元の資金も乏しく、将来の入金予定もなければ、融資による資金調達が選択肢となるでしょう。金融機関からの融資によって一時的な資金不足を乗り越え、事業の立て直しを図れます。
金融機関に申し込む際は売上が低迷している原因を分析し、改善策を示すことで融資の可能性が高まると考えられます。
パターン②売掛金が回収できていない
売掛金が回収できない場合、資金繰りの状況によっては運転資金の融資を受ける必要があります。回収した売掛金を運転資金に充当する予定だった場合、別の方法で運転資金をまかなわなければなりません。
例えば、大口の取引先からの売掛金が予定どおりに回収できない場合、仕入れや人件費の支払いに影響が出るおそれがあります。このような状況では短期的な運転資金融資が財務の安定を保ち、事業を継続するための一時的な解決策となります。
融資によって事業継続の運転資金を確保できたら、売掛金の回収が遅れる原因を分析し、対策を講じるようにしましょう。
パターン③事業の拡大を検討している
事業拡大を検討している場合、増加運転資金の調達のために融資を受けることは有効です。事業規模を拡大するには、人員の増強や仕入れ量の増加が必要となり、それに伴って人件費や仕入れ費用がかさむためです。
例えば、新たな事業所の開設や新商品の開発に取り組む場合、初期投資だけでなく、運転資金も追加で必要になります。人件費や仕入れ費用の増加に対応するため、金融機関からの融資によって、事業拡大に必要な資金を確保できます。
金融機関から融資を受けるには事業拡大の計画を綿密に立て、必要な資金を正確に見積もることが大切です。業績が良好な会社であれば、前向きに対応してくれる金融機関も多いと考えられます。
パターン④特定時期の資金繰りが苦しい
特定の時期に資金繰りが苦しくなる場合、季節運転資金の融資の活用が解決策となりえます。クリスマスやお正月などの繁忙期に材料の仕入れや従業員へのボーナス支払いなどで、計画的な資金の確保が必要となるからです。
例えば、小売業では年末商戦に向けて大量の商品を仕入れる必要があり、資金需要が高まります。また、多くの企業では年末にボーナスを支給するため、一時的に資金が不足しがちです。このような場合、金融機関から運転資金の融資を受けることで、特定時期の資金需要に対応できます。
特定の季節やイベントに向けた運転資金の融資は、季節的なビジネスチャンスを最大限に活用するために非常に有効といえます。
パターン⑤複数の借入をまとめたい
複数の借入の返済が資金繰りの悪化を招いている場合、借入を一本化する借り換えは有効な選択肢です。借入をまとめることで、複数の返済スケジュールと金利を、より管理しやすい単一の条件に統合できるためです。
例えば、複数の金融機関から融資を受けている場合、それぞれの金利や返済日が異なるケースがあります。これをひとつにまとめると金利負担を軽減し、返済日を統一化できます。また、複数の借入を管理する必要もありません。
ただし、借り換えには注意点もあります。新たな借入の審査が必要となるため、信用力が低下している場合は借り換えが難しい可能性があります。
複数の借入を一本化する借り換えは有効ですが、メリットと注意点を十分に理解し、自社の状況に合った判断が必要です。
事業運転資金の融資を受ける際に気をつけたいポイント
金融機関に運転資金の融資を申し込んでも必ず借りられるとはかぎりません。また、借りられたとしても希望する金額ではない場合もあります。ここでは、運転資金調達で希望する金額や条件で融資を受けるために気をつけたいポイントを解説します。
借入額と返済予定はしっかりシミュレーションする
事業運転資金の融資を受ける際、適切な借入額を計算し、返済計画を綿密に立てる必要があります。
借入額の目安は、在高方式を用いて大まかに計算できます。在高方式は運転資金の計算方法の一種で、以下のような計算式で求めます。
運転資金=売掛金+在庫-買掛金
一般的に、運転資金の融資は3~6ヵ月分が適当とされています。借入額が適切であることを金融機関に示すためにも、根拠のある計算が求められます。
また、事業の将来的な見通しを考慮に入れ、無理のない返済計画の策定が大切です。金融機関に対して、順調に返済できる見込みがあることを提示できるようにしましょう。
返済計画を作成する際は、日本政策金融公庫のホームページにある「事業資金用 返済シミュレーション」を活用すると便利です。このツールを用いると借入額や返済期間、金利などを入力し、返済額や利息の目安を簡単に計算できます。
融資の理由や資金使途を明確にする
事業運転資金の融資を申し込む際は、資金の使途や融資を受ける理由を明確に説明できるようにしておくことが重要です。金融機関は資金の使途が不明瞭な場合、融資してくれない可能性が高くなります。
資金の使途は、具体的かつ詳細に説明できるようにしましょう。例えば、「仕入れ資金として500万円、人件費として300万円」といったように、使途ごとの金額を明示します。また、融資を受ける理由についても、売上の拡大や事業の効率化など明確な目的を提示するようにしましょう。
融資金は申請時の使途以外に使わない
事業運転資金として融資を受けた資金は、申請時に提示した使途以外に使用してはいけません。運転資金は、事業の運営に必要な資金をまかなうために借り入れるものであり、他の目的に流用することは禁止されています。
万が一、融資金を別の用途に使用していることが発覚した場合、金融機関からの信用を大きく失うことになります。その結果、全額返済を求められたり、今後の融資申請が難しくなったりするかもしれません。
金融機関との信頼関係を損なわないためにも、融資金を目的外には使用しないようにしましょう。
事業が好調なタイミングで申し込む
事業運転資金の融資を申し込む際は、事業が好調で安定しているタイミングを選ぶようにしましょう。金融機関は、借り手の事業の状況を重視するため売上が伸びている、利益が安定している、という時期に申し込むほうが、融資を受けやすくなります。
事業の状況を踏まえて、審査に通りやすいタイミングで運転資金の融資を申し込みましょう。
各種書類を丁寧に作成する
事業運転資金の融資を申し込む際は、提出する書類を丁寧に作成しましょう。借入金額や返済計画、資金の使途などを詳細に記載し、事業の実現性を金融機関に示す必要があります。
書類の作成にあたっては、事業計画書、財務諸表、資金繰り表などを綿密に準備し、金融機関が求める情報を漏れなく提供しなければなりません。また、数字の整合性や説明の一貫性にも気を配り、信憑性の高い書類を作成しましょう。
書類に不備や不足があると審査に不利に影響するおそれがあるため、十分注意しましょう。
事業運転資金の調達には「不動産担保ローン」もおすすめ
運転資金の調達方法には、不動産担保ローンという選択肢もあります。
不動産担保ローンとは、不動産を担保に融資を受けるローンです。一般的には、不動産の担保価値と借り手の返済能力によって融資限度額が決定されます。
セゾンファンデックスの「事業者向け不動産担保ローン」は、法人・代表者だけでなく、その親族が所有する不動産も担保として利用可能です。抵当権の順位も問わないため、幅広い選択肢があります。また、急な運転資金の需要や、ローンの借り換え、税金の支払いなど、さまざまな資金ニーズに対応可能です。
セゾンファンデックスでは銀行とは異なる審査基準を採用しており、赤字決算や創業間もない企業でも、事業計画や返済計画を考慮して融資を検討します。さらに、不動産担保力を重視し、全国の物件に対応しているため、銀行で対応が難しいケースでも融資を受けられる可能性があります。
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おわりに
事業運転資金の調達は、中小企業や個人事業主といった小規模事業者にとって重要な課題です。必要なタイミングでの資金の確保は、事業の持続や発展に欠かせません。金融機関からスムーズに融資を受けるには、資金調達の目的を明確にし、求められる書類を正確かつ詳細に作成する必要があります。金融機関からの融資が難しい場合、事業者向け不動産担保ローンの利用も検討してみましょう。