「やまいも」は、長いもや大和いもなどの総称で、スーパーでは一年中並んでいる身近な野菜ですね。ちょっと一品足りないときなど、手軽に食べることができて重宝します。
やまいもは、じゃがいもや、サツマイモ、サトイモなどと違い、唯一「生」で食べられるのが特徴のひとつです。また、淡白な味わいでどんな食材ともよく合い、季節に関わらず、いつでも食べることができます。旬は晩秋から春にかけてです。
“やまいもは、滋養強壮に役立つ!” といわれています。やまいもは、深い土の中で育ち、自然にツルが枯れるまで熟成させてから収穫するため、甘みも増します。栄養がたっぷり詰まった健康野菜の魅力をたっぷりご紹介いたします。
やまいもって、どんなものがあるの?
やまいも(別名:山の芋)とは、ヤマノイモ科に属するいも類の総称です。主なものに、自然薯や長いも、いちょういも(大和いも)、つくねいもなどがあります。それぞれの品種と特徴、その楽しみ方について説明します。
自然薯
古代から日本の山野に自生する自然薯。最近は栽培されているものも多いです。すりおろした時に水分が少なく、ネバリの強いものは良質です。すりおろしたとろろをご飯にかける「麦とろご飯」などに。
長いも
こん棒のように長い棒状の長いも。一番多く流通している栽培品種です。シャキシャキとした食感で、キメはやや粗く、水分も多い。粘りやアクが少ないので、サラダや和え物などに。
いちょういも(大和いも)
いちょうの葉に形が似ているいちょういも。関東地方では「大和いも」と呼ばれることが多い。形は平べったく、皮は白っぽくなめらか。コクがあって粘りも強い、すりおろしてご飯などに。
つくねいも(大和いも)
こぶし型の山いも。主に関西地方で出回っています。白い皮は「伊勢いも」、黒い皮のものは「丹波いも」と産地の名前で呼ばれることもあります。水分が少なく、キメ細かく、粘りがとても強い、和菓子の原料、すりおろしてご飯などに。
むかご
晩秋から初冬にかけて、やまいものつるの葉のつけ根にできる、あずき大の小さな豆のようなもの。種と同じ働きをするため、土に埋めると新たな芽や根が出て、やまいもができるようですが、立派な芋に育つには数年かかるといわれています。アクが強く、ほろ苦い秋の味覚で、むかごご飯、味噌汁の具、塩ゆでなどに。
やまいものパワーとは?
やまいもには、多くの健康効果があるといわれています。どの種類も滋養強壮作用があり、古くから漢方薬としても利用されてきました。消化促進、滋養強壮、疲労回復、便秘改善などに効果があるとされています。
中国料理でやまいもは「山薬」と呼ばれ、生のやまいもの皮を除き乾燥させたものを水で戻して料理に使います。「山薬」は漢方でのやまいもの呼び名です。普段の食事に取り入れることで、健胃・整腸ができ、消化を助けるとされています。
消化促進
もっとも大きな特徴は、消化が良いことです。主成分はでんぷんですが、他の食品と異なり、このでんぷん自体が消化の良いものなのです。普通、生のでんぷんは加熱が必要ですが、やまいものでんぷんは加熱の必要がありません。消化促進を期待するなら、生食がおすすめです。加熱しないので酵素の作用を損なわず、消化が良い食品です。
でんぷんをよく消化するジアスターゼが豊富に含まれていて消化を助けてくれます。驚くことに、ジアスターゼは大根よりも多く含まれています。胃のもたれや食べ過ぎの時に、やまいもを一緒に食べると、消化を促してくれます。
スタミナ増強
ネバネバのぬめり成分には胃腸や眼や鼻の粘膜の保護、食べすぎや飲み過ぎ、ストレスによる荒れた胃の粘膜の修復、タンパク質の消化吸収をよくするなど、胃腸や腎臓の働きを整えてくれます。胃腸の働きが良くなることで、スタミナ増強にも役立ちます。
疲労回復
ビタミンB群、C、カリウムなどのミネラル、食物繊維がバランスよく含まれています。糖質をエネルギーに変えるビタミンB1も多いので、疲労回復効果が期待できます。余分なナトリウムを排出して血圧を安定させるカリウムが豊富なので、高血圧の方にもおすすめです。
一番身近で手に入れやすい「長いも」を積極的に摂りましょう
長いもは、ヤマノイモ科に属するやまいもの一種です。円筒形で、粘りが弱く、クセのない淡白な味わいです。すりおろすと他の食材とよくなじむサラリとしたとろろになります。一番多く流通、栽培されています。
年に2回、収穫ができ、11月~12月に収穫されるものは「秋掘り」と呼ばれます。水分が多くてジューシーで、アクもなく、さっぱりとしているのが特徴です。短冊切り、浅漬けがおすすめ。雪が降り始めると、春まで収穫はお休みです。
3月~4月に収穫されるものは「春堀り」と呼ばれ、寒い冬の間に熟成され、味が濃くて甘みがあります。そのまますりおろして、とろろとして食べるのがおすすめ。収穫したものは、冷蔵庫付きの倉庫などで保存することで、一年を通して流通させることができるので、私たちの食卓にいつでも並ぶことができます。
選び方と保存方法
選び方
・円筒形で太さは均一でまっすぐのもの。
・皮にはハリがあるもの
・でこぼこや傷がなく、ずっしりと重いもの。
重いものほど、水分をしっかり含んでいて、みずみずしく美味しいです。ひげ根が多いものは、アクが出やすい傾向があります。切り口は時間が経つと、赤く変色していきます。不自然に白すぎると漂白している可能性があります。真空パックに入っているもので、袋がふくらんでいるものは鮮度が落ちているので、避けましょう。
保存方法
・1本丸ごとの場合
おがくずと一緒に入っている場合は、そのまま箱を閉じて、冷暗所に保存します。土が落ちたものは、新聞紙に包み、風通しの良い冷暗所に保存します。ただし、気温が15度以上になる場合は、新聞紙に包んで冷蔵庫の野菜室で保存することをおすすめします。
・カットした場合
切り口に空気が触れたり、乾燥しないように、しっかりとラップで包んで冷蔵庫の野菜室で保存します。切り口に酢水を軽くつけてから、ラップをするとさらによいです。なるべく早めに食べましょう。
・冷凍の場合
すりおろして、冷凍庫で保存します。平らに小分けにして保存用袋に入れ空気を抜いて冷凍します。自然解凍して使います。山かけやお好み焼きのつなぎに。
ポリフェノールが赤茶色に変色することがあるので、皮をむいた長芋を酢水につけてからすりおろしたり、すりおろしたとろろに酢かレモン汁を少量加えて混ぜたり、金属でない、陶器やプラスチック製のすりおろし器を使うと変色防止に効果的です。
調理のポイント
下ごしらえ
・切ったり、すりおろしたりする場合、持ち手になる部分の皮を残しておくと作業しやすくなります。また、持ち手になる部分にキッチンペーパーなどを巻くことで、より調理しやすく、手のかゆみもおきにくくなります。使い捨ての手袋を使うのもおすすめです。
・皮をむいたら、酢を少々加えた水に浸けておくと、酸化による変色を防ぐことができます。ただし、酢を加えることで、消化酵素の働きは激減するので、短時間に留めましょう。
・すりおろした後、すり鉢であたると、口当たりがなめらかになります。
・柔らかく水分量も多いので、綿棒などで叩くと簡単に割れます。ポリ袋などに入れて、上からたたくと、ぬめりの後処理も簡単で、味も染みやすくなります。
かゆくなったときの対処法
長いもに触れた手や口元がかゆくなることがあります。これは長いもに含まれるシュウ酸カルシウムによるものです。毒やアレルギーによるものではありません。かゆみを感じたら、酢水やレモン水で洗い流しましょう。
調理の方法
・生食で食べるなら、刻んでシャキシャキとした食感、すりおろしてトロトロの食感が楽しめます。
・加熱することで、ホクホクした食感やフワフワの食感に変わります。油で揚げたり、フライパンで焼いたりすることで甘みが増すので色々な調理法を試してみてください。
信州長野 松代町名産【信州の長芋】
信州長野から美味しい「長芋」をご紹介いたします。新堀の長いもの時期となりました。例年通り、甘みと粘りのある美味しい長いもです。
千曲川河川敷の肥沃な土壌は、長芋栽培に最適で、ここ松代町は江戸時代から栽培していたといわれ、現在でも松代町名産として受け継がれています。千曲川によって運ばれた畑の土は、海の砂のようにサラサラとしていてとても柔らかく、乾いているにもかかわらず踏み込むと、あっというまにくるぶしまで沈んでしまうほどです。
障害物もない柔らかい土のおかげで、長芋はまっすぐに下に伸びていきます。豊かな土壌により、栄養を蓄えた太くて重い、質のよい「長芋」が育ちます。
良い土壌で育った長芋は、見たにも立派、太くてずっしり重たいです。白い薬、食べる薬とも言われてきた“信州 松代町名産の「長芋」”を是非、召し上がってください。
MICHIKO 簡単レシピ
ここでは、多くの健康効果があるといわれる長いもの簡単レシピをご紹介します。切るだけ、混ぜるだけの本当に簡単なレシピもありますので、長いも料理を今まで敬遠していた方もこの機会にぜひお試しください。
①千切り長いもとまぐろ和え
- 長いものサクサク食感とまぐろのネットリ感がひと味違う!
- ご飯にのせて丼にしても美味!
【材料】(2人分)
長いも 200g、まぐろ 100g、柚子胡椒 小さじ1╱2、醤油 適量、
【作り方】
- 長いもは皮をむき、少し太めの千切りにする(スライサーを使っても)。マグロは1cm角に切る。
- 器に長いもとまぐろ、柚子胡椒をのせる。醤油をかけていただく。
②長いもとイチゴの柚子胡椒サラダ
- シャキシャキの長芋に、ゆずこしょうが相性ピッタリ!
- あっさりとした味わいで、イチゴの甘さも〇、箸が止まらない!
【材料】(2人分)
長いも 160g、イチゴ 4個(80g)、ブロッコリースプラウト 適量、
A(柚子胡椒ドレッシング):オリーブ油 大さじ1、酢 小さじ2、柚子胡椒 小さじ1╱2、
【作り方】
- 長いもは皮をむき、イチゴはヘタをとり、それぞれ小さめの乱切りにする。
- ボウルに、(A)の材料を入れて混ぜ合わせ、①を加えてあえる。
- 器に盛り、根元を切ったブロッコリースプラウトを飾る。
③長いもと豚肉の塩みりん炒め
- 長いものシャキシャキ感を残すために、炒め過ぎないのがコツ!
- 長いもと豚バラ肉のコク、みりんと塩の旨みがよくなじみ、ボリュームアップ!
【材料】(2人分)
長いも 200g、豚バラ肉 100g、万能ねぎ 適量、オリーブ油 大さじ1╱2、
A:塩 小さじ1╱3、みりん 小さじ2、
【作り方】
- 長いもは皮をむき、長さ4cmのくし形に切る。豚肉は4cm長さに切る。
- フライパンにオリーブ油を熱し、①を加えて炒め、(A)を加えて、さらに炒め合わせる。
- 器に盛り、小口切りにした万能ねぎをちらす。
*辛み好きなら、豆板醤をプラスしても。
④長いもとハムの和風味噌グラタン
- サッと合わせるだけで作れるお手軽グラタン!
- 長いもと生クリームのとろみ感が、ひと味違う美味しさに!
【材料】(2人分)
長いも 200g、ハム(薄切り) 40g、ミニトマト 3個、長ネギ(緑・白) 各7cm、ピザ用チーズ 60g、
A:生クリーム 50ml、味噌 大さじ1、
【作り方】
- 長いもは皮をむき、1.5cm幅のいちょう切り、ハムは2cm角に切る。ミニトマトは半分に切り、長ネギは斜め薄切りにする。
- 耐熱容器(グラタン皿)に①と、チーズの1╱2量を加えてサッと混ぜ合わせる。
- ②に、(A)をよく混ぜたものを全体に流し入れ、残りのチーズを上にのせる。
- オーブントースターに入れ、焼き目がつくまで焼く。
*そのまま食べられる食材ばかりなので、サッと焼き目がつけば、OK!
*グラタン皿に、オリーブオイルなどを薄く塗っておくと、食べ終わった後、楽に洗えますよ。
おわりに
長いもは、元気がない時や、風邪を引いた時に、食べる栄養補給源として摂りたい食材のひとつです。体調が悪い時は、皮をむいて食べることをおすすめします。皮には土壌菌などが付いていることがあるので、気をつけましょう。
長いもは、クセがないので、どんな食材とも相性がよく、意外と長持ちします。すりおろしたり、細切りをサラダや和え物にしたり、サッと炒めたり、焼いたり、揚げたりと、いろいろな調理法を楽しめるのも魅力です。
また、買ってきたばかりの新鮮なうちは、縦に切ってサラダや酢の物に使い、その後、とろろや炒め物、揚げ物にし、最後に輪切りにしてソテーやなべ物にと、食べ進めていくのもよいですね。冷蔵庫に入れて置き、いつもの食事に加えて、日頃のスタミナ源として大いに活用しましょう。