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シニア住宅の選び方とは?専門家が詳しく解説します!

シニア住宅の選び方とは?専門家が詳しく解説します!
網谷 敏数

執筆者

株式会社高齢者住宅新聞社 代表取締役社長

網谷 敏数

「週刊高齢者住宅新聞」を2006年4月より発行。シニアの住まい、介護、医療をテーマに介護事業者や医療機関、有識者に取材。介護保険、医療保険、高齢者住宅の制度、業界動向、事業者の取組みを紹介。リアル展示会やオンラインセミナーなども多数開催。業界向けの講演実績も多数。

今回は高齢者に配慮した住まい「シニア住宅」について、どのような種類があるのか、現在のトレンド、選び方のポイントまで、高齢者の介護・医療・住まいに精通した専門家が詳しく解説します。

多様な老人ホームの類型

多様な老人ホームの類型
Facility

日本には多種多様な老人ホーム・高齢者住宅がありますが主要な施設は以下の5種類です。

  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • 有料老人ホーム
  • 認知症グループホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅

「介護保険法」、もしくは「老人福祉法」で定義されているのが、最初の4種類。サービス付き高齢者向け住宅のみ「高齢者住まい法」に定義されています。

比較的経費負担が小さいケアハウス、長期にわたり療養が必要な方の介護医療院などの施設類型を含めると国内には約5,700ヵ所・定員数で230万人以上の高齢者施設が整備されていますが、介護保険法が施行される2000年まで日本の高齢者福祉で中心的な役割を担ってきたのは、特別養護老人ホームと介護老人保健施設です。

特別養護老人ホームは1963年に制定された老人福祉法に基づき創設されました。介護老人保健施設は1989年の「高齢者保健福祉推進十ヵ年戦略(ゴールドプラン)」および1994年の「新ゴールドプラン」の策定に伴い整備されました。整備数は特別養護老人ホームが約10,900ヵ所・定員数約66万人、介護老人保健施設が約4,200ヵ所・定員数約37万人です。

有料老人ホームの歴史も戦後まもなくからと古いですが、その名を知られるようになったのは1980年代からです。当時の開設数はそれほど多くなく、大手資本や大企業が保有する土地に、入居時に数千万円から1億円もかかるような施設が主流でした。

転機となったのが介護保険法の施行でした。民間企業が一斉に参入し、新築に加え、寮や社宅の改装型の有料老人ホームが急増しました。整備数は介護付・住宅型を合わせ約1万6,000ヵ所・定員数約62万人です。介護付有料老人ホームは特別養護老人ホームと同様、包括的なサービスを提供し、住宅型有料老人ホームはサービス付き高齢者向け住宅や自宅と同様、訪問介護・看護やデイサービスなどの在宅介護サービスを提供します。介護付きと住宅型の違いは後ほど詳述します。

認知症グループホームも有料老人ホームと同様に介護保険制度によって整備数が急増しましたが、当時の厚生省によって1997年に「痴呆対応型老人共同生活援助事業」として制度化されたのが最初です。1ユニット9人で2ユニットという事業モデルが一般的で、現在の整備数は1万4,000ヵ所あまり、定員数は22万人以上となりました。

サービス付き高齢者向け住宅は上記の中で最も歴史が浅いですが、2005 年に創設された高齢者専用賃貸住宅(高専賃)が、2011年の高齢者住まい法の改正によって、サービス付き高齢者向け住宅となり整備されてきました。サービス付き高齢者向け住宅も短期間のうちに、約8,000ヵ所・定員数約29万人となりました。

ちなみに高齢者施設の運営法人ですが、特別養護老人ホームは社会福祉法人、介護老人保健施設は医療法人(一部社会福祉法人)で、有料老人ホームや認知症グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅は営利企業が大半を占めています。

参照:株式会社TRデータテクノロジー(施設数・定員数はいずれも株式会社TRデータテクノロジー「福祉施設・高齢者住宅 Data Base」より)

介護保険3施設の概要

介護保険3施設の概要

高齢者向け住まいの概要

高齢者向け住まいの概要
高齢者向け住まいの概要
高齢者向け住まいの概要

多死社会・看取り社会で急増するホスピス住宅

サービス内容や入居対象も多様になっているのが、近年の状況です。特にこの10年内で急増しているのが、ホスピス住宅という形式です。ガン末期や難病の方など医療依存度の高い方を対象とした施設で、ナーシングホームとも呼ばれますが、通常の介護職に加え、看護師によるサービスが特色です。

ここで上記の施設の種類に加え、サービスの提供形態について説明します。特別養護老人ホームや介護付有料老人ホーム、認知症グループホームは自治体の介護保険事業計画に基づき整備されます。介護サービスが内包されており、要介護度に応じて、入居者の利用料、事業者の報酬が決まっています。

一方、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は外付けサービスといって、ケアマネジャーが作成するケアプランに応じてサービスが提供され、自宅で介護サービスを受けるのと同じ環境が得られます。

ホスピス住宅は外付けサービスの形態が一般的です。入居者の状態、医療依存度に応じてケアプランが作成され、訪問介護や訪問看護、デイサービスなどのサービスが提供されます。しかもこれらのサービスは介護保険上のサービスだけではなく、医療依存度の高い人に対して医療保険の訪問看護を提供することができます。かつ65歳未満で障害認定を受けている人には障害者総合支援法に基づく、障害福祉サービスが受けられます。

ホスピス住宅が急増する背景には、多死社会の到来、病院の在院日数短縮という事情があります。超高齢社会の進展とともに、年間死亡者は現在140万人ですが、2040年には約170万人に達します。同時に診療報酬改定で早期退院が奨励されるようになり、長期入院がしにくい制度となりました。そのため、身体の状態に心配が残る高齢者であっても、自宅や施設で過ごさざるを得ない状況です。

参照:社会保障・人口問題研究所(数字は社会保障・人口問題研究所より)

これまでは病院で最期を迎えることが当たり前でしたが、本来は「自宅で最期を迎えたい」という人が大半です。社会的事情、制度事情が大きく変わってきた影響で、もともとの希望をかなえられるような状況になってきました。

死亡者数・死亡場所の推移

死亡者数・死亡場所の推移

ホスピス住宅の事業モデル

ホスピス住宅の事業モデル

自立型高齢者住宅のトレンド

自立型高齢者住宅のトレンド

自立型高齢者住宅のトレンドも生まれています。三井不動産では5年ほど前からシニアレジデンス事業に参入。現在、東京都杉並区(浜田山)、千葉県鴨川市、大阪府豊中市で展開していますが、今年は東京都港区(西麻布)、千葉市(幕張)、藤沢市で開業を控えています。

敷地は数万平米が主体。浜田山は総戸数70戸の規模ですが、その他は400戸から500戸の高齢者住宅としてはかなりの規模です。入居費用は最高5億円前後、入居者はほぼ自立高齢者です。6か所の総供給戸数は2,500戸以上になります。

介護が必要になる前の10~15年をアクティブに、楽しく過ごしてもらう場所を提供するというコンセプトで、ジェットバスを浴びながら歩行などのプログラムによるフィットネス専用プールや帝国ホテルが監修した食事も特色です。

各拠点で全体の1割程度を介護居室として用意。介護サービスは、拠点ごとにその地域で基盤を持つ介護事業者に委託しています。都内は東京海上グループ、千葉県は亀田総合病院グループ、大阪は大阪ガスグループの介護会社がそれぞれ提供しています。

施設の種類は、浜田山のみサービス付き高齢者向け住宅ですが、他はすべて有料老人ホームです。今年に入り、メディアでのプロモーションを本格的に行っていることもあり、問い合わせは2024年7月現在で約1,800件、契約も西麻布や藤沢ですでに半分を超えているといいます。

ベネッセグループのベネッセスタイルケアや長谷工グループ、東急不動産グループ、チャーム・ケア・コーポレーション、ケア21などの既存の介護事業者も都心を中心に、入居費用が1億円前後から数億円の高額施設を供給しています。

上記は有料老人ホームが主体ですが、シニア向け分譲マンションとして展開するフージャースコーポレーションなどの企業もあります。また旭化成グループでは、自立シニア向け賃貸住宅事業に注力しています。

老人ホーム選びのポイント

老人ホーム選びのポイント

ここまでで見てきたように、高齢者施設・住宅といっても、サービス内容、価格、規模感は千差万別です。自立度・要介護度、求めるサービス、所得、立地、本人や家族の意向に応じて選ぶ必要があります。施設の種類ごとにサービス内容を改めて説明します。

特別養護老人ホームは社会福祉法人が運営する施設で、原則要介護3以上の人が対象です。入居費用は所得に応じた補助が出ますので、月額10万円前後で入居できます。自治体によっては待機者が多く即入居ができないこともあります。配置医師や嘱託医が在籍しています。100室規模の比較的規模の大きい施設が多いですが、地域密着型では定員が29人と定められた小規模施設です。

介護老人保健施設は医療法人が運営する施設です。原則在宅復帰施設ともいわれ、退院後に一時的に入居するケースが一般的ですが、「老健の特養化」が進み、入居期間が長くなる傾向もあります。医師の常勤が定められており、医療依存度の高い人が入居対象で、入居費用は特養と同じく月額10万円前後です。

有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は民間企業が主体に手がける施設なので、入居費用は月額10万円から数十万円と幅が広くなります。前家賃方式を採用する施設ですと、入居時に数千万円から1億円以上かかります。基本入居者の自立度が高くなるほど費用は高くなります。

認知症グループホームは認知症の人専用の施設で、1ユニット9人で家庭的な雰囲気を保っているのが特色です。2ユニットや3ユニットの施設が多く、介護保険上で地域密着サービスに位置づけられているように、地域に溶け込んだ小規模な施設形態が主体です。入居費用は月額15万円から20万円程度が一般的です。

前述しましたが、サービスが内包されているか、外付けかということもわかりくいため、もう少し説明を加えます。

サービスが内包されているのが特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護付有料老人ホーム、認知症グループホーム。外付けなのが住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅です。前者は要介護度に応じて費用や事業者の報酬が決まりますが、後者が提供できるのは在宅介護サービスで、サービス量については要介護認定の段階ごとに「区分支給限度額」が定められています。したがってその区分支給限度額の範囲内でケアマネジャーがケアプランを作成するのが一般的です。

少し複雑な話しになりますが、要介護3の人の場合、介護費用は特別養護老人ホームで2万1,960円(従来型個室、30日)、介護老人保健施設で2万4,840円(従来型個室、30日)、介護付有料老人ホームで2万490円(30日)と決まっています。一方、在宅介護サービスでは要介護3の場合、区分支給限度額は27万480円(30日)、自己負担額はその1割の2万7,048円(同)となります。つまり、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などで在宅サービスを限度額いっぱい使えば、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護付有料老人ホームより負担は大きくなりますが、ケアプランによっては施設よりも安くなることもあります。

また、一概に介護付有料老人ホームだから住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅より重度要介護者に対応できるというわけでもありません。厚生労働省の施設別に要介護者の比率をまとめた統計では、住宅型有料老人ホームの要介護3以上の入居者の比率は49%で、介護付有料老人ホームの41%を上回っています。ホスピス住宅のところでも説明したように、近年住宅型有老の入居者の要介護度が高まっています。自立入居者が多いと思われることもあるサービス付き高齢者向け住宅でも要介護者の比率は90%を占めています。

参照元:TRデータテクノロジー(数字はTRデータテクノロジー「福祉施設・高齢者住宅 Data Base」より)

このように、日本の多種多様な老人ホーム・高齢者住宅は独特で複雑な施設類型になっていますが、これまで述べてきたことを参考に施設選びをしてください。

介護保険サービスの区分支給限度基準額について

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高齢者施設における要介護高齢者の入居割合

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