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ミドルシニアの方がメンタルを壊しやすくなる要因

ミドルシニアの方がメンタルを壊しやすくなる要因
斉藤 恵一 セルフマネジメントプロデューサー

執筆者

セルフマネジメントプロデューサー/日本心理学協会 認定心理士

斉藤恵一

大学時代に歌舞伎町のホストの世界に飛び込むも半年間売り上げゼロ。そこから心理学を学びセルフブランディングに取り組み、約6年間売上げNO.1となる。現在は企業向けのコンサルティングやメンタリング、人材育成に取り組む一方、「ナカイの窓」や「ダウンタウンDX」等テレビ出演及び書籍やコラムの執筆等で活動中。

こんにちは。心理家の斉藤恵一です。 

皆さんはメンタルに不調が出てきていませんか?今回お伝えしたいことは、「ミドルシニアの世代は、このような問題を抱えているとメンタルを壊しやすいですよ」というお話です。 

それは何かというと、人間の行動の元である動機から見えてくるものになります。人の動機付けには自分の中に動機の元がある「内発的な動機付け」と外側にある「外発的な動機付け」の2つがあるのですが、その動機のスイッチがどこになるかによってメンタルに大きく影響を及ぼす危険が潜んでいるのです。 

「内発的動機付け」と「外発的動機付け」 

「内発的動機付け」は「自分がやりたい」「自分が興味・関心がある」という、自分の内側から出てくるモチベーションのことです。一方「外発的動機付け」というのは、これをやったらお金がもらえる、評価してもらえる、「すごい」といってもらえる、周りから尊敬してもらえる、など外部の反応が自分のモチベーションになるというものです。 

最近メンタルが苦しくなってきたと感じている方の特徴は、この「外発的動機付け」を自分の動機のスイッチとして長年生きてきたということ。もちろん人間のモチベーションには「内発的動機付け」と「外発的動機付け」、両方あって良いのです。お金を得ることも大事、社会的に認められたいというその気持ちも大事です。その一方で自分の興味、関心があるものを突き詰めていく、それをモチベーションにして生きていくということも両方大事なのです。 

しかし、幼少期の頃から親に認めてもらうことによって初めて自分の存在を肯定することができたり、そうして初めて愛してもらえていると感じたり、世間的に恥をかかないように「ちゃんとしなさい」といわれてきたり、あるいは親のために自分が頑張って何とかしないといけないと考えてきたなど、自分の全ての行動の動機、つまり人生そのものが自分の外側にあるという状態で生きてきた方というのは、自分の人生を自分以外のところに依存してしまうのです。 

生きづらさを感じる方の特徴 

生き辛さを感じる人の特徴

お金を稼ぐことは大事なことですが、お金を稼ぎたいという動機や目的が、「自分がやりたいからやる」ではなく、お金を持っていたら尊敬されるとか、ブランドの服・高級時計・高級車に乗っているから周りから「すごい」といってもらえたり異性からモテたいというような「外発的動機付け」をメインに人生を過ごしてしまっている方は、メンタルを病んだり、苦しくなったり、行き詰まりを感じるようになってしまいます。 

それはなぜか?というと、「外発的動機付け」を自分の動機のスイッチとしている方は、突き詰めていえば、誰かのために生きているということになるからです。自分以外の誰かの「物差し」が価値基準となるということは、自分以外の誰かのための人生を歩み続けているということです。親のために頑張ってきた、世間のために頑張ってきたという方は、自分自身の「内発的動機付け」を置き去りにしてしまい、結果的に自分自身の存在価値を見失ってしまうのです。 

このような「自分がやりたい」「自分が興味・関心がある」、つまり自分自身の人生を歩むという「内発的動機付け」が自分の動機のスイッチになっていない方は、40代、50代あたりから徐々に行き詰まりを感じてしまいます。これまで自分の本音で生きてこなかったため、「私はどうしたいのか」「私はどう生きたいのか」ということに向き合う機会がなく、周りから「すごい」といわれることや尊敬してもらえるかどうかが人生の判断基準となってしまい、たくさんお金を稼いで社会的に成功することが重要だと無意識のうちに思っているからです。 

そしてそのような方は、親など自分以外の誰かを満足させることで自分が愛されるという考えに固執してしまっています。「私は常に頑張り続けなければならない」という思考で生きてきてしまった結果、ちょうど40代、50代あたりの人生の途中で頑張ることが辛くなり、それが続けられなくなると今後は、頑張ることができない自分を自分自身で裁いてしまい、最終的に苦しくなるのです。この状態を放置しておくと、その方のメンタルに重大な影響を及ぼすことは一目瞭然です。 

「外発的動機付け」だけではモチベーションは維持できない 

ところで、「外発的動機付け」というのは、報酬が一定だと徐々にモチベーションが上がらなくなってしまうものです。わかりやすく「お給料」という「外発的動機付け」で例えると、お給料が上がった時は嬉しくてテンションも上がり「よし!頑張るぞ!!」とモチベーションがぐっと上がるかもしれませんが、しばらく経つと慣れてしまい、そのモチベーションを保てなくなりますよね。同様に、自分の本音・自分の気持ち・自分がやりたい・自分の人生というものを押し殺し、「外発的動機付け」だけで人生を歩んできてしまうと、徐々にそれだけでは動機としてのエネルギーが足りなくなってくるわけです。 

若い頃というのは、「なにくそ頑張るぞ!」と奮起して「外発的動機付け」だけでも何とかモチベーションを保てるのですが、年を重ねるとそうはいきません。「外発的動機付け」だけではモチベーションを保って生きていくことが辛くなってきます。自分の本音・自分はどうしたいのか・自分はどうなりたいのか・自分がやりたいことは何なのだろう?ということに自分自身が本気で向き合う必要があります。自分がどうしたいかを見つけられれば、自分以外の誰かのためではなく、自分自身のために残りの人生を過ごすことができるのです。 

だからこそ、今まさにメンタルが苦しくなっている方は、自分としっかり向き合うチャンスであるということに気づいてほしいのです。自分はこれが欲しい・自分がやりたい・自分が掴みたい人生というものに対して、どのくらい向き合ってきたのか?そして今、自分がやっていることは自分が心から欲していることなのか?ということを、自分としっかり向き合って理解しなければならない時期なのです。そういう意味で、40代、50代あたりからメンタルの苦しさを感じている方は、その苦しさは自分と向き合うチャンスのサインだと気づいてほしいと思います。 

歪んだ認知 

しかし「歪んだ認知」に気をつけなければなりません。「みんなからすごいといってもらうのが私が欲していること」だから「これは内発的動機付けだ」と認識していないかどうか考えてみてください。もしこのように認識されているとしたら、それは認知が歪んでしまっていることによるもので「内発的動機付け」ではないのです。 

確かに、周りから「すごい」といわれたい気持ちが、自分の欲していることであることもあるでしょう。しかし、その心理を注意深く分析していくと、例えばお父さんやお母さんに認められた、受け入れてもらえた、愛してもらえた、大切にされたというような感覚があり、周りから「すごい」といわれることはその感覚に触れることができる方法だから『これが私の「内発的動機付け」なのです』というように歪んで認識してしまっていることに気づくでしょう。 

この感覚は複雑なので、なかなか自分での判断が難しいのですが、本当の「内発的動機付け」というのは周りから「すごい」といわれるために頑張ることではなく、例えば「ただシンプルに絵を描くのが大好きだから描きたかった」「絵を描いているだけでよくて、周りからどんな評価をされても、何を言われても、私は絵を描いていきたい、それを世の中に出していきたい」というように、自分自身の気持ちが行動のモチベーションであることが本当の「内発的動機付け」です。 

バランスをとっていく 

バランスをとっていく

特に音楽やスポーツなどで夢を追いかけている方は、それを本人が本当にやりたいことだったとしても、それをすることによって名声を得られないとやる意味がないとか、「すごい」といってもらえないとやる意味がないという感覚に入れ替わってしまう方がたくさんいらっしゃるようです。最初は純粋な「楽しい気持ち」つまり「内発的動機付け」で始められたけれど、結局いつの間にか「外発的動機付け」がモチベーションのメインになってしまうことがあるわけです。 

周りから「すごい」といわれるために、売れるために、そしてお金を稼ぐために、それだけのために音楽をやるとか、スポーツをやるとか、結果を出さなければならないとなるとやはり苦しくなってくるわけです。

しかし、決して「外発的動機付け」が悪いということではありません。音楽やスポーツで生きていくためには売れることも大事ですし、結果を出すことも大事なことです。大切なことは、このバランスが重要であるということ。「外発的動機付け」だけで生きていくのは苦しくなるということなのです。 

そこでバランスを取る意味で常に意識してみてほしいことは、「ところで私はどうしたいのだろう?」という自分への問いかけです。「私はどうしたいのだろう?」という「I(アイ)=自分」を主語にした問いかけをしていくことで自分の中にある「本当の声」と丁寧に向き合い、「内発的動機付け」に紐づけていってほしいと思います。 

自分がやりたいと思って始めたことであったとしても、いつの間にか誰かの評価が気になり、「今日は「いいね」が1個もつかなかったから、これをやっていても意味がない」と感じ、「外発的動機付け」の方にいつの間にかシフトしてしまっている方があまりにも多く感じます。 

ですから気をつけていただきたいのは、意識すべきは「周りの声」ではなく「自分自身の声」であるということです。「私はこれをやりたい」という「私の心の声」。「私はどうしたら良いのだろう?」という「I(アイ)=自分」を主語にした思いを大切にしてほしいということです。 

自分としっかり向き合い、「私の心の声」を丁寧に傾聴して尊重する、そして自分の気持ちに素直に従って良いと自分で許可をしていくこと。自分で決めても良いと許していく意識を持つことで、自分の人生を生きているという実感をつかめるようになります。その習慣が中高年から感じるメンタルの苦しみから逃れられることにつながっていくのです。

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