事業を成功させるには、計画に合った資金の確保は必須です。資金調達がうまくいけば新しいプロジェクトも順調に進み、事業の成長も加速させられるでしょう。
しかし、銀行融資やファクタリング、補助金など、資金調達の選択肢は多岐にわたるため「どの方法が自社に最適か」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、法人が利用できる代表的な資金調達手段を一覧で紹介し、それぞれのメリット・デメリットをわかりやすく解説しています。さらに、用途別におすすめの調達方法も紹介しているため、自社に適した手段を見極める際の参考にしてください。


法人の資金調達方法は大きく分けて4種類

法人が資金調達を行う方法は、大きく分けて以下の4種類があります。
- アセットファイナンス
- デットファイナンス
- エクイティファイナンス
- 補助金・助成金
自社に適した資金調達ができるように、それぞれのメリット・デメリットを理解しておきましょう。
アセットファイナンス
アセットファイナンスとは、保有資産を活用して資金を調達することです。保有資産には土地や建物などの有形資産だけではなく、特許や著作権など、無形の知的財産権も含まれます。例えば、所有している不動産を売却したり、売掛金を現金化するファクタリングなどがこれに当たります。
アセットファイナンスには以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
・返済義務がない ・信用力に左右されずに利用できる ・貸借対照表上の資産項目を減少させることで、財務体質を軽くすることができる | ・資産がなければ利用できない ・手数料が高額になることもある ・企業のイメージダウンにつながる場合もある |
保有する資産の売却などを通じて資金を得るため、通常の借入金とは異なり、調達した資金について返済義務は発生しません。
また、企業の信用度や経営状況に関係なく利用できることも大きな特徴です。設立間もない企業や財務状況が厳しい企業でも、換金できる資産があれば利用できます。
さらに、資産を売却することで貸借対照表上の資産項目が減少し、現預金が増加します。現預金を返済などに充てれば負債が減少し、総資産利益率(ROA)が向上します。ROA(Return on Assets)とは、利益を総資産で除した値、企業の収益性を評価する財務指標のことです。ROAが向上すれば金融機関や投資家からの期待が高まり、資金を集めやすくなるでしょう。
一方で、アセットファイナンスは資産を持っていなかったり、持っていたとしても価値が低かったりする企業は利用できません。
また、ファクタリングなどを利用する際は手数料が発生します。一般的な融資の金利に換算すると、数十%の高利息になるケースも少なくありません。
さらに、資産の売却やリースバックを行うことで、外部から「資産を手放すほど経営が厳しいのではないか」と受け取られる可能性があります。これにより、企業の信用度やブランドイメージに影響を及ぼすことも考えられます。
デットファイナンス
デットファイナンスとは、返済を前提に資金を借り入れることで資金調達する方法です。アセットファイナンスのように資産がなくても利用でき、審査に通過すれば借り入れができるという意味では、多くの企業が活用しやすい方法といえます。代表例は、金融機関からの融資や社債などです。
デットファイナンスのメリット・デメリットは、以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
・資金調達先の選択肢が豊富である ・経営権に影響しない ・資金調達に成功すれば信用力を得られる | ・担保や信用力などが必要・返済が必要で負債が増える ・負債が増えることで、自己資本比率(自己資本と負債の比率)が下がり、財務体質が弱く見られる可能性がある |
デットファイナンスは資金調達先の選択肢が豊富であるため、企業の状況やニーズに応じて選択できます。例えば、銀行融資、社債の発行、ビジネスローンなど、さまざまな方法があります。負債による資金調達は株式の発行とは異なり、既存の株主の持ち分を希薄化させないため、経営権に影響を及ぼしません。さらに、資金調達に成功すれば金融機関や投資家からの信頼を得られ、企業の信用力向上につながることが期待できます。
一方で、デットファイナンスで融資を受ける際には、担保の提供や高い信用力が求められる傾向があります。そのため、創業間もない企業や財務状況が厳しい企業にとっては、ハードルが高いと感じられることもあるでしょう。
また、借入金は返済義務があり、元本と利息の支払いが企業のキャッシュフローを圧迫する可能性があります。
さらに、負債が増加することで自己資本比率が低下するリスクも考慮するべきです。借入額が大きくなると自己資本比率の低さを懸念され、新たな融資を受けにくくなることも考えられるでしょう。
エクイティファイナンス
エクイティファイナンスとは、株式の発行を通じて資金調達する方法で、株主資本の増加をもたらします。例えば、企業が新たな株式を発行して投資家から資金を集める方法です。有名な例としては、未上場企業が株式公開(IPO)を通じて資金調達を行うケースが挙げられます。
エクイティファイナンスのメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
・返済が必要ない ・財務基盤が強化される | ・経営権を失うリスクがある ・資金調達に時間がかかりやすい |
エクイティファイナンスで調達した資金には返済義務がないため、利息負担の重さに悩まされることはありません。また、資金調達と同時に自己資本が増え、財務基盤が強化されることにより、金融機関や取引先との関係構築に有利に働く可能性があります。
一方で、既存の株主の持ち株比率が下がり、経営権に影響を及ぼすことが考えられます。多額の資金調達を行う場合、新しい株主の影響力が増し、代表者や既存株主の思い描く企業経営ができなくなることもあるでしょう。
また、株主総会の開催や法的手続きなど、複数の手続きを必要とすることもあるため、迅速な資金調達が求められる状況には適さない場合があります。
補助金・助成金
補助金や助成金は、所定の要件を満たした場合に、国や自治体から資金の提供を受けられる制度です。
補助金は国や自治体が政策目標を実現するために、有効な取り組みをした企業に対して支給される資金のことです。研究開発や設備投資などに充てられることが多く、採択にあたっては審査があるため、必ず支給を受けられるとは限りません。
一方、助成金は国や地方自治体が、一定の条件を満たした企業に支給する資金です。補助金とは異なり、申請要件を満たせば原則として給付を受けられることが特徴です。
補助金や助成金のメリット・デメリットを、以下の表にまとめました。
メリット | デメリット |
---|---|
・返済が必要ない ・種類が豊富である | ・手続きに手間や時間がかかる ・基本的には後払いになる ・補助金の場合は審査に落ちる可能性がある |
補助金や助成金は返済の必要がありません。また、多様なニーズに合わせたさまざまな制度が用意されています。
一方で、申請書類の作成や必要書類の準備に多くの手間と時間を要するケースも少なくありません。初めて申請する場合や要件が厳しい場合は、専門家のサポートを受けたほうがよいでしょう。サポートを受けることで書類作成を代行してくれたり、審査に対して的確なアドバイスをもらえたりする場合があります。
以下の表で、代表的な補助金・助成金をまとめました。
概要 | 実施機関 | 補助上限額 | |
---|---|---|---|
事業再構築補助金 | コロナの影響を受けた事業者の事業再構築を支援する | 中小企業庁 | 5億円 |
中小企業省力化投資補助金 | 中小企業のIoT・ロボットなどの製品導入を支援する | 独立行政法人中小企業基盤整備機構 | 1,000万円 |
ものづくり補助金 | 中小企業の生産性向上につながる設備投資を補助する | 独立行政法人中小企業基盤整備機構 | 8,000万円 |
IT導入補助金 | 中小企業のIT導入経費の一部を補助する | 独立行政法人中小企業基盤整備機構 | 450万円 |
小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者の販路開拓にかかる経費などを一部補助する | 全国商工会連合会 | 200万円 |
事業承継・引継ぎ補助金 | 中小企業の事業承継にかかる専門家費用の一部を補助する | 事業承継・引継ぎ補助金事務局 | 600万円 |
創業助成金 | 創業予定の事業主に対して経費の一部を助成する | 東京都※他自治体でも実施しているケースあり | 400万円 |
キャリアアップ助成金 | 正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する | 厚生労働省 | 1人当たり80万円 |
※2024年11月22日時点
申請要件や公募期間は年度ごとに異なる場合も多いため、詳細については、それぞれの実施機関の公式サイトで確認してください。
自社にあった資金調達方法の選び方

資金調達をする際は、以下の要素を踏まえて自社に適した方法を選択しましょう。
- 資金調達の必要金額
- 資金調達までにかかるスピード
- 資金の利用目的
- 企業規模と資金調達方法の相性
適切な方法を選べないと、必要なタイミングで資金を用意できなかったり、調達できたとしても希望額を大幅に下回ったりする場合があります。ひとつずつ見ていきましょう。
必要金額で選ぶ
資金調達方法には、それぞれ対応可能な金額に上限があります。そのため、借入希望額を明確にしたうえで資金調達方法を選ばないと、必要な資金を調達できないという事態に陥ります。
一般的な資金調達方法と調達可能な金額の例を、以下の表にまとめてみました。
必要資金 | 資金調達方法の例 |
---|---|
〜数百万円 | ・ファクタリング ・手形割引 |
〜数千万円 | ・ビジネスローン ・日本政策金融公庫による融資 ・制度融資 |
〜数億円 | 銀行のプロパー融資 |
自社で必要な資金を調達できない方法を選んでしまうと、無駄な手続きをすることにもなりかねません。
また、資金調達金額が大きくなるほど、審査は厳しくなる傾向があります。審査をスムーズに通過するためにも、必要な金額を明確にしたうえで資金調達を行いましょう。
スピードで選ぶ
資金調達では、必要なタイミングで資金を用意できることも重要です。いくら多くの資金を調達できる方法でも、必要なタイミングに間に合わなければ意味がありません。
資金を調達できるおおよその期日について、以下の表にまとめてみました。
資金調達期間の目安 | 資金調達方法の例 |
---|---|
即日〜数日 | ・ビジネスローン ・ファクタリング ・手形割引 |
数日〜数週間 | ・日本政策金融公庫による融資 ・制度融資 ・銀行のプロパー融資 |
数週間〜数ヵ月 | ・補助金や助成金 |
ビジネスローンやファクタリングなど、資金調達できる金額が少ないアセットファイナンスは、資金調達にかかる時間が少ない傾向にあります。一方で、大きな金額を資金調達できるデットファイナンスや補助金・助成金は、手続き完了までに時間がかかるのが一般的です。
利用目的から選ぶ
資金調達方法によっては利用目的が指定されている場合があります。そのため、資金調達方法を選ぶ際は利用目的に沿っているか、という観点で選ばなければなりません。
利用目的 | 資金調達方法の例 |
---|---|
開業資金 | ・日本政策金融公庫による融資 |
運転資金 | ・ビジネスローン ・ファクタリング |
設備投資 | ・銀行のプロパー融資 |
また、融資の場合は目的に応じて利用できる方法が異なり、適切な方法を選ばなければ審査に通過しない可能性もあります。申し込みをする前に、利用可能な用途を確認しておきましょう。
企業規模で選ぶ
企業規模に応じて利用できる資金調達方法は異なります。
企業規模 | 資金調達方法の例 |
---|---|
大企業 | ・コマーシャルペーパー ・公募増資 |
中小企業 | ・ビジネスローン ・制度融資 |
ベンチャー企業 | ・エンジェル投資家からの出資受入 ・ベンチャーキャピタル(VC)からの出資受入 |
例えば、大企業は信用力を生かしてコマーシャルペーパーや公募増資など、多様な調達手段が選択可能です。コマーシャルペーパーとは、企業が発行する無担保の約束手形のことで、公募増資とは、株式を不特定多数の投資家に公募して資金調達する方法のことです。
一方の中小企業やベンチャー企業は、大企業ほどの信用力がないため、融資を中心とした資金調達方法を検討する必要があります。
ただし、成長が見込まれるビジネスを展開している場合は、エンジェル投資家と呼ばれる個人投資家や、ベンチャーキャピタル(VC)から出資を受けられるケースもあるでしょう。ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業への出資を専門としている投資会社です。
このように、企業の規模によって最適な資金調達方法は異なります。自社の特性や経営状況を見極めたうえで、調達手段を適切に選択することが重要といえるでしょう。
【一覧表あり】法人におすすめの資金調達方法16種類を一挙紹介!

資金調達にはさまざまな方法があるため、事業規模や資金の用途に応じて最適な手段を選ぶことが重要です。以下では、幅広い企業が活用できる、おすすめの資金調達方法を16種類紹介します。
アセットファイナンス
アセットファイナンスに分類される資金調達方法のうち、おすすめの方法は以下の5つです。
調達可能金額 | 資金調達スピード | 主な利用目的 | |
---|---|---|---|
ファクタリング | 〜数百万円 | 即日〜数日 | 運転資金 |
手形割引 | 〜数百万円 | 即日〜数日 | 運転資金 |
保険・共済の解約 | 〜数百万円 | 即日〜数日 | 運転資金 |
リースバック | 〜数千万円 | 数日〜数週間 | 運転資金・設備投資 |
固定資産の売却 | 〜数千万円 | 数日〜数週間 | 運転資金・設備投資 |
それぞれのメリット・デメリットを理解しておきましょう。
ファクタリング
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、現金化する方法です。ファクタリングには、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
・スピーディーに資金調達できる ・担保不要で利用できる | ・手数料が高くなりやすい ・調達可能金額が売掛債権の大きさに左右される |
とくに大きな特徴は資金調達までのスピードで、事業者によっては最短即日で利用できます。実際に金融機関からの融資では、審査や手続きに数日〜数週間程度を要することもあるくらいです。
また、担保・保証人が不要であり、売掛先の信用力に問題がなければ、赤字決算や税金滞納がある場合などでも利用できる場合があります。
一方で、ファクタリングでは手数料をはじめとした、、さまざまな費用が発生します。
- 手数料
- 着手金
- 審査料
- システム利用料 など
手数料の目安は売掛額の10~20%程度と、他の資金調達手段よりも割高になるケースも少なくありません。利用するにあたり支払う費用を差し引くと、売掛債権の額面金額を大きく下回る金額しか調達できないこともあるくらいです。
とはいえ、最短即日で資金を調達できることから、建設業や運送業など売掛金回収までの期間が長い業種はファクタリングを活用する場面も多いでしょう。
手形割引
手形割引とは、企業が受け取った約束手形を銀行や手形割引業者に売却し、手形の額面金額から割引料を差し引いた金額を受け取る方法です。手形割引には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
・迅速に資金調達できる ・面倒な手続きが少ない | ・割引料がかかる ・手形が不渡りになるリスクがある |
手形割引を利用すると、手形の支払い期日を待たずに現金化できます。また、一般的な融資と比べると受取人ではなく手形振出人の信用力のほうが重視されるため、自社の業績が振るわない場合でも審査に通りやすい傾向があります。必要な書類も少ないので、手形を持参するだけで即日の資金調達も可能です。
一方で、手形の額面金額から割引料が引かれます。割引料の設定は金融機関や業者によって異なるものの、利用頻度が多いとコストがかさむ可能性があります。割引料は「手形額面 × 割引率 × (支払日までの日数 ÷ 365日)」で算出され、割引率の相場は銀行の場合で1.5~3.5%程度です。
また、手形が不渡りになった場合は、金融機関から買い戻さなくてはならない点も注意すべきです。
卸売業や製造業など、手形決済が多い企業は利用しやすい資金調達方法といえます。
保険・共済の解約
加入している生命保険や小規模企業共済、経営セーフティ共済などの共済を解約し、解約返戻金を受け取る方法でも資金を調達できます。
保険・共済を解約するメリット・デメリットは、以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
・手軽かつスピーディーに資金調達できる | ・保険や共済のメリットを享受できなくなる ・契約年数によっては解約返戻金が支払った保険料よりも少なくなる |
基本的に、保険会社や共済に解約書類を提出するだけで解約手続きができます。解約後、数営業日程度で解約返戻金を受け取れるケースも多いので、スピーディーに資金調達できる点がメリットです。
一方、解約すると保険金や共済金を受け取る権利は消滅します。将来の予期せぬリスクに対する備えが減ってしまう点は、デメリットといえるでしょう。
また、契約してから数年で解約すると、一般的には受け取る解約返戻金が支払った保険料や掛金の合計額を下回ります。実際に解約するかどうかは、受け取れる解約返戻金を元に判断しましょう。
リースバック
リースバックとは、企業が所有する不動産や設備などの資産を一旦売却し、その後、売却先から同じ資産をリース(賃貸)することで引き続き使用しながら資金を調達する方法です。
リースバックのメリット・デメリットは、以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
・事業運営に支障をきたさずに済む | ・リース料の支払いが発生する ・資産価値の上昇利益を享受できなくなる |
売却によってまとまった資金を得ながら、業務に必要な資産を引き続き使用できるため、事業運営に影響を与えずに済みます。
一方で、売却資産のリース費用が固定費として発生するため、事業コストを押し上げる可能性があります。さらに、所有権を失うことで資産価値が将来上昇した際に売却益を得られなくなる点も、デメリットといえるでしょう。
固定資産の売却
企業が所有する不動産や設備などの固定資産を売却して資金を調達する方法もあります。
固定資産の売却には、以下のメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
・維持費や税負担を削減できる | ・売却価格が簿価を下回る場合、損失が発生する ・売却先を見つけるのに時間がかかる |
売却する資産が遊休資産に該当する物であれば、資産を保有し続けることで発生していた維持費や税負担を削減できる可能性があります。遊休資産とは、現時点で使われていない資産のことです。
売却価格が簿価を下回る場合、帳簿上で損失が計上されるリスクがあります。このような場合、企業の財務状況にマイナスの影響を与える可能性があるため、適切なタイミングで売却を検討することが重要です。
また、資産の種類によっては、不動産のように売却先を見つけるまでに時間がかかるケースも少なくありません。
運転資金や設備資金が不足しているにも関わらず、融資やファクタリングなどによる資金調達が難しい企業は、検討してみる余地があるでしょう。
デットファイナンス
デットファイナンスに分類される資金調達方法のうち、おすすめの方法は以下の8つです。
調達可能金額 | 資金調達スピード | 主な利用目的 | |
---|---|---|---|
ビジネスローン | 〜数千万円 | 即日〜数日 | 運転資金 |
日本政策金融公庫による融資 | 〜数千万円 | 数日〜数週間 | 開業資金 |
制度融資 | 〜数千万円 | 数日〜数週間 | 運転資金・設備投資 |
銀行のプロパー融資 | 〜数億円 | 数日〜数週間 | 運転資金・設備投資 |
社債発行 | 〜数千万円 | 数日〜数週間 | 運転資金・設備投資 |
保険・共済の貸付制度 | 〜数百万円 | 即日〜数日 | 運転資金 |
当座貸越 | 〜数千万円 | 即日〜数日 | 運転資金 |
親族・知人などからの借り入れ | 〜数百万円 | 即日〜数日 | 運転資金 |
それぞれのメリット・デメリットを理解しておきましょう。
ビジネスローン
ビジネスローンとは、銀行や信販会社などが提供する、事業者向けのローン商品です。ビジネスローンのメリットとデメリットを、以下の表にまとめてみました。
メリット | デメリット |
---|---|
・スピーディーに資金調達できる ・原則として担保・保証人が不要 | ・融資額が少額になりやすい ・金利が高くなることもある |
通常の銀行融資に比べると審査や手続きに要する時間が短く済み、最短即日での融資が可能な場合もあります。また、原則として担保や保証人が不要です。
一方で、融資額が数十万〜数百万円と少額になりやすく、大口の資金調達には向いていません。また、金利は高めに設定されており、上限金利の場合で相場は年10.0~15.0%程度です。
担保を用意できる場合は、「不動産担保ローン」の活用も検討してみましょうビジネスローンに比べて低金利で、借入上限額も高めに設定されている傾向があります。
日本政策金融公庫による融資
日本政策金融公庫の融資制度は、国の政策に則って設けられた融資制度です。日本政策金融公庫による融資には、以下のメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
・低金利で融資が受けられる ・創業時でも利用できる ・担保・保証人要件が柔軟 | ・審査に時間がかかる |
民間の金融機関と比較して低金利で融資を受けられるため、資金調達コストを抑えられるでしょう。また、創業時や事業開始から間もない段階でも利用できる制度も用意されています。無担保・無保証人で利用できる制度もあり、自社の状況に合わせて柔軟に活用できます。
一方で、申し込み時には事業計画書など、さまざまな書類の提出が必要です。審査も数週間〜数ヵ月程度かかるため、資金調達を急ぐ場合には注意が必要です。
制度融資
制度融資とは、地方自治体や金融機関、信用保証協会が連携して行う融資のことです。制度融資のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
・信用保証協会の保証を受けられるため、銀行融資に比べて信用力の低い企業でも審査に通りやすい ・利子と信用保証料の補助を受けられる | ・手続きに時間がかかる |
制度融資では、信用保証協会の保証を受けられるため、信用力の低い企業でも利用しやすいことが最大のメリットです。通常の銀行融資では審査が難しい企業でも融資を受けられる可能性があります。さらに、利子と信用保証料の補助があるため、少ないコストで資金調達できる点もメリットといえます。
一方、融資を受けるまでに時間がかかる点はデメリットとなるでしょう。金融機関だけでなく、自治体や信用保証協会が関わるため、手続きには相応の時間を要します。市区町村の制度融資では面談が必要になるケースもあるため、念入りな準備が求められます。
銀行のプロパー融資
銀行のプロパー融資とは、信用保証協会の保証を受けずに、銀行が独自の審査基準で行う融資のことです。プロパー融資のメリット・デメリットを、以下の表にまとめてみました。
メリット | デメリット |
---|---|
・低金利で長期かつ安定的な資金調達が可能になる ・大口の資金調達にも対応している | ・審査が厳しい傾向にある ・資金調達に時間がかかる |
銀行が独自の基準で融資先を厳選し、信用力のある企業にしか融資を行わないため、低金利での借入が可能です。金利は銀行によって異なるものの、年1.5~3.0%程度が相場です。
また、大規模なプロジェクトや設備投資に備えて融資を受けられます。
その反面、審査のハードルは決して低くありません。財務状況が安定している企業や将来が見込まれる企業でなければ、基本的に融資を受けるのは難しくなります。
また、入念な審査を行うため、融資を受けるまでには数週間程度かかることが一般的です。
社債発行
社債発行とは、企業が発行する債券(借用証書)を通じて資金調達する方法です。社債は、広く一般の投資家に向けて発行する「公募債」と、特定の投資家を対象とした「私募債」の2種類に分けられます。
社債発行のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
・自社にあった償還スケジュールを選択できる ・調達した資金の用途を制限なく活用できる | ・償還条件の変更はしにくい ・手間やコストがかかることもある |
償還期間や利率を、自社の資金繰りや計画に合わせて設定が可能です。また、基本的には使途が制限されないため、幅広い目的に利用できます。
ただし、私募債の場合は償還条件の変更ができない点には注意が必要です。一般的な銀行融資のように、経営状況に応じて返済条件の変更(リスケジュール )はできません。
一度発行した社債の償還期間や利率などの条件を後から変更することは難しいため、経営状況が悪化しても返済負担が軽減されないリスクがあります。
また、公募債の場合、有価証券届出書や有価証券報告書の提出が必要で、金融機関へ保証料の支払いが必要になることもあります。
保険・共済の貸付制度
加入している保険や共済の「契約者貸付制度」を利用して、資金調達する方法もあります。契約者貸付制度は、解約返戻金や積み立てた共済金の一定範囲内で、お金を借りられる制度です。
契約者貸付制度のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
・銀行融資に比べて審査が簡単 ・保険や共済を解約せずに資金調達できる | ・借入額が積立金の範囲内に限定される ・返済が滞ると、保険金や共済金が減額される |
解約返戻金や積み立てた共済金を担保にして貸し出す仕組みになっているため、必要書類さえ用意すれば、審査不要で利用できます。また、加入中の保険や共済を維持したまま資金を調達できるため、リスクに対しても継続して備えられる点もメリットです。
ただし、借り入れ可能な金額は解約返戻金や積立金の範囲内に制限される点は押さえておきましょう。そのため、大口の資金調達は難しい場合もあります。また、返済が滞った場合は受け取れる保険金や共済金が減ってしまったり、契約失効となる可能性もありえます。
当座貸越
当座貸越とは、銀行との事前契約に基づいて一定の限度額内で自由に借り入れができる融資のことです。当座預金の残高が不足したときに金融機関から自動的にお金が貸し出される「一般当座貸越」と、あらかじめ設定された限度額の範囲内で自由に借入や返済ができる「専用当座貸越」があります。
当座貸越には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
・期間内なら限度額の範囲内で何度でもお金を借りられる | ・審査が厳しい傾向にある ・契約期間が短く、更新のたびに審査が必要となるため、手間がかかる |
当座貸越は一度契約を結べば、契約期間内に限度額の範囲内で何度でも借入ができるので、利用するたびに銀行の審査を受ける必要はありません。そのため、突発的な資金不足に対しても柔軟に対応できます。
一方で、自由に借り入れ・返済ができる資金調達方法であるため、金融機関にとっては貸し倒れのリスクが高く、厳しい審査が行われることもあります。また、契約期間も1〜2年程度であることが一般的で、継続の際には審査が必要です。
親族・知人などからの借り入れ
信頼できる親族・知人などがいるのであれば、借りることで資金調達する方法もよいでしょう。親族・知人などから借り入れするメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
・審査なしで資金調達できる ・低い金利で借りやすい | ・返済が滞ると人間関係が悪化する ・大口の借入は難しい ・金銭貸借契約を適切に行わないと贈与とみなされ、贈与税が課税される場合がある |
親族や知人から借りる場合は審査が不要で、低金利または無利子で資金調達できるケースも少なくありません。
一方で、返済が予定どおりに進まない場合、借りた相手との信頼関係に悪影響を及ぼしかねません。トラブルを未然に防ぐために、最低でも借用書は交わしましょう。
また、親族や知人が貸し出せる資金には限りがあるため、大規模な資金調達には不向きといえます。
エクイティファイナンス
エクイティファイナンスに分類される資金調達方法のうち、おすすめの方法は以下の2つです。
調達可能金額 | 資金調達スピード | 主な利用目的 | |
---|---|---|---|
第三者割当増資 | 〜数千万円 | 数日〜数週間 | 運転資金・設備投資 |
クラウドファンディング | 〜数百万円 | 数週間〜数ヵ月 | 運転資金 |
ひとつずつ解説します。
第三者割当増資
第三者割当増資とは、自社の役員や従業員など、特定の投資家に株式を割り当てて資金調達する方法です。第三者割当増資のメリット・デメリットを、以下の表にまとめてみました。
メリット | デメリット |
---|---|
・株式を付与する相手が選べて関係性を強化できる ・新株発行の手続きが簡単である | ・既存株主の持ち株比率が下がり、経営権の分散や利益配分の減少につながる可能性がある |
株式を発行する相手を限定できるため、役員や従業員へのモチベーション向上策として用いられます。また、戦略的パートナーシップを構築する目的で特定の投資家を選定する場合もあります。さらに、第三者割当増資は公募増資などの方法と比べると、手続きが簡単で短期間で資金調達が可能です。
一方で、株式の新規発行に伴い、既存株主が自社に対して持つ影響力や利益配分が減少する可能性があります。今後の経営方針が変更となる事態にもなりうるため、慎重に活用すべき資金調達方法といえます。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数から資金を調達する方法です。起案者側は資金を提供してくれた支援者へ、対価としてリターンを提供します。リターンは起案者が好きなように設定でき、法人の場合は自社サービスの提供が一般的に行われます。
クラウドファンディングのメリット・デメリットを以下の表にまとめてみました。
メリット | デメリット |
---|---|
・支援者は少額から起案者へ投資できるため、多くの方に気軽に参加してもらえる ・プロジェクトの認知度向上につながる | ・目標金額を達成できないリスクがある ・集まった金額に対して10〜20%程度の手数料がかかるため、資金調達コストが高くなる可能性がある |
支援者は少額から起案者へ投資できるため、多くの方に気軽に参加してもらえます。それにより、認知度向上やファン獲得が期待できます。資金調達以外の面でも自社ビジネスに対して恩恵を得られる可能性がある点が、クラウドファンディングの特徴です。
一方、集まった金額に対して10〜20%程度の手数料がかかることから、資金調達のコストは比較的高めといえます。また、プラットフォームによっては目標金額を達成できなかった場合、それまでに集まった支援金を受け取れない場合もあります。
資金調達を主軸とするのではなく、自社サービスの宣伝も兼ねて行うことを目的にしたほうが、総合的に見て成功しやすくなるでしょう。
低金利でまとまった金額を資金調達したいなら不動産担保ローンがおすすめ

担保にできる不動産がある方は、不動産担保ローンでの資金調達を検討してみましょう。不動産担保ローンとは、その名のとおり、所有する不動産を担保にして借り入れができるビジネスローンの一種です。所有者の同意があれば、親族所有の不動産や共有名義の不動産も担保にできます。
また、1億円超もの高額の借り入れが可能である点や、金利が低めに設定されている点など、他の代表的な資金調達方法と比べても利便性が高い点が特徴です。資金使途の制限もないので、資金調達が必要なさまざまなシーンで役立つでしょう。
以下の表にて、不動産担保ローンと他の主要な資金調達方法についてまとめてみました。
資金調達にかかるコスト | 借入可能額 | 借入までの期間 | 資金使途の制限 | 担保 | |
---|---|---|---|---|---|
不動産担保ローン | 低〜中 | 〜数億円 | 最短数日 | なし | 必要 |
一般的なビジネスローン | 高 | 〜数百万円 | 最短即日 | なし | 不要 |
日本政策金融公庫による融資 | 低 | 〜数千万円 | 数週間 | あり | 不要(必要な場合もあり) |
制度融資 | 低 | 〜数千万円 | 数週間 | あり | 不要(必要な場合もあり) |
プロパー融資 | 低 | 〜数億円 | 数週間 | あり | 不要(必要な場合もあり) |
ファクタリング | 高 | 〜数百万円 | 最短即日 | なし | 不要 |
法人が資金調達を成功させるポイント4つ

法人が資金調達をスムーズに進めるために押さえるべきポイントは、以下のとおりです。
- 説得力のある事業計画書を作成する
- 金融機関との交渉術を身につける
- 信用力の向上を目指す
- 信頼できる専門家に相談する
資金調達をする前に入念に準備しておけば、失敗を避けやすくなるでしょう。ひとつずつ解説します。
1.説得力のある事業計画書を作成する
資金調達を成功させるために、まずは説得力のある事業計画書を作成する必要があります。金融機関は事業計画書をもとに融資の可否を判断するため、調達した資金の活用方法や返済計画を、具体的かつわかりやすく示さなければなりません。
事業計画書では数値やデータを用いながら、現実的に達成可能な目標を具体的に示すことが重要です。そのうえで、現時点で直面している課題と、その解決方法を記載しましょう。市場調査に基づき、自社の優位性について説明するのも効果的です。
また、専門用語はなるべく避け、わかりやすい言葉を使い、グラフや図を活用して視覚的に伝える工夫をしましょう。経営者としての情熱や理念が伝わるような内容を記載すれば、テンプレート的な印象を与えずに済む上、説得力も高まるでしょう。
2.金融機関との交渉術を身につける
金融機関の担当者は返済能力や担保の有無を重視して、融資の判断をする傾向があります。
返済能力の有無は主に決算書などの提出書類で判断します。決算書の内容が赤字だったり借入金が多かったりする場合は、その背景を詳しく説明し、改善計画を示すことが大切です。必要に応じて、資金繰り表などの追加資料を提出するのもよいでしょう。
また、審査を通過しやすくするために、担保や保証人を提供することも検討してみてください。無担保での融資を希望している場合でも、あえて担保を提示することで審査に有利に働くケースも少なくありません。
さらに、経営者個人の資産状況をアピールすることや、代表者以外の連帯保証人を用意するのも有効な方法です。
3. 信用力の向上を目指す
信用力を高めることは、資金調達を成功させるうえで欠かせない要素です。企業の信用力が向上すれば、金融機関からの信頼が深まり、より良い条件で資金を調達できる可能性が広がります。そのためには、日々の経営努力が必要です。
信用力を向上させるためには財務体質を改善し、安定した収益を確保しましょう。また、適切な情報開示を心がけることで、金融機関や取引先との透明性を維持することも重要です。
加えて、融資を受けた場合には確実な返済を続け、実績を積み重ねることで金融機関からの信頼を得やすくなるでしょう。
これらの取り組みが、結果的に資金調達を有利に進めるための大きな武器となります。
4. 信頼できる専門家に相談する
事業計画書の作成や資金調達の手続きには、専門的な知識が必要になる場面が出てきます。経営者が本業の傍ら、資金調達の知識を身につけ、実行に移すのは決して楽な作業ではありません。
信頼できる専門家にサポートを依頼することで、効率よく資金調達を進められます。自社に最適な資金調達の方法や、審査通過率を高めるためのアドバイスなども得られるでしょう。資金調達の過程で事業の見直しや課題の発見につながり、経営改善の糸口が見つかることもあるかもしれません。
例えば、独立行政法人中小企業基盤整備機構では、無料で経営や資金調達に関する相談を受け付けています。商工会議所に相談すると、経営指導を受けている事業者を対象とした、無担保・無保証の「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」を活用できる可能性があります。マル経融資(小規模事業者経営改善資金)とは、商工会議所等の推薦を受けた小規模事業者が無担保・無保証人で利用できる日本政策金融公庫の融資制度です。
また、信頼できる顧問税理士や中小企業診断士に相談してみるのも良いでしょう。
目的や金額に合わせて自社に適した資金調達方法を選択しよう

法人が資金調達をする際には、目的や事業規模、必要な金額に応じて適切な方法を選ぶことが大切です。それぞれの手段には特徴があり、活用できる場面が異なります。いざというときに困らないよう、複数の選択肢を把握し、自社に合った方法を検討しましょう。
担保にできる不動産がある場合は、用途を問わず利用でき、低金利で融資を受けられるセゾンファンデックスの「事業者向け不動産担保ローン」へご相談ください。
融資金額は最大5億円と高額な借り入れが可能で、設備投資や運転資金の確保など、さまざまな場面で活用できます。
不動産担保力を重視した柔軟な審査が特徴で、赤字決算だったり銀行融資を受けられなかったりする経営者でも、融資を受けられた実績があります。家族・親族所有の不動産を担保にすることや、二番抵当にも対応可能です。
最短3営業日のスピード審査にも対応しているため、資金調達方法のひとつとしてご検討ください。


※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。