身体に良い影響を与えるといわれる「酢」。調味料として使用することはもちろん、酢そのものを飲むことも長年親しまれている健康法です。ただ飲みにくさもあって続けられないという方も多いのではないでしょうか。そんな方におすすめなのが、手作り味噌のように、熟成・発酵させてつくる自家製のフルーツビネガーです。 酢と果実、そして発酵の力を味方にした飲みやすいフルーツビネガーを摂り入れて、夏バテを予防しましょう。
酢の健康・美容効果
酢には米を発酵してつくる「米酢」、リンゴを原料とする「リンゴ酢」、玄米や大麦を長期間熟成させてできる「黒酢」、ブドウからなる「バルサミコ酢」など色々な種類があります。
それらはどれも、酸味成分の酢酸が主成分です。すっぱさのもとである酢酸が、さまざまな健康効果や美容に役立つといわれています。さらに酢にはクエン酸やアミノ酸など、有機酸が豊富に含まれています。
疲労回復
酢の主成分である酢酸は、体内でクエン酸と同様の効果をもたらすといわれ、疲労物質と呼ばれる乳酸の上昇を抑え、疲労回復をサポートする働きがあります。運動や仕事で疲れを感じているときなどは、酢を摂り入れてみましょう。
高血圧の改善
酢酸が体内で吸収されるとアデノシンという成分が分泌され、血圧の上昇を抑えます。また高血圧の方は塩分の摂りすぎも気になります。塩分を含まない酢を料理に足すことで、味を損なうことなく減塩が可能です。
内臓脂肪の減少
酢酸からなるクエン酸は糖質や脂肪をエネルギーに変換し、代謝を高める効果があります。酢を飲み続けることで、脂肪がたまりにくい環境に導きます。運動する30分~1時間前に酢を摂取すると、脂肪燃焼効果がより促されるといわれています。
消化促進
酢酸は胃液や唾液の分泌を促し、消化酵素の働きを高めて栄養の分解や吸収を助けるので、胃腸も整えます。また酢の消化吸収を高める効果によって、二日酔いも予防できます。
美肌効果
酢に含まれる有機酸の効果によって、腸内の善玉菌が増えると、便通が改善されます。結果、肌荒れの原因となるトラブルも回避できます。
ちなみに腸内環境を整える効果は、薄めた酢でも得られるといわれています。またクエン酸には、肌の老化をすすませる酸化物質をカットする抗酸化作用も期待できます。
フルーツと組み合わせることのメリットは?
酢の効果を得るには、一日大さじ1杯を摂ることが目安といわれていますが、原液での飲用は胃腸への負担になったり、歯の表面のエナメル質を溶かす原因につながります。酢とフルーツと組み合わせたフルーツビネガーは、果実の甘味や香りにより、酸味がまろやかになるため、ヘルシーなお酢ドリンクとして手軽に摂取できます。
フルーツビネガーとは?
発酵食品として知られる酢は、アルコールなどを使用しない“醸造酢”と、醸造を必要としない“合成酢”に分けられます。
さらに醸造酢には、昔ながらの製法で時間をかけてつくられる穀物酢や果実酢などがあります。フルーツビネガーに定義はありませんが、ここで示す自家製のフルーツビネガーは、醸造酢に果物を漬け込み、熟成・発酵させたものです。
フルーツビネガーの効果
酢には他の栄養素の吸収をサポートする作用があり、特に酢とフルーツを一緒に摂取すると、別々に摂取した場合より4倍ほどビタミンやミネラルの吸収率が上がるといわれています。
またフルーツなどの食材に含まれている酵素は、体内にある消化酵素をサポートしますが、フルーツと酢を合わせることで酵素の活性も高めます。
●酢×リンゴ…「1日1個のリンゴで医者いらず」といわれるように、フルーツのなかでも栄養素を豊富に含む果実がリンゴです。酢とリンゴを合わせた“リンゴ酢”は欧米では一般的な酢で、甘い香りと爽やかな風味が特徴です。またアルコール不使用の自家製のリンゴビネガーは、酸味がありながらもマイルドな飲み口になります。
摂取の際の注意点
酢とフルーツにはそれぞれ糖分が含まれているので、フルーツビネガーの摂り過ぎには注意をしましょう。1日/15mlが推奨の目安で、朝昼晩と、フルーツビネガーの原液を5mlずつ飲用を続けることで、健康や美容面に効果が期待できます。
フルーツビネガーづくりに必要なもの

画像提供:一般社団法人 日本酵素マイスター協会
自家製のフルーツビネガーは、素材選びが重要です。
材料
酢、甜菜糖(てんさいとう)、熟した果物を用意し、1:1.1:1の割合で配合する。
●酢(純米酢もしくは米酢(黒酢でも可):1
時間をかけてつくられる醸造酢に対して、市場には速醸法の加工酢や調味酢も多く出回っています。フルーツビネガー用に酢を選ぶ際は、熟成・発酵によって栄養が詰まった醸造酢を使用するようにしましょう。
●甜菜糖(てんさいとう):1.1
砂糖はゆっくり溶けるグラニュー糖の使用がおすすめです。ミネラルが豊富な甜菜(てんさい)糖は、まろやかな味に仕上がります。
●熟した果物:1
果肉からエキスが抽出しやすく発酵しやすくなっている熟したフルーツが、フルーツビネガーに適しています。
道具
発酵と腐敗は紙一重ですから、フルーツビネガーをつくる際は、衛生的に行うことが重要です。またフルーツビネガーを上手に発酵させるには、ある程度の量が必要になります。
●殺菌・熱湯消毒したガラス瓶(2リットル)
●まな板 ●包丁 ●計り ●ボウル
完成の目安と保管方法・期間
フルーツビネガーは仕込んでから、常温保存で約10日~14日間で熟成・発酵します。容器の底の砂糖までしっかり溶けたら、完成の目安です。その後は発酵をすすませないために、シロップと実に分けて冷蔵庫で保存します。約3か月間、保存可能です。
フルーツビネガーレシピ

画像提供:一般社団法人 日本酵素マイスター協会
自家製フルーツビネガーは、熟成・発酵によって栄養素がより豊富になります。しかも自家製のフルーツビネガーは、自分に合った菌が含まれるといわれ、その点からも相性がいいと考えられています。
リンゴビネガーのレシピ
- リンゴを薄くスライスする(500g)
- リンゴが重ならないように、容器に入れる
- 米酢(500cc)をゆっくりと加え、リンゴ全体に酢がなじむように容器を回す
- 甜菜糖(550g)を入れて、容器を回すように攪拌する
<ポイント>
※直射日光の当たらないところで保管する
※完成するまで、毎日、容器を振ってなじませる
※2~3日に1回、容器を振った後にフタを開けて空気を入れる
リンゴ以外にも、好みのフルーツを使用してさまざまなフルーツビネガーをつくってみましょう。複数のフルーツを漬け込む場合は、熟成・発酵のしすぎに注意しましょう。野菜でも自家製のビネガーをつくることができますが、水分をたっぷり含むものは熟成に時間を要することがあります。
アレンジレシピ
フルーツビネガーはそのままで飲用したり、水や炭酸水、牛乳、豆乳、またビールなどお酒と割っても美味しくいただけます。出来上がりの実(ピューレ)はジャムにしたり、ヨーグルトなどの付け合わせやお菓子づくりにも活用できます。ここでは、フルーツビネガーを利用したアレンジレシピをご紹介します。
〈酢醤油〉
フルーツビネガーと醤油を合わせるとまろやかになるうえ、うま味もでます。フルーツビネガーと醤油は同じ比率で合わせます。
〈酢飯〉
炊き立てのご飯に好みの量のフルーツビネガーをかけて、酢飯としても美味しくいただけます。
〈ピクルス〉
フルーツビネガーと好みのスパイスを混ぜ、きゅうりや大根、人参など野菜を投入します。冷蔵庫に入れて、約2時間で出来上がります。
〈ドレッシング〉
フルーツビネガー、オリーブオイル、塩・コショウを攪拌するだけで、フレッシュなドレッシングが完成します。使用するフルーツビネガーは柑橘系がおすすめです。
●リンゴビネガー 100㏄
●はちみつ 適宜
●オリーブオイル 100㏄
●塩・コショウ 適宜
〈煮干しの甘露煮〉
フルーツビネガーを使用することでさっぱりとした甘露煮に。煮干しをつぶさないように丁寧に瓶に入れます。フルーツビネガーを注ぎ、醤油を加えて軽く振ります。約3時間、冷蔵庫に置いて完成です。1週間から10日程度保存できます。余った汁は出汁として使用できます。
●煮干し 50g
●フルーツビネガー(リンゴ)500ml
●醤油 適宜
まとめ:栄養価が高い自家製のフルーツビネガーを摂り入れよう

画像提供:一般社団法人 日本酵素マイスター協会
発酵によって味わいや栄養価が高くなる自家製フルーツビネガーは、飲用だけでなく、風味がさっぱりしているので、さまざまな料理にアレンジしやすいこともポイントです。
完成までは、毎日手をかける必要がありますが、育てるような気分でつくれるのもフルーツビネガーづくりの楽しみになります。この夏は自家製のフルーツビネガーを摂取して、過酷な暑さを乗り切りましょう!
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。