民泊を営むにあたっては、設備投資や手続きに対して支払う初期費用や、運営に際し継続的に支払う費用(ランニングコスト)が必要です。民泊にかかる費用は決して安くないことから、二の足を踏んでしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、民泊を営む際に使えるローンの種類や、民泊で利用できるローンと住宅ローンの違いを解説します。あわせて、ローンを利用して民泊事業を成功させるポイントも見ていきましょう。


民泊を営む際に利用できるローン

民泊を営む際に利用できるローンは、次の4つです。
- 住宅ローン
- 事業用ローン(不動産投資ローン)
- 民泊専用ローン
- 日本政策金融公庫の創業融資
それぞれ利用条件が異なるので、ひとつずつ見ていきましょう。
1.住宅ローン
「住まいの1室を民泊に活用できないか」と考えたときに、低金利の住宅ローンが利用できるか検討する人は多いでしょう。
確かに、住宅ローンで民泊を運営できるケースはあります。しかし、それは家主が一緒に住んでいる「家主居住型」であり、かつ家主が住んでいる部分の床面積が50%以上ある場合に限られます。
住宅ローンは、本来「居住用物件」の購入を目的とした融資商品です。そのため、民泊用物件の購入で利用した場合は契約違反となり、金融機関に発覚した際にはローン残金(残債)の一括返済を求められる可能性があります。
また、2拠点目の家=セカンドハウスで民泊を営む場合や、「セカンドハウスローン」で物件を購入した場合も同様に、民泊での運営は基本的に認められません。このような場合には、後述する事業用ローン(不動産投資ローン)への借り換えが必須となります。
2.事業用ローン(不動産投資ローン)
事業用ローンは、事業として収入を得る目的で民泊を運営する際の物件購入などに利用できる融資商品です。
民泊は不動産投資のひとつとみなされるため、不動産投資ローンを活用できます。たとえば、アパートやマンションの1室を購入して民泊運営をする際にも利用可能です。
事業用(不動産投資)ローンでは、融資を受けた物件に抵当権が付されます。抵当権は、ローンが返済不能になった場合に使われる権利です。
万が一、返済不能となった場合には最終的に抵当権が行使されます。そして、購入した物件の売却額がローン返済に充当される仕組みです。
事業用(不動産投資)ローンは銀行だけでなく、信販会社などの預金業を営まない金融機関でも取り扱いがあります。セゾンファンデックスでも「不動産投資ローン」を提供していますので、資金調達でお悩みの際はぜひご検討ください。


3.民泊専用ローン
民泊には、専用のローンもあります。2025年現在でリリースされている民泊専用ローンは、次の2種類です。
民泊事業ローン | ホームシェアリングローン | |
---|---|---|
運営会社 | 株式会社L&Fアセットファイナンス(旧 三井住友トラスト・ローン&ファイナンス株式会社) | ・東急不動産ホールディングス(HD) ・オリエントコーポレーション(オリコ) ・空き家活用株式会社 |
最大融資額 | 10億円 | 1億円 |
最大融資期間 | 35年 | 20年 |
金利(年) | 3.30~4.30% | 3.0%、3.5% |
※民泊事業ローン 2025年 4月1日時点、ホームシェアリングローン 2025年 3月時点
参照元:民泊事業ローン:株式会社L&Fアセットファイナンス、ホームシェアリングローン:空き家活用株式会社。
ここからは、2つの民泊専用ローンについてひとつずつ解説します。
民泊事業ローン
L&Fアセットファイナンスが提供する「民泊事業ローン」は、民泊事業に必要な資金専用のローンです。不動産の購入だけでなく、既存物件を民泊事業に向けてリフォームする際の資金にも充当できます。
2025年4月現在の利率は年4.30%ですが、5,000万円以上借り入れする場合は年3.30%に引き下げられます。最低300万円から融資を受けられるため、手持ちの住宅やマンションの一室をリフォームして民泊を始める場合にも向いているでしょう。
ホームシェアリングローン
「ホームシェアリングローン」は、東急不動産ホールディングス(HD)とオリエントコーポレーション(オリコ)、空き家活用株式会社の3社による業務提携で提供されるローンです。個人のホームシェアリング(民泊)運営を支援するためのもので、2025年3月12日より株式会社きらぼし銀行が取り扱いを開始しました。。
融資期間は最大20年、融資金額は最大1億円です。
ホームシェアリングローンの利用者は、東急不動産HDが運営する個人・法人向けホームシェアリング支援サービス「ReINN」を活用できます。
4.日本政策金融公庫の創業融資
日本政策金融公庫では「国民生活事業」の中にある「新規開業融資」が民泊で利用可能です。利用可能な条件は、以下のとおりです。
項目 | 条件 |
---|---|
対象 | ・新たに事業を始める方 ・事業開始後おおむね7年以内の方 |
融資限度額 | 7,200万円 (うち運転資金4,800万円) |
担保・保証人 | 以下の条件に合致しているときは、無担保・無保証人で融資 ・新たに事業を始める方 ・事業開始後税務申告を2期終えていない方 |
利率(年) | 原則として0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)引き下げ ※女性、35歳未満または55歳以上は、記載の基準利率より0.4%引下げされた「特別利率」が適用 |
返済期間 | ・設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内) ・運転資金:原則10年以内(うち据置期間5年以内) |
※2025年 8月1日時点
参照元:新規開業資金:日本政策金融公庫
旅館業に関しては、同公庫が実施する「一般貸付(生活衛生貸付)」も対象です。しかし、民泊新法による住宅宿泊事業=民泊は、一般貸付の対象にはなりません。
民泊で利用できるローンと住宅ローンの違い

住宅ローンでも民泊運営ができるケースはあるものの、実際にはさまざまな制約があるため、事業として運営するのは現実的ではありません。
住宅ローンで民泊運営が認められるのは、家主居住型であり、かつ自己居住部分の床面積が50%以上などの条件を満たす場合に限られます。
本格的に事業として民泊を運営する際は、基本的に民泊利用が認められている不動産投資ローンをはじめとした、民泊利用が認められたローンを利用することになります。
そのため、民泊を計画する際には、資金調達の選択肢として不動産投資ローンや民泊専用ローンを検討し、適切な融資を受けることが重要です。
ここからは、民泊で利用できるローンと住宅ローンの違いを、金利と用途の面から具体的に解説します。
金利
民泊で利用できるローンと住宅ローンの大きな違いは、金利です。
民泊で利用できるローンには民泊専用ローンのほか、不動産投資ローンや事業融資も含まれます。いずれも投資用ローンの一種であるため、一般的に住宅ローンに比べると金利が高めの設定されています。
【各種ローンの金利(年)一覧】
住宅ローン | 銀行の固定金利住宅ローン | 0.750~2.280% |
フラット35(15年~20年以内) | 1.470~3.180% | |
民泊で利用可能なローン | 不動産投資ローン(銀行系) | 1.50~4.125% |
不動産投資ローン(セゾンファンデックス) | 3.90~5.30% | |
国民生活金融公庫(有担保) | 1.60~3.30% | |
L&Fアセットファイナンス「民泊事業ローン」 | 3.30~4.30%(2025年 4月1日時点) |
用途
民泊向けローンと住宅ローンは、そもそもの用途が違います。民泊向けローンは、事業を始める際に受ける融資であり、物件購入費用に加えて「家具・家電・インテリアの購入費用」も含めることができます。
さらに、民泊では消防法により火災報知器や消火器、誘導灯の設置が義務付けられているため、それらの購入費用も融資額に含めることが可能です。また、行政手続きにかかる費用なども対象となる場合があります。
【民泊で利用できるローンと住宅ローンにおける用途の違い】
民泊で利用できるローン | 住宅ローン | |
---|---|---|
物件の購入・改修資金 | ○ | ○ |
家具・家電の購入費用 | ○ | × |
インテリアの購入費用 | ○ | × |
消防設備や行政手続きにかかる費用 | ○ | × |
民泊運営のための運転資金 | ○ | ○ |
一方の住宅ローンは、自己居住用の家を購入・リフォームするために受ける融資であり、家具・家電、インテリア、消火器などの事業向け費用は基本的に融資対象外となっています。
このように、民泊向けローンと住宅ローンでは融資の目的が異なるため、それぞれの用途に適したローンを選ぶことが重要です。
民泊でローンを利用する際の流れ

事業用(不動産投資)ローンや日本政策金融公庫のように、民泊で利用できるローンは、おおむね以下の流れで融資を受けます。
- 事前準備
- 申し込み・審査
- 契約
各段階でどのような手続きや準備が必要なのか、順番に見ていきましょう。
民泊向けの融資を検討する際は、事前に相談窓口を利用することをおすすめします。相談することで不明点が解消されるだけでなく、既存の住宅ローンの残債がある場合の対応策なども教えてもらえます。
セゾンファンデックスの「不動産投資ローン」では、電話相談窓口を設けています。民泊ローンの利用を検討している方は、ぜひご活用ください。
また、スムーズな手続きを進めるために、以下の必要書類を事前に準備しておくと安心です。
事前準備
民泊向けの融資を検討する際は、事前に相談窓口を利用することをおすすめします。相談しておくことで不明点が明確になるだけでなく、既存の住宅ローンの残高がある場合の対処方法なども教えてもらえるからです。
セゾンファンデックス「不動産投資ローン」では、電話相談窓口を設けています。民泊ローンの利用を検討している際は、ぜひご活用ください。
また、スムーズな手続きを進めるために、以下の必要書類を事前に準備しておくと安心です。
書類の種類 | 具体例・注意事項 |
---|---|
本人確認書類 | ・免許証 ・パスポートなど (写真が付されているもの) |
住民票の写し | 世帯全員の記載が必要 |
収入が証明できる書面 | ・源泉徴収票 ・確定申告書類 ・給与明細書 ・所得証明書など |
未納の税金がないことを確認できる書面 | 納税証明書 |
融資を受ける際は、上記の書類が必要となります。書類に不備があると審査・契約の際に時間を要するため、提出する前に確認しておきましょう。
審査・契約
事前に相談をして融資を受けることを決めたら、必要書類や申込書を揃えて金融機関に申し込みます。主な審査内容は、以下のとおりです。
- 書類に記載された内容の確認
- 信用情報の照会
- 担保となる物件(民泊用物件)の現地調査
具体的な審査内容や基準は明確に公表されておらず、また金融機関によって異なります。
審査に通過したら、晴れて契約です。契約の際は、以下の書類が必要になります。
- 実印
- 印鑑登録証明書
- 銀行届出印
- 登記済権利証・登記識別情報通知書(共同担保物権の場合のみ)
審査に要する期間は1週間~1ヵ月程度であるため、結果が出るまでに揃えておきましょう。
ローンを活用して民泊を成功させる3つのポイント

民泊は、ローンで融資を受けて潤沢に資金を準備するだけでは成功しません。民泊を成功させるには、最低でも以下3つのポイントを押さえておきましょう。
- 想定される収支を事前に計算しておく
- 無理のない返済計画を立てる
- 補助金や助成金を活用する
ひとつずつ解説します。
1.想定される収支を事前に計算しておく
民泊でローンを使ったときは、想定される収支を試算しておくことが重要です。民泊も他の事業と同様に「収入ー支出=利益」となるため、以下の点を押さえて、年間の収支を計算しましょう。
収入
- 1泊あたりの宿泊費をいくらに設定するか
- どの程度の稼働率が見込めるか
支出
- 諸経費はいくらかかるか(ローン返済額も含む)
特に稼働率は、立地や季節の影響を受けやすい要素です。年間通して常にフル稼働するとは限りません。自分のエリアでは、季節ごとにどのような来訪者の動きがあるのかを把握しておく必要があります。
また、1泊あたりの価格設定も慎重に行いましょう。料金が高すぎると利用客が減り、安すぎると利益が出にくくなります。
自分のエリアでの適正価格を見極めるには、民泊物件のポータルサイトで競合調査を行いましょう。複数の競合施設で2ヵ月先の稼働率が30%程度となっている価格帯が、そのエリアの適正価格といえます。
2.無理のない返済計画を立てる
民泊でローンを借りる場合、無理のない返済計画を立てることも大切です。
融資審査では、返済能力の有無を見られますが、実際の運営では季節や経済状況によって変動が起こり得ます。収支が一時的に落ち込んでも返済を継続できるよう、余裕を持った計画を立てましょう。
民泊を運営していると、稼働率が下がり利益が減少する時期があるものです。そのため、利益が下落した場合の資金繰りについても、返済計画の段階で考えておくと良いでしょう。
収支を計算し無理のない返済計画を立てるだけでなく、補助金や助成金を活用することもおすすめです。民泊に関しては、国や自治体でさまざまな補助金や助成金制度が設けられており、いずれもローンとの併用が可能です。
補助金や助成金の活用によって、返済不要の資金を確保できるため、初期費用や運営コストを抑えることができます。2024年度には以下のような制度がありました。
- 〇〇補助金:対象経費の〇%を補助
- △△助成金:最大〇万円の助成
最新の情報は自治体や関連機関のウェブサイトで確認し、活用できる制度を積極的に取り入れましょう。
3.補助金や助成金を活用する
収支を計算して無理のない返済計画を立てるだけでなく、補助金や助成金を活用することもおすすめです。民泊に関しては、国や自治体でさまざまな補助金や助成金制度が用意されており、いずれもローンとの併用が可能です。
補助金や助成金の活用によって、返済不要の資金を確保できるため、初期費用や運営コストを抑えることができます。2024年度には、以下のような補助金がありました。
※最新の情報は自治体や関連機関のウェブサイトで確認し、活用できる制度を積極的に取り入れましょう。
補助金名 | 小規模事業者 持続化補助金 | 事業再構築補助金 | 宿泊施設サステナビリティ強化支援事業 |
---|---|---|---|
対象者 | 商工会議所(市や区)商工会(町村)の管轄地域で事業を営んでいる小規模事業者等 | 新市場進出や事業・業種転換など思い切った事業再構築に意欲を有する、中小企業等 | サステナビリティに配慮した宿泊施設の設置・管理者 |
補助内容 | 販路開拓に必要な経費の一部 | ・建物費 ・機械装置やシステム構築費 ・技術導入費 ・外注費 ・広告宣伝費 ・販売促進費 ・研修費 など | 訪日外国人旅行者の受け入れに向け、旅館・ホテル等の宿泊施設が実施するサステナビリティの向上に関する取組 |
補助上限額 | 通常枠:50万円 特例:200万円 | 通常類型:1,500万円 GX進出類型:3,000万円 ※従業員数20名以下の場合 | 1,000万円 |
補助率 | 費用全体の3分の2まで | 費用全体の2分の1まで | 費用全体の2分の1まで |
※小規模事業者持続化補助金:2025年 6月30日時点、事業再構築補助金:2025年 1月時点、宿泊施設サステナビリティ強化支援事業(2025年8月時点公募終了)
参照元:小規模事業者持続化補助金:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金事務局、小規模事業者持続化補助金【一般型】:全国商工会連合会、事業再構築補助金:事業再構築補助金事務局、宿泊施設サステナビリティ強化支援事業:観光庁
補助金を準備している自治体もいくつかあります。以下は、2024年度に実施された自治体の補助金の一例です。
自治体名 | 補助金名 | 補助率 | 補助上限額 |
---|---|---|---|
大阪府 | 大阪府特区民泊施設の環境整備促進事業 | 対象経費の2分の1 | 1施設につき40万円 |
鳥取県倉吉市 | 農家民泊支援補助金 | 対象経費の2分の1 | 45万円 |
福岡県福岡市 | 福岡市宿泊事業者受入環境充実支援補助金 | 対象経費の2分の1 | 10万円 |
※大阪府特区民泊施設の環境整備促進事業:2025年 7月7日時点、鳥取県倉吉市 農家民泊支援補助金:2025年4月2日時点
参照元:令和7年度 大阪府特区民泊施設の環境整備促進事業:大阪府、農家民泊支援補助金:倉吉市、福岡市宿泊事業者受入環境充実支援補助金:福岡市
最適な民泊ローンを選び民泊経営を成功させよう

民泊は立派な「事業」であるため、必要資金の借り入れだけでなく、綿密な収支計画や返済計画が欠かせません。さらに、助成金や補助金を活用することで、資金繰りに余裕が生まれ、より安定した民泊運営が可能になります。
民泊に使えるローンはいくつかありますが、住宅ローンは原則として使えません。そのため、不動産投資ローンや民泊専用ローンを利用する必要があります。
これらのローンは金利がやや高めであり、毎月の返済負担が大きくなるため、前もって無理のない返済計画を立てておくことが大切です。
民泊に適したローンをお探しの方は、セゾンファンデックスの「不動産投資ローン」も選択肢の一つとしてご検討ください。このローンは、銀行の借入枠を超えていたり共同担保が必要な物件を含む場合でも、柔軟に対応できるのが特徴です。自営業であっても、収入や返済能力を考慮した審査が行われるため、安心してご相談いただけます。
最適なローンを選び、綿密な計画を立てることが、民泊経営を成功させる秘訣となります。ぜひ今回紹介したポイントを参考にしながら、安定した民泊運営を目指しましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。