冬の訪れとともに、あたたかい飲みものが恋しくなる季節。特に冷えを感じやすい朝や、長い一日が終わった夜、湯気の立つハーブティーは、身体だけでなく心までふわっとゆるめてくれるような存在です。
でも、いつもと同じティーバッグを何気なく飲んでいると、どこか“作業”になってしまうことも。せっかくなら、その一杯をもっと特別な時間に変えてみませんか?お気に入りのカップを使ったり、香りを楽しんだり、ほんの少しの工夫で、ハーブティーの時間はぐっと豊かになります。
忙しい毎日のなかで、自分を大切にするための“やさしいひと手間”。本記事では、寒い季節にぴったりのハーブティーの楽しみ方を「ハーブ専門店enharb(エンハーブ)」の北郷幸子さんに詳しく教えていただきました。
冬の寒さと“冷え”がつらい季節に

寒さが厳しくなる冬は、外気の冷たさだけでなく、室内にいても身体の芯からの冷えを実感することが増える季節です。特に女性は筋肉量が少なく、血行が滞りやすいため、手足の冷えや身体のだるさを感じやすい傾向があります。
「冬になると体調を崩しやすい」「朝がつらくてなかなか起きられない」など、冷えによる不調は放っておくと慢性化しやすく、日々の生活の質にも影響します。だからこそ、この季節は、自分の身体にやさしく向き合うことが大切です。
手足の冷たさや朝のだるさ、こんな悩みありませんか?
冬の朝、布団から出たくても、手足が冷えて動きづらい。靴下を重ねても、指先がじんじん冷たくてつらい。そんな“冷え”による不調を感じている方は意外と多いものです。
朝起きた時のだるさや、日中もなんとなくやる気が出ない……。それは身体が冷えているサインかもしれません。まずは、日常の中に「温める」習慣を少しずつ取り入れてみることから始めてみましょう。
「温活」で日常を少しだけ心地よくする工夫を
冷えを感じやすい季節、身体をあたためる「温活」は、日常を心地よく整える小さな習慣です。たとえば、湯船にゆっくり浸かったり、足元を冷やさないよう意識したり、衣類にあたたかな素材を取り入れるだけでも、心と身体の緊張がほぐれてリラックスしやすくなります。
大切なのは、無理なく続けられる“自分なりの心地よさ”を見つけること。そうした工夫が、毎日の健やかさにつながっていきます。
“温める習慣”にハーブティーという選択

冬になると身体の冷えを感じやすくなり、湯たんぽや温熱グッズ、重ね着などさまざまな温活方法を取り入れる方が増えますが、もっと手軽で心地よく、身体の内側から温めたい、そんなときにおすすめなのが、「ハーブティー」です。
ハーブティーは、植物が本来もつ自然の力をお茶として取り入れられる、身体に嬉しい飲み物です。温かいハーブティーを選べば、手足の冷えだけでなく、身体の巡りや心のこわばりにもアプローチできます。
ハーブティーで体を「内側から温める」
寒さでこわばりがちな季節。ハーブティーのやさしい香りとぬくもりは、身体を内側からじんわりと温め、巡りを整えるサポートになります。
“冷え”というのは単なる不快感にとどまらず、あらゆる不調の根本に関わってくることが多いです。とくに身体の“中”をしっかり温めることは、身体全体の機能を底上げするうえでとても大切です。
身体の内側が冷えていると、栄養の吸収もスムーズにいかず、結果として代謝が落ちたり、免疫力が低下したりという悪循環につながってしまいます。逆に、身体の中をじんわり温めてあげることで、身体が整いやすくなっていくんですね。
ハーブティーは手軽に“巡り”や“緩み”を促してくれるのが特長です。 内側からやさしく温める感覚で、毎日の習慣に取り入れていただけたらと思います。
お湯を注ぐだけで手軽に取り入れられる
ハーブティーは、ティーバッグならお湯を注ぐだけ、茶葉でもお気に入りのポットひとつで簡単に淹れられます。特別な道具や時間がなくても続けられるため、習慣にしやすいのが魅力です。
ハーブティーは、“丁寧に淹れないといけない”というイメージを持たれている方も多いですが、ティーバッグタイプであれば、カップにお湯を注いでティーバッグを1つ入れ、3分ほど蒸らすだけ。朝の忙しい時間でも、温かさと豊かな香りをさっと取り入れることができます。
まずは気軽に“朝の目覚めの一杯”から始めてみてはいかがでしょうか。もちろん、ハーブ専用のポットでたっぷり淹れれば、
抽出されていく色や立ち上る香りを感じながら待つ時間そのものが、心のリセットになると思います。忙しい日常の中で、そんなひと時を作ることが、温活の第一歩にもなりますよ。
“飲む時間”そのものが、やさしいセルフケアに
ハーブティーを飲むという行為は、ただ水分を摂るためだけのものではありません。一杯をゆっくり味わうことが、「いまの自分」と向き合う小さなきっかけになります。
深呼吸しながら香りを楽しむ、手を温める、目を閉じて一息つく。そんなひと時が、忙しい毎日にそっと余白を与えてくれます。
緊張やストレスがかかると、自然と手足が冷たくなったり、呼吸が浅くなったりしますよね。そうすると巡りが滞り、心のこわばりを感じやすくなります。そんなときこそ、ハーブティーの出番です。
カップから伝わるぬくもり、立ちのぼる香り、やわらかな味わいは、身体の内側からそっと緩めてくれます。良い香りを感じると自然と深い呼吸になり、少しずつ心もほぐれていくはずです。
寒さや緊張でこわばった身体には、温かさが届きにくくなります。
だからこそ、ハーブティーの“ゆるめる力”が大切です。 お湯を注ぐ音や色の変化、香りや味わいを五感で味わうことで、心と身体のバランスが整っていく。 ハーブティーは、慌ただしい日々のなかで“本来の自分に戻る”ための、やさしいひと時をくれる存在といえますね。
冬に取り入れたいおすすめハーブティー

ハーブティーは「温める」「巡らせる」「緩める」といった複数の働きがあり、温活として日常に取り入れるのに最適です。
単体でも効果がありますが、複数をバランス良くブレンドすることで、相乗効果が期待できます。ここからは、冬こそ取り入れたいおすすめのハーブティーをご紹介していきます。
温め作用のある代表的なハーブ

・ジンジャー(生姜)
身体を芯から温める、ぽかぽかハーブの代表格。特に乾燥させたジンジャーは、生のものよりも温める力が強いといわれ、巡りを促してくれます。
ただし、単体だとピリッとした刺激が強いため、リラックス系のハーブと合わせてまろやかにするのがおすすめです。
例:ジンジャー × カモミール、ジンジャー × シナモン
・シナモン
甘くスパイシーな香りが特徴の内側から温めるスパイスハーブ。巡りを促すといわれ、ダイエットサポートにも人気。
温かみのあるスパイシーさがあるので、カモミールやルイボスなどとブレンドするとよいでしょう。

・カモミール
「リラックスの代名詞」とも呼ばれるハーブで、心身を優しくゆるめてくれます。
ジンジャーの刺激を和らげ、甘みとまろやかさを加えるブレンドパートナーとして優秀。
心と身体のバランスを整え、ぐっすり休みたいときにもぴったりです。
・サフラワー(ベニバナ)
鮮やかな赤色が特徴の、見た目にも美しいハーブ。少量加えるだけで、華やかな彩りを添えてくれます。
古くから女性の健康を支えるハーブのひとつとされ、身体の巡りを整えたいときや、寒さを感じる季節に取り入れられることが多い素材です。
香りにやや特徴がありますが、味の主張はそこまで強くないので、全体のバランスを保つために10%程度(100gに対して10~15g程度)の使用がおすすめです。
・ローズマリー
“若返りのハーブ”と呼ばれ、朝のスタートにぴったりなハーブ。代謝を高め、身体を目覚めさせる効果があります。
寒い朝に一杯飲むことで、冷えた身体を内側から目覚めさせるような感覚が得られます。
・ルイボスや黒豆など
お茶としてすっかり馴染みのある「黒豆」や「ルイボス」も実はハーブの一種。
香ばしい風味で食事と一緒に取り入れやすく、季節を問わず楽しめます。特にルイボスは女性に人気が高いハーブです。
ブレンドの楽しさとコツ
ハーブティーは、ブレンドすることで香りや味わいのバリエーションが広がり、自分好みの一杯を見つける楽しさがあります。気分や体調に合わせて選べるのも魅力のひとつ。ちょっとした組み合わせのコツを知ることで、もっと気軽に、もっと自由にハーブと付き合えるようになります。
ハーブティーは、単体ではクセが気になったり、飲みにくいと感じる方もいらっしゃいます。しかし、甘味・酸味・苦味といった“味覚のバランス”を意識してブレンドすることで、ぐっと飲みやすくなります。
ブレンドによって味に深みが出るだけでなく、それぞれのハーブの力をうまく引き出せるのも魅力のひとつです。
初めての方には、目的に合わせてプロが組み合わせたブレンドティーがおすすめ。慣れてきたら、ぜひその日の気分や体調にあわせて、自分なりのカスタマイズも楽しんでみてくださいね。
ハーブティーをもっと楽しむ工夫とは?

ハーブティーは、ただ飲むだけでなく、ちょっとした工夫で、より豊かで心地良いひと時を作り出します。ここでは、飲む時間帯や頻度、器などにもスポットを当て、よりハーブティーを楽しむためのヒントをご紹介します。
飲むタイミングと頻度
ハーブティーは、朝・昼・夜など、どの時間帯にも取り入れやすい飲みものです。
たとえば朝は、体を目覚めさせる一杯に。日中は、仕事や家事の合間のリフレッシュに。夜はおやすみ前のリラックスタイムとして。一日数回、自分のリズムに合った時間に取り入れることで、無理のない心地よい習慣になります。
私たちの身体に必要な1日の水分量は、だいたい1.5リットルくらいといわれています。
そのうち、ハーブティーで約半分、500ml〜1リットルを目安に取り入れるとちょうどいいと思います。1杯200ccくらいのカップで数回に分けて飲むと、身体にも無理がありません。腎臓が一度に処理できるのもそのくらいの量なので、身体の流れを考えても理にかなっているんですね。
ハーブティーは飲んで終わり、ではなくて、身体の中を巡って、4〜5時間かけて代謝されます。だからこそ、朝に1杯、そして日中に少しずつマイボトルに入れてお昼前後に口に含むだけでも、ふっと気持ちが落ち着くでしょう。
お気に入りのマグやティーカップで“自分だけの時間”を演出
どんなカップで飲むかによって、ハーブティーの時間はぐっと特別なものになります。
手にすっとなじむマグ、色や模様にときめくカップ、ガラスの器で透明感を楽しむ。
たとえ忙しい日でも、お気に入りの器を選ぶことで「自分のための時間」を意識できるようになります。
透明なガラスのカップを使えば、鮮やかなビタミンカラーのような色合いも楽しめ、見た目から元気をもらえるのも魅力のひとつです。
また、蓋付きの耐熱カップなら、しっかり蒸らすことができ、茶葉の動きや変化する色を眺めながら、香りの成分も逃さずカップの中に閉じ込めることができます。手に伝わる温かさも心地よく、ゆったりとした気分になれますよ。
さらに、冷めてしまっても電子レンジで温め直せるので、最後までおいしく味わえます。
そうした「自分のお気に入りの器」を見つけておくと、それだけで気分が高まり、ハーブティーの時間がより特別なものになるはずです。形から入ることで、ハーブティーをもっと楽しめるようになる。そんなきっかけにもなります。
“ながら”ではなく“ひと息つけるハーブ時間”をつくる
スマホを見ながら、テレビもつけっぱなし……。そんな“ながら時間”ではなく、ハーブティーを飲むときだけは少しだけ立ち止まってみることも大切です。
忙しい日々の中で、“自分のための時間”を意識的に持つのはなかなか難しいものです。だからこそ、たとえば「夜寝る前にハーブティーを1杯だけ淹れて飲む」といった小さな習慣を、日常のどこかに取り入れてみてはいかがでしょうか。
朝は慌ただしく時間に追われがちでも、夜ならほんの5分でも自分に立ち返るひと時を作ることができます。カップに注がれたハーブティーの香りや温もりに包まれて、ふっと肩の力が抜ける。その時間は、1日頑張った自分をやさしくねぎらう時間にもなるはずです。
コーヒーやお酒とはまた違った、穏やかで深いリラックス感。ノンカフェインのハーブティーであれば、夜でも安心して楽しめます。お酒を飲む方には“締めの一杯”として取り入れるのもおすすめです。
まとめ:冷えやすい季節、自分をいたわる時間を

寒さで心も身体もこわばりがちな季節だからこそ、ハーブティーでほっとひと息。自分をいたわる小さな時間が、毎日をやさしく整えてくれます。
ハーブティーというと、どこか敷居が高いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。けれど、実際に取り入れてみると、「こんなに手軽にセルフケアができるんだ」と実感していただけるはずです。
これから冬に向かい、年末にかけて慌ただしい日々が続く中でこそ、ふと立ち止まるきっかけとして、ハーブティーを生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
たとえば、冷え込む朝にティーバッグをカップに入れてお湯を注ぐ。たったそれだけの簡単な習慣でも、身体の内側からじんわりと温かさが広がり、心地よく1日をスタートさせることができます。
日中の合間には、ほっと一息つく自分だけの“心地いい時間”を持つことも大切。そして夜には、「今日もよく頑張ったね」と自分をいたわる一杯になるはずです。
そんな小さな積み重ねが、寒さの中にも温もりを感じられる毎日を作ってくれます。
ハーブティーが、みなさんの冬を健やかに、やさしく支える存在となれたらうれしく思います。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。