開業資金の融資は、自己資金なしでも受けられることがあります。しかし、自己資金ありと比べると審査通過が難しくなることもあるため注意が必要です。何に留意することで融資を受けやすくなるのか、実際にどのような方法を利用できるのかについて詳しく解説します。
自己資金なしでも開業資金の融資は受けられる
開業に必要な資金を借りる際、自己資金について問われることがあります。しかし、申し込みの際に確認される事柄はローンの種類や制度によって異なるため、金融機関や融資制度を選べば、自己資金なしでも融資を受けることは可能です。
例えば、日本政策金融公庫では自己資金なしで利用できる制度をいくつか用意しています。そのなかの「新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」は、開業する方もしくは事業開始後おおむね7年以内の方で、女性または35歳未満か55歳以上の方向けの融資制度です。自己資金についての条件はないため、自己資金なしでも申し込めます。
自己資金の目安が決まっている融資もある
自己資金についての条件がない融資もあれば、自己資金の目安が決まっている融資もあります。例えば、日本政策金融公庫の融資制度の一つ「新創業融資」では、新たに事業を始める方が申し込むときには創業資金総額の10分の1以上の自己資金を用意していること(※)が求められます。
※現在、勤務している企業と同業種の事業を始める場合などの特定のケースにおいては、自己資金についての条件は課せられません。
自己資金なしに開業資金の融資を受けたいときは、自己資金の目安が決まっているかどうかも確認するようにしましょう。申し込む前に確認することで、審査落ちを回避できることもあります。
自己資金以外の条件も要確認
融資ごとに申込条件が異なります。自己資金以外にもさまざまな条件が定められていることがあるため、申し込む前に確認しておきましょう。
例えば、日本政策金融公庫の「新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」では、開業するときや開業後7年以内であることが条件として課せられます。また、申込者の性別が女性であること、男性の場合は年齢が35歳未満か55歳以上であることも条件です。
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開業資金融資を自己資金なしで受ける際の注意点
自己資金なしのときは、自己資金についての条件が定められている融資には申し込めない可能性があります。また、自己資金がないと融資額が少なくなる、金利が高めになるなどのデメリットが生じることもあるため注意が必要です。自己資金なしで開業資金の融資に申し込むときには、次の3つのポイントに留意しましょう。
- 自己資金なしで申し込めるか確認する
- 自己資金として活用できるものがないか確認する
- 自己資金以外を自己資金としてカウントしていないか確認する
自己資金なしで申し込めるか確認する
ローンのなかには、自己資金なしでは審査通過が難しいものもあります。日本政策金融公庫の「新創業融資」のように自己資金についての条件を明記しているものもありますが、すべてのローンにおいて自己資金の条件をホームページなどで公開しているとは限りません。
自己資金が必要かどうか条件が不明なときは、事前に金融機関などに問い合わせておきましょう。
自己資金として活用できるものがないか確認する
申し込みたいローンに自己資金の条件が定められている場合は、自己資金として活用できるものがないか確認してみましょう。例えば、売れるものを売って自己資金を作る、副業などで自己資金を作ることも検討できます。
また、国や自治体の補助金制度で自己資金を作れることもあります。知人や親戚から借りるという方法もありますが、返済できないときは信用を失うことにもなりかねないため注意が必要です。
金融機関によっては、現金以外の現物出資(不動産や車、有価証券)も自己資金としてカウントできることがあります。現金がない場合には、現物出資を自己資金として捉えられるかどうかを問い合わせてみましょう。
自己資金以外を自己資金としてカウントしていないか確認する
そもそも自己資金とは、申込者が持っている資金全体を指す言葉ではありません。開業時の場合、自己資金とは、一般的には開業に使う予定の資金を指します。例えば、預金や現金を持っている場合でも、そのお金が教育費や生活費などに使う予定のものであれば、事業資金としてカウントしません。
事業に使う予定のお金のみ、自己資金として申告するようにしましょう。自己資金の申告内容に虚偽があると、融資の返還や今後の借入れに響く可能性もあります。
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自己資金なしで利用できる開業資金の融資方法
自己資金なしで開業する際に利用できる融資方法を5つご紹介します。
- 日本政策金融公庫の新創業融資制度
- 日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金
- 日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特別貸付
- 制度融資
- 不動産担保ローン
日本政策金融公庫は金利が低めのため、条件に合致するときは利用を検討しましょう。また、1つの方法で必要な資金を全額借りられるとは限りません。必要額が借りられないときは、複数の方法を併用することも検討してみましょう。
日本政策金融公庫の新創業融資制度
日本政策金融公庫の新創業融資制度は、創業時あるいは事業開始後の税務申告を2期終えていない方が利用できる制度です。創業時あるいは事業開始後の税務申告を1期終えていない方が申し込む場合は、創業時点において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を持っていることが条件となります。
ただし、勤務先と同じ業種で起業する場合や、産業競争力強化法の認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める場合は、自己資金なしでも融資を受けられる可能性があります。原則として担保や保証人は不要で利用できる点も特徴です。
日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金
日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金は、認定経営革新等支援機関の指導や助言を受けて、新事業分野の開拓などを行う場合に申し込める融資制度です。設備資金の融資を受ける場合は返済期間が20年以内、運転資金は返済期間が7年以内と定められていますが、いずれも据置期間が2年あるため、すぐに利益が出ないときにも利用しやすいでしょう。
また、条件を満たしていると、通常の金利よりも低めの特別利率が適用されます。担保を設定するとさらに低い金利で借りられることもあるため、問い合わせてみましょう。
日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特別貸付
日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特別貸付は、地域経済の活性化につながる事業を行うときに利用できる制度です。金利は変動タイプで、直近決算の業績に応じて1年ごとに適用金利が決まります。税引き後の当期純利益額が0円未満のときは返済期間に関わらず低金利が適用されますが、当期純利益額が0円以上のときは返済期間が長いほど適用金利が高めになる点に注意しましょう。
挑戦支援資本強化特別貸付は、ベンチャー企業やスタートアップ企業が、新事業を展開するときや海外に事業を広げるときに利用することが可能です。また、挑戦支援資本強化特別貸付を利用して借りた資金を基に財務体質を改善したり、ベンチャーキャピタルや民間金融機関などから融資を受けたりする際にも活用できます。
制度融資
制度融資とは、各都道府県の信用保証協会に連帯保証人になってもらうことで、金融機関からの融資を受けやすくする制度のことです。連帯保証人を設定することで、民間の金融機関の審査に通過しやすくなるだけでなく、適用金利が低くなることもあります。
ただし、信用保証協会に連帯保証人になってもらったとしても、必ずしも民間金融機関の審査に通過するとは限りません。連帯保証人になってもらうための審査と民間金融機関の審査は別のため、両方に通過する必要があります。自治体によっても申込条件が異なることもあるため、事前に確認しておきましょう。
不動産担保ローン
自己資金がないときは、不動産担保ローンの利用を検討してみましょう。創業してから間もないときや赤字決算、金融機関への返済が難しくなっているなど、一般的に融資を受けることが難しい状況でも、不動産を担保とすることで融資を受けやすくなることがあります。
無担保に比べ、担保を設定すれば金利が低くなることも不動産担保ローンの特徴です。不動産担保ローンによっては、すでに担保として活用している不動産も担保に設定できることがあります。セゾンファンデックスの事業者向け不動産担保ローンでは、申し込みされた方の事業計画や返済計画、資金計画も考慮し、独自の審査基準で不動産評価を行います。すでに担保として活用している不動産を、セゾンファンデックスでも担保として活用できることがあるためご相談ください。
無理のない返済計画を立ててから融資に申し込もう
自己資金がないときでも、融資方法を選べば開業資金を借りることは可能です。日本政策金融公庫の融資制度のなかには自己資金なしで利用できる制度もあるため、条件に合うか検討してみましょう。
自治体の制度融資を利用することで、民間の金融機関から融資を受けやすくなることもあります。また、不動産を担保として設定することも、自己資金なしで開業資金を借りたいときに検討したい方法です。担保を設定することで高額・低金利で借りられることもあります。
いずれの融資方法を利用するときでも、借りた後には返済が始まります。返済の負担が大きすぎて事業が回らないということにならないためにも、無理なく返済できる金額を計算し、丁寧に返済計画を立ててから融資を受けることが大切です。