身体の悩みで多いもののひとつに「下腹ポッコリ」があります。「出産を機に下腹がでてきた」「歳を重ねるごとに下腹がでてきた気がする…」もしかしたらそれは骨盤底筋の筋力低下が原因かもしれません。骨盤底筋の筋力が低下すると下腹ポッコリの原因になることに加え、尿漏れや重症になると臓器脱を起こすこともあります。このコラムではその骨盤底筋の構造と効果的に鍛えるトレーニングを紹介します。ぜひ一度お試しください。
骨盤底筋について
筋肉を鍛える際に大事なことのひとつに「意識性の原則」があります。意識性の原則とは、鍛える筋肉を意識しながら筋力トレーニングをすると効果がアップするという原則です。そこでまずは骨盤底筋について詳しく学んでいきましょう。
骨盤底筋の場所と役割
骨盤底筋は正確には骨盤底筋群といって、複数の筋肉の集まりです。骨盤の底(恥骨、尾骨、座骨の間)にあり、ハンモックのように内臓を支えています。男性と女性で構造が少し違い、特に女性は骨盤底筋の筋力低下が起こりやすく、妊娠や出産の際にも骨盤底筋に負荷が掛かります。
骨盤底筋の役割は主に内臓を支え、排尿・排便をコントロールすることです。骨盤底筋が筋力低下すると、臓器脱や尿漏れなどの症状にもつながります。
骨盤底筋の筋力低下で下腹ポッコリになる
骨盤底筋の筋力が低下すると骨盤内の膀胱・子宮や直腸等の臓器の重さを支えきれずに下がってしまいます。内臓が正しい位置にないと下腹が出ているように見えてしまいます。下腹ポッコリを解消するには、骨盤底筋を鍛えて臓器の位置を元に戻すのが有効といわれています。
骨盤底筋と関わる筋肉
インナーユニット
骨盤底筋を鍛える上で外せないのがインナーユニットです。インナーユニットとは、腹腔の深部にある筋肉である、
- 横隔膜
- 腹横筋
- 多裂筋
- 骨盤底筋群
この4つの筋肉の総称です。
これら4つの筋肉は連動して動き、腹部に空洞を作って臓器を守っています。体幹とも呼ばれ、姿勢維持にも深く関わります。インナーユニットの中の一つでも筋力が低下しバランスが崩れると姿勢が崩れ、下腹ポッコリの原因になります。バランスよく鍛えることが大事です。以下で紹介するトレーニングではこのインナーユニットの中の横隔膜(おうかくまく)、腹横筋(ふくおうきん)についても同時に鍛える方法を紹介します。
大殿筋(だいでんきん)
大殿筋(だいでんきん)は骨盤の後方に位置する筋肉で、いわゆるお尻を形成しています。骨盤底筋(こつばんていきん)と密接に関わり、大殿筋の筋力が低下すると骨盤底筋の筋力も弱化します。
大内転筋(だいないてんきん)
大内転筋は太ももの内側にある筋肉です。この大内転筋は、大殿筋(だいでんきん)の図にもある内閉鎖筋という筋肉を通じて骨盤底筋とつながっており、大内転筋を鍛えることで骨盤底筋の強化にもつながります。これらの筋肉のつながりを理解した上で骨盤底筋のトレーニングを行ってみましょう。
やってみよう!骨盤底筋トレーニング
まずは骨盤底筋を意識する
骨盤底筋のトレーニングは「ケーゲル体操」とも呼ばれ、尿漏れや臓器脱に対しての効果も実証されています。他の筋肉と違って骨盤底筋は動かしているかが分かりづらい場所なので、頭の中で骨盤底筋をイメージすることが大切です。
では実際にやってみましょう。
骨盤底筋を意識するトレーニング1【仰向けで行う方法】
- トイレに行き、膀胱を空にしておきます。
- 仰向けに寝転び、膝を立てます。足幅は腰幅に開きましょう。
- 骨盤底筋を締めていきます。呼吸は自然呼吸で行いましょう。
感覚がわかりづらい方は尿を途中でとめるような意識、骨盤からお腹に向かってティッシュを引き抜くようなイメージでやっていきましょう。
- そのまま3~4秒キープします。
- ゆっくり力を抜きます。
- 10回繰り返しましょう。
骨盤底筋を意識するトレーニング2【立って机に手をついた体勢で行う方法】
- トイレに行き、膀胱を空にしておきます。
- 立って机に手をつき、すこし前かがみになります。
- 骨盤底筋を締めていきます。呼吸は自然呼吸で行いましょう。
感覚が分かりづらい方は尿を途中でとめるような意識、骨盤からお腹にむかってティッシュを引き抜くようなイメージでやっていきましょう。
- そのまま3~4秒キープします。
- ゆっくり力を抜きます。
- 10回繰り返しましょう。
骨盤底筋を意識しやすい・動かしやすい体勢は人によって異なります。仰向けで骨盤底筋が意識しづらい場合、体勢を変えてみてください。ご自身がやりやすいと思う体勢で続けましょう。
腹式呼吸(横隔膜)のトレーニング
骨盤底筋と共にインナーユニットを形成する筋肉である横隔膜(おうかくまく)。横隔膜は呼吸により鍛えることができます。
【腹式呼吸(横隔膜)のトレーニング方法】
- 楽な体制で座ります。
- 一度息を吸いながら肩と耳を近づけ、息を吐いて肩をおろし身体をリラックスさせます。
- おへその少し下に手を当てます。
- 怖くなければ目を閉じて行っても良いです。
- 息を吸いながらお腹と胸を膨らませます。手を当てているところも膨らむように意識しましょう。
- 息を吐いてお腹をへこませます。すべての息を吐き切りましょう。
- 慣れてきたら10秒で息を吸い、10秒で息を吐きましょう。
- 10セット繰り返します。
おなか(腹横筋)のトレーニング
ドローインと呼ばれる腹横筋のトレーニングと骨盤底筋のトレーニングを組み合わせます。
【おなか(腹横筋)のトレーニング方法)】
- 仰向けに寝転び、膝を立てます。足幅は腰幅に開きましょう。
- おへその下に手を当てます
- 息を吸うときに骨盤底筋を意識し、締めます。
- 骨盤底筋は締めたまま、息を吐きお腹をへこませます。
- 3秒間キープしましょう
- 力を緩め通常呼吸に戻します。
- 3-6の流れを10セット繰り返しましょう。
おしり(大殿筋)のトレーニング
【おしり(大殿筋)のトレーニング方法】
- 仰向けに寝転び、膝を立てます。足幅は腰幅に開きましょう。
- 息を吸うときに骨盤底筋を意識し、締めます。
- 息を吐きながらお尻を上に持ち上げます。
- そのままの体勢で10秒間キープします。呼吸は止めないようにしましょう。
- 吐く息でお尻を床に下ろします。
- 2~5を3セット繰り返しましょう。
※慣れてきたら4のキープ時間を長くとりましょう。
内もも(大内転筋)のトレーニング
【内もも(大内転筋)のトレーニング方法】
- 仰向けに寝転び、膝を立てます。
- 膝の間にボールをはさみます。バスタオルやヨガブロックでも可能です。
- 息を吸うときに骨盤底筋を意識し、締めます。
- 息を吐きながら、膝を閉じ、ももの内側に力を入れます。
- そのまま10秒間キープしましょう。息は止めないようにします。
- 3~5を3セット繰り返しましょう。
※慣れてきたら5のキープ時間を長くとりましょう。
おわりに
いかがでしたでしょうか。骨盤底筋のトレーニングは地味なものが多いですが、毎日続けることで下腹ポッコリの解消になります。本当に動かせているかわかりづらい筋肉ではありますが、とにかくやってみることが大事です。日々の仕事や家事の合間にぜひやってみてください。