今回は、「駐車場経営」という土地活用の方法について紹介します。経営と聞くと難しいイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、駐車場経営は気軽に始められる事業です。駐車場経営の仕組みやメリット、経営するうえで注意すべき点、失敗しないコツなどを解説します。土地の活用にお困りの方はもちろん、現在駐車場を経営しているけれど、利益が上がらないという方はぜひご覧ください。
駐車場経営とはどんなことをするの?
まずは、駐車場経営の仕組みや2つの駐車場の種類について紹介します。
駐車場経営とは?
駐車場経営とは、空き地に駐車場を設営し、駐車料金で収入を得ることのできる土地活用です。初期費用2,000,000~5,000,000円と低コストで始められるため、人気のある不動産投資でもあります。駐車場に適しているかどうかは土地の大きさや立地環境によって異なりますが、コストや時間をかけずに利益を得たい方にはおすすめの土地活用です。
経営の方式は、「個人経営方式」「管理委託方式」「一括借り上げ方式」の3つに分けられます。「個人経営」は自分で駐車場の管理を行う経営方式です。「管理委託方式」は、駐車場完成まではオーナーが管理し、利用開始後の業務の管理は企業に委託を依頼します。
徴収した駐車利用料金の一部が、管理料として委託した企業に支払われるシステムです。「一括借り上げ方式」は、サブリースとも呼ばれます。駐車場事業を行っている企業に土地を貸し、駐車場経営をしてもらう経営方式です。
駐車場経営は2種類
駐車場経営には、「月極駐車場」と「コインパーキング」といった2種類の経営方法があり、立地によって適した方法を選ぶことで儲けにつながります。それぞれどのような特徴があるのか、メリットやデメリットを解説しましょう。
月極駐車場
月極駐車場とは、1ヵ月単位で賃貸契約を行う駐車場のことです。住宅の多い地区や飲食店などの近くで需要が多く、収容台数によって収入の上限が決定します。契約者がいれば確実に収入を得られるのが月極駐車場のメリットです。
しかし、空きが出た場合その分収入が減ってしまうことや、エリアごとの相場が明確なため相場以上の利用金額では契約がなかなか集まらない点がデメリットとしてあげられます。月極駐車場の経営で収入が上がらない場合は、契約者の募集方法や利用金額の設定など、工夫が必要です。
コインパーキング
コインパーキングは、利用した時間×設定金額を徴収する駐車場のことで、不特定多数の方が対象となります。大型の商業施設や観光地、駅前、ビジネス街などの近くで需要が多く、都心では住宅街で見かけることも増えてきました。
経営上のメリットでは、月極駐車場と同じくエリアごとに相場はありますが、夜間料金などの料金設定で近隣のコインパーキングと区別をつけられる点があげられます。
デメリットは、人の移動が多いエリアのため、継続的な市場調査を行う必要があるという点です。利用者が多い時間や平均的な駐車時間から需要に合った料金に設定することで、月極駐車場より利益を得られるでしょう。
サラリーマンでもできる?駐車場経営のメリットとは
続いては、駐車場経営で得られるメリットについて4つ紹介します。
誰でも始められ初期費用が少なくて済む
駐車場経営の大きなメリットは、少ない資金で始められることです。駐車場経営は、賃貸住宅物件経営のように建物を建てる必要がないので、初期費用が少なくて済みます。仮に経営が上手くいかなくても、ダメージが小さく抑えられるため、低リスクという点もメリットです。
初期費用の金額は、駐車場の規模や形態によって異なります。低コスト・低リスクといえども、規模の大きい駐車場を作るとなれば、ある程度の費用はかかるでしょう。資金にお困りの際はセゾンファンデックスの事業者向け不動産担保ローンをぜひご活用ください。
2台分ほどの狭小地でも始められる
建物を建てることが難しく、賃貸住宅の経営には不向きな土地の活用法にお困りの方もいるのではないでしょうか。活用に困っている狭小地でも、駐車場経営に利用できます。最低でも車1台分のスペースがあれば、駐車場として利用が可能です。駐車場の利用率が高い立地であれば、2、3台ほどの駐車場でも利益が見込めるでしょう。約10~15坪の土地で2、3台駐車できます。
事業転換しやすい
他の事業への切り替えがしやすいという点も、駐車場経営のメリットです。舗装工事を行わず、ロープなどでの簡易的な駐車場の造りでも駐車場の経営はできます。他の事業を行うために土地を更地にする作業も、短期間で完了することができるのです。
災害が起きてもリスクが少ない
建物がないため、災害が発生した際、倒壊や火災の起こる可能性がほとんどありません。仮に駐車場に被害が及ぶほどの大きな災害が起こることがあれば、賃貸住宅物件はさらに大きな被害を受けるでしょう。しかし、駐車場はアスファルトやコンクリートの舗装を行うだけですぐに経営を再開できます。駐車場経営は、他の土地活用に比べて災害のリスクに強く、被害が少ない土地活用なのです。
アパート経営などと比べると比較的早く事業を始められる
駐車場経営は、比較的短期間で事業を開始することができます。賃貸住宅物件経営は、建物の構造や間取りなどを計画する時間が必要です。その後建設の専門会社を決めてから建設に取り掛かるまでに、約1年かかる可能性があります。対して駐車場経営は、経営を委託する場合は専門会社を決め、必要な設備の設置をすれば半月ほどで事業を始めることができるのです。
駐車場経営で注意すべきこととは?
効率良く、有効的に駐車場経営をするためには注意するポイントがいくつかあります。駐車場経営で注意すべき点を4つ紹介します。
周辺環境によっては駐車場経営に向かない場合も
土地によって、駐車場経営に向かない場所もあります。例えば公共の交通機関が発達していることで、駐車場の需要がない地域や、すでに駐車場が十分にある地域での経営は難しいでしょう。また、需要がある地域でも競合駐車場の料金設定によっては経営悪化につながる可能性もあるため、周辺環境は、十分にリサーチしておきましょう。
税金の優遇策がない
賃貸住宅物件への投資は、建物があることで都市計画税や固定資産税の減税策がありますが、建物のない駐車場には税金の優遇策がありません。建物は老朽化するため、減価償却で老朽化に応じた金額を経費で計上することができます。土地は老朽化することがないので、減価償却の対象にならないのです。
固定資産税なども更地と同様の評価となり、満額が課税されます。税金分は経費として計上され、所得税の負担は減りますが、その分利益も出にくくなるのです。駐車場経営は、税金の負担が大きいという点に注意しましょう。
リスクが低い分リターンも少ない
高リスクな分、ハイリターンである賃貸住宅物件と比べると、駐車場経営は低リスクである分、低リターンともいわれています。低コストで始められるため、何かトラブルが起きた場合も低リスクであることがメリットですが、その分高い利益を得るのは難しいのです。
気軽に始められる駐車場経営は競合が多く、個人経営以外にも市などの自治体が運営する駐車場もあるため、価格競争が起こりやすい事業でもあります。価格競争での利用料金の引き下げから、利益率が下がってしまう事例もみられます。駐車場経営をする際は、できるだけ競合のいない地域を選びましょう。
空きがあると儲からない!違法駐車のトラブルも
月極駐車場、コインパーキングともに無人経営であるため、違法駐車や不正利用が起きやすいです。駐車場内のトラブルは、経営者にとってはもちろん、他の利用者にとっても迷惑のかかる可能性があり、クレームの原因となることもあります。駐車場の種類によって、考えられるトラブルもさまざまです。
月極駐車場では、契約者以外の方が勝手に駐車したり、車以外の私物を置いたりするトラブルが考えられます。コインパーキングでは、長期間駐車しそのまま車を放置する、駐車スペース以外の場所に駐車するといった悪質な行為が起こりやすいです。
特に、駐車したまま車を放置する行為には注意しましょう。放置期間中の利用料金が支払われないだけでなく、車の撤去費用も経営者が負担する羽目になってしまいます。コインパーキングだけではなく、月極駐車場にも発生する可能性があるトラブルです。トラブルを未然に防げるよう、事前に対策しておきましょう。
駐車場経営で失敗しないコツ
続いては、駐車場経営で確実に利益を得るために、失敗しないコツを4つ紹介します。
立地を見誤らない
駐車場経営はローリターンなので、立地条件が悪いとさらに利益が下がってしまう可能性があります。経営を開始する前に、土地の周囲環境をチェックしましょう。ポイントとしては、
- 駐車場のニーズがあるか
- 競合の駐車場が近くにあるか
- 駐車場前の道路幅は十分な広さがあるか
といった点に注目してリサーチを進めます。土地を活用し駐車場を経営してみたものの、利益がなかなか増えない…ということがないよう、事業を始める際は事前に土地の周辺環境をリサーチしておきましょう。
収益予想は低めに想定
経営は、すべてが計画どおりに進むとは限りません。運用コストや予期せぬトラブルによって収支は思いがけず変わることがあります。変動を見越し、低めの数値で算出した余裕のある計画を立てましょう。月極駐車場の場合は60~70%の契約率、コインパーキングの場合は30~40%の稼働率が目安です。
周辺相場のチェックを怠らない
事前の周囲環境のリサーチに加え、周辺の相場のリサーチも大切です。利用料金の設定は利益に関わるため、他の駐車場へ利用者が流れてしまわないよう、相場のリサーチは経営開始後も引き続き継続して行いましょう。
月極駐車場は、契約当初の料金に同意したうえで契約するため、契約後の料金の変更は難しいものです。契約を集めるために、近くの競合同志で価格競争になるケースが少なくありません。頻繁な増減は、利用者に不信感を抱かせてしまう可能性もあるため、料金の変更は競合の様子をこまめにチェックし、状況を見極めつつ行いましょう。
コインパーキングは、時間単位や夜間料金などの条件を利用し、料金設定を工夫することで、競合よりも安い料金だと認識され、利用につながります。周辺の相場以外に、近くにどんなお店があるのか、利用者の意図などを想定した料金設定を意識すれば稼働率も上がるでしょう。
駐車場の清掃や点検はこまめに行う
管理の行き届いている駐車場という印象づけは、利用者を増やすことにもつながります。定期的な草取りやゴミ拾いを行い常に清潔な場内を保つよう心掛けましょう。コインパーキングでは、精算機のつり銭や領収書で使う用紙の補充、機器設備が故障していないかなどのチェックも大切です。利用者が気持ち良く利用できる工夫をすることで、利益アップにつながるのです。
駐車場経営ではどんな税金がかかる?
税金の優遇策がない駐車場経営ではどのような税金が発生するのでしょうか。駐車場経営でかかる主な税金について紹介します。
固定資産税・都市計画税
駐車場経営で特に大きな負担となるのが固定資産税です。毎年1月1日の時点で所有している固定資産(土地や建物)の所有者に対して課される税金のことを言います。固定資産税は「課税標準額×1.4%」で求められ、1.4%は規定の税率です。
また、固定資産税と同じく毎年1月1日時点で所有している固定資産を対象に、その固定資産が都市計画に指定されている区域内にある場合は都市計画税も発生します。税率は最高0.3%で、計算式は「課税標準額×0.3%」です。固定資産税と一緒に納税します。
固定資産税と都市計画税、どちらも課税標準額は固定資産税評価額の約70%です。
消費税
消費税の税率は10%で、計算式は「課税取引額×10%」、利用者が負担し、事業者が納税します。また、消費税はかかる場合とかからない場合があります。駐車場の地面の舗装や必要機器の設置をした場合は消費税の課税対象です。土地の貸付のみであれば、消費税は非課税となります。また、課税売上額が1,000万円以下であれば課税対象であっても消費税の納税義務はありません。
所得税
所得税は、所得(1月1日からの1年間で発生した収入から経費を引いた額)から、所得控除をした残額(課税所得)に税率をかけて算出します。税率は課税所得の額で異なり、駐車場の種類や経営方式によって不動産所得や事業所得など所得税の扱いも変わるので、確認が必要です。
事業税
事業税は、事業を行っている個人や法人団体が課税対象の都道府県税です。駐車場経営では、建物式の駐車場や機器設備のある駐車場、または前述以外で10台以上の駐車スペースがある駐車場が課税の対象となります。計算式は「(総収入額‐経費-控除額)×税率5%または5.5%」で、税率5%は標準税率、5.5%は制限税率です。事業税が発生する事業主には、都道府県から納税通知書が送られます。
おわりに
駐車場経営は、初期費用が安く済むため土地活用初心者の方でも気軽に始められる事業ですが、知識のないまま始めても効率的に利益を得ることができません。まずは、駐車場に適した土地を選定し周囲環境や相場の調査をしっかり行いましょう。メリットを最大限に生かし、注意すべき点に配慮しながら取り組むことで確実な利益を得られます。土地活用をお考えの方はぜひ駐車場経営を候補に入れてくださいね。