開業資金を調達する方法は公的融資や民間融資、補助金制度などさまざまあります。実際に活用していきたい方法を8つご紹介します。ぜひ参考にしてください。また、開業のために準備する資金の内訳についても解説します。
開業資金を調達する8つの方法
開業資金を調達する方法として、次の8つが挙げられます。それぞれの方法について、申し込みの方法やメリット、注意点などをご紹介します。
- 日本政策金融公庫「新創業融資」
- 補助金制度・助成金制度
- ビジネスローン
- 不動産担保ローン
- 制度融資
- ベンチャーキャピタル
- クラウドファンディング
- 銀行・信用金庫
日本政策金融公庫「新創業融資」※令和6年3月31日をもってお取扱いを終了しました。
国の政策に基づいて主に中小企業や個人事業主に融資を行う日本政策金融公庫では、開業資金の貸付も行っています。その中のひとつ、「新創業融資」は、これから事業を始めるとき、あるいは事業を始めてから2期の税務申告を終えていないときに利用できる融資制度です。
新創業融資に申し込むためには、開業に必要な資金の10分の1以上を自己資金として準備していることが求められます。ただし、今まで従事してきた業種で開業する場合や、認定特定創業支援等事業を受けて事業を開始する場合であれば、開業資金の10分の1以上を準備していなくても利用可能です。
新創業融資により調達できる金額は上限3,000万円です。このうち、運転資金としては上限1,500万円まで借りられます。原則、無担保かつ無保証人で利用できるのも、新創業融資の特徴です。
令和6年4月1日からは、新創業融資制度の適用なく、無担保・無保証人で各種融資制度をご検討ください。
補助金制度・助成金制度
国や各自治体などでは、開業時に利用できる補助金制度や助成金制度を実施している場合があります。各制度は申し込める期間が限定されているので、開業前に調べて申し込むようにしましょう。
補助金制度や助成金制度のメリットとして、いずれも給付という形であるため返済しなくても良いという点が挙げられます。しかし給付額は限られているため、開業資金全額をまかなえないこともあるでしょう。不足する分に関しては、自己資金や他の方法を検討する必要があります。
なお、補助金制度とは、一定の予算の中から応募者に対して補助金が支給される制度です。そのため審査があり、応募したとしても必ずしも支給されるわけではありません。
一方、助成金制度とは特定の条件を満たせば一定の金額が支給される制度です。元々定めていた予算に到達したら申し込みが打ち切られることもあるため、早めに申し込むようにしましょう。ただし、制度によっては補助金と助成金の意味が異なる可能性もあるため注意が必要です。
ビジネスローン
ビジネスローンとは、金融機関による事業資金の貸付制度のことです。主にクレジットカード会社や消費者金融などのノンバンクによる貸付を指します。審査が速い傾向にあるため、急いでいるときなどにも利用しやすいローンです。ただし、日本政策金融公庫や銀行の融資制度と比べると金利が高めの傾向があるため、無理のない返済計画を立ててから申し込むようにしましょう。
不動産担保ローン
金融機関から融資を受ける場合、金利が高めになる傾向にありますが、不動産を担保にする不動産担保ローンを利用すれば低金利で借りられることもあります。また、不動産の価値によっては高額融資も可能なため、開業資金の不足額が大きいときにも検討できるでしょう。
セゾンファンデックスが提供する不動産担保ローンは、100万円から最大5億円の融資に対応しています。また、仮審査の結果は最短即日でわかるので、早く借りられるかどうか知ることができる点も特徴です。詳しくは以下をご覧ください。
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個人事業主の方、事業者の方は、こちらの事業者向け不動産担保ローンがおすすめです。
制度融資
制度融資とは、自治体を通して申し込む融資の一形態です。信用保証協会に融資額の1%程度の保証料を支払うことで保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受けます。保証料の分、金融機関から直接融資を受けるよりは費用が高くなることがありますが、自治体によっては保証料を一部負担してくれることもあるため確認しておきましょう。
また、原則無担保で融資を受けられる点はメリットといえます。例えば、東京都中小企業制度融資では、保証付融資額の合計が8,000万円以下の場合は、原則として無担保です。なお、申し込みの窓口は各地域の信用保証協会や市区町村の中小企業金融担当などです。不明な点があればお住まいの地域の市区町村役場に問い合わせましょう。
ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタルとは、成長が見込まれる企業に対して出資を行う投資家、あるいは投資企業のことです。出資だけでなく経営アドバイスを受けたり、取引先やビジネスパートナーを紹介してもらえたりするなどのメリットもあります。
ただし、株式との引き換えに出資を行うため、今後も経営を左右される点に注意が必要です。また、ある程度事業が軌道に乗り、将来性が見えた状態で出資を受けることが多いため、開業してすぐの資金調達は難しい可能性があります。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて個人投資家などに出資を募る方法のことです。融資ではなく出資という形で受け取ることが一般的なため、返済の義務がない点が特徴といえるでしょう。ただし、クラウドファンディングを利用して資金を調達する個人事業主や中小企業は少なくないため、事業に特徴がないと個人投資家の心に響かず、出資も受けられない可能性があります。
銀行・信用金庫
銀行などの金融機関から資金調達する方法も検討できるでしょう。地域の銀行や信用金庫のなかには、創業支援に注力しているところも少なくありません。融資を受けられるだけでなく、取引先やビジネスパートナーの紹介も受けられることがあります。
【ケース別】開業資金を調達するコツ
事業の形態や業種によって、開業資金の調達方法が変わることもあります。特に次の4つの事業形態・業種に該当する場合はいくつか注意が必要です。それぞれ資金調達の際にどのようなコツが必要なのか、詳しく見ていきましょう。
- フランチャイズ
- 飲食店
- 個人事業主
- サウナ
フランチャイズ
どのフランチャイズの加盟店として開業するかによって、本部から受けられるサポートに大きな違いがあります。フランチャイズで開業するときは、事前に説明を詳しく聞き、納得できるサポートを受けられるのか確認しておきましょう。よくあるサポート形態としては、以下のものが挙げられます。
- フランチャイズ本部が開業資金を融資する
- 店舗関連費用はすべて本部が提供する
- 加盟金の分割払いに対応している
- 加盟店が金融機関から融資を受けるときに事業計画書の作成をサポートする
- 加盟店に金融機関を紹介する
- 物件選びのサポートに対応している
準備できる自己資金が少ないときは、店舗関連費用を本部側が提供してくれるフランチャイズ企業が良いかもしれません。開業時には加盟金や保証金、店舗を準備する資金、研修費用、広告費用など、総額3,000万円ほどかかるといわれています。どの程度の収益が見込めるのか慎重にシミュレーションしてから、開業するようにしましょう。
飲食店
飲食店は設備投資などが多く、借入額も多額になる傾向があります。そのため、民間の金融機関で資金調達するときは、保証人や担保を求められることが少なくありません。
保証人や担保を探すことが難しいときは、日本政策金融公庫の「中小企業経営力強化資金」を検討できます。中小企業経営力強化資金は無担保・無保証人も相談できる融資制度です。融資を受ける金額などにもよりますが、同じく日本政策金融公庫の新創業融資よりも低金利が適用される傾向にあるので、利息による負担も軽減できるでしょう。
中小企業経営力強化資金により調達可能な金額は上限7,200万円で、そのうち運転資金の上限額は4,800万円です。中小企業経営力強化資金の特徴として、認定経営革新等支援機関の専門家のサポートを受けられることも挙げられます。経営のサポートを受けつつ、資金調達したい方にも適した方法といえるでしょう。
個人事業主
個人事業主として開業するときは、同業種に勤務した経験の長さが審査で重視される点に注目しましょう。日本政策金融公庫だけでなく民間の金融機関でも、今までの経験が審査に影響を与えることがあるため、同業種での経験を詳しく事業計画書などにも含めるようにしましょう。
また、同業種での経験年数が長くない場合には、大学での専門分野が起業する分野と関連するときは経歴を紹介できるかもしれません。スキルや知識があることをアピールすることで、審査にプラスの影響を与えられるでしょう。そのほかにも、ビジネスモデルや収益性をわかりやすく解説し、安定した収益が得られることを説得力のある形で事業計画書に記載することも大切です。
サウナ
近年、テレビなどでも取り上げられることが多いサウナを開業するときは、立地選びが成功を左右する部分が多い業種です。競合店は増えますが、乗降客数が多い駅のそばなどは集客が見込めるため、経営が軌道に乗りやすいと考えられ、融資も受けやすくなることがあります。
また、事業計画書を作成する際に、競合他社の調査や分析も含めることで、より説得力のあるものに仕上げられるでしょう。従業員のサービスや営業時間、清潔さなどを細かく分析し、競合店が多くとも勝算があることを客観的に分析して事業計画書に記載しましょう。
開業資金調達のために押さえておきたいポイント
開業資金を調達するときには、次の3点に注意が必要です。
- 自己資金を用意する
- 運転資金も準備する
- 生活費についても考えておく
自己資金をある程度用意しておくことで、融資審査に通りやすくなるでしょう。例えば新創業融資では、今まで従事してきた業種でなくても開業資金として自己資金を10分の1以上用意していれば、審査通過しやすくなるかもしれません。ある程度自己資金があることで、融資などで調達する金額を減らせるため、返済による負担を軽減できるでしょう。
開業後すぐに収益が得られるとは限りません。そのため、少なくとも3ヵ月程度の運転資金は準備しておきましょう。軌道に乗るまでに時間がかかりそうなときは、余裕を持って6ヵ月程度の運転資金を用意しておきます。生活費についても準備が必要です。6ヵ月分ほど準備できれば安心できるかもしれません。そのほかにもローンの返済額なども考慮し、無理のない状態で経営できるように資金を準備しておきましょう。
開業資金として調達する金額は平均1,200万円
日本政策金融公庫の2020年度新規開業実態調査によれば、開業資金として調達する金額の平均値は1,194万円でした。このうち金融機関などからの融資は825万円(平均調達額の69.1%)と約7割を占め、自己資金は266万円(同22.2%)です。この結果からも、自己資金として2割程度は準備している方が多いことが分かるでしょう。
なお、開業資金として調達する金額は年々減少傾向にあります。500万円未満で開業する方は全体の43.7%です。自己資金が少ないときは開業資金を抑えられないか検討してみましょう。
開業資金の内訳は?
開業資金には、次の3つが含まれます。
- 設備資金
- 運転資金
- 予備資金
それぞれ具体的にどのような費用を指すのか、詳しく見ていきましょう。
リース代も含む設備資金
設備資金には次のものが含まれます。設備によってはリースができる場合もありますので併せて検討しましょう。
- 事業所や店舗の敷金、礼金、仲介手数料
- 調理器具など事業に必要な設備
- パソコン代、サーバー初期費用 など
数ヵ月分の運転資金
数ヵ月分の運転資金も必要です。運転資金には次のものなどが含まれます。最初は雇用する人数を減らして人件費を抑えるなどの工夫が必要になるかもしれません。
- 仕入代金
- 人件費
- 家賃・水道光熱費
- 電話回線やインターネット回線の月額料金、サーバー代
- 広告・宣伝費
予備資金
運転資金以外にも、以下の費用を予備資金として準備できます。子どもがいる場合には教育費、万が一のための医療費なども用意していると安心です。
- 運転資金が不足したときの資金
- 生活費
- ローン返済額
おわりに
資金調達する前に、自己資金でどの程度まかなえるか考えてみましょう。融資という形で資金調達すると返済義務が生まれます。毎月、返済額の負担が生じるので、できる限り融資額を減らすように計画を立てるようにしましょう。
また、資金調達自体も計画的に行うことが大切です。設備資金などの初期費用だけでなく、運転資金や生活費なども含めて準備し、軌道に乗るまでの準備をしてから開業するようにしましょう。