ガソリン代や食料品など、私たちの普段の生活に影響を与えている「為替」。しかし、「為替ってよく聞くけど実はよく分からない・・・」そんな方も多いのではないでしょうか?
今回のコラムでは、実は私たちの生活に身近な「為替」について、初心者の方にも分かりやすくお届けしていきます。投資を始める前にも必ず押さえておいて欲しい基本となりますので、ぜひ理解を深めておきましょう。
1. 為替ってなに?
「為替」と聞くと『1ドル=100円』というような為替相場を思い浮かべるかと思いますが。言葉の意味は「現金を使わずに支払うこと」を意味します。
為替の歴史は古く、日本では江戸時代に大きく発達したといわれています。
「天下の台所」と呼ばれた大阪から江戸に商品を取り寄せるとき、その代金を直接届けることには盗難などの危険が伴いました。そこで江戸の商人は両替商に代金を渡して【為替手形(支払いを依頼した証書)】を発行してもらい、その手形を受け取った大阪の商人が指定の両替商に持っていき、代金を受け取るということが行われていました。これが「為替」という仕組みです。
2. 為替の種類
本来、為替は内国為替と外国為替の2種類に分けられます。
2-1.内国為替
インターネットが発達した現在では、支払いや送金のための銀行振込や、公共料金等の銀行口座からの引き落としなどが簡単にできるようになりました。実は、この振込や口座振替も為替取引の一種なのです。国内で現金での送金を行わず、遠くにいる人とお金のやりとりをすることを『内国為替』といいます。
2-2.外国為替
一方、国境を越えて異なる通貨間で行われるものが『外国為替』です。商品の輸出入、外国証券や海外不動産への投資、企業の海外進出など。国際的な取引の多くは外国為替を利用して金銭の支払いが行われます。
「通貨の交換」を行うことが外国為替の最大の特徴となり、一般的に「為替」といった言葉は、この外国為替(※)を指します。この仕組みを取り入れた代表的な投資方法がFXです。
※外為(がいため)と呼ばれることもあります。
3. 実は身近な為替相場
ある国の通貨を別の国の通貨に変換するときの交換比率のことを「為替相場(為替レート)」といいます。例えば1ドル=100円の為替相場の場合、1ドルを100円で交換することができます。海外旅行に行ったことがある方はおなじみかもしれません。
為替は株式市場にも影響しますが、逆に株式市場の動きが為替に影響を与えることもあります。他にも金利の動向、経済の良し悪し、政治動向などさまざまな影響を受けています。
3-1.「円高」・「円安」について知ろう
私たちが為替市場の動向を実感するのは、ガソリン価格や小麦を代表とする食品などの輸入品の値段が上下する時ではないでしょうか?
この為替市場を把握するためには、円高なのか円安なのかについてしっかり理解しておくことが大切です。
【円高】とは「円の価値が高くなった状態」で、【円安】とは「円の価値が安くなった状態」です。
もともと1ドル=100円だった為替相場が1ドル=101円の方向に動くことを円安といい、1ドル=99円の方向に動くことを円高といいます。
日本人にとっては、外貨であるドルやユーロを基準にして表現するので混乱しやすいですが
1ドル=100円が1ドル=101円になると「円が安くなった」といいます。
3-2.変動する為替相場
為替相場は、市場の買い手と売り手の需要と供給のバランスで変動していきます。円を売りたいと思う人が増えれば円安になり、円を買いたいと思う人が増えれば円高になります。円と交換する通貨は天秤のような関係です。つまり、どちらかの通貨が高くなれば、もう一方の通貨は下がるということです。
<為替相場の表し方>
為替相場はこのように表します。
ドルの売り手が「売りたい」と思っている値段のことを【オファードレート】といいます。ここでは100.35円です。一方で、ドルの買い手が「買いたい」と思っている値段のことを【ビッドレート】といいます。ここでは100.30円を指します。例えば、ドルを買いたい人が増えるということは、ドルの価値が高くなっているということなので、『円安ドル高』となります。
このように為替相場は取引されるごとに変動していきます。しかし、実際の市場ではその他にもさまざまな要因が値動きに影響を与えています。
【金利差】
金利が高い国や地域では預金の金利や債券の金利などが高いため、金利が低い国の金融商品に投資するよりは金利が高い国に投資をする方が、利益が高くなります。そうすると、金利が高い国や地域の通貨が買われることで、金利の高い国の通貨の価値が上がり、金利が安い国や地域の通貨が売られることで、金利の低い国の通貨の価値が下がります。
【経済指標】
経済指標とは、各国政府や中央省庁、中央銀行などが定期的に公表している物価や失業率、GDPといった経済データのことです。中でもアメリカの経済指標は世界経済に与える影響が大きく、常に注目されています。アメリカの代表的な指標の「雇用統計」は、原則として毎月第1金曜日に発表されています。
【市場介入】
市場介入とは、国の金融システムの中枢である中央銀行や各国政府が、為替相場を安定させることを目的に、外国為替市場で自国の通貨を売買することを指します。自国の通貨が高くなり過ぎている場合は、自国通貨を売って外貨を買うことで自国通貨を安くしようとしたり、逆に自国通貨を買って外貨を売ることで自国通貨を高くしようとします。その結果、為替相場が大きく変動することがあります。
この他にも、天変地異、戦争、テロ、世界経済に対する影響力が大きい人物の発言によっても為替相場は大きく動くことがあります。
4. 為替チャートの見方
為替相場をチェックする際に、必ず見るものが「為替チャート」です。為替チャートとは、過去の為替相場の値動きを価格軸と時間軸でグラフ化した図表のことです。為替相場の動きを数字だけではなく、流れと合わせて読み取ることができるため、今後の予測にも活用できる点などのメリットがあります。
そんな為替相場を読み解くために基本となるのが「ローソク足」と「移動平均線」です。投資をしていく上では分析の際に必ずチェックするものになりますので、基本的なポイントだけでもまずは押さえておきましょう。
4-1.ローソク足
ローソク足とは名前の通り「ろうそく」に似た形であることからローソク足といわれています。ローソク足は相場の値動き(始値、終値、高値、安値)が一目で分かるように一定期間の情報を集約して表現した図表で、情報量が多く見やすいのが特徴です。
ローソク足は、江戸時代に「希代の相場師」ともいわれた本間宗久氏(1724-1803年)が考案しました。当時は米相場の予測に用いられていましたが、今では海外でも「キャンドルスティックチャート」として広く知れ渡っています。世界中の投資家からローソク足が使用されるということは、それだけ優れたツールということになります。
ローソク足は大きく分けて「陽線」と「陰線」の2パターンに分類されます。始値よりも終値が高い場合は「陽線」、始値よりも終値が低い場合は「陰線」と呼ばれ、色分けされて表示されるので視覚的に相場の動きを捉えることができます。実体から飛び出している線のことを「かげ」と呼び、一般的には『ヒゲ』と呼ばれます。
4-2.移動平均線
移動平均線とは、一定期間の終値の平均値を出して、それを折れ線グラフで表したものです。価格の傾向や流れなど、相場の方向性を見る手掛かりとなります。
おわりに
いかがでしたでしょうか?今回のコラムでは「為替」の仕組み、そして基本の知識をご紹介しました。
「将来に向けて、今のうちから外貨投資を始めましょう」と、ニュースや雑誌などあらゆる場面で見聞きすることが増えた方も多くいると思います。実際に、外貨商品を保有する人は年々増えてきています。
「日本で生活をしているのだから、円だけを持っていれば問題ない」
と考える人も少なくありませんが、ガソリン代高騰や値上げされる食品・飲料品が増えてきている今、さらに円の価値が大きく下がるような状況に備える『保険』として、外貨を保有するという考え方も必要になってきます。
まずは「為替」のことについて知ることが何よりも大事になってきますので、今回のコラムが少しでも「為替」について理解を深めるきっかけになれていれば幸いです。
ご自身の大事な資産を守るためにも、まずは知っていただき、小額からでもニーズにあった外貨投資を始めてみてはいかがでしょうか?