銀行にお金を預けるだけでお金が増え続けていた昔とは違い、現在では「貯蓄から投資へ」と日本政府が掲げているほど預金だけではお金は増えません。むしろ、日本円の預金だけをしているとお金が減っていってしまうということも・・・
それなら日本円以外の外貨を持とうと思っても、外貨を使った投資方法にはいくつかの種類があり、どれが自身に合うのか分からないという方も多いのではないでしょうか?そもそも、外貨を使った投資の必要性に気付いていない方も少なくないと思います。
今回のコラムでは、外貨を使った投資の必要性と外貨投資の代表的な2つの外貨預金・FXの違いについてお届けしていきます。
1. 日本円の資産だけでは危険!?外貨投資の必要性とは
最近、円安がさらに加速し1ドル135円台という24年ぶりの安値を更新したことはご存知でしょうか?
90年代初めにバブルが崩壊、金融機関などが相次いで破綻しデフレ経済へと転落した時以来の円安ドル高水準となりました。ガソリン代の高騰や輸入商品などの値上がりから物価が高くなっていることを日々の生活の中で実感することも増えたのではないかと思います。それでも収入は上がることはないですから、これからの生活に不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?
輸入大国の日本にとっては、円安が進むことで経済に大きな影響を与えるだけではなく、個人の資産にも関係してきます。そこで、外貨資産を持っておくことで、円の価値が下がったとしても外貨資産の価値が上がれば資産全体の減少の割合は抑えられます。
「投資は怖い」「投資をすることでさらに資産がなくなる」と投資に対して悪いイメージを抱く方も多くいると思いますが、実は日本円の預金だけをしている人も、知らず知らずのうちに“日本にだけ”投資をしていることになるのです。
「普段の生活では日本円以外を支払う機会がないから外貨を持つ必要はない」ということはなく、自身の資産全体を守るために、リスクヘッジとして外貨投資はこの先特に必要になってきます。プロの運用の世界では、かねてから国債分散投資が理想形だともいわれてきていますので、この機会に外貨投資を考えてみるといいかもしれません。
2. FXと外貨預金の違い
外貨運用には「FX」「外貨預金」「外国債券(外債)」「外貨MMF」などさまざまな運用方法がありますが、よく候補に挙がるのが『FX』と『外貨預金』です。
どちらも人気がありますが、まずは2つの特徴についてご紹介します。
※外貨投資にまつわる基本的な知識としては、「為替」についてきちんと理解をしておく必要があります。「為替」についてのポイントを分かりやすくまとめたコラムもありますのでぜひそちらも合わせてご覧になってみてください。
2-1. FXの特徴
FXとは「Foreign Exchange(外国為替証拠金取引)」の略語で、通貨の売買で収益を得る取引のことです。FXでは一定の証拠金を担保にして、その証拠金以上の取引金額で外国通貨の売買を行うことができます。例えば1万円の手持ち資金があった場合、本来では1万円分の取引しかできませんが、その1万円を証拠金として1倍〜最大25倍までの資金を借り入れて取引を行えるため、使い方次第では小額の資金で効率良く資産運用が可能となります。
2-2. 外貨預金の特徴
日本円を「外国の通貨」に換えて行う預金のことをいいます。定期で預ける「外貨定期預金」や出し入れが自由な「外貨普通預金」がありますが、中身は円の定期預金や普通預金と変わりません。
外貨預金は、運用後に円に戻す際に為替相場が預け入れた時よりも円安になっていればその分多くの日本円が戻り、預け入れた時よりも円高になっていればその分の日本円が減った金額が戻ります。利息も外貨で支払われ、外貨建てでの元本が保証されますが、円建ての金額は円に戻すときの為替相場によって変動します。外貨のまま保有することができるので、円安になるまで待つことで損失を回避することも可能です。また、外貨のまま引き出すこともできるため海外旅行などの際に利用することもできます。
2-3. FXと外貨預金の違い
FXと外貨預金の違いを8つ比較してみましょう。
■利益のチャンス
外貨預金は円を外貨に交換して行う方法なので、円を使って外貨を購入することしかできません。
預け入れした外貨が円安にならなければ為替差益を得ることはできないため、円安時を待って取引を行います。
一方、FXは円を売って外貨を買う取引もできれば、外貨を売って円を買う取引もできるため、相場が円安に動いても円高に動いても為替差益を得る機会があります。相場が動いている限り参入のチャンスがあるということです。
■取扱商品
外貨預金は円から外貨に交換するという特性上、保有通貨ペアとしては豪ドル円やユーロ円などの対円の通貨ペアしかありません。
一方、FXは外貨同士のペアの取引が可能となります。対円の通貨ペアに動きが少ない時には、ユーロドルなどの外貨同士のペアで利益獲得のチャンスがあります。
■手数料
手数料で比較をすると、FXの方が安いケースが多いです。
外貨預金では基本的に為替相場に手数料が含まれますが、日本円から外貨を買う時と外貨を円に戻す時に為替手数料がかかります。手数料は金融機関によって異なりますが、かつて1円程度だったものの、最近はネット銀行なども増えたことから25銭程度まで下がってきています。
一方、FXは外貨預金のように為替手数料はかかりません。しかし、買い相場と売り相場の差額(スプレッド)がかかりますが、ドル円であれば1銭以下の企業がほとんどです。
■レバレッジ
外貨預金とFXの大きな違いのひとつがこの「レバレッジ」というものです。レバレッジとは、『てこの原理』を指し、預けたお金(証拠金)の何倍もの取引が可能になる仕組みのことです。
外貨預金のレバレッジは1倍となり、預けたお金以上の取引をすることはできません。
一方、FXでは最大25倍ものレバレッジをかけて取引をすることが可能となります。少ない資金で大きな利益を狙うことができるのがFXの最大の魅力のひとつですが、使い方を間違えてしまうと証拠金以上の損失が出てしまう場合もあるため注意が必要です。
■利息
外貨預金は、預金期間に応じて満期時に利息を受け取ります。ゼロ同然の日本国内の定期預金と比べると高い金利が得られるのが魅力のひとつです。
FXでは外貨預金の利息に相当するのが日々発生する「スワップポイント」になります。スワップポイントとは、保有している通貨ペアの金利差がプラスの場合もらえる利益のことです。金利差が高い国の通貨を買った時に受け取れますが、反対に金利差がマイナスになる場合は支払わなければいけない場合もあります。
■取引可能時間
外貨預金は、原則銀行が営業している時間帯でしか取引はできません。「1ドル〇〇円になったら買いたい」などという希望する価格になった時に注文を出すような予約機能もないため、原則1日1回決まる「中値」のレートを使って取引をします。
ですが、最近はネットを経由して24時間に近い時間帯で取引できる場合も増えてきています。
一方、FXは祝日関係なく平日のほぼ24時間を使って売買を行うことが可能です。また、「〇〇円になったら買って、〇〇円上がったら売る」と決めて自動売買する仕組みや、予約機能ともいえる指値・逆指値注文など、自身の希望を反映した取引をすることもできます。
■税金
外貨預金の場合、為替差益は雑所得として総合課税の対象となり、他の所得と合わせて計算します。総合課税の税率は所得により違いますが、最大55.945%の税率がかかり確定申告の必要があります。
FXは為替差益、スワップ収益ともに申告分離課税となり、20.315%の税率がかかります。
■保全の仕組み
外貨預金は預金保護制度が適用されないため、銀行が経営破綻した場合に預けているお金は返還されません。
一方FXでは、万が一FX会社が倒産してもトレーダーの資産が全額返金となる「信託保全」と呼ばれる仕組みがあります。
3. FXと外貨預金のメリット・デメリット
今までの内容を踏まえて、それぞれのメリット・デメリットをまとめました。
外貨預金は、投資した資金よりも損をすることはなく、保有をし続けることができるのが魅力です。大きなリスクを取らずに長期間で外貨を保有したい人や、為替相場を常に注視できない方には向いているといえます。
FXは、少額から始めることができ大きな利益を狙えるところが最大の魅力になります。リスクをコントロールすることで安定した取引をすることも可能です。また、レバレッジを1倍にして取引をした場合には、外貨預金と同じ金額で投資することもできるため、FXの方が取引コストが安くなる点や、会社が倒産した時に資産が保証される点、相場の下落局面でも利益を狙えることから、同額で運用する場合でもメリットが大きくなります。
おわりに
いかがでしたでしょうか?今回のコラムを通して外貨預金とFXの違いについて理解を深めることができたら幸いです。メリット・デメリットを理解して、ぜひご自身にあった外貨投資を始めてみてはいかがでしょうか。