老後の生活資金を補う個人年金保険。公的年金だけでは不安という方なら必ずチェックしておきたい保険です。しかし、資産形成の選択肢は他にもあります。
このコラムでは、個人年金保険に加入するメリットやデメリットをご紹介しながら、どんな方に向いているのかを解説します。さらに、個人年金保険以外の資産形成方法もご紹介。
あなたに合った方法を見つけるために、ぜひチェックしておきましょう。
個人年金保険とは
まずは個人年金保険の概要について見ていきましょう。個人年金保険は、通常の年金制度とどのような違いがあるのでしょうか。
個人年金保険の概要
個人年金保険とは、国民年金のような公的年金をはじめ、企業年金などだけでは老後の生活費が足りないかもしれないと不安を持つ方に向けて作られた、老後資金を補うための保険商品です。
個人年金保険は、契約した一定の年齢まで保険料を積み立て、受け取り開始の年齢に達した後は積立金をもとに年金を受け取れるシステムです。公的年金とは違い保険会社が扱う商品なので、加入の義務はありません。
個人年金保険の種類
個人年金保険には年金受取期間により主に「終身年金」「確定年金」「有期年金」の3種類があり、契約者のご希望で選ぶことができます。これらの特徴について、それぞれ見ていきましょう。
・終身年金
生きている限り、ずっと受け取れる「終身年金」。受け取り期間中に被保険者が死亡すると受け取りは終了し、被保険者の相続人であっても引き続き年金を受け取ることはできません。
ただし、終身年金の中には「保証期間」があり、その期間内に被保険者が死亡した場合は相続人に年金を支払う場合もあります。このようなタイプの商品を「保証期間付終身年金」といいます。
・確定年金
決められた一定期間、年金を受け取れる「確定年金」。受け取り期間は、10年や15年などと契約で決められており、万が一受け取り期間中に被保険者が死亡した場合にも、相続人が残りの年金相当額を年金または一時金として受け取ることができます。
・有期年金
確定年金と同様に、10年や15年などと年金の受け取り期間が決められている「有期年金」。しかし、受け取り期間中に被保険者が万が一死亡した場合、そこで年金の受け取りは終了となります。
つまり、確定年金のように相続人が残額を受け取ることはできません。ただし、一部の契約によっては保証期間中に被保険者が死亡した場合、相続人が年金を受け取れるというものもあります。
公的年金との違い
公的年金の主となる「国民年金」は、20歳以上から60歳未満の全国民が加入を義務付けられています。また、「厚生年金」は企業などの事業所に雇用されている方が国民年金と併せて加入するものです。
年金制度について、よく「3階建て」といった表現をしますが、1階は全員が加入する「国民年金」、2階は「厚生年金」「共済年金」等、そして3階は個人や企業による「確定拠出年金」「個人年金保険」等の私的年金を指しています。
2階以上の部分に関しては国民年金の被保険者の区分によって個人差があります。概要の部分でも紹介しましたが、公的年金との大きな違いは加入の義務の有無でしょう。
個人年金保険には加入の義務はなく、あくまで将来の資金源の準備のために3階建ての年金制度に補完としてプラスで加入するものと理解しておきましょう。
個人年金保険のメリット・デメリット
老後の生活に不安を感じている方は少なくありません。その理由のほとんどが「公的年金だけでは資金が不十分」ということです。では、個人年金保険に加入するとその不安は払拭されるのでしょうか。ここでは、個人年金保険のメリットとデメリットについて、解説していきます。
個人年金保険のメリット
まずは個人年金保険のメリットについて見ていきましょう。
・老後資金が計画的に貯められる
老後に備えて、コツコツと貯蓄ができれば不安はもっと少ないかもしれません。しかし、現実は住宅ローンの支払いや子どもの教育費など、今必要なお金のことで精一杯になってしまい、貯蓄は後回しになりがちでなかなか老後のことまで余裕をもって考えられません。
個人年金保険に入ると、毎月保険料が口座から自動的に引き落とされるので、半強制的にお金を貯めていくことになります。そのため、貯蓄が苦手な方でも計画的に老後資金の積立が可能です。
・健康状態に不安がある場合でも加入可能
「保険」と名がつくと入院歴や手術歴などがネックになり、入りたい保険に加入できない場合も多いでしょう。しかし、個人年金保険の場合は、健康状態に不安がある方でも比較的加入しやすいという特徴があります。
個人年金保険では、保険料の払い込み期間中に万が一被保険者が死亡した場合、すでに払い込んだ保険料の相当額が死亡給付金として相続人に支払われることがあります。また、重度の障害に見舞われた場合でも保険料の払い込みは免除されません。
したがって、契約時に健康状態を告知したり、医師の診察を求めたりする必要はない場合が多いのです。
・控除が受けられる
個人年金保険は、生命保険の一つとして分類されているため「生命保険料控除」の対象になります。この生命保険料控除とは、年間に支払った保険料を申告することで一定の金額がその年の所得から差し引かれ、所得税や住民税の負担を減らせる制度です。
ちなみに、2012年(平成24年)以降のタイミングで個人年金保険に加入した場合、所得控除額は所得税からは最大40,000円、住民税からは最大28,000円が控除されます。
また、個人年金保険料控除は一般の生命保険料控除とは別枠にあります。つまり、一般の生命保険料控除が上限まで達していても、別枠で控除を受けられるのです。
このように、老後の資金を貯めながら税金の負担を軽減できるのはうれしいメリットです。
個人年金保険のデメリット
次に、個人年金保険に入るデメリットも確認しておきましょう。デメリットを見てメリットの方が上回るのか、判断の参考にしてください。
・インフレのリスクがある
インフレ(インフレーション/Inflation)とは、物価の上昇によってお金の価値が下がることです。個人年金保険は契約のタイミングで利率が確定するので、受け取れる金額が確実に分かるのがメリットともいえます。
ただし、受け取る金額が確定しているということは、インフレが起こり物価上昇の影響を受けた際には、資産価値が下がっていくというデメリットにもなりえます。
例えば「契約時には1,000円あれば5個のリンゴが買えていたのに、年金受け取り時インフレになっていてリンゴが3個しか買えなかった」としましょう。これは、同じ1,000円の資産価値が下がったことを意味します。
このように、同じ金額でもインフレによってお金の価値が目減りしてしまうというリスクがあるのです。
・元本割れすることがある
個人年金保険は途中で解約することもできます。その場合、これまで払い込んできた保険料が「解約返戻金」として返ってきますが、この返戻金が払込保険料に対して少ない場合があります。こういった元本割れのリスクがあるのはデメリットといえるでしょう。
商品によっては、数年で解約すると50%にも満たないこともあるので、契約前に元本割れのリスクについて確認しておくことをおすすめします。
・保険会社倒産のリスクがある
不測の事態はいつ起こるか分からないもので、保険会社が倒産する可能性もあるでしょう。ただ万が一、契約している保険会社が破綻してしまったとしても、すぐに契約がなくなったり払い込んでいるお金が返ってこなかったりするわけではありません。
ところが、倒産したことにより、利率が下がったり早期解約を迫られたりするといった可能性はあります。念のため、保険会社の資本金や経営状況などもチェックしておくと良いでしょう。
・簡単に引き出せない
お金の流動性が悪くなることもデメリットでしょう。個人年金保険は長期スパンでの運用が基本。そのため、資金が足りなくなったとしても簡単に引き出すことはできません。
また、早いタイミングで引き出すことで元本割れしてしまうリスクもあります。預金であれば、急な出費があってもすぐに引き出せますが、個人年金保険の場合は解約の手続きなどが必要なので数日かかることがあります。
そのため個人年金保険に加入したい場合は、ある程度余裕を持って預金しておくことも大切でしょう。
個人年金保険はどんな方におすすめ?
では、ずばり個人年金保険はどんな方におすすめなのでしょうか。加入をおすすめしない方も併せて解説するのでチェックしてみてください。
個人年金保険がおすすめの方
まずは、個人年金保険の加入にメリットを感じられる方の特徴を二つご紹介します。
・投資に興味がない方
最近は若年層からシニア世代までポピュラーになりつつある投資ですが、「投資に興味がない」「チャレンジするつもりもない」という方には個人年金保険がおすすめです。
そもそも株式投資や不動産投資の方が個人年金保険に比べてリスクは高いので、言わずもがなある程度の知識が必要になります。
一方、個人年金保険の場合は契約内容を決めてしまえば、あとは保険料を支払っていくのみで、自動的に運用できます。投資に興味がない方は潔く個人年金保険を選ぶことが賢い選択かもしれません。
・貯蓄が苦手な方
コツコツと貯蓄をしていくのが苦手な方にも個人年金保険はおすすめです。特に何もしなくても保険料は毎月自動的に引き落とされるため、貯蓄が苦手な方や長く続かない方でも、気が付いたらお金が貯まっています。
また、解約手続きをしない限り、積み立てたお金を引き出すことはできません。途中解約をしてしまえば元本割れのリスクがあるため、よほどのことがない限りは解約する必要もないでしょう。
個人年金保険に加入をおすすめしない方
次に、個人年金保険が向かない方を解説します。
・長期積立が不要な方
個人年金保険は、返戻率100%を超えるには30年程度かかるといわれています。そのため、短期間で年金を受け取りたいという方には向いていません。また、資産が充分ある方は老後の生活資金を賄えるため、加入する必要がないでしょう。
老後、夫婦2人で生活をするには月に約22万円必要といわれています。ただし、これは最低限必要な生活費であり、ゆとりのある生活を送るには約36万円あると良いようです。
公的年金と持っている資産だけで生活費が確保できるという方は、個人年金保険の必要性を感じられないかもしれません。
・効率良く資産形成できる方
投資の知識や経験のある方は、もっと効率良く資産形成する方法を見つけることができます。個人年金保険は流動性が悪く、インフレリスクもあるため、投資家たちにとってはあまり魅力的に映らないでしょう。
個人年金保険以外の資産形成方法
では、個人年金保険以外にどのような方法で老後資金を準備できるでしょうか。他の選択肢も確認しておきましょう。
NISA
NISAは、あらかじめ決められた範囲内の投資であれば、そこから出た配当金や譲渡益などの利益が非課税になり、原則全額手取りできるという制度です。
通常であれば株式投資の運用益には約20%の税金が発生するため、実際に受け取れるのは8割弱ですが、このような非課税制度をうまく利用すれば効率良く運用できます。
iDeCo
非課税制度といえば、NISAの他に「iDeCo(個人型確定拠出年金)」もあります。iDeCoは、毎月お金を積み立てながら投資信託によって老後資金を育てていくという仕組み。
原則60歳までお金を引き出すことはできませんが、iDeCoの最大のメリットは運用中に発生した利益が非課税になるだけでなく、掛け金の全額が所得控除の対象となることです。
債券投資
債券は、急激な価格変動が比較的少ないため、預金額よりもハイリターンが期待できる投資方法の一つです。一般的に、銀行の普通預金の年利が約0.001%、定期預金が約0.002%なのに対し、個人向け国債の最低年利は約0.05%と10倍以上の高金利になっています。
また、債券の最大のメリットは償還期限まで保有すれば、原則として「額面金額」が戻ってくることです。定期的に利子を受け取りながら、償還日に額面全額が返ってくるのは、安定感があり魅力的な投資方法といえるでしょう。
株式投資
長期投資に向いた債券投資に対し、株式投資は運用次第で短期間に高い利回りで資産を作ることができます。元本保証されないのがリスクですが、株を安く買って高く売れば、その差額分が利益として返ってくるのが魅力です。
さまざまな銘柄に分散投資すればリスクの軽減も可能なので、まさに運用次第で充分な老後資金を得ることができるでしょう。また、定期的に受け取れる「配当金」や「株主優待」も株式投資ならではのうれしいポイントです。
資産形成におすすめの証券会社をチェック!
資産形成するうえで大切なポイントとなるのが証券会社選びです。人気の証券会社を選ぶのも良いですが、ご自身の投資スタイルに合ったところを選ぶのもポイントとなります。ここではおすすめの証券会社を二つ厳選してご紹介します。
セゾンポケット
投資が初めての方にピッタリな「セゾンポケット」。圧倒的な使いやすさや手軽さが魅力で、毎月1,000円からの投資金で始められます。厳選された二つの投資信託から選ぶだけで、あとは投資のプロにおまかせ。二つの投資信託はどちらも低い手数料でローリスクなので、初心者でも気軽に投資へチャレンジできるでしょう。
セゾンカードを使って投資するセゾンポケットでは、投資した分だけポイントが貯まります。さらに投資をして貯まったポイントをそのまま投資に回すことも可能です。
大和コネクト証券
大和証券グループが作ったスマホ専業証券「大和コネクト証券」。口座開設も取引も窓口へ行かずスマホのみでOK。1株から投資できる「ひな株」や、100円から積み立てられる「まいにち投信」といった少額で気軽に始められるサービスが豊富なところも魅力です。
大手証券会社グループの証券会社でありながらも手数料は最低水準、さらに手数料が無料になるクーポン(※)を毎月10枚プレゼントされるので、うまく利用すれば売買手数料が0円で株のトレードが可能です。使わなかったクーポンは翌月まで繰り越せるので、サービスを無駄なく利用できるでしょう。
(※)対象は、単元株取引のみです。ひな株は対象外となります。
おわりに
個人年金保険の必要性について解説しました。個人年金保険は、老後に不足するかもしれない生活資金を補う方法として有効な金融商品です。しかし、人によっては不向きな場合もあるため、あらゆる資産形成の方法を吟味してご自身に合ったものを選ぶと良いでしょう。
投資にチャレンジするなら、NISAやiDeCoのような非課税制度を利用しながら投資信託から始めてみるのがおすすめです。証券会社によってさまざまな特徴やサービスがありますので、ぜひチェックしてみてください。