中小企業の退職金は、どれくらいもらえるのかご存じでしょうか。退職金は老後の生活の支えともなるため、多いに越したことはありませんが、中小企業の退職金は「少ない」といわれることも。
今回のコラムでは、中小企業の退職金の相場や、退職金制度の基本的な知識をまとめました。おすすめの運用方法も紹介していますので、退職金がどのくらいかを知って将来に備えたい方、うまく運用してゆとりある老後を送りたい方は必見です。
退職金制度は企業によって異なる
企業の規模に関わらず、退職金制度の内容は企業によって異なります。そのため、ご自身の退職金について詳しく知るには、勤務先の制度を確認しなければなりません。
まずは基本的な退職金制度の知識を頭に入れておきましょう。そのうえで、ご自身の勤務先の退職金制度を調べる方法をお伝えします。
退職金制度についておさらい
退職金制度とは、退職金の支給に関する制度です。そもそも退職金は、法律で支給が義務づけられているわけではありません。「企業に勤めていれば誰でも退職金をもらえるのでは?」とイメージしがちですが、退職金制度自体がない企業もあります。
退職金制度はそれぞれの企業独自の制度であり、金額の算出方法や支払い方法などが決められています。つまり、企業によって退職金の有無、もらえる金額、受け取り方などに違いがあるのです。
退職金制度【4種類】
ひとことで「退職金制度」といっても、主に4種類の制度があります。
【退職金制度の種類】
- 退職一時金制度
- 確定給付企業年金制度
- 企業型確定拠出年金制度
- 退職金共済制度
必ずしもいずれかひとつの制度を採用しているとは限りません。企業によっては、退職一時金と企業年金制度を組み合わせている場合もあるので、それぞれの制度について把握しておきましょう。
退職一時金制度
退職一時金制度は、退職するときに一括で退職金が支給される制度です。前述のとおり、退職金額の計算方法は企業によって異なります。具体的な計算方法については後述しますので、参考にしてみてください。
一時金として退職金を受け取る場合、所得税と住民税がかかります。ただ、退職金は長年の勤労に対する報酬であるため「退職所得控除」が設けられており、税負担が軽減されているのが特徴です。
退職一時金の支給時期は企業によって異なりますが、退職した月から2ヵ月以内に支払われるケースが多いでしょう。
確定給付企業年金制度
確定給付企業年金制度は、企業が運用した資金が退職金としてあらかじめ約束された給付額で支給される制度です。基本的に企業が掛金を拠出し、信託銀行や生命保険会社などで運用します。ただし、合意があれば従業員が掛金の一部を負担するケースもあるので、頭に入れておきましょう。
運用された資金は一時金での受け取りも可能ですが、60歳以降に年金として受給することも可能です。年金で受け取った場合、その収入は「雑所得」となり、毎年所得税と住民税の課税対象になりますが、公的年金等控除(年齢と年金額に応じた金額が所得から控除)が適用されます。
また、一時金で受け取る場合には、前述の退職一時金制度と同様に所得税と住民税がかかりますが、退職所得控除が適用されます。
定年を迎える前に退職する際は、そのタイミングで脱退一時金を受け取ることが可能です。企業ごとにルールが異なるので、詳しくはご自身の勤務先の規約をご確認ください。
企業型確定拠出年金制度
企業型確定拠出年金制度は、企業が掛金を拠出し、従業員が自ら運用する制度です。どんな金融商品で運用するのか、資産配分はどうするのかなど、ご自身で決定し運用していきます。企業が拠出した掛金に、従業員が任意で上乗せすることも可能です。そのため、受け取れる金額は運用実績や掛金の額などによって変動します。
企業型確定拠出年金は、原則60歳以降でないと受け取れません。定年前に退職する場合は、転職先の企業型確定拠出年金へ、もしくはiDeCo(個人型確定拠出年金)に移行する手続きが必要となります。退職してから6ヵ月以内に移行の手続きを済ませないと、国民年金基金に資金が移換されてしまうので注意しましょう。
積み立ててきた資金は、60歳以降に一時金または年金で受け取れますが、いずれの形式でも税制優遇が受けられます。
一時金であれば退職所得控除、年金であれば公的年金等控除が受けられ、税負担軽減につながります。
退職金共済制度
退職金共済制度は、企業が共済に加入し、共済から退職金が支給される制度です。自社の力だけでは退職金制度の導入が難しい中小企業が加入しています。「中小企業退職金共済(中退共)」は中小企業向けの国の退職金制度です。
退職金額は共済への加入年数に応じて算出されます。
中退共では、通常、請求を受けてからおよそ4週間で退職金を支給していますが、掛金の納付方法によっては支給に2ヵ月以上要する場合もあるようです。
受け取り方は、主に一時金となりますが、「退職日に60歳以上」といった条件を満たせば、全額分割払いや一部分割払い(併用払い)が選択できます。
一時金で受け取った場合は退職所得控除、分割で受け取った場合は公的年金等控除が適用され、税制優遇が受けられます。
退職金共済には、他に建築業や林業など現場で働く労働者の雇用安定を目指したが対象となる「特定業種退職金共済制度」、市町村や商工会が保険会社などの外部組織に運用を委託している「特定退職金共済制度」などがあります。
勤務先の退職金制度を調べるには
勤務先の退職金制度について調べたいときは、就業規則や賃金規則をチェックしてみましょう。就業規則や賃金規則には、退職金の計算方法や支払日などが明記されているはずです。
また、企業型確定拠出年金制度などでご自身でも掛金を負担している場合、給与明細の「企業年金掛金」や「退職金掛金」といった項目で確認できます。
なお、退職金制度がない場合には、就業規則や賃金規則に退職金に関する内容が記載されていません。
就業規則や賃金規則の閲覧の仕方がわからない場合、総務や人事労務担当者に問い合わせてみてください。
どのくらいもらえる?中小企業の退職金相場をチェック
ここまでで退職金制度について説明してきましたが、退職金の相場が気になる方も多いのではないでしょうか。
次に、中小企業の退職金の相場をチェックし、大企業と比較してみましょう。
中小企業の退職金相場
東京都産業労働局が2022年に発表した「モデル退職金」をもとに、中小企業の退職金の相場を紹介していきます。
東京都内の中小企業(従業員数10~299人の企業)を対象に、賃金や退職金制度などを調査。その中で、「学校卒業後すぐに入社」「一般的な能力と成績で勤務」した場合にどのくらい退職金が支給されるか」を示したものが「モデル退職金」です。
モデル退職金によると、中小企業の退職金の水準は表のとおりとなります。
学歴 | 勤続年数 | 自己都合退職支給金額(千円) | 会社都合退職支給金額(千円) |
---|---|---|---|
高校卒 | 10年 | 907 | 1,223 |
20年 | 2,729 | 3,284 | |
定年 | – | 9,940 | |
高専・短大卒 | 10年 | 987 | 1,269 |
20年 | 2,924 | 3,465 | |
定年 | – | 9,832 | |
大学卒 | 10年 | 1,121 | 1,498 |
20年 | 3,431 | 4,147 | |
定年 | – | 10,918 |
参照元:東京都産業労働局|中小企業の賃金事情 モデル退職金
大企業の退職金相場
つづいて、大企業の退職金相場を見てみましょう。
参考にするのは、厚生労働省が2023年に発表した「就労条件総合調査」。これは、民間企業の労働時間や賃金制度といった就労条件の現状を明確にすることを目的とした調査です。
この調査の中から、企業規模が1,000人以上の大企業の平均退職給付額を表にまとめました。
学歴 | 勤続年数 | 平均退職給付額(千円) |
---|---|---|
高校卒 (管理・事務・技術職) | 20~24年 | 6,890 |
35年以上 | 21,890 | |
大学・大学院卒 (管理・事務・技術職) | 20~24年 | 14,410 |
35年以上 | 22,420 |
参照元:e-Stat 政府統計の総合窓口|就労条件総合調査 令和5年_就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態
業種ごとの退職金相場
業種によっても退職金支給額は異なります。平均より退職金がもらえない可能性があるため、以下の表で確認しましょう。以下は東京都産業労働局が調査した産業別の退職金相場です。
業種 | 学歴 | 退職金支給額(千円) |
---|---|---|
建設業 | 高校卒 | 11,334 |
高専・短大卒 | 11,427 | |
大学卒 | 12,203 | |
製造業 | 高校卒 | 9,996 |
高専・短大卒 | 10,309 | |
大学卒 | 10,685 | |
情報通信業 | 高校卒 | 9,418 |
高専・短大卒 | 9,161 | |
大学卒 | 11,929 | |
運輸業、郵便業 | 高校卒 | 11,428 |
高専・短大卒 | 10,651 | |
大学卒 | 13,323 | |
卸売業、小売業 | 高校卒 | 10,361 |
高専・短大卒 | 10,103 | |
大学卒 | 11,329 | |
金融業、保険業 | 高校卒 | 10,736 |
高専・短大卒 | 9,064 | |
大学卒 | 14,422 | |
不動産業、物品賃貸業 | 高校卒 | 5,136 |
高専・短大卒 | 7,394 | |
大学卒 | 10,128 | |
学術研究、専門・技術サービス業 | 高校卒 | 10,261 |
高専・短大卒 | 11,246 | |
大学卒 | 9,648 | |
宿泊業、飲食サービス業 | 高校卒 | x |
高専・短大卒 | x | |
大学卒 | x | |
生活関連サービス業、娯楽業 | 高校卒 | 7,169 |
高専・短大卒 | 6,926 | |
大学卒 | 8,469 | |
教育、学習支援業(学校教育を除く) | 高校卒 | x |
高専・短大卒 | x | |
大学卒 | 12,449 | |
医療、福祉 | 高校卒 | 3,323 |
高専・短大卒 | 3,121 | |
大学卒 | 3,424 | |
サービス業(他に分類されないもの) | 高校卒 | 9,958 |
高専・短大卒 | 8,153 | |
大学卒 | 9,044 |
※退職金支給額がxとなっている箇所は、集計数が4件以下のデータとなっている。
参照元:東京都産業労働局|①モデル退職金(調査産業計)第8表
全業種の退職金支給額の相場は、大学卒10,918千円、高専・短大卒9,832千円、高校卒9,940千円です。上記の表からは、業種により差があることがわかります。学歴や会社の規模だけでなく、業種ごとの平均額も参考にして退職金を予想することが重要です。
退職金相場が少ない業種では、将来に備えた資産の準備がより一層必要となります。
中小企業の退職金は大企業より少ない
中小企業と大企業の退職金の相場を見比べると、中小企業の方が少ないことがわかります。
例えば、大学を卒業して中小企業で定年まで働いた場合の退職金相場は1,091万8,000円ですが、大企業で35年以上働いた場合は2,242万円です。同じくらいの勤続年数であっても、1,000万円以上の差が生じています。
退職金の平均額は減少している
退職金の平均額は年々減少しています。中小企業の退職金支給額について、以下の表にまとめてみました。
退職金支給額(千円) | |||
調査年 | 高校卒 | 高専・短大卒 | 大学卒 |
2012年 | 11,137 | 11,363 | 12,244 |
2014年 | 12,191 | 12,345 | 13,839 |
2016年 | 10,829 | 10,305 | 11,389 |
2018年 | 11,268 | 11,066 | 12,034 |
2020年 | 10,314 | 10,260 | 11,189 |
2022年 | 9,940 | 9,832 | 10,918 |
参照元:東京都産業労働局|モデル退職金(統計表 第9表)、モデル退職金(統計表 第8表)、モデル退職金(集計表 第8表)、モデル退職金(集計表 第8表)、モデル退職金(集計表 第8表)、モデル退職金(集計表 第8表)
上記の表からわかるように、2012年から2022年までの10年で大学卒の退職金は約130万円も減っています。また、高校卒と高専・短大卒は2022年に1,000万円を切りました。
退職金が減っているのは中小企業だけではありません。1,000人以上の労働者がいる大企業について、厚生労働省が調査している退職金支給額を以下の表にまとめてみました。
退職金支給額(千円) | ||
調査年 | 高校卒 (管理・事務・技術職) | 大学卒 (管理・事務・技術職) |
2003年 | 25,050 | 28,080 |
2008年 | 25,790 | 27,330 |
2013年 | 21,860 | 24,170 |
2018年 | 23,280 | 24,350 |
2023年 | 21,890 | 22,420 |
参照元:e-Stat 政府統計の総合窓口|就労条件総合調査 平成15年_就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態[勤続年数20年以上45歳以上の退職者]、就労条件総合調査 平成20年_就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態、就労条件総合調査 平成25年_就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態、就労条件総合調査 平成30年_就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態、就労条件総合調査 令和5年_就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態
大学卒の場合は20年前から約600万円、退職金が減っています。高校卒であれば約300万円の減額です。これらの結果から、今後、企業規模に関係なく退職金は減少していくと予想されます。したがって、ますます、老後資金の事前準備や退職金の活用が重要になります。
退職金の計算方法4パターン
先に紹介した退職金の相場は、あくまで目安です。実際の退職金額を調べるには、就業規則で示されている計算方法でシミュレーションしてみると良いでしょう。
ここでは、退職一時金制度で用いられている計算パターンを4つ解説します。
【退職一時金制度の計算方法】
- 基本給連動型
- 定額制
- 別テーブル制
- ポイント制
なお、確定給付企業年金制度や企業型確定拠出年金制度、退職金共済制度は基本的に「掛金×納付月数+α」で計算可能です。「+α」の部分には、運用結果や利回りなどが加わります。
基本給連動型
基本給連動型は、退職時の基本給をベースに、勤続年数や退職理由によって退職金を割り出す方法です。
一般的に、勤続年数が長くなるほど支給率が大きくなるので、退職金額も高くなります。また、自己都合で退職すると、会社都合(定年を含む)で退職するより金額が低くなる傾向があります。
【基本給連動型の計算方法】
退職金=退職時の基本給×支給率(勤続年数による)×退職理由別係数
定額制
定額制は、基本給に関わらず、勤続年数によって算出する方法です。つまり、勤続20年で退職する場合は200万円、勤続30年の場合は300万円など、勤続年数に応じた退職金が支給されるのです。
ただ、企業によっては、退職理由や職能資格に応じた係数がかかる場合があります。詳しくは、就業規則を確認してみましょう。
【定額制の計算方法】※一例
退職金=勤続年数に応じた額×職能資格などの係数×退職理由別係数
別テーブル制
別テーブル制は、基本給ではなく退職金専用の算定基礎額を用いて計算する方法です。この算定基礎額は、役職や等級がベースになっています。
さらに、勤続年数や退職理由を加味し、退職金額を求めます。
【別テーブル制の計算方法】
退職金=役職などに応じた算定基礎額×支給率(勤続年数による)×退職理由別係数
ポイント制
ポイント制は、役職や資格取得の実績、貢献度などをポイントに換算し、退職金額に反映させる方法です。
ポイント制の場合、退職するまで「役職を1年務めるごとに+5ポイント」、「勤続年数1年につき+10ポイント」といったようにポイントが累積していきます。そこにポイントの単価や退職理由別の係数を掛け合わせ、退職金が決定するのです。
【ポイント制の計算方法】
退職金=累積ポイント×ポイント単価×退職理由別係数
退職金が相場より少ないときの対処法
どれくらい退職金をもらえるのかある程度把握できたところで、定年退職後の老後生活を問題なく送れるかどうかを確認しましょう。
公益財団法人生命保険文化センターによると、老後の最低日常生活費は月額平均232,000円です。ゆとりある老後を送るとなると、生活費は月額平均379,000円かかります。仮に月額200,000円を退職金から賄うとすると、中小企業の平均退職金である約1,090万円は5年程度でなくなる計算です。
【参考】
老後の生活費はいくらくらい必要と考える?|公益財団法人生命保険文化センター
もちろん公的年金は受給できるでしょうが、老後に必要な生活費を考えると、老後資金を退職金に頼りきるのは不安に感じる方も多いはずです。老後の家計状況を確認し、どのくらいのお金が必要なのか試算することも重要です。
加えて、退職金が相場より少ない場合は、より慎重に老後資金や生活費について試算する必要があります。もし退職金が少ない、老後資金に不安があると感じる場合には、対処法を以下で解説しますので参考にしてください。
再就職
将来受け取る年金を増やすために、再就職は有効な方法のひとつです。定年退職したあとも働き続け、かつ一定の条件を満たせば厚生年金に加入し続けられます。
定年後に再雇用で厚生年金に加入するためには、以下の条件に該当する必要があります。
- 1週の所定労働時間が20時間以上であること。
- 所定内賃金が月額88,000円以上であること。
- 学生でないこと。
- 適用事業所に使用されていること。
パートやアルバイトなどの短時間勤務でも対象となるため、週20時間以上働く体力がある方は仕事を始めるとよいでしょう。
さらに、再雇用で働き続けた場合に年金がどれくらい増えるか、計算してみましょう。年金の受給額は以下の計算式で算出できます。
例えば、60歳から65歳までの5年間、平均標準報酬額250,000円で再就職した場合、以下の計算式になります。
※計算の簡素化のため2003年3月以前の加入期間については加味しない。
月収25万円、年収300万円で定年退職から5年間働けば、受給額を年額で約80,000円増やせるということです。ただし、再雇用後の給与が大きい場合、年金支給額の一部もしくは全額が支給停止されることがある点には注意が必要です。大まかには、老齢厚生年金と給与を合わせて月額500,000円以上になると年金が一部停止される可能性があります。
参照元:日本年金機構|は行 報酬比例部分
日本年金機構|働きながら年金を受給する方へ
転職
定年退職まで期間がある場合は、転職して月収や退職金を増やすという選択肢があります。例えば、退職金のない企業から退職金制度のある企業への転職や、年収の高い企業への転職が挙げられます。
ただし、退職金のみで仕事を決めるのはリスクがあるのも事実です。人間関係や業務内容などがイメージと違う場合があるため、多角的な視点を持って勤務先を選ぶようにしましょう。
また、転職することで給料やもらえるはずだった退職金が少なくなるケースもあります。
公的年金の繰り下げ受給
通常は65歳から始まる年金受給のタイミングを遅らせて、年金受給額を増やす「繰り下げ受給」を適用するのもよいでしょう。年金受給開始を1ヵ月遅らせるごとに0.7%ずつ増え、増額は生涯続きます。
2024年8月現在の制度では、75歳まで繰り下げた場合に最大84%も増加します。
請求時の年齢 | 0ヵ月 | 1ヵ月 | 2ヵ月 | 3ヵ月 | 4ヵ月 | 5ヵ月 | 6ヵ月 | 7ヵ月 | 8ヵ月 | 9ヵ月 | 10ヵ月 | 11ヵ月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
66歳 | 8.4% | 9.1% | 9.8% | 10.5% | 11.2% | 11.9% | 12.6% | 13.3% | 14.0% | 14.7% | 15.4% | 16.1% |
67歳 | 16.8% | 17.5% | 18.2% | 18.9% | 19.6% | 20.3% | 21.0% | 21.7% | 22.4% | 23.1% | 23.8% | 24.5% |
68歳 | 25.2% | 25.9% | 26.6% | 27.3% | 28.0% | 28.7% | 29.4% | 30.1% | 30.8% | 31.5% | 32.2% | 32.9% |
69歳 | 33.6% | 34.3% | 35.0% | 35.7% | 36.4% | 37.1% | 37.8% | 38.5% | 39.2% | 39.9% | 40.6% | 41.3% |
70歳 | 42.0% | 42.7% | 43.4% | 44.1% | 44.8% | 45.5% | 46.2% | 46.9% | 47.6% | 48.3% | 49.0% | 49.7% |
71歳 | 50.4% | 51.1% | 51.8% | 52.5% | 53.2% | 53.9% | 54.6% | 55.3% | 56.0% | 56.7% | 57.4% | 58.1% |
72歳 | 58.8% | 59.5% | 60.2% | 60.9% | 61.6% | 62.3% | 63.0% | 63.7% | 64.4% | 65.1% | 65.8% | 66.5% |
73歳 | 67.2% | 67.9% | 68.6% | 69.3% | 70.0% | 70.7% | 71.4% | 72.1% | 72.8% | 73.5% | 74.2% | 74.9% |
74歳 | 75.6% | 76.3% | 77.0% | 77.7% | 78.4% | 79.1% | 79.8% | 80.5% | 81.2% | 81.9% | 82.6% | 83.3% |
75歳 | 84.0% |
参照元:日本年金機構|年金の繰下げ受給
年金を1年で150万円受給する人が70歳0ヵ月で受給を始める場合は、以下の計算式で求められます。
元々の受給額である150万円に63万円が上乗せされ、合計で213万円を受け取れる計算です。
繰り下げ受給をすると元を取れないのではないかと、心配になる方もいるでしょう。実際に年金の繰り下げ受給をする場合、何歳に受給を始めても、受給開始から12年程度で65歳から受け取り始めた場合の受給総額を上回ります。70歳まで繰り下げると、82歳になる頃に上回る計算です。
貯金に余裕があり、年金を受給しなくても生活できそうな方は、繰り下げ受給を検討してみてください。
家計を見直す
家計を見直して固定費を削減したり生活水準を下げたりすることで、支出を減らす方法もあります。出費を抑えることで、生活費に余裕を持たせることができます。
家計を見直す場合の例は、以下のとおりです。
- 住宅ローンの繰り上げ返済をして支払利息を抑える
- 保険を見直す
- スマホの料金プランを見直す
- 使っていないサブスクリプションサービスを解約する など
とくに、固定費は一度見直すと半永久的に効果が持続するため、少ない労力で家計改善につなげられます。
資産運用
貯蓄や給料を元手に資産運用をして、老後資金を増やすという選択肢もあります。現役時に限らず、退職してから退職金で運用するのもよいでしょう。
ただし、資産運用はお金が減るリスクがあるため、退職金で老後資金の多くを賄おうと考えている場合は慎重に検討する必要があります。老後のための資産運用については後述しているため、ぜひ参考にしてください。
老後のために退職金を運用してみよう
中小企業の退職金は大企業より少ないことを解説しました。「ちょっと老後資金が心もとないな」「早期退職したので、退職金が少なかった」という方は、退職金を運用してみてはいかがでしょう。
ここからは、退職金のおすすめの運用方法を4つ紹介します。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、任意の私的年金制度です。企業型拠出年金制度と似ていますが、iDeCoの場合は個人で掛金を拠出して運用商品や金融機関を選び、資金を運用していきます。
給付は原則60歳からで、給付額は、掛金の合計や運用結果によって左右されます。
iDeCoは、次のようなメリットがあります。
- 積立時に所得控除により所得税や住民税の負担が軽減される
- 運用中の利益は非課税で、受取時も一時金で受け取る場合は退職所得控除、年金で受け取る場合は公的年金等控除が適用される。
就職して10年や20年で一度退職し、転職する方や専業主婦(夫)になる方もいらっしゃるはず。中小企業の場合、退職金が少ないことをお伝えしましたが、定年を迎える前に退職すると更に少なくなってしまいます。
そこで、今からiDeCoで資産運用をして老後の準備をしておきましょう。退職金がすでに手元にある方は、退職金から掛金を拠出するのもひとつの方法です。
しかし、iDeCoに興味があっても「どの銀行や証券会社を選べば良いのかわからない」と悩んでしまいがちです。iDeCoの口座を作る金融機関を選ぶ際は、サポート体制が充実しているか、手数料がかからないかなどをチェックしましょう。
個人年金保険
個人年金保険は、保険会社が販売している個人向けの年金商品です。一例ですが、40歳で契約し、60歳まで毎月保険料を支払い、65歳から受け取りを開始するといった商品があります。保険料を支払う期間や死亡時の受け取り方法などさまざまなタイプがあるので、ご自身に合う商品を探してみましょう。
また、保険料を月払いではなく一括で支払える「一時払い個人年金」もあります。退職金を受け取ってまとまったお金がある場合、一時払い個人年金の商品も検討してみてください。
投資
退職金を活用し、投資信託や株式投資などにチャレンジしてみるのもおすすめです。
投資信託とは、プロが目利きした複数の債権や株式などに分散投資できる金融商品です。投資信託会社が複数の投資家から資金を集め、資産運用を投資の専門家が代行。その運用損益を、投資額に応じて分配する仕組みになっています。
小額からの投資が可能で、複数の銘柄に投資する分リスクが抑えられるので、初心者でもトライしやすいといえます。
株式投資とは、企業の株式を購入し、配当金や株主優待を受け取る方法です。株式投資をするメリットは、キャピタルゲイン(値上がり益)にもあります。株価が安価なときに購入し、値上がったタイミングで売却すると、その差額が利益となります。
本来であれば、利益には税金がかかりますが、NISAを利用すれば売却益に税金がかかりません。例えば、100万円の利益が出ると約200,000円の税金がかかり、手元に残るのは800,000円程度です。
しかし、NISA口座で買った投資信託や株式で100万円の利益が出ても、税金がかからないため利益が丸々手元に残るのです。
ただ、株価は値上がりするだけでなく値下がることも。初心者は、小額投資やミニ株投資ができるサービスを選ぶと良いでしょう。
なお、投資や金融商品に関する情報は常に最新のものを確認し、必要に応じて更新することをおすすめします。また、個々の状況に応じて専門家に相談するようにしましょう。
定期預金
iDeCoや投資などで損失するリスクを避けたい方は、定期預金を検討してみてください。定期預金とは、普通預金よりも高い金利で預入する代わりに、一定期間は引き出せない制度のことです。
メガバンクの普通預金の金利が0.001%程度であるのに対し、定期預金は銀行によっては0.1~0.2%になる場合もあります。
解約は原則不可とされているものの、手続きすれば即日で認められる場合もあるため、お金が必要になったときに自由に引き出せます。ただし、満期になる前に解約すると想定より受け取る利子は少なくなります。
投資信託や株式、iDeCoなどで資産を増やすだけでなく、定期預金での守りの運用を組み合わせると良いでしょう。
おわりに
大企業に比べ、中小企業の退職金は少ないことをお伝えしました。ただ、退職金を運用すれば増額が見込めるので、今のうちからさまざまな運用方法を視野に入れておいても損はないでしょう。
また、退職金の制度や算出方法は企業によって異なるため、これを機に勤務先の就業規則などを確認してみても良いかもしれません。
今回紹介した内容を参考に、ゆとりある老後の準備にお役立てください。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。