室内にあるエアコンの掃除をしている方はいらっしゃるものの、室外機の掃除は忘れられがちです。室外機は屋外に設置されているため、さまざまな要因で非常に汚れやすい環境にあります。室外機が汚れていると、エアコンの効きが悪くなったり故障の原因になったりするのはご存知ですか。
このコラムでは、室外機の役割から掃除方法まで詳しく解説していきます。これまでに室外機を掃除したことがない方や、節電のためにエアコンの稼働効率を見直したい方はぜひご一読ください。
室外機の役割
エアコンといえば室内機に目が行きがちですが、エアコンは室外機とセットになっているものです。エアコンは、熱の移動を利用して空気の温度や湿度を調整する機械で、室内機と室外機がなければその役割を果たせません。
熱は、それが多い場所から少ない場所へ移動するという性質があります。エアコンはその性質を利用した家電。室内機と室外機をつなぐパイプに充填された冷媒ガスによって熱を運んでいます。
冷房運転とは、室内機が取り込んだ部屋の空気から熱を除去し、冷風にして部屋に戻すという流れの繰り返しです。除去した熱を室外機のコンプレッサーで圧縮し、さらに高温化して排出します。
暖房運転はその逆で、室外機が集めた外気の熱を圧縮・高温化して室内機に送る繰り返しになります。こうした熱の移動が可能になるのは、前述した熱の性質によるもの。そのため、冷媒ガスやコンプレッサーの不具合で熱の移動がうまくいかなくなると、エアコンの効果が減退してしまいます。
室外機を掃除することで得られるメリット
ご存知のとおり、室外機は屋外に設置されており、風雨などの外的環境によって汚れることは想定内の構造です。
そのため、短い周期でこまめに掃除する必要はありませんが、室外機が汚れているとエアコンに不要な負荷を与えてしまう原因になります。
ここでは、室外機を掃除することで得られるメリットを見ていきましょう。
電気代の節約になる
室外機は、住宅のみならず多様な施設や高層ビルの屋上といった屋外に設置できるよう設計されており、基本的には特別なメンテナンスを必要としません。しかし、室外機が汚れているとエアコンの運転効率は下がってしまうのです。
熱の移動を利用するエアコンは、室外機が汚れると熱交換を効率良く行えなくなり、いつも以上のパワーを消費して稼働するようになります。そのため、室外機を掃除して熱交換の効率を上げれば消費電力を抑制し、電気代の節約が可能です。
エアコンの消費電力に占める室外機の割合は全体の約90%にも及ぶといわれているため、電気代の節約には室外機の掃除が欠かせません。
故障のリスクを防げる
室外機のフィン(熱交換器)は、汚れによる目詰まりを起こしやすいパーツです。フィンが目詰まりを起こすと室外機の機能が低下し、エアコンに負荷が掛かって故障や寿命を縮める原因になるのです。
しかし、室外機を掃除していれば、汚れにより熱交換運動を妨げることなくエアコンを使用できます。こ
れは、余計な負荷を与えることなくエアコンを使い続けられるということです。室外機をきれいな状態で使えば、故障や買い替えのリスクを抑えられるでしょう。
室外機の騒音を抑えられる
室外機の音が大きいと感じたことはありませんか。故障の疑いもありますが、もしかすると室外機が汚れているからかもしれません。室外機が汚れていると、各パーツが正常に動作しなくなったり熱交換効率が下がったりします。
そのような状態では、いつも以上のパワーを使って運転するため、それに伴って室外機の音も大きくなるのです。
室外機の振動や経年劣化による騒音の可能性もありますが、まずは室外機を掃除してみましょう。汚れが原因の場合、きれいになれば騒音も解消します。
室外機は家庭で掃除できるの?
室外機の汚れを放置すると、電気代の上昇や故障・騒音の原因になることが分かりました。しかし、室外機は家庭で掃除できるものなのでしょうか。
分解を伴う本格的な掃除となればプロに依頼するしかありませんが、家庭で掃除できる範囲をきれいにするだけでもその恩恵は受けられます。
ここからは、家庭で掃除できる室外機のパーツとその掃除方法を解説します。
外カバー
室外機内部の機器を覆う「外カバー」は面積が広く、最も汚れが目に付くパーツです。雨風や排気ガスに晒されたり泥や砂、ホコリなどが付着したりして汚れています。これらの汚れを落とすには、まずほうきでざっと払いましょう。
次に、残った汚れを濡れ雑巾で拭き取ります。鳥のフンや汚れがこびり付いている場合、水で軽く洗い流しながらこびり付きを緩め、もう一度濡れ雑巾で拭き取りましょう。
フィン
「フィン」は、室外機の裏面や側面にある薄い金属板のことです。エアコンの構造上必要不可欠な熱交換を行うパーツで、ここが汚れているとエアコンの運転効率が下がります。
室外機を設置する場所によっては、フィンが見えなかったり手が届かなかったりするケースもありますが、そのような場合は見える・届く範囲で掃除を行ってください。
フィンはアルミ製の繊細なパーツです。掃除機にブラシヘッドを装着し、優しく汚れを吸い取りましょう。掃除機で取り切れなかった細かい汚れは、歯ブラシを使って丁寧にかき出してください。
吹出しグリル
室外機の正面にあたる網状のパーツが「吹出しグリル」です。外気の吸込み口になっており、異物の侵入を防ぐフィルターの働きをしています。外カバー同様、風雨や排気ガス、砂やホコリで汚れやすいパーツ。
こちらも、まずはほうきでざっと払いましょう。次に、掃除機でホコリを吸い取り、細かい部分の取り切れなかった汚れは歯ブラシで除去してください。コードレスのハンディクリーナーがあると便利です。
排水ホース(ドレンホース)
「排水ホース(ドレンホース)」は、エアコンの機器内に生じた結露の水分を排出するパーツです。
このホースに汚れが詰まってしまうと、室外機内部に水が溜まって電子部品がショートしたり、室内機から水漏れが発生して故障したりする恐れがあります。
ホース内を覗いてゴミや虫が入り込んでいれば除去しましょう。手の届く範囲であれば割り箸や棒状のものを使い、そうでない場合は市販のホースクリーナーを使用すると便利。
ホース内の空気を吸い出す仕組みのクリーナーで、奥まで入り込んだゴミや虫を取り除くことが可能です。
室外機の周り
室外機は熱を取り入れたり排出したりして熱交換を行う仕組みであるため、室外機自体が汚れていない場合でも、周辺環境によって熱交換効率が悪くなってしまいます。
室外機の周りに鉢植えや自転車といった障害物があると、汚れが詰まった時と同様に負荷が掛かった状態で運転することになるのです。
室外機から半径20cm以内には物を置かないようにし、枯葉や雪などはこまめに取り除きましょう。そうすれば、電気代を節約することができます。
室外機を掃除する際の注意点
家庭でも掃除できる室外機ですが、その際にはいくつか注意しなければならない点があります。誤った方法で掃除をしていると思わぬ事故や故障につながる危険があるため、次に挙げる注意点は必ず守ってください。
エアコンの電源をオフにする
室外機の掃除をする際は室内機の電源を切り、電源プラグを抜いてください。電源が入った状態、エアコンが作動している状態で掃除をすると、高速で回転する金属製のファンでケガをしたり感電したりする危険があります。
手を使って金属部分や室外機周辺を掃除するため、軍手をはめるなどしてケガの予防にも努めましょう。
室外機を移動させない
設置場所によって掃除しにくい箇所や手の届かないパーツがあっても、室外機を移動させることはやめましょう。
掃除のために室外機を動かすことで、配管が外れてしまったり破損してしまったりする可能性があり危険です。室外機と室内機をつなぐパイプには、熱を移動させるために用いる冷媒ガスが充填されています。
ガス漏れを起こした場合、移動させられる熱の量が減少してエアコンの効きが悪くなり、熱交換効率が下がって電気代が上昇してしまうことも。室外機の移動だけでなく、パイプや配管カバーを動かすのもやめましょう。
水は上からかける
室外機は屋外に設置することを前提に設計されているため、台風が襲来した時のような強い風雨に対する耐水性を持ち合わせています。しかし、大量の水が四方八方から直接かけられる状況には対応していません。
そのため、室外機を掃除する際に水をかける場合は、上から少しずつ流しましょう。室外機内部に水が入ると、電子部品や電子盤と接触してショートしたり故障したりしてしまいます。
高圧洗浄機を使用しない
高圧水を吹き付けることで手だけでは落とせない汚れを洗浄する高圧洗浄機は、頑固な汚れも簡単に落とせる便利な機械です。家庭では窓や網戸、家の外壁などさまざまな外回りの掃除に利用されています。
高圧洗浄機を使えば室外機の汚れも短時間で簡単に落とせそうな気がしますが、前述したとおり、室外機には通常考えられないほどの水や圧力に対する防御能力はありません。
室外機内部に水が入ってしまうことはもちろん、高圧洗浄機の圧力で部品が外れたり壊れたりする可能性もあります。フィンなどの繊細なパーツもあるため、室外機の掃除に高圧洗浄機を使うのはやめましょう。
室外機を掃除する頻度
室外機の掃除は1年に2回、冷房運転を始める前の5月頃・暖房運転を始める前の10月頃に行うことをおすすめします。本格的にエアコンを使用するシーズンが到来する前に、正常運転できる状態に整えておくと良いでしょう。
こちらの時期はあくまでも目安です。お住まいの地域によってエアコンの開始時期が異なるため、ご自身がエアコンを使い始める時期に合わせて掃除をしてください。
室外機の掃除をプロに依頼するといくらかかるの?
室外機をご自身で分解・掃除するにはケガや故障のリスクが高く、徹底的に掃除するには、やはりプロに依頼するのが良いでしょう。室外機の掃除をクリーニング会社に依頼した場合の料金相場は、5,000~10,000円です。
一般的には、室内機・室外機の両方をクリーニングするセットプランが用意されているケースが多く、セットで依頼すれば13,000~18,000円前後になるなど、割安になるケースが見られます。
ちなみに、室内機のみのクリーニング料金は8,000~15,000円前後、お掃除機能付きエアコンになると15,000円~28,000円前後が相場です。
年式の古いものや天井吊り、屋根に設置しているものなど、室外機のタイプによってはプロに依頼できないパターンもあるため、クリーニング会社への依頼を検討する際には事前に問い合わせると良いでしょう。
室外機だけでなくエアコンの掃除も大切
ここまでエアコンの室外機に関する掃除の重要性をお伝えしてきましたが、室内機の掃除にも着目してみましょう。
エアコンを使用すると、室内機内部は結露によるカビの発生やホコリの蓄積で不衛生な状態になります。これらは悪臭や健康被害、エアコンの効きを悪くする原因となるため、室内機にも定期的な掃除が必要です。
室内機はエアコンカバーを拭く、フィルターのホコリを取り除くといった掃除だけでも良いですが、運転時間やライフスタイルによってはプロによる室内機内部の洗浄も検討しましょう。
1日8時間以上冷房運転している・赤ちゃんやペットがいる・室内機をキッチンの近くに設置しているというご家庭では1年に1回、1日4~7時間冷房運転している・子どもがいる・リビング、ダイニングに室内機を設置しているというご家庭では2年に1回のエアコンクリーニングがおすすめです。
日頃のお手入れだけでは取り除けない汚れは、プロに任せるのが得策。くらしのセゾンは、エアコンクリーニングを含む多様なクリーニングサービスを提供しており、安心価格で住まいのきれいをサポートしてくれます。
お得な水まわりセット商品が全国一律料金で用意されている他、離れて暮らすご家族への贈り物にピッタリなハウスクリーニングギフトにも対応しています。
おわりに
エアコン本来の性能を発揮させるためには、熱交換を担う室外機の掃除が重要であることが分かりました。室外機を掃除する際は、目に見える・手の届く範囲に留め、ケガや故障には充分気を付けましょう。
ご自身でできるお手入れも必要ですが、汚れがひどい場合や使用歴が長くなってきた場合にはプロのクリーニング会社に掃除を依頼するのも得策です。まずはご家庭の室外機をご確認いただき、ご自身でできる掃除から始めてみませんか。