ファクタリングによる資金調達は、一般企業だけではなく、医療機関の診療報酬も対象になることをご存じでしょうか。
今回は診療報酬ファクタリングの仕組みやメリットだけでなく、デメリットまで含めて解説します。
1.診療報酬ファクタリングとは
診療報酬ファクタリングとは、医療機関が持っている診療報酬における債権をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、診療報酬が入金される前に資金調達を行えるサービスです。
ちなみに診療報酬における債権とはどのようなものを指すのでしょうか。具体的には、医療機関において、医療従事者が患者に対し医療サービスを提供した際の対価として得られる、患者の自己負担分および社会保険や国民健康保険といった保険者から診療報酬を受けとる権利をいいます。社会保険とは、正確には社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険とは、国民健康保険団体連合会のことです。
私たちは病院で診察や治療を受けた際、かかった医療費の全額を支払うのではなく、決められた自己負担割合に応じた金額を支払います。そして、自己負担以外の部分は加入している健康保険組合の保険者や国民健康保険組合から支払われます。社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会から支払われています。
ただし、この支払いがすぐに保険者から医療機関に行われるのではなく、医療機関に対して支払われるのは2~3ヵ月後と遅いため、ファクタリングを利用することでより早く現金で受け取れることになります
2.診療報酬ファクタリングの仕組みと流れ
診療報酬ファクタリングの仕組みと流れは以下のとおりです。
①医療機関が社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会に対して、診療報酬を請求する
②医療機関とファクタリング会社で債権譲渡契約を締結する
③ファクタリング会社は医療機関との連名で、社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会に対して債権譲渡通知を行う。
④ファクタリング会社が買い取った債権代金を医療機関に支払う
⑤社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会が、ファクタリング会社に対して診療報酬を支払う
診療報酬が社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会からファクタリング会社に支払われるのは2〜3ヵ月後ですが、ファクタリング会社が債権を買い取り、医療機関に支払うのは申し込みから平均2〜4日です。
通常なら2〜3ヵ月待たなければならない入金を、2〜4日に短縮できるのは非常にありがたいといえるでしょう。
3.診療報酬ファクタリングのメリット
まず、診療報酬ファクタリングは、銀行から融資を受けるなどの「借入金」としては扱われず、「売掛金の売買(金融商品の売買)」とみなされるため、ファクタリング会社から入金された金額は負債ではありません。
貸借対照表上の負債に計上されないため、自己資本比率が下がるといった心配もありません。なかには、今後、銀行からまとまった融資を受けようと考えている医療機関もあるでしょう。融資を受けるなら、決算書の内容を審査において有利な状況にしておく必要がありますので、負債比率に影響を与えず、資金調達ができる診療報酬ファクタリングの利用は有利に働くでしょう。
また、銀行融資に比べて手続きが簡単なこともメリットとして挙げられます。銀行融資に比べ、ファクタリングは審査期間も短く、その結果診療報酬を早期に回収できます。また財務状況の改善にも役立つ点はメリットです。
さらに、調達した資金の使途は自由ですので、設備投資などに利用できる点もメリットといえるでしょう。
4.診療報酬ファクタリングのデメリット
診療報酬ファクタリングにおける1番のデメリットは、利用にあたって手数料が発生することでしょう。手数料は銀行融資を利用する際の利息と比べると高くなってしまうため、ファクタリング会社を選ぶ際には手数料の内容を必ず確認しておきましょう。
ファクタリング会社の実績はもちろんですが、手数料を低く設定しているファクタリング会社を選ぶことも大切です。
また、利用金額が債権金額の範囲内であることにも注意しておきましょう。銀行融資と異なり、希望する額まで借りられるわけではなく、債権金額を上回る金額を申し込むことはできません。
5.診療報酬ファクタリングはこんなお悩みを持つ方におすすめ
診療報酬ファクタリングは、以下のような悩みを持つ方におすすめです。
・急にまとまった資金が必要になったけれど、資金に余裕がない
・予定外の支払いが発生したが、資金が確保できない
・病院を新しく設立したい、もしくは増設を考えているが、銀行融資を受けられない
・開業したてで資金繰りに課題がある
・設備投資を行いたいが資金が不足している
・新規に人材採用を行う必要があるが人件費などの費用に不安がある
・急な出費の予定があり、すぐに資金調達したい
6.ファクタリング会社を選ぶ際のポイントとは?
診療報酬ファクタリングを行っている企業は数多く存在しています。ファクタリング会社を利用する際には、以下のポイントに注意して選ぶようにしましょう。
・手数料は妥当か?
急な資金繰りが必要とはいえ、手数料が高く、資金調達のコストが増えてしまったら、その分利益率に影響を与えてしまいます。手数料は利益から支払うことになることを忘れないようにし、適切な手数料率を掲示してくれるファクタリング会社を選ぶようにしましょう。また、契約の際にかかる費用など、手数料以外にどのような費用がかかるのかを調べておくことも大切です。
・希望の買取金額に達しているか
実際に債権を買い取ってもらう際、それが希望の買取金額かどうかは重要なポイントです。ファクタリング会社によっては、希望の買取金額可能額を大幅に上回る金額を掲示し、その結果手数料を余分に払うことになる可能性もあります。きちんと話し合いができ、こちらの考えている資金繰りの内容に即した提案を行ってくれるファクタリング会社を選びましょう。
・信用度
ファクタリング会社は、免許や認可が不要です。そのため、そのファクタリング会社が良い企業なのか、悪徳事業者なのかの見極めが非常に付きにくいといった問題があります。ファクタリング会社の概要を把握することはもちろん、企業の規模や専門性、さらにはコンプライアンス体制がしっかりしているかどうかもチェックするようにしましょう。
おわりに
診療報酬ファクタリングは、医療ファクタリングのひとつです。
医療ファクタリングには、診療報酬ファクタリング以外に、調剤薬局を対象とした「調剤報酬ファクタリング」や、介護施設を対象とした「介護報酬ファクタリング」があります。
診療報酬を支払う社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会は、信用度が高く、債権回収不能リスクが低いため、診療報酬ファクタリングの審査は通りやすいといった特徴があります。
医療系の債権はリスクが低いため、通常のファクタリングより手数料が低く、まとまった資金調達が可能です。クレディセゾンでも「セゾンの診療報酬前払いサービス(ファクタリング)」を行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。お問い合わせはインターネット、電話の両方で受け付けております。