医療機関の診療報酬は、患者から直接受け取るものと、健康保険組合から受け取るものがあります。
この記事では、身近に利用しているけれど意外と知らない医療機関の診療報酬が現金化するまでの仕組みを解説します。また、現金を受け取るまでの期間を短くできる診療報酬ファクタリングについても併せて解説します。
1.診療報酬債権とは
「診療報酬債権」とは、医療機関が健康保険の被保険者やその被扶養者に対し、保険診療を行った対価として、社会保険診療報酬支払基金もしくは国民健康保険団体連合会から支払いを受ける債権のことをいいます。
医療機関は社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会に対し、レセプトにより診療報酬を請求します。レセプトを受け取った基金や連合会は、そのレセプトを1枚ずつチェックします。その際、記入漏れなどがみられた場合は医療機関に返却します。
次に、医療機関別に審査委員会にて審査を行います。さらに、事務点検で疑いのあるレセプトについても再び審査を行います。審査が終れば、保険者に対して支払請求を行い、保険者から基金および連合会に対して診療報酬が払い込まれます。
基金や連合会は、払い込まれた診療報酬を医療機関に支払います。これが診療報酬請求から支払までの一連の流れです。
また、診療報酬債権は信用力が高く、リスクが低いと言われています。
2.診療報酬審査支払機関とは
「診療報酬審査支払機関」とは、上記で述べた社会保険診療報酬支払基金、そして国民健康保険団体連合会のことです。
・社会保険診療報酬支払基金
社会保険診療報酬支払基金は、1948年に社会保険診療報酬支払基金法の制定によって設立された特殊法人です。国民健康保険団体を除く全ての保険者からの委託にもとづいて、医療機関から申請があった診療報酬の審査および支払いを行っています。
各医療機関への診療報酬の支払いは、保険者からの診療報酬を原資として行われており、このことから、保険者からの収納状況が支払能力を左右することになります。ちなみに納期内での収納率は、共済組合が99%と高い割合を占めている反面、多くの中小組合で構成されている健康保険組合などについては85%前後になっているなど、差が大きくなっています。また、支払遅延に関しては、あらかじめ保険者から受領している委託金や基本金を取り崩すことで対応しています。
・国民健康保険団体連合会
国民健康保険団体連合会は、国民健康保険法第83条の規定に基づいて、保険者である市町村および国保組合が共同で設立した公法人で、各都道府県にひとつずつ設立されています。社会保険診療報酬支払基金と同様、各医療機関への診療報酬の支払いは、国保組合からの収納状況に左右されますが、収納率は年々低下傾向にあります。なお、支払遅延が発生した場合は、金融機関からの借り入れにて対応することになっています。
これらの診療報酬審査支払機関は、年間10億件を超える審査や支払いを円滑そして効率的に処理しており、現在の保険制度は今後も続いていく見込みです。その点から考えると、診療報酬審査支払機関である社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会は、国に準ずる信用力を持っていると考えられています。
さらに、信用力の格付けにあたっては、最もシンプルな信託方式を用いた枠組みを作成しています。
(格付けの前提となる信託方式の枠組みスキーム)
(1)医療法人は、被保険者や被扶養者に対し、保険診療を行い、一部負担金を窓口にて徴収します。そして、医療法人は社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会にレセプトを送付することで、保険対象分の金額を請求します。
(2)医療法人が保有している診療報酬の債権を信託銀行に信託譲渡します
(3)医療法人が毎月社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会に請求を行った都度、信託銀行は当該月分の優先受益権および劣後受益権を発行します。
(4)優先受益権は投資家に譲渡し、劣後受益権は医療法人が保有します。
(5)投資家から支払われた優先受益権の譲渡代金を医療法人が受領します。
(6)診療報酬の債権期日に、社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会が信託銀行に直接信託報酬を支払います。
(7)投資家に対し、優先受益権の元本を交付して、残金は劣後受益嫌の償還にあてます。
3.診療報酬ファクタリングで診療報酬債権を早期現金化
診療報酬ファクタリングとは、医療法人が保有する診療報酬債権をファクタリング会社に買い取ってもらい、債権となる診療報酬が支払われる前に現金化するサービスです。
通常、診療報酬債権が支払われるのは、請求してから2〜3ヵ月後になり、回収まで時間がかかるといった問題があります。その間、資金調達の必要性に迫られた場合、銀行からの融資を受けるにしても審査に時間がかかるほか、かならず融資を受けられるとは限りません。
そんなときに診療報酬ファクタリングを利用することで、短期間での資金調達が可能になります。ファクタリングには手数料が発生するというデメリットがあるものの、診療報酬ファクタリングの場合、請求先が国と同程度の信用力を有している社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会となるため、未回収リスクが少ない、いわゆる「優良債権」としての位置付けになります。
そのため、ほかのファクタリングよりも柔軟な審査、かつ、低い手数料で利用できるというメリットがあります。診療報酬ファクタリングは、医療行為(保険医療)を行う医療機関であれば、病院やクリニック、歯科、調剤薬局(調剤報酬)でも利用できます。
診療報酬ファクタリングのイメージおよび利用の流れは以下のとおりです。
①医療機関によって診療報酬が請求されます(診療報酬債権の発生)。
②同時にファクタリング会社に対し、診療報酬債権の買い取りを依頼します。さらにファクタリング会社との間で債権譲渡契約を締結し、ファクタリング会社との連名で社会保険診療報酬支払基金および国民健康保険団体連合会に対して債権譲渡通知を発送します。
③ファクタリング会社から医療機関の口座に診療報酬債権の買い取り金額が入金されます。
④社会保険診療報酬支払基金および国民健康保険団体連合会から、ファクタリング会社に診療報酬が支払われます。
おわりに
売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、早期の資金調達を可能にするファクタリングですが、企業の売掛金だけでなく診療報酬や介護報酬などもファクタリングの対象です。ファクタリングを利用することで信用情報に影響を与えることなく資金調達ができ、担保や保証人が不要なことから、手続きも比較的スムーズに行えます。
手数料が発生する点がネックですが、医療系の債権は通常のファクタリング手数料より低く設定されており、ローリスクでまとまった資金調達が可能です。
クレディセゾンでも診療報酬ファクタリングサービスを行っており、多くの実績を持っておりますので、お客さまの悩みに沿った提案が可能です。診療報酬ファクタリングサービスの内容についてはクレディセゾンの公式WEBサイト内にて詳しく説明しております。
診療報酬ファクタリングに興味をお持ちになられた方、さらにクレディセゾンのファクタリングサービスの内容について知りたいと思われた方は、まずはお手軽にクレディセゾン公式WEBサイトまたはお電話でお問合せください。