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【医師監修】色素沈着はどうして起こる?シミの原因と対策を知って美肌を目指そう

【医師監修】色素沈着はどうして起こる?シミの原因と対策を知って美肌を目指そう
小渕 英里 富士見スキンクリニック飯田橋 院長

監修者

富士見スキンクリニック飯田橋 院長

小渕 英里

日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医。東京女子医科大学卒、同大学病院東医療センター、都内クリニック勤務を経て、2021年9月に飯田橋駅西口すぐに「富士見スキンクリニック飯田橋」を開院。 皮膚科専門医として患者さまの悩みやご希望をお伺いし、保険診療/美容自費治療の両面から最適な治療方法をご提案しています。

顔や手の甲などにシミがあることで、老けている印象を抱かれがちです。できることなら、シミを目立たなくしたいと思う方も多いでしょう。

このコラムでは、色素沈着の原因やメカニズムを解説すると共に、シミの種類やセルフケアの方法、医療機関で受けられるシミ治療などをご紹介します。現在シミにお悩みの方はもちろん、シミの発生を防ぎたい方も必見です。

色素沈着とは?どうして起こるの?

1. 色素沈着とは?どうして起こるの?

色素沈着とは、メラニンの影響を受けて皮膚が黒や茶色っぽくなってしまう状態です。メラニンは皮膚の基底層で生成されますが、肌のターンオーバーによって排出されます。

では、肌に色素沈着として残ってしまうのはなぜでしょうか。まずは、色素沈着のメカニズムについて解説します。

メラニンの過剰分泌

メラニンの分泌量が多いと色素沈着の原因となります。肌のターンオーバーで排出が間に合わないほど過剰分泌されることで皮膚にメラニンが蓄積し、色素沈着が起こるのです。

もともとメラニンは、肌や髪の毛など私たちの身体に色を着けている色素です。メラニンの量が多いほど、肌や髪の毛が黒くなる傾向にあります。

メラニンには紫外線によるダメージを吸収する役割があります。人は紫外線を浴びることで皮膚細胞に障害が起こります。それらはシミやシワ、さらには皮膚癌の進行など、さまざまな影響を及ぼす可能性があります。そこでメラニンを分泌し、紫外線の影響を抑え、肌や身体を守るのです。

ところが、紫外線をたくさん浴びてしまうとメラニンが過剰に分泌されてしまいます。そうなると、ターンオーバーでメラニンを排出しきれなくなってしまうのです。また、紫外線だけでなく睡眠不足やストレス、喫煙などもメラニンの分泌を活性化させる要因となります。

ターンオーバーの乱れ

色素沈着の一因に、肌のターンオーバーの乱れも挙げられます。前述のとおり、メラニンはターンオーバーで外に排出されます。健康な肌は、およそ6週間のサイクルでターンオーバーを繰り返し、新しい肌へと生まれ変わるのです。

しかし、ストレスや寝不足、便秘、乾燥などによってターンオーバーの乱れが発生すると、メラニンがうまく排出されません。その結果、メラニンが皮膚内に居すわり、色素沈着となってしまうのです。

日光性の色素沈着は「シミ」になる

紫外線による日光性の色素沈着は、一般的に「シミ」として認識されています。シミと一言でいっても、紫外線の他に加齢やホルモンバランス、生活環境など原因はさまざまです。さらに、原因によってシミの種類や特徴が異なります。

シミの種類と原因 

2 .シミの種類と原因

シミの種類は、主に次の4種類が挙げられます。

【シミの種類】

  • 老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)
  • 雀卵斑(じゃくらんはん)
  • 炎症後色素沈着(えんしょうごしきそちんちゃく)
  • 肝斑(かんぱん)

それぞれの特徴と原因を解説します。

老人性色素斑

加齢と共にできやすいシミが、老人性色素斑です。「日光性色素斑(にっこうせいしきそはん)」とも呼ばれており、紫外線が原因です。名称のイメージや、実際に年齢を重ねた方にできやすいことから、若い方には縁がないシミというイメージを持つかもしれません。しかし、紫外線を浴びる機会が多いと、早ければ20代からできます。詳しく特徴を見てみましょう。

【老人性色素斑の特徴】

できやすい人40歳以上の方、紫外線を浴びる機会が多い方
場所顔、手の甲、腕など(紫外線を浴びやすい場所)
形状数mm~数cmの円形や楕円形
薄茶~濃茶
境界はっきりしている

老人性色素斑は歳を重ねるごとに増えていき、徐々に色が濃くなる傾向があります。

雀卵斑

雀卵斑は、そばかすのことです。遺伝の影響により、細かい斑点が幼少期から見られます。紫外線によってできた小さいシミと混同しやすいですが、別物です。雀卵斑の特徴をまとめました。

【雀卵斑の特徴】

できやすい方家族にそばかすがある人がいる方、色白の方、思春期の方
場所鼻から頬の周囲、背中、胸元、腕など
形状5mm以下の細かい斑点
薄茶
境界はっきりしている

個人差はありますが、雀卵斑は成長と共に増加していき、思春期に濃さのピークを迎えます。また、紫外線を浴びると、色が濃化しやすいです。

炎症後色素沈着

肌の炎症がきっかけとなって発生するのが、炎症後色素沈着です。炎症が起こると肌が赤くなりますが、赤みが鎮まった後にシミとなって残ります。ニキビや傷、虫刺され、摩擦などが原因となりやすいです。炎症性色素沈着の特徴も確認しておきましょう。

【炎症後色素沈着の特徴】

場所全身(炎症が起こる場所ならどこでもなり得る)
形状さまざま
茶褐色、灰褐色、紫褐色
境界わかりにくい

炎症後色素沈着は、どんな年齢の方にも起こる可能性があります。わかりやすい炎症だけでなく、身体を洗うときにゴシゴシ擦る、毛を抜くなどごく小さな炎症もシミとなり得るでしょう。

肝斑

肝斑は、女性ホルモンの乱れが原因で生じるシミです。女性ホルモンのバランスが乱れによって、メラニンの生成が活発になり、シミとなって現れてしまうのです。ホルモンバランスが乱れがちな、更年期や妊娠中などに起こりやすいとされています。特徴は以下のとおりです。

【肝斑の特徴】

できやすい方30代~50代女性、妊娠中の方、ピル使用中の方
場所頬骨周辺、額、口の周りなど
形状広範囲にもやもやと広がる
薄茶
境界わかりにくい

肝斑は大きな老人性色素斑と似ており、区別がつきにくいケースがあります。

女性だけでなく、男性の方にも多く見られ、一般にシミと認識されているのは、老人性色素斑です。“老人”というだけあって、ひとつあるだけで少し老けた印象を与えてしまう可能性があります。

シミをセルフケアする方法 

3 .シミをセルフケアする方法

ここまでで、シミの原因や種類などを解説しました。それでもシミができてしまったら、どう対処することで改善が目指せるのでしょうか。ここからは、シミをセルフケアする方法をお伝えします。

ただし、セルフケアの効果が期待できるのは、老人性色素斑と炎症後色素沈着、肝斑です。また、セルフケアしたからといって劇的にシミが薄くなるわけではありません。あくまで、シミの増加や濃化を防ぐ可能性のある方法となります。

紫外線対策をする

シミのセルフケアには、紫外線対策が重要です。紫外線はシミの原因となるメラニンを生み出してしまうばかりか、シミを悪化させてしまう恐れがあります。

紫外線と聞くと、晴れて日差しの強い日や、春先から夏ごろにかけて強くなるイメージがあるかもしれません。確かに雲が多い日や雨の日、冬には紫外線が弱くなりますが、紫外線は基本的にどんな天候や季節であれ降り注いでいるので、年間を通しての紫外線対策が大切です。

紫外線対策には、以下の方法があります。

【紫外線対策方法】

  • 日焼け止めを塗る
  • 日傘をさす
  • 帽子やサングラスを着用する
  • 長袖、長ズボン、ストールなどで肌を覆う

紫外線対策のポイントは、いかに紫外線を肌に到達する前に遮るかです。中でも注意したいのが、日焼け止めの塗り方です。日焼け止めは薄いと効果が半減してしまうので、ムラなくたっぷり塗りましょう。耳や首の後ろ、胸元なども忘れずに塗りましょう。日焼け止めは汗をかくと落ちてしまうので、2〜3時間ごとに塗りなおすと良いでしょう。

正しいスキンケアをする

シミ対策には、正しいスキンケアも大切です。洗顔方法や保湿、使用する化粧品の種類などに重点を置いてお手入れしましょう。

洗顔は優しく行う

洗顔はゴシゴシ洗わず、優しく行いましょう。肌を擦ると炎症の原因になり、炎症後色素沈着につながりかねません。

肌への負担を極力減らすためにも、洗顔料をしっかり泡立て、肌の上を転がすイメージで洗いましょう。摩擦の軽減効果だけでなく、洗浄力もアップします。洗顔で皮脂や汗をスッキリ落とせば、ターンオーバーの助けになります。

また、洗顔だけでなく全身洗うときも同様に、摩擦を減らして洗いましょう。濡れた肌を拭くときは、タオルを大きく動かさず、押さえるように水分を取りましょう。

保湿をしっかり行う

保湿も重要なシミ対策のひとつ。肌が乾燥しているとシミができやすくなります。

本来、肌にはバリア機能が備わっており、皮膚内の水分蒸発を防ぎ、外部刺激やアレルゲンなどから肌を守っています。しかし、乾燥するとバリア機能が低下し、外部刺激を受けやすい状態になります。そうなると少しの刺激でも炎症を引き起こし、シミができやすくなるのです。

肌の乾燥を防ぐには、保湿をしっかり行いましょう。保湿剤を使用するタイミングは、入浴直後がおすすめです。自己流の使い方ではなく、保湿剤に記載されている用法用量を守って使用しましょう。

美白化粧品を使用する

美白成分が配合された化粧品を使用することで、シミ対策につながるでしょう。美白有効成分はたくさんの種類がありますが、そのうち市販されている美白化粧品には、以下のような有効成分が含まれています。

【美白有効成分】

  • トラネキサム酸:メラノサイト(メラニンを生成する細胞)の活性化を抑制 など
  • ビタミンC誘導体:メラニン生成の遅延、メラニンの色を淡色化 など
  • リノール酸S:チロシナーゼ(メラニン生成に必要な酵素)の分解、メラニン排出の促進 など
  • 4MSK:チロシナーゼ活性化の抑制、シミ部分に蓄積したメラニン排出の促進 など
  • カモミラET:メラノサイトの増加と活性化の抑制 など

美白化粧品はドラッグストアやネット通販などでも手に入れやすいので、気軽にチャレンジしやすいでしょう。ただし、雀卵斑と肝斑には効果が出にくいです。雀卵斑や肝斑でお悩みの方は、別のアプローチも検討すると良いかもしれません。

適度にピーリング剤を活用してみる

ピーリング剤は、古い角質の除去を手伝ってくれるアイテムです。皮膚の表面で留まっている古い角質を取り除くことで、ターンオーバーを促進し、メラニンの排出を目指します。

ピーリングはやり過ぎてしまうと、まだ新しい細胞を剥がしてしまう恐れがあります。また、ピーリング後は肌が乾燥しやすいので、しっかり保湿しましょう。

食生活に気をつける

食生活を見直すことで、シミ対策につながります。特に意識して摂取したいのが、抗酸化作用のある食品です。身体の中に活性酸素が入ると、メラノサイトを刺激し、シミができやすくなります。活性酸素の働きを抑えるには、抗酸化作用のある栄養素が有効なのです。

抗酸化作用が期待できる栄養素は、ビタミンAやビタミンC、ビタミンEなどです。これらのビタミンは「抗酸化ビタミン」と称されています。抗酸化ビタミンが含まれている食品をご紹介します。

ビタミンAレバー、うなぎ、モロヘイヤ、にんじん、ほうれん草、カボチャ など
ビタミンCアセロラ、キウイフルーツ、赤ピーマン、ブロッコリー、かぶ など
ビタミンEアーモンド、落花生、うなぎ、豆乳、モロヘイヤ、カボチャ など

上記の食材を積極的に取り入れつつ、栄養バランスの取れた食生活を心掛けましょう。

生活習慣に気をつける

ストレスや睡眠不足、疲労は肌の大敵です。メラノサイトを刺激する活性酸素を増長させてしまうだけでなく、ターンオーバーの乱れにつながります。つまり、生活習慣の乱れはシミの原因となりやすいのです。

食生活の見直しと共に、ストレスや睡眠不足などを解消し、健康的な生活習慣を心掛けましょう。

シミに効果が期待される医薬品を取り入れる

より本格的にシミ改善を目指すなら、シミの原因にアプローチする飲み薬を取り入れてみてはいかがでしょうか。飲み薬は市販されているため、手に入れやすいです。飲み薬には、トラネキサム酸やビタミンCなどの他に、次のような成分が含まれています。

【成分】

  • L-システイン:ターンオーバーの正常化、抗酸化作用、疲労軽減 など
  • パントテン酸カルシウム:皮膚の新陳代謝の促進 など

他にもビタミンCやビタミンEが含まれている医薬品が多いので、シミ対策と同時に足りない栄養素を補給できるものもあります。

医療機関でできるシミの治療

4.医療機関でできるシミの治療

セルフケアではなかなかシミの改善が叶わない場合は、医療機関の受診を検討しましょう。美容皮膚科などの医療機関では、シミの種類によって適した治療法を提供してくれます。

具体的にどんな治療法があるのか、ご紹介します。

光治療

医療機関では「IPL」や「BBL」と呼ばれる特殊な光を照射する治療が可能です。光治療では、皮膚内のメラニンの破壊や排出を促し、シミ改善を目指します。また、レーザー治療よりも肌への負担が軽く、コラーゲンの生成やターンオーバーの促進が同時に叶うので、肌にとって嬉しい効果が期待できそうです。

ただし、1回の治療でシミを目立たなくすることは難しく、何度か治療を受ける必要があります。

【光治療が可能なシミの種類】

  • 老人性色素斑
  • 雀卵斑

レーザー治療

レーザー治療は、メラニンに反応するレーザーを肌に照射し、シミの原因となるメラニンにアプローチします。メラニンにスポット照射するので、より効果的な治療が望めるでしょう。

レーザーと一言でいっても種類はさまざまです。老人性色素斑には「Qスイッチレーザー、ピコレーザー」、肝斑には「トーニング」など、シミの種類や状態に合わせてレーザーを使い分けます。

レーザー治療は効果を実感しやすい分、痛みを伴います。スポットで照射する際は、ゴムではじかれたような痛さを感じるかもしれません。

【レーザー治療が可能なシミの種類】

  • 老人性色素斑
  • 雀卵斑

レーザーで肝斑の治療が可能な医療機関もあります。しかし、レーザー治療があまり向いていない場合があるので、よく相談しましょう。

内服薬や外用薬

飲み薬や塗り薬で、シミの改善を目指す治療法もあります。医療機関では、市販の美白化粧品や飲み薬よりも有効成分が高濃度の薬を取り扱っています。例えば、「肌の漂白剤」とも称されているハイドロキノンは、医療機関で処方してもらえる成分のひとつです。チロシナーゼの活性化を抑制し、メラニンを生成されにくくします。他にも、ターンオーバーを促進させるトレチノインもあります。

【ハイドロキノンやトレチノイン配合の薬で治療可能なシミの種類】

  • 老人性色素斑
  • 炎症後色素沈着
  • 肝斑

また、トラネキサム酸が配合された薬が処方されることも多いです。

シミを放置しておくと「脂漏性角化症」に進展する可能性も

5.シミを放置しておくと「脂漏性角化症」に進展する可能性も

シミの改善や治療はなかなか手強く、時間が掛かってしまうケースがあるでしょう。そのため、面倒に感じてしまうときもあるかもしれません。だからといって、シミをそのまま放置してしまうと、老人性のイボ「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)」に進展するリスクがあります。

脂漏性角化症は、老人性色素斑がだんだん盛りあがってできるイボです。基本的には良性腫瘍ですが、治療しない限り消えません。顔や首などにできてしまうと、目立ってしまうでしょう。

さらに、紫外線を長年浴び続けると「日光角化症(にっこうかくかしょう)」という皮膚癌の一種ができる危険性があります。日光角化症は、表面がカサカサ、ザラザラして、赤みを帯びているのが特徴ですが、一見するとシミと見分けがつきにくいことも多いです。

ただのシミだと思って放置してしまうと健康に悪影響を及ぼすケースがあるので、不安がある際は病院を受診しましょう。

おわりに

このコラムでは、色素沈着のメカニズムやシミの種類、セルフケアの方法などを中心にお伝えしました。シミを改善するには、紫外線対策やスキンケア、生活習慣の見直しが肝心です。今回紹介した内容を参考に、ぜひ挑戦してみましょう。

より本格的な治療を目指すなら、医療機関を受診することがおすすめです。中には健康被害の恐れがある場合もあるので、気になったら早めに受診しましょう。

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