医療技術の進歩によって、日帰り入院で治療を受けられる状況が増えてきました。しかし、医療保険が適用されるためには一定の条件を満たすことが重要です。このコラムでは、日帰り入院の要件と実際の例、給付金を受け取るための手続きと適用されるための注意点について解説します。
日帰り入院とは?
近年、医療技術の進歩によって治療に必要な時間は短くなる傾向にあります。今や入院でもその日のうち、つまり日帰りで済むことも少なくありません。そのため医療費に備える医療保険にも、このような日帰り入院の費用を保障できるものが一般的になりつつあります。
ただ、給付金を受け取るには一定の「要件」を満たすことが必要です。最終的には保険会社が判断しますが、一般的に条件は次の2つとされています。
- 条件① 請求書の項目「入院基本料」に点数の記載があること
- 条件② 入院した日と同じ日に退院すること
この他にも関連する「通院」や「日帰り手術」との違いを把握することも大切です。ここではそれぞれの定義と違いを詳しく見てみましょう。
条件① 請求書の項目「入院基本料」に点数の記載があること
公的医療保険制度によって定められた診療にかかる医療費を計算する元となるのが診療報酬点数票です。医師が「入院が必要」と判断すれば、受診者は入院という医療行為を受け、定められた点数を元に計算された医療費を支払います。このような入院で追加される項目が「入院基本料」またはこれを含む項目としての「入院料等」です。
入院基本料に含まれる医療行為は、入院した場合に行われる基本的な療養環境の提供や看護、医学管理です。「入院料等」は入院基本料が含んでいるため、ここに点数の記載があれば間違いなく入院であることを示しています。
入院基本料または入院料等の項目への点数の記載は、日帰り入院の2つの要件のうち「入院であること」を示す項目といえます。
条件② 入院した日に退院すること
条件のもうひとつは、「入院した日に退院すること」です。つまり、0時から24時の間に入院し退院するのが条件です。例えば、早朝6時に緊急入院して治療を受けた後、当日午後には容態が落ち着いたため医師の判断で午後6時に退院したという場合が該当します。このとき重要なのが時間の算定は「0時」が基準となっていることです。
先の例では入院時間が12時間ですが、同じ12時間でもある日の夜22時に緊急入院し、翌日の午前10時に退院すると、入院と退院の日付が異なるため入院日数は「2日」とされます。
通院との違い
入院できるのは医療施設の中でも、20人以上の入院設備があると認められた病院や一部の診療所だけです。しかしこれらの施設だとしても、ベッドの利用が単なる覚醒までの安置や休養のためだけなら入院にはあたりません。もちろん、入院施設のない診療所での治療、覚醒、休養も同様です。
このような状況は日帰り入院ではなく、医師による治療の必要な方が治療を受けるために医療機関に通う「通院」と取り扱われます。当然ですが請求書への入院基本料や入院料等への点数の記載はありません。
医療保険の中には通院に対して給付するものもありますが、その多くは入院前後の通院やがんなどの特定疾病の治療のための通院に限られていることには注意が必要です。このような目的以外の通院に対して給付されるわけではありません。
日帰り手術との違い
最近は疾患の種類や患者の症状に応じて進歩した医療技術を活用することで、手術も日帰りできるほどに短時間で完了できるケースも増えてきました。とはいえ日帰りできた手術のすべてが入院の対象であるとは限りません。医師の判断によって「入院」ではなく一時的な「休養」とされる場合もあるからです。
日帰り入院なのかどうかは、やはり請求書にある入院基本料や入院料等の点数で判断するしかありません。事前に確認したい場合は、医師や病院関係者に尋ねると良いでしょう。
日帰り入院になる例とならない例
日帰り入院になるか通院になるかは、傷病の種類や医師の判断によって変わります。傷病によっては、一定の経過観察が必要でも経過によって日帰り入院になるケースが多かったり、また別の傷病では退院できなかったりするケースもあるからです。
ここでは、まず代表的な「日帰り入院となるケース」を挙げ、そのうち大腸ポリープ切除の場合の流れを解説し、次に日帰り入院とならないケースを示します。
日帰り入院になる例
次のような治療は、日帰り入院にあたる代表的なものといえるでしょう。
- 内視鏡的副鼻腔手術
- 眼科手術
- 腱や靭帯の手術
- 神経剥離術
- 下肢静脈瘤の治療
- 痔核根治術
- 食道静脈瘤内視鏡手術
- 手根管開放術
- 上肢の骨折によるインプラント固定手術
- 胆石などの腹腔鏡手術
- 鼠径ヘルニア根治術
- 内視鏡的ポリープ手術 など
これらのうち大腸ポリープ切除のケースの日帰り入院は、およそ次のような流れです。
- 内視鏡検査でポリープが見つかる
- ポリープ切除手術の日程を決める
- 手術当日は絶食し、ポリープ切除手術を受ける
- 手術の後、経過観察のためにしばらく病院で安静にするよう指示を受ける
- 異常が認められないため治療が終了する
- 入院料等の項目に点数が記載された明細書を受け取り、医療費を支払って帰宅する
このケースのポイントは、ポリープ切除の手術を受けることと、手術後の経過観察のためにベッドで安静にするよう医師の指示があること、また経過観察で異常がなくその日のうちに医師が帰宅を認め、帰宅することです。日帰り入院の要件である、入院の必要と24時より前の退院を満たしています。
日帰り入院にならない例
入院のための設備があっても外来のベッドで治療を受けたり休養したりする場合は、入院とはならない可能性が高いといえます。
例えば炎天下の農作業をしていて気分が悪くなり、倒れ込んでしまったため家族が病院に連れていった場合の経過を考えてみましょう。
- 猛暑で農作業中気分が悪くなったがそのまま作業を続けていた
- 家族の顔色が悪いため休むよう伝え、その場に座った後倒れ込んでしまった
- 家族が病院に連れて行った
- 医師が熱中症と診断し、点滴を施した
- 医師の指示でしばらく病院のベッドで安静にした
- その後顔色がよくなり気分も回復した
- 医師が帰宅を認めた
- 外来診察として医療費を支払い帰宅した
これらの場合、点滴を受けしばらく安静にしていましたが、特別な処置は施されていません。そのため請求書にも入院料等に点数は記載されず、通院による診療として扱われます。入院ではないため、日帰り入院とはなりません。
日帰り入院の給付金受け取りの手順
日帰り入院の給付金を受け取るには、保険会社に必要書類を添えて請求する必要があります。手続きの方法はインターネットを利用した「WEBサイトでの手続き」、または電話と書類郵送で行う「電話と郵送での手続き」の2種類です。
どちらの場合も必要な証明書類は同じですが、保険会社が対応していれば手続きはWEBサイトでの手続きをおすすめします。まずは保険会社に給付金を請求したいことを連絡し、対応しているかどうかを確認しましょう。保険会社によってさらに書類が必要だったり、書類の書式が決まっていたりすることもあります。その場合は保険会社の指示に沿って手続きを進めましょう。
必要な証明書類
日帰り入院の給付金請求に必要な書類は、おおむね次の4つです。
- 給付金請求書:保険会社によって異なる
- 保険証券:証券番号や保険の内容を確認する
- 領収書:診療項目ごとの点数や請求期間等を確認する
- 診療明細書:病院で受けた診療区分ごとの項目名や点数・回数を確認する
このうち「1」は、電話と郵送で手続きする場合にのみ必要ですが、その他の3つはどちらの場合でもそろえる必要があります。
WEBサイトでの手続きの手順
保険会社が対応していれば、インターネットを使った「WEBサイト経由」で手続きできます。事前に連絡していれば、メールなどで通知されるので、あとは画面の指示に従って必要事項を入力していくだけです。
必要書類も、スマホなどのカメラで撮影した画像をアップロードすることで完了します。WEBサイトへの入力と必要書類画像をアップロードしたら、あとは保険会社が確認し、承認するのを待つだけです。ここまで最短で、1日で完了できます。紙の書類だと手続き完了までかかる日数は、送られてくるまで、また記入して投函し、保険会社に届くまで短くても2日以上です。WEBサイトでの手続きは特に急いでいる方にはおすすめの方法だといえます。
電話と郵送での手続きの手順
電話や郵送を使った手続き方法では、電話と書類のやりとりで給付金を請求します。大まかな手続きの流れは次の通りです。
- 保険会社へ日帰り入院の給付金を請求する旨連絡する
- 保険会社から書類が届く
- 書類に記入し、必要書類を添付して送付する
- 書類が保険会社に届く
保険会社に書類が届くまでの日数がかかりますが、書類をひとつずつ手にとって確認し確実に送付できるのはこの手順のメリットといえるでしょう。もし、書類の記入方法がわからないときは、保険会社に尋ねることもできるので安心です。
日帰り入院給付金受け取りの3つの注意点
日帰り入院給付金を受け取るには、他にも次のような注意すべき点があります。
- 給付金受け取りの条件を確認する
- 日帰り入院の給付金には請求期限がある
- 入院とされない日帰り手術がある
どれも確認が必要で、欠かすと給付金が受け取れない可能性がある重要なポイントです。そのような事態を避けるためにも、ひとつずつ内容と対策を理解しておきましょう。
給付金受け取りの条件を確認する
まず重要なのは、給付金を受け取る条件を満たしているかどうかです。請求書または領収書に入院基本料や入院料等の点数が記載されているかどうか、入院日と退院日が同じ日かどうかを確認しましょう。
また保険の種類や状況によっては、医師の診断書がなくても領収書があれば請求できる場合もあります。しかし、1日分5,000円の入院給付金を請求するために同程度の金額となる診断書費用を支払わなくてはならない場合もあるので、受け取りのための条件は追加でかかる費用も含めて総合的に判断することが大切です。
日帰り入院の給付金には請求期限がある
日帰り入院の給付金は、医療保険の保障の一部です。保険に関するさまざまな取り扱いを定めた保険法は第95条において、保険給付金を含む保険金や解約返戻金、前払い保険料を返還する権利は、権利を行使できるようになった日の翌日から3年間行使しなかった場合、時効によって消滅すると定められています。
参照元:保険法 第95条(消滅時効)
給付金を請求しないといった事態は、例えば保険を契約した当事者がいない、忘れてしまった、また保険証券がなく内容が確認できないといった場合にはあり得ます。もし手元での確認ができない場合は、加入している保険会社に直接尋ねてみるのも良いでしょう。保険は、さまざまな状況において保険金が支払われるための、一種の「財産」です。請求できるものはきちんと請求し、その役割を十分果たすべき財産だといえます。
入院とされない日帰り手術がある
日帰り入院と日帰り手術は、言葉こそ似ていますが医療保険での取り扱いはまったく異なるものです。例え0時をまたがない「日帰り」で、確かに「手術」ではあっても、「入院」とみなされない場合も十分あり得ます。
その場合、加入している医療保険によっては手術に対して手術給付金は受け取れても、入院給付金は受け取れません。「日帰りで手術だから大丈夫」などと勝手に判断せず、給付の対象になるかどうかは医師や病院関係者に必ず確認しましょう。
医療保険を選ぶ3つのポイント
日帰り入院で給付金が受け取れるかどうかは、加入している医療保険の内容によって結果は大きく異なります。それぞれ給付のための条件が異なっていたり、同じような内容でも詳しく見れば給付されない条件があったりとさまざまです。ここでは、日帰り入院給付金を受け取るための医療保険をどう選ぶか、そのポイントを3つ解説します。
入院に免責期間があるかどうか
入院給付金について医療保険を比較する場合は、給付金を受け取ることができる条件を細かい点まで確認することが大切です。そもそも日帰り入院の給付金は比較的新しい保険商品で、古いタイプの医療保険では保障されていないこともあります。
そのような保険では入院は「入院給付金」で保障されます。しかしその場合「入院◯日目から給付される」「給付される限度は◯日間」といったように免責期間が設けられ、給付日数にも限度があるなど、一般に日帰り入院は保障されていません。
日帰り入院と入院は要件が異なるため、給付される条件も異なります。入院に関して医療保険を選ぶときは、このような免責期間や給付日数の制限があるかどうかを確認しましょう。
手術給付金の条件に入院が入っているかどうか
医療保険で手術に対して保障がある場合は、手術給付金を受け取る条件に「入院」が入っているかどうかも重要です。もし入っていれば手術給付金と併せて入院給付金も受け取ることができます。
請求手続きでは、まず受けた手術の種類を医療機関に確認し、それを保険会社に伝えて保障の対象かどうかを確認することから始めます。対象であれば手術給付金と入院給付金の両方を保険会社に請求して給付金を受け取りましょう。
医療保険は複数の保険会社を比較して選ぶ
どのような医療保険を選ぶかは人それぞれです。しかし、どの商品を選ぶにせよ、何も調べずに決めるのはおすすめできません。最低でも2つ以上、できれば複数の保険会社から見積もりを取り寄せた上で比較し、それぞれの良い点や劣る点についても理解することが大切です。
しかし、見積もりの取り寄せだけで簡単に比較できるものではありません。もしこれから医療保険を比較して選ぶなら「保険@セゾンカード」がおすすめです。このWEBサイトでは、複数の保険会社の医療保険の見積もりを簡単に請求できます。
他にもこのWEBサイトでは、保険商品の概要を確認することも、資料請求することも可能です。もちろん直接申し込むこともできます。医療保険の他、がん保険の見積もりもできるので、これから保障を見直したい方にはおすすめです。
おわりに
近年の医学の進歩によって、以前なら数日以上の入院・治療が必要な疾病が、短ければ1日足らずで治療できるようになりました。しかし、この進歩は入院に関する保障のあり方を変え、保険にも大きな変化をもたらしました。そのひとつが日帰り入院への給付金です。
日帰り入院には2つの要件があり、給付を受けるには少なくともその両方を満たさなくてはなりません。その上、こちらで必要書類をそろえて保険会社へ3年という請求期限内に送り、承認してもらう必要があります。
ただ重要なのは、このような日帰り入院に対する給付金を、より受け取りやすい医療保険に加入することだといえるでしょう。そのためにはひとつだけでなく、複数の保険会社の医療保険を比較することが大切です。ひとつでも多くの医療保険を比較して納得のいくものを見つけ、将来の「万が一」にしっかり備えましょう。