国民食とも言われ、子供から大人まで愛されている「カレー」。私たちの生活の中に浸透し、親しみあるメニューとして食卓に多く登場しています。栄養価が高く、野菜と肉や魚が含まれ、ご飯と合わせることでバランス食の代表とも言えるほどです。
カレーの本場といわれるインドには、「カレーと称する料理はなく、素材やスパイスの組み合わせの違い、調理法の違いなどで、それぞれ固有の料理名が付けられています。これら、何百種類ものスパイシーな料理を、“カレー”と呼んでいるのです。
スパイスや食材、隠し味をうまく使いこなして、美味しいカレーを作ってみませんか。今回はカレーについて解説します。
1.カレーとスパイスとは
カレーに含まれるスパイスには、5千年も前に書かれた、中国の漢方書に、ジンジャーや ターメリックといった、スパイスについての記述があるといいます。中国では今もいわゆる漢方として処方されているほか、インド古来のアーユルヴェーダでは何千年も前と同じようにスパイスを処方し、食生活の基本となっています。
スパイスには消化を助ける作用があることは古くから知られ、古代ローマでは濃厚な料理をたっぷり食べた後、デザートにスパイスケーキを食し、消化に役立てていたそうです。スパイスは、はるか昔から香りや味を楽しむだけでなく、薬としての効果が認められ、様々に利用されていました。
1-1.カレーは食べるクスリ!
カレーは、便秘の改善・免疫力UP・美肌効果・コレステロールの改善・動脈硬化の予防などに、またターメリックに含まれるクルクミンが認知症予防につながるとされています。さらに体を温める効果や、ダイエット効果も期待できるといわれています。カレーだけでなく、カレー粉を使った料理も、毎日の食事に取り入れていきましょう。
2.カレーをグレードアップする方法
カレーのベースに、調味料や食材、スパイスを加えることで、同じ具で作ったカレーが、不思議なほど、味わい深い、本格的なカレーに仕上がります。
2-1.砂糖で下ごしらえ
肉・魚の下ごしらえに、あらかじめ砂糖をもみこんでおくと、やわらかくしてくれたり、臭みをとってくれます。少量の砂糖をもみ込んで15分ほどおき、水分をふき取ります。
2-2.スタータースパイス
カレーらしい香りを出すのに、欠かせないスパイス「クミンシード」。このクミンシードを最初に油で炒めて、十分に香りを出してから、たまねぎなどと合わせると香り高いカレーになります。4人分で小さじ1くらいが丁度良いでしょう。クミンシードは焦げやすいので、弱火でゆっくり炒めましょう。
2-3.香味野菜
玉ねぎを炒めた後で、ニンニクやショウガ、セロリなどを加えて炒めます。ニンニクは肉や魚の臭み消し、食欲増進効果があると注目されています。ショウガは肉や魚の臭み消し、風味付けに欠かせません。セロリは、爽やかな香りと旨みを出してくれます。
2-4.トマト
加熱用の生トマトを皮ごとざく切りにしたり、水煮の缶詰などを加えます。本場インドではたくさんのトマトが使われていて、コクのあるさっぱりと爽やかな味になります。酸味やペクチンは、肉や魚介類の脂分を和らげてくれます。また、トマトのリコピンは抗酸化作用が期待できます。
2-5.ローレル・ベイリーフ・月桂樹の葉
肉や魚介類の生臭さを和らげ、爽やかで上品な香りに仕上げるのに効果的なハーブです。葉をちぎったり、切れ目を入れたり、軽く揉んでから、加えると香りが出やすく、じっくりと煮込みます。
3.調味料ソムリエプロがおすすめ「カレー」
ここからはおすすめのカレーである信州味噌入りカレーペースト「カレーな小瓶」を紹介します。
信州味噌入りカレーペースト「カレーな小瓶」(カレーの大原屋・長野県)
調味料選手権2012 万能調味料部門 入賞商品。長野県飯田市、カレー専門店「カレーの大原屋」が作る「信州味噌入りカレーペースト カレーな小瓶」をご紹介いたします。
小学校5年生から、カレーを作っていた、というカレー好きがこうじて、2007年に地元でカレー専門店をオープンしました。朝カレーという言葉があるように、朝7時からカレーランチを出している人気店です。
地元の食材を使いたいという思いから、子供の頃から食べ慣れた信州味噌を使っています。信州味噌はクセがないので、食材とカレースパイスの仲介役として味をまとめてくれるとか。まさに、ソウルフードですね。
「カレーな小瓶」は10年余り前に誕生しました。地元のお客様の声を反映させた、あっさりとした味わいで、どんな食材にも絡みやすく、万能に使えるカレーペーストです。玉ねぎなどを加えれば、お子様にも辛味が抑えられて召し上がっていただけます。
使い方のコツは、具材と一緒に加えて炒めてあげると、香ばしい味噌の香りがするカレーに。最後に加えて溶かせば、味噌の風味が残るカレーになります。他に、ご飯を炒めて加えれば、あっという間にドライカレーの出来上がり。
野菜やひき肉と一緒に加えて炒め合わせ、少量のトマトジュースやヨーグルトを加えればキーマカレーの出来上がり。野菜炒めの味付けやオムレツの卵に溶かせば、カレー風味のオムレツに。鶏肉の下味に加えればカレー風味の唐揚げの出来上がり。
また、ルウカレーを普段の半分だけ使って最後にカレーの小瓶を加えれば、味噌の香り立つ、いつものカレーとは違った美味しさが味わえます。味が濃いので、少しずつ入れるのがポイントです。
手間暇をかけて作られて「カレーな小瓶」は、何にでも合うのでレシピは無限大です。おいしいカレー料理をいただきましょう!
☆きのことトマトのエスニック風カレー ターメリックライス添え
きのこの旨みとトマトの酸味が程よく、あと味さわやか! 鶏ひき肉も入り、食べ応え満点!水の代わりにココナッツミルク、隠し味のナンプラーが決め手!サッと、炒め煮にすれば、出来上がり!
【材料】(2人分)
鶏ひき肉 80g、きのこ類(シイタケ、シメジ、エリンギ) 計250g、トマト(中玉) 2個、クミン(ホール) 小さじ1╱2、ショウガ、ニンニク(すりおろし) 各小さじ1、オリーブ油 大さじ1、カレーな小瓶 大さじ4、パクチー 適量、
A:ココナッツミルク 200ml、ナンプラー 小さじ1、ローレル 1枚、
【作り方】
1.シイタケは軸を切って四つ割りに、シメジは石づきを落としてほぐし、エリンギは長さを半分に切り、縦に四つ割りにします。トマトは皮つきのままざく切りにします。
2.鍋にオリーブ油を熱してクミンを加え、じっくり炒めて香りを出し、ショウガとニンニク、鶏ひき肉、「カレーな小瓶」、①を加えて、よく炒め合わせます。
3.(A)を加えて、弱中火で3~4分煮込み、火を止めます。
4.器に盛り、ターメリックライスと③を盛り付け、みじん切りにしたパクチーを添えます。
☆ターメリックライス
【材料】(作りやすい分量)
米 2カップ、レーズン 15g、
(A)ターメリックパウダー 小さじ2、タマネギ(みじん切り) 1/4個(50g)、オリーブ油 大さじ1、
1.米は洗って30分ほど浸水させて、水気を切ります。(A)を加えて、普通に水加減をして炊きます。
2.炊き上がれば、レーズンを加えて混ぜ合わせます。
4.カレーを美味しくするワザ
カレーに隠し味を加えることで、味の変化をつける決め手になります。隠し味に何を使うか、どのタイミングで加えるかは、人それぞれの好みの問題なので正解はありません。カレーの味を壊さないように、何を入れたのか、わからないくらいに加えるのがベストです。
4-1.辛味
一味唐辛子、鷹の爪、豆板醤、タバスコ、マスタード、黒こしょうなどの辛味のあるものを加えることで辛さが増します。
4-2.苦味
コーヒー(インスタント含む)の苦みが加わることで味に深みが出ます。苦みと甘みをプラスしたいときには、チョコレートがおすすめです。
4-3.甘味
甘みは味覚の中でも一番はじめに舌が感じるもの。煮込む時に加えるのがベストです。砂糖、ハチミツ、ジャム(マーマレードなど)、チャツネ、ケチャップ、フルーツなど。フルーツの甘味、風味も加わり奥深い美味しさに。
- リンゴ:カレーの定番フルーツ。炒めて香ばしさを出して煮ます。
- バナナ:フルーティな甘みが加わります。
- マンゴー:ペーストにして煮込めば、濃厚な旨み、チャツネの代用も可能。
- ドライフルーツ:水でもどしたり、そのまま炒めたりします。
4-4.酸味
酸味を少し加えるだけで、味が全体に引き締まり、美味しさがアップします。赤ワインやレモン汁、仕上げに酢を加えるなど。
- 梅干し:インドではタマリンド。梅干しをたたいて入れても。
- ヨーグルト:北インドではスタンダードな方法、優しい酸味に。
- トマトやトマトピューレ:酸味だけでなく、旨みも。
4-5.コク
乳製品の凝縮されたうまみをアップします。肉を炒める時、玉ねぎを炒める時、煮込みの時に加えたりと、オイルの代わりに使うだけで、カレーがグッと美味しくなります。
- バター:パンチがきいた旨みを兼ね備えているのがバター。
- ヨーグルト:ベースを作る時に加えて煮こむと、酸味が旨みに。
- 生クリーム:煮詰めると口当たりのなめらかさと濃厚なうまみが生まれます。
- 生クリーム、バター、牛乳、ヨーグルト、粉チーズ、クリームチーズ:仕上げに
コクと風味がプラスされる。加えたら、さっと混ぜれば、クリーミーさが際立ちます。入れ過ぎるとしつこくなったり、カロリーオーバーにもなるので注意しましょう。
4-6.風味
アルコールを加えるとコク、旨み、風味、香りがアップします。 赤ワインや日本酒、焼酎、梅酒など、どんなお酒でもOKです。
- ワイン、酒:肉を炒めた後に加えてアルコール分を飛ばして煮込みます。
- 焼酎に漬け込む:肉を漬け込むと、風味がしみ込んで美味しさを演出してくれます。
4-7.調味料
仕上げ時に加えます。
- 酢:酸味を感じない程度に酢(レモン汁)などを少し加えることで、味が全体に引き締まり、美味しくなります。
- 醤油:ひと味足りないな、と感じたら、醤油を少々入れると、美味しくなります。
- その他、味噌、ウスターソース、ネギ油などもおすすめです。
4-8.スパイシー
カレー粉やガラムマサラなどのスパイスを加えて、フレッシュなスパイシーさを補います。煮込みの途中や仕上げ時にひと振りするだけで、香りワザを発揮します。特に、翌日のカレー、温めなおしのカレー、レトルトカレーに加えれば、香り高く仕上げてくれます。
ガラムマサラは、インドを代表するミックススパイスです。料理の仕上げに香りや辛みを高める目的で使うのが一般的です。3~10種類くらいのスパイスが配合されています。(ブラックペッパー、チリペッパー、クミン、シナモン、グローブ、ナツメッグなど)
4-9.カレーと言えば、らっきょうと福神漬け
らっきょうは、疲労回復や食欲改善、腸内環境を整えるなどの効果も期待できます。また、同じ酢を使うピクルスなどもおススメです。福神漬けは、インドで良く添えられているチャツネに似ていたので、添えられるようになったとか。カリッとした食感とほのかな酸味がカレーによく合います。
4-10.ピーマンやししとうなど青みの野菜をトッピング
青みのある野菜を刻んで、出来上がったカレーに加えると、香りが良くなり、カレーの旨みもアップします。
4-11.隠し味を使う際の注意点
好みの調味料をたすときは、味見をしながら少量ずつ加えるようにしましょう。隠し味を加える量は最小限に留めましょう。塩味のある隠し味をいれるなら、カレールウを減らしましょう。
おわりに
いつものおかずや汁物、例えば、ポテトサラダやスパゲッティ、きんぴらごぼう、麻婆豆腐、インスタントラーメンやスープに、カレー粉をひと振りすれば、洋風も和風も中華もパンチのある味に。1つの料理を2度楽しめます。
いつもの料理に、カレー粉やカレールウを使い、カレーパワーで元気に過ごしましょう。