食卓で大活躍する「めんつゆ」。秘伝の味を家庭で手軽に味わえるよう生み出されたのが、めんつゆです。めんつゆは、そうめんやざるそばなど、夏の麺類を食べる時はもちろん、最近では料理の味付けに使われることも多い優秀な万能調味料です。
一見、どれも違いがないように見えるめんつゆですが、出汁の種類や加えている調味料で味わいも異なってきます。今回は普段気軽に使っているめんつゆとはどのようなものなのか、種類や活用法について解説します。
1.めんつゆとは
「めんつゆ」はその名の通り、うどんやそばの麺類に付けたり、スープに使うための調味料です。主な原料は、濃口醤油、本みりん、砂糖、かつお節が中心です。和食に使われている調味料がずらりと並び、旨味・甘味・塩味が揃った万能調味料です。
めんつゆ1本あれば、さまざまな料理の調味料として、醤油の代わりとして、だし醤油としても使う家庭が増えています。めんつゆは、クオリティが高くて美味しいものばかりです。
2.めんつゆのかえし
江戸時代後期には、そば屋が今のファーストフードのように繁盛していたとか。それまで大豆だけで作られていた醤油は、炒った小麦を加えることで発酵した良い香りを醸し出し、そばによく合う濃口醤油が誕生しました。「かえし」とは、醤油・砂糖・本みりんを混ぜて作られる、そばつゆの基礎となる調味料のことです。
「かえし」は、そばつゆの味わいを決めるカギといわれています。実際、今でも、主人が自ら作る、門外不出という老舗のそば屋も多く、職人による手仕事です。このかえしを出汁で割って、そばつゆが作られます。
2-1.かえしの製法
かえしには、いくつかの製法があります。
・本かえし
みりんと砂糖と醤油など、全ての材料を加熱して合わせる製法。醤油の角が取れてまろやかな味わいになります。最も一般的なかえしとして使用されています。
・生返し
少量の水やみりんで砂糖を溶かし、醤油を加えて合わせる製法。醤油を加熱しないため、醤油の香りや味が引き出されます。
・半生かえし
かえしに使用する醤油の半量のみを加熱して砂糖や本みりん等を加えて溶かし、残りは非加熱の醤油を合わせる製法。加熱が抑えられて、醤油本来の香りや風味が生きます。
こうしてできあがったものを、さらに1週間から2週間ほど寝かせることで、醤油の角が取れ、よりまろやかになります。かえしの熟成が終われば、主にかつお節を使った出汁を加えてそばつゆが完成します。醤油のグルタミン酸とかつお節のイノシン酸という旨味成分が相乗効果を生み、さらに旨みを増し、美味しくなります。
3.めんつゆの種類
めんつゆの普及で、出汁を取るなどの手間がなくなり、時短で美味しい麺類や料理が食べられますが、関東の人は濃口醤油をベースにしたかつお出汁、関西の人は淡口醤油をベースにした昆布出汁を選ぶと失敗がないようです。
3-1.めんつゆの出汁の種類
かつお節、昆布、しいたけなどの和食の基本となる出汁から、鶏出汁やあご出汁、えび出汁などの珍しい出汁まで、その種類は多岐に渡ります。
かつお節が使われているめんつゆは、風味やコク、味わいが深く、本格的な料理が簡単に仕上がるのが魅力です。めんつゆにはかつお節が使われているものが多いようです。
昆布がメインに作られているめんつゆは、香りは弱いのですが味は濃厚です。出汁が決め手となる丼物や煮物、鍋物などに幅広く使えます。
3-2.めんつゆの濃度
液体のものは、そのまま使えるストレートタイプか、水や湯などで薄めて使う濃厚タイプに分けられます。他に粉末状のものもあります。
ストレートタイプ
手軽にそのまま使用することができ、そのままの美味しさを楽しめます。開封後の賞味期限が短いですが、容量が少なめのものが多いようです。
濃厚タイプ
自分の好みで濃さを調整して食べることができます。ストレートタイプのものに比べ、量や回数を多く楽しめますが、希釈倍率が分かりにくいのがデメリットでもあります。賞味期限も長く、しっかりとした味わいなので、様々な料理に使うことができます。価格はストレートタイプより高めですが、希釈後の量を考えると割安になります。
希釈倍率について
2倍濃縮の場合、つゆの2倍の水を加えるという意味ではありません。例えば、めんつゆに水を加え、合計で2倍量にするとストレートタイプと同様に使えるという意味です。めんつゆと水の比率は以下のとおりです。
- 2倍濃縮(めんつゆ1:水1)
- 3倍濃縮(めんつゆ1:水2)
- 4倍濃縮(めんつゆ1:水3)
- 5倍濃縮(めんつゆ1:水4)
3-3.めんつゆの味わい
めんつゆには、色々な味わいがあります。
万能タイプ
店頭に並んでいる種類も豊富で、使い勝手も良く、冷蔵庫に常備していることが多いタイプです。そばやうどんのつゆとしてだけでなく、麺の種類を選ばずに使えます。出汁の種類もかつお節や昆布、しいたけなど複数の素材を使った合わせ出汁などもあります。
また、めんつゆとしてだけでなく、味のバランスが良く、万能調味料としても優れています。煮浸し、煮物、鍋など、様々な料理の味付けに使いやすいのが特徴です。
そば用
そばつゆは、そばの麺が太い分、麺に絡みやすいように、醤油も出汁も濃い目でしっかりとした味付けになっていますが、そばの香りを楽しめるように出汁の香りはそれほど強くありません。かつお出汁を中心に少し甘みのあるものなど、自分で味の調整ができる濃縮タイプのものが多いようです。
うどん・そうめん用
うどんやそうめんつゆは、そばつゆよりもあっさりとした薄味に作られています。夏場の需要から、そのまま使えるストレートタイプが多く、繊細な白いそうめんが美しく見えるような淡く透き通るような色合いで、出汁の味わいがしっかり感じられ、醤油は弱めで塩分も控えめが多いようです。
変わり種のめんつゆ
いつものめんつゆに飽きてきたときには、カレー風味、豆乳風味、イタリアンのトマト風味、肉味噌、麻辣系、焼肉たれ、鶏出汁、あご出汁など様々な種類が販売されています。気分を変えて、好みの味わいを探すのも楽しいですね。
4.調味料ソムリエプロがおすすめ「めんつゆ」
ここからはおすすめのめんつゆを紹介します。
鰹節屋がつくった食べるめんつゆ(株式会社新丸正・ 静岡県)
2020年調味料選手権しょうゆ部門最優秀賞受賞商品。創業80有余年、静岡県の焼津市で鰹節屋として創業した株式会社新丸正「鰹節屋がつくった食べるめんつゆ」をご紹介させていただきます。
焼津港は、冷凍カツオの水揚げ量、日本一を誇る港です。この新鮮な冷凍カツオを原料とし、鰹節づくりから削り節、ダシ調味料までを一貫生産をし、こだわりの様々な商品開発を行っています。商品開発の一つとして「食べるシリーズ」があり、第1弾「食べるだし醤油」、第2弾「食べる梅ぽん酢」、第3弾として、めんつゆ風調味料「食べるめんつゆ」が誕生しました。
原材料は、自社製造の鰹節をチップ状にしたもの、細かく砕いたもの、パウダー状にしたものの3種類の鰹節が入っているので、口の中に鰹節感がしっかりと残ります。
信州長野で2ヵ月間低温熟成させた醤油を作る途中にできる大豆もろみ、北海道産利尻昆布、国産乾燥椎茸は水で戻してスライスしたものと戻し汁を出汁として加え、隠し味として味に厚みが出るイワシ削りを加えています。
他にみりんなどを加え、手間を惜しまず、味わいにこだわり、美味しさを追求しています。
最後に、ビン詰めをして完成して商品化するのですが、安全第一に2年におよぶ試行錯誤のうえ、保存性の高い、美味しさをそのままビンに詰め込むことに成功しました。
おすすめは、卵かけご飯です。かつお節などの旨味を閉じ込めた「食べるめんつゆ」は、卵とご飯に良く合い、最高の味わいです。
そのままおひたしや冷奴、生野菜のディップ、炒飯や炒め物の味付け、焼いた肉や魚にトッピングしたり、太めのうどんにも良く絡んで旨さ倍増です。合わせ出汁が良く効いているので、様々な素材との相性が抜群です。
★ローストビーフトーストサンド
和の鰹節の味わいは、ローストビーフやパンとも高相性♪
<材料>2人分
食パン(8枚切り)2枚、ローストビーフ(薄切り・市販)40g、ミニトマト2個、レタス類適量、食べるめんつゆ小さじ2、バター適量
<作り方>
- ミディトマトは薄切り、レタス類は手でちぎる。
- ボウルに、ローストビーフと食べるめんつゆを加えてサッと和える。
- 食パンに、バターを塗り、①と②をのせ、もう1枚のパンではさみ、食べやすい大きさに切る。
★夏野菜のオイル炒め
夏野菜もたっぷり、味つけは食べるめんつゆだけ!
<材料>2人分
夏野菜等約300g、オリーブ油大さじ1、食べるめんつゆ大さじ2
<作り方>
- 夏野菜等は、それぞれ食べやすい大きさに切る。
- フライパンにオリーブ油を熱し、①を加えて、よく炒め合わせる。
- 野菜類が炒まれば、食べるめんつゆを加えて、サッと混ぜ合わせ、器に盛る。
夏野菜等は、ナス、ズッキーニ(3色)、パプリカ(赤)、しめじを使用。夏野菜等は、炒めずに、電子レンジで加熱しても良い。
★イカ刺しのしそ和え
イカ刺しの美味しさと香味野菜と鰹節の香りは夏の定番!
<材料>2人分
イカ(刺身用・細切りのもの)80g、みょうが1個、青じその葉2枚
A:食べるめんつゆ小さじ2、ごま油小さじ1/3
<作り方>
- みょうがは縦に半分に切り、細切りにする。
- ボウルにAとイカ、①を加えて、サッと混ぜ合わせる。
- 器に盛り、千切りにした青じその葉を添える。
★味玉
食べるめんつゆがあれば、茹で卵にまぶすだけ!
<作り方>
ラップを22cm角に切り、食べるめんつゆ小さじ1/2と、ゆで卵1個をのせて全体をまぶし、ラップを中央に寄せてねじり、輪ゴムなどで止める。数時間~半日置くと味がなじむ。(密閉できる袋に入れるのも良い)
めんつゆ(糀屋 雨風・大阪府)
創業元禄2年、約330年に渡り、伝統技法をそのままに木桶や杉室を使い、作り続けている老舗醤油蔵です。本醸造しょうゆに良質のかつお節でとった出汁と本みりんをブレンドした、まろやかで上品な味と香り、旨みが閉じ込められた2倍濃縮タイプのめんつゆです。麺類はもちろんのこと、料理調味料としても重宝します。
5.めんつゆの活用法
面倒な調味料の配合なしに、簡単にこれ一本で味が決まります。麺類はもちろん、和え物から煮物や炒め物の味付け、魚の煮つけ、天つゆ、炊き込みご飯、おでん、鍋まで幅広く活用でき、基本的に醤油を使う物ならほとんど合うでしょう。
和風のイメージがありますが、炒飯などの中華やステーキなどの洋風の料理にも使うことができます。めんつゆの活躍は無限大です。
- いつもの料理に、チョイ足し、チョイがけすれば、出汁の旨味や甘味で美味しさを引き立ててくれます。
- 味が物足りない時の隠し味にも、手軽に使えるのに本格的な味わいに仕上がります。
5-1.あらゆる料理に合う
- 野菜系:キュウリや葉野菜、根野菜に加えて、混ぜるだけ、漬けるだけ、炒めるだけ。
- 肉 系:唐揚げの下味に使ったり、ハンバーグから餃子までかけだれとしても。
- 魚 系:面倒と思われがちな魚の煮つけや蒸し物も。
- 卵 系:卵焼きの下味に加えて、出汁巻き卵に。
- ごはん:温かいごはんにのせるだけ、和えてかけるだけ。
- 麺:麺のために生まれてきためんつゆ。そばからパスタの味付まで。
- 鍋:野菜や肉を切って煮込むだけの鍋料理も、出汁いらず。
- その他:いつもの納豆や卵かけご飯も、グレードアップ!
5-2.アレンジめんつゆ
- ウーロン茶割りつゆ:水の代わりにウーロン茶で割り、大根おろしをチョイ足し。(豚しゃぶのつけダレ)
- ごまめんつゆ:白ねり胡麻、白すりごまをチョイ足し。
- カレーめんつゆ:少量の水で溶いたカレー粉をチョイ足し。
- ごま味噌めんつゆ:味噌と白すりごまをチョイ足し。
- ツナ缶と香味野菜つゆ:ツナ缶とおろし生姜、しその千切りなどをチョイ足し。
- トマトと香味野菜つゆ:トマトとみょうが、大葉の千切りなどをチョイ足し。
- 辛味系や香味野菜つゆ:七味唐辛子やわさび、万能ねぎなどの香味野菜などをチョイ足し。
- アジアン風つゆ:ナンプラーや唐辛子、パクチーをチョイ足し。
- トマトとニラの中華風つゆ:トマトと刻みニラ、仕上げにごま油をチョイがけ。
- ニンニク入り中華風つゆ:おろしニンニクと酢、ラー油をチョイがけ。
- サラダドレッシング:レモン汁(酢)、オリーブ油、隠し味に砂糖を少しプラス。
- マヨめんつゆ:マヨネーズとめんつゆ、レモン汁をプラス。
- 焼肉ソース:リンゴ、玉ねぎのすりおろし、コチュジャンをプラス。
おわりに
めんつゆは、どのような麺類や料理にも合うように工夫されていて、調味料感覚で使え、簡単に味が決まるのがメリットです。最近は醤油よりも多く消費されているので、様々なメーカーが試行錯誤して新商品を送り出しています。
お気に入りの「めんつゆ」を見つけて、毎日の料理に役立てましょう。