前回、投資を始める前に覚えておきたい「ローソク足」の基本でご説明した通り、ローソク足は、設定した期間内の値動きや価格の情報が確認できる便利な指標です。そのため、投資をする上で必要な相場の流れを読み解く際によく使われています。
基本形を用いてローソク足1本でも相場の動きを読み解くことも可能ですが、複数のローソク足を組み合わせることで、さらに相場の流れを読み解く分析の精度が上がります。
今回のコラムでは、特に代表的な組み合わせパターンと分析のポイントをご紹介していきます。
1. ローソク足のおさらい
ローソク足とは、その名の通りローソクに似ていることから名付けられ、「始値、終値、高値、安値」といった相場価格の動きや流れを表す『4本値』を把握することができます。
設定した期間内で最終の価格(終値)が始まりの価格(始値)より高い場合は『陽線(ようせん)』となり、最終の価格(終値)が始まりの価格(始値)が低い場合には『陰線(いんせん)』となります。
期間内での高値、安値の更新はローソク足本体(実体)から上下に伸びている『ヒゲ』で確認することができます。
また、一つひとつのローソク足の期間は『分・時間・日・週・月』と設定した期間で表すことができ、同じ期間の複数のローソク足を組み合わせてできたチャートを「ローソク足チャート」と呼びます。
ローソク足の基本と見方は別のコラムで解説をしていますので、ぜひこちらと合わせてご覧ください。
⇒投資を始める前に覚えておきたい「ローソク足」の基本(リンク)
ローソク足ひとつだけでも、相場のある程度の流れを把握することができますが、ひとつのローソク足の『次のローソク足』がどんな形なのか、また『どんな組み合わせなのか』を見ることで更に相場の方向性が見えてきます。
これから紹介する組み合わせは、鉄板パターンとも呼ばれるほど代表的なものになりますので、ぜひこの機会に覚えておきましょう。
2. 包み線・はらみ線・かぶせ線
2本のローソク足の組み合わせで代表的なパターンとして「包み線」と「はらみ線」、そして「かぶせ線」をご紹介していきます。
2-1. 包み線
包み線とは「抱き線」とも呼ばれ、新しいローソク足がひとつ前のローソク足の高値と安値を丸ごと包む大きなローソク足が出現した時を指します。小陽線や小陰線の後に大陽線または大陰線が来る形のことです。
包み線で注意したいのは、「ローソク足チャートのどこで出現したのか」ということです。
下落相場において陽線が陰線を包んでいる場合は『上昇への転換』、上昇相場において陰線が陽線を包んでいる場合は『下落への転換』を示す可能性があるとされています。
2-2. はらみ線
はらみ線とは、ひとつ前のローソク足が新しいローソク足の高値と安値を丸ごと包む大きなローソク足が出現した時を指します。大陽線の後に小陽線または小陰線、あるいは大陰線の後に小陰線または小陽線がくる形のことです。相場の天井(これから下落する)や底(これから上昇する)を形成するときによく出る形とされており、トレンドが転換するサインともいえます。
大陽線の後に小陽線や小陰線が出た場合は、買いの勢いが失速してきたことを表し、大陰線の後に小陰線や小陽線が出た場合は、売りの勢いが失速してきたことを表すとされています。いずれの場合においても、はらまれたローソク足が寄引同時線の場合には天井または底値となる可能性が非常に高くなります。
そのため、この並びが出た場合はトレンド転換が近いと考えて、その後の相場の動きに注意が必要です。
2-3. かぶせ線
かぶせ線は、陽線の次に陰線が出現したとき、または、陰線の次に陽線が出現したときのローソク足の並びのうち、次のもののことをいいます。
上の画像を見てもらうと、1の陽線が出現した次に出ているローソク足の株価が、陽線の終値より高く始まり安く終わっており、ちょうどはらみでもつつみでもない中間地点のような組み合わせだとわかります。
このようなパターンが、上昇相場で出現すると上昇から下落への転換(天井)を表しているとみなされます。
反対に、2のように最初に陰線がでて、次に陽線がかぶさる逆のバージョンもあります。このパターンが下降相場で出現すると、下落から上昇への転換(底)だとみなされます。
当スクールの公式YouTubeチャンネルでは、ローソク足の2本の組み合わせパターンを今回ご紹介したもの以外にも動画で分かりやすくご紹介していますので、興味のある方はぜひこちらの動画も合わせてご覧ください。
【知らないと損!】2本のロウソク足で相場トレンドの“転換サイン”が見える?<テクニカル分析 ローソク足②>
3. 酒田五法(さかたごほう)
「酒田五法」とは、複数のローソク足から相場を読み解く手法で、ローソク足の考案者ともいわれる江戸時代の相場師の本間宗久氏が確立したとされています。
「三山」「三空」「三川」「三兵」「三法」の五つから成り、本間宗久の出身地である「酒田」の地名をとって「酒田五法」と呼ばれています。「酒田五法」は、チャート分析の中でも古くからある手法のひとつに数えられ、基本的な考え方として利用されています。
3-1. 三山(さんざん)
上昇相場で上げ下げを3回繰り返して3つの山を形成した場合を「三山(さんざん)」と呼びます。その中でも真ん中の山が高いものを『三尊天井(さんぞんてんじょう)』と呼びます。3つの山を人の両肩と頭に見立て「ヘッドアンドショルダーズ・トップ」と呼ばれることもあります。
三山が見られた場合は、相場が下落に向かう可能性が高いとされます。
また、底値圏で「三尊天井」と上下逆の形が出現する場合は「逆三尊底(ぎゃくさんぞんぞこ)」と呼ばれ、こちらは下降トレンドの終わりの方で見られる形といわれています。
3-2. 三空(さんくう)
三空の説明に入る前に、「窓」について理解をしておきましょう。
陽線で「前日の高値を上回った水準で始まり、当日の安値が前日の高値を下回らない水準を保ったまま引けた」場合、陰線なら「前日の安値を下回った水準で始まり、当日の高値が前日の安値を上回らない水準を保ったまま引けた」場合に“空白”ができ、前後のローソク足が重なっていない状態となります。この空白のことを『窓』と呼びます。(欧米では「ギャップ」と呼びます。)
「窓」は一般的に相場の勢いが強くなっていることを示し、「窓」が生じた状態のことを「窓開け」と呼び、トレンドの始まりを表すこともあります。この「窓開け」が連続して出てきた場合は特に注意が必要です。
さて、ここで「三空」の説明にもどります。三空のポイントは、その名のとおり「空」、すなわち窓を開けていることです。
三空は以下の2種類となります。
三空踏み上げ:陽線が窓を開けて4本連続する
三空叩き込み:陰線が窓を開けて4本連続する
上に書いた通り「窓開け」は相場の勢いを表す現象とされていますが、その中でも3つ連続で窓が開く三空は特に強い勢いを示すことになります。しかし、裏を返せば『力を使い切った』タイミングと捉えることができるのです。
陽線ないし陰線が窓を開けて連続しているかを重視しているため、三空が出た場合に酒田五法では『三空踏み上げは売り向かうべし』『三空叩き込みは買い向かうべし』としています。
このことから分かるように、三空が出たということはトレンド転換が近い可能性があるので、4本目のローソク足が出た時には注意が必要です。「三空」が上昇トレンドの中で出てきた場合は下落に転じ、下落トレンドの中で出てきた場合は上昇に転じる可能性が高いということです。
3-3. 三川(さんせん)
「五法」のうち、バリエーションが多いのが「三川」です。相場の天井や底を判断するのに使うローソク足の並びですが、この中でも特に有名なのが、この「三川明けの明星」と「三川宵の明星」です。
それぞれ、以下の並びで出現します。
三川明けの明星:大陰線→小陽線または十字線→陽線
三川宵の明星:大陽線→小陰線または十字線→陰線
しかし、単にこの並びのローソク足が出ただけでは、三川明けの明星や三川宵の明星であるとは判断せず、どんなトレンドで出現したかが重要となります。
下降トレンドの中で「三川明けの明星」が出た場合は、底を打ち、上昇トレンドに転換した可能性が高いとみなされ、上昇トレンドの中で「三川宵の明星」が出た場合には、天井を打ち、下降トレンドに転換した可能性が高いとみなされます。
海外でもこのローソク足の並びは有名で、「三川明けの明星」は『モーニングスター』、「三川宵の明星」は『イブニングスター』と呼ばれています。
3-4. 三兵(さんぺい)
陽線あるいは陰線が3本連続で出現したときの状態を「三兵」といいます。陽線が続く場合を「赤三兵(あかさんぺい)」、陰線が続く場合を「黒三兵(くろさんぺい)」といいます。ローソク足は必ずしも同じ大きさである必要はありません。
陽線が3本連続するものの、2本目と3本目の陽線に長い上ヒゲがあると「赤三兵先詰まり」といいます。赤三兵先詰まりは、長い上ヒゲがあるため売り圧力が強く、目先の買い圧力が弱いということを意味し、買いシグナルにはならないので注意が必要です。
三兵は一見すると三空と似ていますが、三空とは違い、連続した陽線や陰線が窓を開けずに出現しています。赤三兵が上昇トレンドに転換した直後に出ていれば買いシグナル、黒三兵が下降トレンドに転換した直後に出ていれば売りシグナルとなります。
また、赤三兵が高値圏で出た場合は売りシグナル、黒三兵が底値圏で出た場合は売りシグナルとなります。
3-5. 三法(さんぽう)
上昇と下落を繰り返し、相場の方向性が定まらない状態(レンジ相場)を「三法(さんぽう)」と呼びます。このような場合は取引を休み、相場が動き出したら取引を始めるのが良いとされます。
「酒田五法」では『休む』ことも相場への取り組み方のひとつだ、と説いているのです。
大陽線が出た後に陰線が3本出て、再び大陽線が出るパターンを「上げ三法」と呼びます。方向感が定まらないうちは相場の小休止と見ますが、大陽線が出てレンジ相場の高値を上に抜けると上昇を示し、買いのサインとされます。この逆のパターンは「下げ三法」と呼びます。
酒田五法の詳しい解説も、当スクールの公式YouTubeチャンネルで動画で分かりやすくご紹介していますので、興味のある方はぜひこちらの動画もご覧になってみてください。
⇒【門外不出の相場の極意!】大衆心理を熟知した江戸時代の賢人がまとめた“酒田五法”とは?
4. 分析のポイント
さて、ここまで代表的な組み合わせパターンをご紹介しました。当然のことですが、これらの組み合わせが出現したからといって、必ずしもその通りに株価が転換するとは限りません。
ローソク足はテクニカル分析において最も大事なもののひとつですが、ローソク足だけを見て投資を行ってしまうと、いわゆる「ダマシ」に出会うことがあります。ダマシとは、本来ならなるべき株価の動きとは全く逆になることをいいます。
明らかにパターンによって上げ下げのサインが出ていても、全くサイン通りに動かないということもあります。ですので「ローソク足の組み合わせは、参考にしても妄信してはいけない」ということです。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
今回のコラムでは、ローソク足の応用編ということで鉄板の組み合わせパターンと分析のポイントについてご紹介しました。相場の流れが絶対にこの通りになるという訳ではないのですが、少なくとも今回ご紹介したパターンを覚えておくことで、相場の動きや流れを読み解く力がつきます。
ぜひ、今回のコラムをきっかけにローソク足の理解を深めていただければ幸いです。
投資総合スクールThe Gavelの公式YouTubeチャンネルでは、ローソク足の基礎から実践で使える分析の考え方などをシリーズ化して動画で分かりやすく解説していますので、ぜひご興味のある方はそちらもご覧になってみてください。