寒いときに食べたいのが、体を温めてくれる食材です。中でも、野菜は身体に良いといわれ、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素が豊富で、免疫力を高める効果や、多くの機能性成分が含まれており、健康に大きくかかわっているといわれています。
特に、冬が旬の野菜は食べることで血行が良くなり、冷え性や風邪の予防などが期待されています。冬野菜の特徴を知り、冬野菜を入れた温かい食べ物を食べて、体の芯から温まりましょう。さぁ、冬野菜の世界へ。
1.旬の野菜とは
暖かかったり、寒かったりと気候は変化しますが、その季節に私たちの身体が寄り添うためにも、野菜選びは大切なことです。野菜にはたくさんの種類があり、ひとつひとつ、色・形・味が違っていますが、それぞれに不思議な力を持っています。
一年中、きゅうりやトマト、レタスなどの生野菜が食べられますし、ハウス栽培のおかげで季節にかかわらずスーパーマーケットに出回っている野菜が多く、いつでも購入できますが、農産物には本来旬があります。
旬の野菜にはその季節に必要な栄養素をたっぷり含んでいます。ハウス栽培の野菜に比べて栄養価自体が高いこともわかっています。さらに、栽培する気候条件にも適しているため、農薬の使用量も少ない場合が多いです。
地産地消、地元の野菜を購入すれば輸送コストもかかりません。また、市場にたくさん出回るので価格が手ごろなのも魅力です。旬の野菜を食べることは「体が喜ぶ」ともいわれています。
2.冬野菜とは
冬に旬を迎える野菜には大根や白菜、ネギなどの白っぽい野菜や、ほうれん草や小松菜などの葉物野菜も出回り、根菜や葉物までバラエティに富んでいます。冬の野菜は、その寒さによってより一層、美味しさが引き立ち、冬に収穫された野菜のほうがビタミンなどの栄養素も豊富で、風味も味も強く感じられます。
特に根菜類は秋までには成長が終わり、追熟することにより、糖度が増えるものも多く、また寒さで凍らないよう、糖度の高い野菜が多いため、甘くておいしいと感じられます。
・葉物野菜などを寒さにさらすことで甘みが増し、糖度やビタミン類の量が増えるのが特徴です。(寒じめほうれん草など)
・越冬野菜の保存法から生まれた栽培法で、雪の中に野菜を埋めたままにしますが、甘みが感じられ、青臭さもなく、旨みや香りが豊かになります。(雪下にんじんなど)
・代表的な冬野菜
代表的な冬野菜は、大根、白菜、ねぎ、ほうれん草、小松菜、春菊、水菜、にんじん、かぶ、カリフラワー、ブロッコリー、キャベツ、れんこん、ごぼう、生姜などです。
3.体を温める冬野菜とは
野菜には体を温めてくれたり、体を冷やしたり、潤してくれたり、気力を補ってくれたり、解毒や排泄を助けてくれたり、それぞれに役割があります。
冬野菜には基本的に体を温める作用を持っています。自然界には食べ物で私たちの体の体温調整をしてくれる働きが備わっています。土の中で育つ根菜類やオレンジ色・赤色・黒色の野菜にも体を温める効果があるといわれています。
特ににんじん、だいこん、ごぼうなどの根菜類は水分が少なく、血行促進するミネラル類が多く含まれています。ただし、大根や白菜といった冬を代表する野菜でも、生のサラダなどで食べると体を冷やしてしまいますが、加熱調理して食べれば、体を温めてくれます。
にんじんは、生で食べても、加熱して食べても、体を温めてくれます。ほうれん草、小松菜、春菊などの緑黄色野菜は、免疫力を高め、風邪の予防にも効果があるといわれています。体を温める効果というと生姜が有名ですが、より効果的に食べるには加熱した生姜のほうが、効果が高いので、汁物などに加えましょう。
・冬野菜は温野菜にするのがおすすめです。温野菜には体を温めるだけでなく、カサが減るので量をたくさん食べられ、栄養が吸収されやすくなるなどのメリットがあります。
・冬が旬の果物、寒い地方で採れる果物、例えばリンゴやみかん、干し柿などは基本的に体を温める効果があるといわれています。
・みかんは実だけでなく、皮や白い筋、袋の部分を一緒に食べると体を温める作用があります。
4.体を温める調味料とは
冬野菜は味や香りも濃いので、調味料の塩分や甘みを減らす効果も期待できます。特に根菜類を醤油や味噌、本みりんなどで味付けして作る煮物はおすすめです。
塩は体を温める調味料の代表です。発酵食品である酢や醤油、味噌など。唐辛子や豆板醤、胡椒、わさび、マスタードなどの辛み。シナモン、パプリカ、ナツメグなどのスパイス類やごま油は体を温めてくれます。
逆に白砂糖やバター、合成酢、うまみ調味料などは体を冷やす作用があるといわれています。
5.食物酵素
旬の野菜を消化吸収しやすくするためには、加熱調理したものばかりでなく、野菜や果物を生で取り入れ、食物酵素の働きを取り入れることも大切です。食物酵素とは野菜などの食品に含まれていて消化を助ける酵素のことです。熱に弱く、加熱調理で損なわれやすいのが欠点です。
この時、冷えた野菜や甘みのある果物を摂るよりも、常温に戻したり、お湯で洗ったり、すりおろしたり、酢の物にして食べることをおすすめします。煮物や生姜を加えた汁物などと一緒に食べましょう。
酵素を含んだ野菜や果物は体の新陳代謝を上げるので、芯から体を温めてくれ、冷え性を改善しやすくなります。ほんの少量で良いので、食卓に生の野菜や果物を一緒に取り入れましょう。
6.「美味鍋」レシピ2選
酒粕や甘酒などをベースに使った鍋です。少し甘みもあり、口当たりもやさしい味わいです。
美味鍋①「鶏肉と冬野菜の酒粕豆乳鍋」
- カラフルな冬野菜を使っているので、見た目にも食欲アップ!
- 濃厚な酒粕と豆乳を使った、体がポカポカに温まる鍋!
【材料】(2~3人分)
鶏もも肉 250g、ロマネスコ 1╱3個、ひらたけ 1╱2パック、黄にんじん 1╱3本、赤カブ 1╱4個、白菜 2枚、
A:豆乳 200ml、酒粕 80g、白だし(市販)大さじ3、水 200ml、生姜(千切り) 10g、
【作り方】
1.鶏肉は一口に切り、ロマネスコとひらたけは小房に分け、黄にんじんと赤カブ、白菜は食べやすい大きさに切ります。
2.鍋に、(A)を煮立て、①を加えて、中弱火で中まで火を通します。
3.お好みで、取り分けていただきます。
*酒粕は溶けにくいので、豆乳などに浸しておくと使いやすいです。
*豆乳は無調整豆乳を使うとスープが分離しやすくなります。
*七味唐辛子やかんずりなどを添えても。
*お好きな野菜や具材でお楽しみください。
食材について
酒粕と豆乳を合わせると、まったりとしたコクと旨みの中に、火が入ることでほんのりとした酒の香りが漂う“大人の鍋”です。スープが抜群の美味しさで、体が温まります。
にんじんのビタミンCは鶏肉などのタンパク質と一緒に摂ると吸収率がアップします。美肌効果やがん予防が期待できます。
・酒粕
酒粕とは、日本酒を作る時に出るもろみから酒を搾り取った後のかすのことで、乳白色の固形物で、昔から食べられてきた発酵食品です。
酒粕には、血糖値、コレステロールを下げてくれたり、血管のダメージを防いでくれたり、強力な抗酸化作用があり、肌の潤いを保ち美肌つくり、ダイエット、お通じにも良いなど、健康・美容成分が豊富だといわれています。
また、微量のアルコールが入っていることと生姜を加えることで、体がポカポカ、相乗効果が期待できます。(お子さまにはアルコールをしっかり飛ばしましょう。)
・白だし
かつお節や昆布などからとった出汁に白醤油や薄口醤油、砂糖やみりんなどを加えて作った調味料で、素材の色をきれいに出すことができます。手軽に和風だしの風味が楽しめる万能調味料です。
・ロマネスコ
イタリアの伝統野菜です。ブロッコリーやカリフラワーと同じ仲間です。特徴は、ピラミッド型の形です。花蕾は薄緑色で盛り上がるように詰まっているもの、持って重みがあるものを選ぶのがおすすめです。クセがなくて口当たりも良く、甘みと旨みが感じられます。加熱するときれいな翡翠色になります。新鮮なものは生でも食べられます。
・ひらたけ
本来は寒い時期に生えるきのこで初春にかけて発生しますが、栽培したものが多く出回っています。カサが平たい形をしたきのこで、肉厚で大きいので食べごたえがあり、しっかりとした歯ごたえでクセがなく、旨みも香りも強いのが特徴です。
水で洗うと栄養素が逃げてしまうだけでなく、水分を吸って食感も落ちてしまうので、汚れは濡らしたふきんなどで拭き取ると良いです。さまざまな料理に合います。
・黄にんじん(カラフルにんじん)
果皮も果肉も黄色いにんじんです。クセが少なく、甘みも強くて柔らかいのが特徴です。生でも加熱しても美味しく食べられます。油と一緒に調理するとβ-カロテンの吸収率が高まるといわれていますが、茹でるだけでもβ-カロテンは吸収されやすくなります。レモンなどと一緒に食べると風邪予防にも期待できます。
・赤カブ
表面が鮮やかな赤色・赤紫色をしています。品種によっては表面だけが赤色のもの、果肉の内部も赤色のものがあります。赤色はポリフェノールの一種で、体内の活性酸素を取り除く抗酸化作用のあるアントシアニンによるものです。水溶性なので、鍋に入れると、汁がほんのりピンク色になります。汁もいただきましょう。
・白菜
冬の代表野菜、寒くなると甘みを増して美味しくなります。免疫力を高めるビタミンCが豊富ですが、水溶性なので煮汁ごと食べられる鍋がおすすめです。体を温める食材として風邪予防や引き始めに食べられてきました。
他にカリウムやカルシウムなどのミネラル、食物繊維を含み、肥満予防、抗がん効果も期待されています。また、旨み成分のグルタミン酸を多く含み、特に芯の部分に多く、煮込むとやわらかくなり、甘みも出てきます。
美味鍋②「鮭と冬野菜の甘酒みそ鍋」
- 冬野菜の甘みと、春菊のほろ苦さがよく合う!
- 鮭とさつま揚げでボリューム満点の食べ応え鍋!
- 甘酒の甘みと味噌のまろやかな塩味、ダブルの発酵力で、おいしさUP!
【材料】(2~3人分)
鮭(生) 2切れ、さつま揚げ(野菜入り) 2枚、白ねぎ 1本、大根 10cm、春菊 1╱3袋
A:甘酒(ストレートタイプ) 400ml、だし汁 200ml、味噌(信州) 大さじ2強、
【作り方】
1.鮭は一口大に切り、さつま揚げは半分に切り、白ねぎは1cm幅の斜め切りにする。
2.大根はピーラーでスライスし、春菊は葉先を摘む。
3.鍋に(A)を加えて沸騰させ、①を加えて、弱めの中火にして蓋をする。鮭に火が通ったら②を加える。
4.野菜がしんなりしたら食べごろです。
*春菊は、堅い茎の部分は除いて葉先だけを使って、食感よく。
*お好みで、かんずりや七味唐辛子などを加えても。
*味噌はお好きなものを選んで、量を調整してください。
*お好きな野菜や具材でお楽しみください。
食材について
やさしい甘さの甘酒は、そのまま飲んでも美味しいですが、味噌と合わせると相性が抜群です。甘酒と味噌のダブルの発酵食品のかけあわせは、旨みやコクもプラスしてくれます。
・甘酒
アルコールを含まない発酵食品で、甘みとなるブドウ糖、ビタミンやアミノ酸が含まれており、「飲む点滴」とも呼ばれています。血行を良くしてくれる効果もあるので、体を温め、体温も上昇してくれます。ほかに、食物繊維やオリゴ糖も含まれているので、腸内環境を整え、便秘や肌荒れにも良いと期待されています。
・味噌
味噌は大豆を麹で発酵させたもので、アミノ酸やビタミン類などの栄養素、旨みが豊富です。また、豊富に含まれる乳酸菌は善玉菌として、腸を整えてくれることで代謝を促進してくれ、体の内側から温めてくれます。
・白ネギ
根元の白い部分が長いのが根深ネギです。白い部分は淡色野菜ですが、抗酸化作用があり甘み成分をたっぷり含んでいます。食欲を増進させたり、体を温めてくれたり、風邪の引き始めには、発汗作用があり、弱った身体を回復させる効果も注目されています。
白ネギは加熱すると甘味を増すので、料理の主役にも使いたい野菜です。鮭や豚肉などの良質なタンパク質と合わせると疲労回復効果が期待できます。鉄(青菜類)を多く含む野菜との組み合わせも相性が良いです。
・大根
年間を通して出回っていますが、冬の寒さで甘みがグンと増してやわらかくなるので、煮物や火を通すのがおすすめです。根の部分の95%は水分でビタミンCもふくまれていますが、水溶性なので煮汁ごといただきましょう。大きめにカットして煮るときは、下茹でをすることで、大根臭さを抜くことができます。
・春菊
甘みが増しておいしくなるのは冬です。旬のものはやわらかいので、生で食べても美味しいです。独特のほろ苦い香りは胃腸の働きを活発にして食欲を増進してくれます。他の青菜類に比べて栄養価は高く、β-カロテンやビタミンC、カルシウム、鉄などのミネラルも豊富です。葉は摘んで使い、加熱時間はほどほどに。茎の部分はスライスしたり、多めに加熱するのがポイント。
本日の調味料「かんずり」
約400年前の戦国時代から食べられてきた伝統調味料です。冬、寒さの厳しい新潟県の妙高あたりで、体を温めるために食べていたといわれています。地元で収穫された大きくて実が厚い唐辛子を海水塩で塩漬けし、次の年の大寒の頃に「雪さらし」といい、3~4日ほど雪の上にさらして天日干しすることで唐辛子のアクが抜け、甘みと旨みが増して柔らかく美味しくなります。
真っ白な雪の上に、真っ赤な唐辛子を干す光景は壮観です。その後、唐辛子をすり潰し、麹と柚子、塩を加えて、3年という長い間、熟成・発酵させます。年に一度は「手返り」といい、全体を混ぜて空気を入れて発酵を促します。仕込みから4年かけて完成します。
長い間、じっくりと発酵させることにより、まろやかな辛みと旨味になり、独特の香りも醸し出され、料理の引き立て役に、隠し味に、鍋のお供に、どんな料理にも合う万能調味料です。是非、お試しください。
おわりに
「冷えは万病のもと」ともいわれます。
体の冷えは、厚着をすれば、大丈夫!と思っていても、改善されません。煮物や汁物、鍋など、体が芯から温まる料理に冬野菜をたっぷり使い、食事で体内バランスを整えましょう。
就寝前に、はちみつを加えた温かい飲み物はいかがですか。はちみつは、咳や喉の痛みや風邪予防などの効能があり、乾燥しがちな冬には特におすすめです。スマホやパソコンを閉じて、ゆったりとした時間を過ごせば、リラックス効果も高まり、質の良い睡眠が取れでしょう。