賃貸住宅を探していると「優良物件」という言葉をよく見かけます。しかし一概に優良物件といっても、具体的に何を指して優良といっているのかわからない方もいるでしょう。また物件情報は膨大にあるため、ご自身の希望を満たす物件を探すのに苦労されている方もいるかもしれません。
優良物件とは、自分の暮らしに合った条件を満たす物件のことを指します。優良物件を見極めるには、駅までの徒歩での所要時間、部屋探しの時期や内部のチェックなどに注目することが大事です。
このコラムでは、優良物件のポイントや物件探しをするうえで気をつけたいポイント・注意点について詳しく解説していきます。物件探しをしている方、引っ越しを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
「優良物件」の定義とは?一般的な7つの特徴を解説
そもそも優良物件の定義とは何を指すのでしょうか。人によって賃貸物件に求める条件はさまざまなので、一概には定義できませんが、優良物件として取り上げられる賃貸物件の主な特徴をご紹介します。
家賃の安さ
月々に支払う家賃がどれだけ安価であるかを重要視する方は少なくないでしょう。場合によっては、多少建物が劣化していても家賃の安さを最優先に考え、建物のコンディションなどはそれほど気にならないという方もいます。
なかには、前の住民に不幸があったため格安となっている「訳ありの物件」もあります。これは、自殺や他殺、孤独死などが起きた履歴のある、いわゆる「事故物件」のことです。家賃の安さを第一に考える方は、あまり気にせず居住する場合もあります。
家賃が安くても部屋がそれほど劣化しておらず、設備もハイクオリティであれば、事故物件であっても優良物件といえるでしょう。また、敷金や礼金のかからない物件を探すのもおすすめです。
駅からの距離の近さ
ほとんどの賃貸物件は、駅からの距離が近いだけで優良物件として扱われます。新しく設備が充実していても、駅から遠い場合は敬遠されやすく、優良物件とされないケースもあります。
家賃が高くても良いから駅からの距離にこだわりたい方は、不動産会社が提示する物件情報の「駅から〇〇分」の表示に注意しながら探すと良いでしょう。
反対に車やバス、バイクなどを移動手段に使っている方は駅をそれほど利用しないので、駅からの距離よりも駐車スペースの広さなどを重視するほうが大切です。
交通アクセス
交通アクセスのよさは、優良物件の重要な要素といえます。まずは自分の主な移動手段を考慮して、必要な交通条件を明確にしておくことが大切です。そのうえで、以下のようなポイントをチェックしましょう。
- 主要駅までのアクセスのしやすさ
- 駐車場や自転車置場の有無
- 駐車場の入出庫の容易性
- 前面道路の交通量 など
通勤・通学で電車を利用する方は、気になる物件があれば実際に駅まで歩いてみることをおすすめします。地図上の距離と実際に歩いた時の感覚は異なることがあるため、実際の道のりを確認しておくと後悔せずに済むでしょう。
駐車場を利用する場合には、その種類(平置き・機械式など)や入出庫のしやすさ、敷地前の道路の交通量を確認しておきましょう。実際に使用されている様子や、利用料金などもチェックすると、生活の利便性を具体的にイメージしやすくなります。
また、自転車を利用する方は駐輪場の有無や整備状況も重要なポイントです。十分なスペースがあるか、屋根付きかどうかなども確認しておくと安心です。
交通アクセスの良さは日常の快適さに大きく影響します。自分のライフスタイルに合った移動手段(車・自転車・公共交通機関など)が確保できるかを踏まえたうえで、物件を選ぶことが大切です。
間取りや部屋の広さ、デザイン性
普段からライフスタイルにこだわりがある方、洗練された生活を送りたい方は、部屋探しをする際、何よりも部屋の広さやデザイン、間取りを重視します。いわゆる「デザイナーズ賃貸」を探すと、おしゃれな物件に出会える確率が上がるでしょう。
デザイナーズ賃貸は、デザイン重視で設備も独特な分、家賃は少し高めになるケースが多いですが、おしゃれな空間を求める方にはおすすめです。反対に、間取りや広さの条件を少し譲ることで、家賃を抑えた物件探しも可能です。
ベランダの向きや角部屋かどうかも、好みに合わせて検討しましょう。昼間と夕方以降では、室内の雰囲気が変わるので、洗練された空間にこだわりがある方は、昼と夜の2回に分けて内見するのもおすすめです。
築年数の浅さ
物件の築年数は、家賃や居住の快適さに大きく関わります。築年数が浅い物件は建物の劣化が少なく、安心して暮らしやすい傾向があります。とくに築年数を重視する方にとっては、家賃や立地以上に「新しさ」そのものが優良物件の条件となる場合もあるでしょう。
一方で、築年数が古い物件は、見た目がきれいでも建物内部に劣化がある可能性があります。ただし、近年はリノベーションを施した築古物件も多く、最新の設備や機能性を備えているものも珍しくありません。こうした物件は、立地が良く家賃も抑えられていることが多く、コストパフォーマンスの良い選択肢となり得ます。
管理の状況
入居後の生活をスムーズに送るためには、日常的な管理体制がしっかりしている物件を選ぶことも重要です。以下のような項目をチェックすることで、管理状態の良し悪しを把握できるでしょう。
- 掲示板の貼り方
- 共用部の清掃状態
- ゴミ置き場の状況
- 駐輪場の整理状況
- 防犯対策 など
平成23年12月1日からは「賃貸住宅管理業者登録制度」が施行され、賃貸住宅管理業務の登録事業者が公表されるようになりました。管理業者が登録されているかどうかも確認し、物件選択の判断材料として活用しましょう。信頼できる管理会社が担当する物件であれば、入居中のトラブルにも迅速に対応してもらえる可能性が高まります。
周辺環境
物件選びにおいては、周辺の利便性や治安といった環境面も非常に重要です。近隣にスーパーや飲食店などが揃っていて買物に便利、かつ治安が良いエリアであれば、生活の快適さが向上し、「優良物件」と実感できるはずです。
どれほど家賃が手頃で設備が整った物件であっても、夜中に騒がしい・治安に不安がある環境では、落ち着いた生活を送るのは難しいでしょう。
また、昼と夜で周辺の雰囲気が大きく変わることもあるため注意が必要です。例えば、昼間はにぎやかで安全そうに見えても、夜になると街灯が少なくて怖い、深夜でも人通りが多く騒がしいといったことが判明することもあります。
そのため、日中の内見だけでなく、夜間の時間帯にも周辺を散策してみることをおすすめします。実際に自分の生活リズムに合った環境かどうかを確認することで、より納得感のある物件選びができるでしょう。
賃貸物件をチェックする際の3つのポイント
理想の物件に出会うためには「自分が住みたい」と思える基準を持ち、それに合致するかどうかをしっかりと確認することが大切です。ここでは、物件が優良物件であるかを見極める3つのポイントをご紹介します。
「駅から徒歩◯分」は実際に歩いて確認
駅からの距離を重視する場合は、表示されている「駅から徒歩◯分」が実際にどれくらいかを、自分の足で確かめてみましょう。徒歩の所要時間は一般的に「80メートル=1分」で算出されていますが、歩くスピードや坂道の有無によって体感は変わります。また、大きなマンションなどの場合には部屋の位置やエレベーターの位置によって歩く距離が大きく変わる場合もあります。実際に借りる部屋までの所要時間を確認しましょう。
すべての物件を確認するのは時間的にも体力的にも難しいかもしれませんが、最終候補に絞った2〜3件は、実際に歩いて距離感や周辺環境の雰囲気、商店の有無などをチェックするのがおすすめです。
部屋探しをする時期を選ぶ
賃貸市場の繁忙期は、新生活が始まる前の3月といわれています。この時期は、進学や就職を控えた人の動きが活発になり、人気物件はすぐに契約が決まってしまいます。
じっくりと物件探しをしたい場合は、3月のピークを避けて12月〜1月頃から探し始めるのが理想です。早めに行動することで、優良物件の選択肢も広がり、納得のいく物件に出会いやすくなります。
部屋内をチェックする
優良物件を見つけるには、実際に内見を行うことが不可欠です。物件情報や写真だけではわからない部分も多いため、自分の目で状態を確認することが大切です。
内見時には、以下のようなポイントをチェックしましょう。
- 日当たり
- 防音
- 壁や床
- トイレやキッチン風呂場などの水回り
- ドアの大きさ
- 設備
それぞれ詳しく解説します。
日当たり
明るい部屋を希望する方は、日当たりの良さを確認しましょう。周囲に高い建物があると、窓の向きや大きさによっては部屋が常に日陰になる可能性もあります。
季節や天候、時間によって状況は異なりますが、内見はできるだけ日中の時間帯に行いましょう。実際に日差しが差し込み、明るい部屋になっているのかを確認すると安心です。
防音性
静かな住環境を求める方や、自宅で音楽や映画を大きな音で楽しみたい方は、防音性のチェックが必須です。壁が薄かったり、床の素材や構造によっては、隣人や上階の生活音が聞こえるだけでなく、自分の音が迷惑になることもあります。
生活サイクルが異なる隣人がいる場合など、夜間の騒音で睡眠に支障が出ることもあるため、内見時に周囲の音や壁の厚みも意識しましょう。
壁や床の状態
壁や床の状態は部屋の清潔感や湿気の有無を知る手がかりになります。シミやカビがある場合は、通気性や湿度の問題がある可能性があり、健康にも影響を及ぼす恐れがあります。
表面的な清掃の有無だけでなく、メンテナンスがきちんと行われているかもあわせて確認しましょう。
水回り(トイレ・キッチン・風呂)
毎日使う水回りの状態も、物件の快適性を左右する重要ポイントです。シャワーの水圧やトイレの水位・流れ具合、水漏れや異臭がないかなどをチェックしてください。
特にトイレの水位が低すぎると下水臭が上がってくる場合もあり、生活に支障が出ることがあります。
ドアの大きさと換気のしやすさ
引っ越し時に家具や家電が問題なく搬入できるかは、見落とされがちなポイントです。玄関や室内のドアのサイズを事前に確認し、大型家具の出入りに問題がないか確認しましょう。
あわせて、窓や勝手口などの開口部から換気がしやすいかもチェックしておくと、日々の快適さにもつながります。
設備の使いやすさ
備え付けの設備が自身の生活スタイルに合っているかも確認しておきましょう。具体的には、以下のようなポイントがあります。
- 収納スペースの広さや配置
- 靴箱やクローゼットの高さや奥行き
- コンセントの数・位置と家電の配置のしやすさ
実際の生活を想像しながら内見することで、入居後のギャップを減らすことができます。
優良物件に出会うための3つのポイント
優良物件に出会うためのポイントとして、以下の3つが挙げられます。
- 不動産ポータルサイトを毎日チェックする
- 理想的な条件に優先順位をつけておく
- 少しでも気になれば内見してみる
不動産ポータルサイトを毎日チェックする
優良物件は人気が高く、掲載後すぐに申し込みが入ることも珍しくありません。そのため、毎日物件情報を確認する習慣を持つことが大切です。
複数の不動産ポータルサイトを活用することで、掲載物件の幅が広がり、希望に近い物件と出会える可能性が高まります。
また、新着物件通知機能(アラート機能)を設定しておくと、効率的に情報をキャッチできます。
日々のこまめなチェックが、良い物件を見つけた際の即断即決力につながります。
理想的な条件に優先順位をつけておく
すべての条件を満たす物件に出会うのは簡単ではありません。そのため、あらかじめ希望条件に優先順位をつけておくことが重要です。
たとえば、
- 家賃
- 駅からの距離
- 間取り
- 周辺環境
といった条件の中で、「絶対に譲れない条件」と「妥協してもよい条件」を区別しておくことで、物件選びの判断がスムーズになります。
軸が明確になると、即断即決もしやすくなり、チャンスを逃しません。
少しでも気になれば内見してみる
写真やネット上の情報だけではわからない部分も多いため、少しでも気になる物件は内見してみることをおすすめします。
内見では、以下の状況を確認できるうえ、不動産会社の担当者に直接質問できるチャンスにもなります。
- 室内の雰囲気
- 周辺環境
- 近隣住民の様子
可能であれば、平日・休日、昼・夜など異なる時間帯にも訪問し、実際の生活をイメージしてみましょう。また、内見の際に希望条件を伝えることで、未公開物件を紹介してもらえる可能性もあります。
気に入った物件があれば、その場で申し込みを検討するスピード感も大切です。優良物件は競争率が高いため、決断の早さが成否を分けます。
「未公開物件」にも注目しよう
物件探しでは、不動産ポータルサイトに掲載されている物件だけでなく、「未公開物件」にも注目することで、より良い選択肢と出会える可能性があります。
未公開物件とは
未公開物件とは、不動産会社がWeb上や広告で一般公開していない物件のことです。たとえば以下のような理由で未公開となっている場合があります。
- 現在の入居者が退去予定だが、退去日が未確定
- リフォーム中で、完了時期が決まっていない
- 限定的に紹介したい物件(紹介料や仲介手数料による収益の確保)
- 問い合わせを通じて顧客情報を得たいという目的がある
こうした物件の中には、一般に出回る前の優良物件が含まれていることもあります。不動産会社に相談することで、これらの情報を得られる可能性があります。
未公開物件を紹介してもらうには?
未公開物件を紹介してもらうには、不動産会社との信頼関係の構築が重要です。単にWebサイトを見るだけでなく、直接のやりとりを通じて「この人になら紹介してもよい」と思ってもらうことが鍵となります。
信頼を得るための具体的な行動例:
- 同じ担当者に継続して連絡し、希望条件・予算・入居希望時期などを明確に伝える
- 内見の約束を守り、やむを得ず変更・キャンセルする場合は早めに連絡する
気に入らなかった物件についても、その理由を具体的に伝えるまた、Webサイトだけでなく、電話や店頭での直接相談も効果的です。不動産会社は「誠実に対応してくれる人」に対して優先的に未公開物件を紹介してくれる傾向があります。
なお、複数の不動産会社に同時にアプローチして比較する方法もありますが、一社との関係が浅くなり、深い情報にはアクセスしにくくなるというデメリットもあります。未公開物件を狙う場合は、一社に絞って丁寧なやりとりを心がけるのが有効です。
おわりに
「優良物件」といっても、その基準は人それぞれ異なります。本記事では、家賃や駅からの距離、周辺環境、築年数、室内設備など、物件選びにおける7つの確認ポイントを紹介しました。
最終的には、自分の生活スタイルや優先事項に合った物件こそが、あなたにとっての「優良物件」といえるでしょう。
本記事を参考に、「自分は何を大切にしたいのか」を明確にして、その条件に合う物件を見つけてください。快適な暮らしを実現する物件と出会えると良いですね。